「これはね・・・
ZEROのキャスターさせてもらうことが決まった時、もらった。

俺の祖父が新聞記者やってたんだけど・・
智くんは知らないよね?」


知ってるよ。
戦争の取材で南の島に行った時の放送で・・
そんなこともチラっと出てたよね?
翔くんは、伝える人の血筋なんだな・・って感じた。


「その祖父が新聞記者時代に、記事を書くのに使ってた万年筆。
新聞って締め切りがタイトじゃない?
だから、書きなぐるように使うから、何度もペン先を交換して。
それでも、これ以外のペンは使おうとはしなかった・・っていう。
新聞記者の祖父を支えてきたもの。

キャスターとして、ジャーナリストの端くれとして・・・
活動するときに、お守り・・みたいに・・なるかな?
って・・もらってきた。

取材しに行くときも。
放送の時も。

いつも、持ち歩いてる。
これが智くんの希望するものに一番近いかな?

インクがないし・・メンテナンスもしてないから・・
今は使えないけど。

それなりにいいものだから・・・
どっかに依頼すれば、使えるようになると思うよ」


手の中に大事そうに握って。
蓋をキュルっと音をさせて開ける。


「ほら?ペン先・・潰れちゃってるでしょ?」