「大野くん、昨夜のセ ッ ク ス のこと思い出してみようか?」

ファインダーを覗いたカメラマンさんの第一声がそれだった。
なんで?わかる?昨日・・シ タ ってこと。
僕の混乱をよそに、次から次へと思い出すためのきっかけを・・・


「どんな風にパートナーに触 れ た?どんな声 上 げ て た?」

い や ら し い 感じはなく。
ただ撮影のコンセプトにそった写真を撮るべく。
僕のことを煽る言葉。


昨日は・・・昨日も・・・翔くんの手は僕に優しく触 れ て。
物 足 り な さ を感じるくらい優しくて。
だから僕は・・・・

なんて、思い出してた。


「そう・・いい顔・・・もっと、もっと・・・思い出して!」

スタジオに流されている音楽とカメラマンさんの煽り文句で。
僕は昨夜にトリップした。


カシャカシャと鳴る音とともに、僕のその瞬間は切り取られていく。
他にもたくさん人がいるはずなのに、その存在は薄くなり・・・
そこには僕とカメラマンさんの二人・・・いや・・違う。
僕と翔くんの二人きりの時間に感じてて・・・






「ありがとうございます。いい写真が撮れたと思います」

その言葉で僕は昨夜から“今”に引き戻された。
自分がどんな風に写真を撮られていたのか?
記憶には残ってなかった。
それほどまでに僕は翔くんとの時間に浸っていた。





帰り支度をしている僕のところにカメラマンさんが来た。
マネージャーも出版社の人も席を外していて、二人きり。
撮影の時に言われたことで・・なんとなく・・・気まずさを感じて・・
何を言っていいかわからない。


「今日は・・ありがとうございました」

なんとか言葉を絞り出した。


「こちらこそ、いい仕事させていただき、ありがとうございました。
大野くんはとても撮りやすい被写体でした。
そこで・・お願いがあるんですけど・・・」

そこで、一旦言葉を切った。
お願い・・ってなんだろう?
僕は相手の言葉を待った。



「私のライフワークに協力してくれませんか?
ちゃんとした仕事ではありません。
ボランティアのようなものになります。
自分のためだけの写真で、どこに出すこともありません。
私の被写体になって欲しいんです」


そして、カメラマンさんは彼のライフワークについて話し始めた。




ライフワークだという作品を集めた自作のアルバムを見せてもらった。
男の・・ソコばっかりのアルバム。
そんなこだわりを持ってる、その作品を面白いと思った。
自分もその中に入ってみようかな、とも・・・・ちょっと思った。


「大野くんのパートナーは男性でしょう?抱かれる側・・ですよね?」

ぎょっとした僕に彼は微笑んだ。

「レンズを通すと、人が隠してることも見えるんですよ。
それでですね・・・」