サトシも小食だった。
離乳食が始まると、量を食べず、体重の伸びが悪くなった。
栄養がきちんと管理され、調理師が作ってくれているから・・・・
味も栄養も申し分ないものなのだが。
智くんも小さい頃から食が細かったらしいから・・・
サトシも同じだろう。
食べなくてもあまり気にしないことにした。
量を食べることよりも、食事の場が楽しいものになるように。
サトシが食べるときには、俺も食事にした。
俺の食べているものを欲しがることもあった。
サトシ用のものを紛れ込ませておいた。
それを食べさせると同じものなのに、食が進む。
不思議なものだ。
んまんま、と少しずつ言葉らしきものも出始めていた。
俺はサトシの前では自分のことを“先生”と言っている。
だからなのか?
どうも、サトシは俺のことを、“せ〜”と呼んでいるようだ。
“翔先生”では、どうだろう?
今度からそう名乗ってみよう。
サトシが1歳半になった。
母子保健法の規定ではこの時期に健診がある。
その項目にもとづいて、サトシの発育発達を診た。
やはり、発育は身長体重ともに小さめ。
発育曲線によると−2SDを少し下回るくらい。
曲線に沿って発育はしているので、経過観察とする。
離乳は完成しているから、これからの伸びに期待する。
有意の単語が5つ以上出ているか?
俺のことを“そー”と呼ぶようになった。
“まんま”“んまんま”“っこ”“わんわん”“ねえね”など。
言葉は順調。
自立歩行はできているか?
歩行だけでなく、すでに俺によじ登ってくる。
握力があるのか?
運動神経もいいのだろう。
小さな手で服を掴んで、抱っこをせがむ“っこ”と言いながら、登る。
その様子があまりにも可愛くて。
世話を分担してくれている看護師や保育士と一緒に見ては楽しんでいる。
途中で抱き上げると、喜んできゃーっと体が跳ねるように踊る。