ちょっとの間・・・意識が落ちてたみたいだった。
気が付くと、翔くんの胸の中に抱え込まれてて・・・
翔くんの手が頭を撫でてくれていた。


「しょう・・くん・・」
「さとし・・くん。大丈夫・・?」

体をちょっとだけ、動かしてみた。
腰のあたりが、重いけど・・なんとかなりそう。




「大丈夫。・・何が・・あったの?」
「要約すると・・取り憑かれてた・・ってことだろうね。しばらく前から・・時々、意識が途切れてる時間があって。乗っ取られてた・・・んだろうね」


翔くんと僕の感じてたことを、合わせると。


ピアノを聴かせる約束をしていたのに、それが叶わなかった。
自分の想いを伝えたくても、それもままならなくて。
想いを伝え合う前に、離れ離れになってしまって・・
そんな、二人の想いがピアノに残っていて・・・
そこに、同じ曲を、同じ想いで、弾く翔くんが現れたから、同調してしまった。
僕まで、現れてしまったから、二人は一気に・・・




「最後にね・・ありがとう・・って、言ってた。
ちゃんと・・・あの世に行けたかな?」

「二人一緒だから・・行けたと思うよ。もう・・・未練はないだろうから」




生きているうちに、想いが伝えられて、想いが通じて、想いを交わせる。
それが、どんなに、しあわせなことなのか。


しあわせで、しあわせで、しあわせで。
涙が出てきた。
これは、僕が流した、しあわせの涙。



「翔くん・・」
しあわせで・・翔くんにも伝えたくて・・・


しあわせだよ・・・って、思いながら・・
キスした。





END