ここらへんで押さえて。
指先が危ないから、ネコの手みたいに丸めて。
そう、うまいよ。

こうやって、包丁を手前に引くようにするの。
あんまり押し付けなくて大丈夫。
キレがいい包丁だから。
そうそう。
スーッと切れるでしょ?







智くんが、蛸と山葵と包丁とまな板と・・・何か、を持ってきて、うちにやってきた。
新聞紙を広げると、日本刀のような輝きの包丁。


「智くん!刺し身、作ってくれるの?!」
「刺し身にするのは、翔くん。切るだけだから」


言われて・・硬直。
この包丁で・・俺が蛸を・・?
ハワイでの記憶が蘇った。
謎の缶詰の物体をぶった切るようにして・・グチャグチャに・・・

蛸をあんな姿にするわけには!


「無理・・・いやいやいや無理無理無理!!!
包丁持ったの、2年以上前だし!」

「大丈夫!僕がちゃんと教えてあげるから」


で・・冒頭のご指導になるわけだ・・が!
智くんのご指導は・・・いい!
最高!
これなら・・何回でもご指導いただきたい!



包丁を持った、俺の手にかぶせるように、智くんの手が一緒に包丁を握る。
つい、緊張で力が入りすぎる俺の手を引き止めるように・・
智くんの手にも力が入る。
あ・・智くんの手に・・・握られてる・・

蛸を押さえる手にも、ご指導。
俺の手を刃から守るように、智くんの手が!!


何よりもいいのが・・
それをするために、俺の背中に智くんが密着してるってこと!
左手は脇の下から伸び。
右手は腕の外から。

右の肩口には智くんの顔!


あ〜いい匂いがする・・・
智くん・・なんか 股 間 を俺に押し付けてない?


「翔くん!ぼーっとしてたら危ない!
怖がらないの!腰が引けてるよ!」



引けた腰を前に押し出そうとしてるだけでした・・