智くんが、俺の名前を呼ぶ。




「しょう・・くん」
「智くん・・好きだよ」

回した腕に力を入れた。


「しょう・・・くん」
「智くん・・もう、離れようとしないで」

智くんの腕にも、力が入った。


「しょう・・・くん」
「智くん・・もう、哀しませないから」

後頭部に手をかけて、引き寄せる。


「しょう・・・く・・ん・・・」
「智くん・・愛してる」

額同士を触れ合わせて。
吐息が口唇の上を掠めていく。


「しょ・・・く・・ん」
「うん・・・・・」

近すぎて。
瞳に写っているのは・・・きっと、お互いの瞳だけ。

まっすぐに、智くんだけ。
目のすぐ前にある、智くんの瞳だけ・・見つめて。
智くんの瞳の中には、俺・・映してもらえてる?

その中にあるのは、俺の瞳の虚像なんだろうか?
智くんの瞳の実像なんだろうか?