黙りこむしかできない。

もう、カズに何を言っても、聞き入れてはもらえない。
カズがオイラのところに来てから、そんなに長くはないけど。
オイラ、カズのことをそれなりに見ていたつもり。
簡単に自分の言ったことを覆さないことも分かってる。
浅い考えで動いたりしないことも。

でも、それ以上に自分のことより人のことを大切にするってことも。
分かってる。

カズはオイラのことを大事にしようと考えてて・・・
自分のことを大切にしようとは、これっぽっちも思ってない。

それが、オイラにとって、どんなに哀しいことか。
どんなに言葉を尽くしても・・・

分かってはもらえない。



「分かった」

「じゃあ、早く、帰って・・・」

「カズが考えてることは、分かった。
次はオイラが考えてることを、カズに分かってもらう」

カズみたいに、口にしては伝わらないから。


カズに近寄った。
警戒されないように、ちょっとだけ、間を空けて。
でも、手の届くところに座る。


「あのさ・・・オイラ・・・」

話し始める振りをして。
カズの隙を突いて、引き寄せて、膝の上に抱き上げる。
子供を抱っこするように。
お互いの心臓が重なるようにして。


ホントは意識だけ、なんだから。
カズがこんなに閉ざしてるんじゃなければ・・
すぐに交流できるのに。