腕の中に、智くんがいない。
まだ、夜中なのに。
トイレ?
でも、なかなか戻ってこなくて。
リビングにもいない。


智くんは、バスルームにいた。
汗でも・・かいた?
外から声をかけた。
返事がなくて・・

聴こえなかったのかな?
ドアを強めにノックした。
それでも、反応がなくて・・
心配になって、ドアを開けた。

智くんは、体を洗っていた。

「智くん?」
声をかけても、俺の声が聞こえてないようで・・

繰り返し、繰り返し、体を洗っている。





智くんの返事で・・

俺は・・・・智くんの傷を甘く見積もっていたことを・・
思い知らされた。

深く、大きく傷つけられた智くんの傷に気づけなかった。
ただ、側にいて、抱きしめただけで、癒せると、考えたのは・・
間違いだった。

それで・・また、智くんに大きな傷を付けることになったなんて・・・
自分の浅はかさを・・愚かさを・・
悔やんだ。