“今から行くから!” と、送ったメッセージ。
これもブロックされて、読まれないのかも・・・?
目の前が真っ暗に・・・なるかと思った時。
ピロンと着信音。智くんから!!
震える手でスマホを操作した。


“気持ちを整理する時間をください。しばらくほっといてください”

よそよそしいことば使いが、広がった距離を感じさせた。



それでも、俺は智くんに家に向かった。
気づかれたら、追い出されるかも。
そう思った俺は、鍵をなるべく静かに開けた。

部屋の中は明るくて、智くんがもう帰ってきてることは、明白。
靴を脱ごうとして気がついた。
見知らぬ靴が・・ある。
しかも、智くんのサイズよりもかなり大きめ。
俺のサイズですらない。


そっと、入り込んだら、会話する声が聞こえた。

「うーん・・やっぱり、美味しい。
どうやって作ったらこんなに美味しく作れるの?」

「んなこと、言うたかて・・こないだ教えたので終わりです。
これも同じように作ってるだけですって」

「僕も作ってみたけど・・同じように美味しくはならないんだってば」

「んーもしかして、大ちゃん。これ一人で作って、味見って、食べてません?」

「そうだよ。作っても食べてくれる人・・いないもん。
一人で作って・・・独りで・・・食べてる」

「だからですって!人と食べる食事は美味しく感じるんですって!
俺でいいなら、いつでも付き合います!
連絡ください!」

「ん・・・そう・・しよっかな。
ありがと・・・また・・・頼むね。のんちゃん」



智くんが・・・部屋に男連れ込んで。
手料理・・作ってもらってる。

目の前が・・真っ暗になって・・膝から崩れ落ちた。
あ〜連絡が取れないから・・って、逃げてる間に・・・

逃げられた。
いや・・・・この場合・・かっ攫われた・・・かも。


この後輩・・智くんにかなり懐いてて。
懐いてるならともかく・・・狙ってた節がある。