月が上がっていた。
青白く光る月は、キレイだけど、冷たくて。
今の・・翔くんのようで・・



着いたのは、名前も知らないような場所の・・・
音楽ホール?




翔くんがそこへ入って、しばらくすると、ピアノの音が聴こえてきた。



弾いていたのは・・僕に聴かせてくれた・・
ベートーヴェンの曲。

翔くん、この頃、この曲しか・・弾いてない。








小さなホールだった。
キャパが100席くらい・・かな?
ステージだって、段差が30センチくらい。
小さな・・小さな・・ホール。

でも、翔くんが弾いてるピアノは、古そうな感じがした。
木目調のピアノ。
音がすごく、キレイで・・優しい。



邪魔はしたくなかったけど
「翔くん」


やっぱり、反応がない。
顔を見ると、こないだの夜中の時のような・・・

翔くんが翔くんじゃなくなっているような・・・