思い出す。
チェックのマフラー。
初めての恋。


ペアのが欲しくて、一緒に買物に行ったなぁ。
色違いのチェックのマフラー選んだんだよなぁ。
キミが黄緑で、オイラが水色。
すぐに使おうって、タグを取ってもらったけど。
恥ずかしくて、照れくさかったなぁ。

お互いに目をかわすだけで、手も繋げなかった。
ふとした拍子に指先が触れただけで、ドキッとして・・
会話が途切れたりしてね・・

せめて、雪が降ってたらなぁ・・
キミに触れたくて。
マフラーに半分埋まってるキミの口唇にそっと触れたっけ・・・





暇な時にぼーっとムカシのこと思い出してた。
ペアで買ったマフラー、こないだ、クローゼットの奥から、見つけたんだ。
あの子とは自然消滅・・しちゃったけど。
しあわせ、いっぱいもらったから、オイラの中では、いい思い出になってる。

だから、こないだから、そのマフラー使ってるんだ。


「おはよー」
ニノが来た。
何気なく、視線をやると・・・
ニノのマフラー・・・
ベージュと辛子色?のチェックだ。

じっと見ていたら、ニノに気付かれた。
ニヤっと笑って
「気づきました?大野さんのマフラーこれと色違いでしょう?」
「20年前くらいに、このブランド、流行りましたよね。大野さんも流行りに乗ってたんですね」

「ペア・・だな」
オイラ、呟いた。
ムカシはあの子と。
今はニノと。

大好きな相手とのペア。
やっぱり、しあわせ・・だな。

心のなかで、こっそり、しあわせに浸っていたつもりだったのに・・
ニノには、すぐ、バレる。

「なに、ニヤけてるんですか?ワタシとのペア・・そんなに欲しかったんですか?」
「まあ、偶然ですけど、これで、新しいもの買わずにすみますね」
意地悪そうな顔して、そんなこと言うんだ・・・

「そりゃないだろ~新しいペアのは捨てちゃったTシャツの代わりだろ・・・」
「そんなに買うのイヤなら・・もういいよ・・」
・・・そんなに、ペアルック買うのが、イヤかよ・・・

オイラ、寝っ転がって。
ニノに背中向けて、ふて寝した。

「なに、拗ねてるんですか?もう・・・」
ニノの声が笑っている。
「でも、15年以上前から、示し合わせてないのに、お揃い持ってたんですよ。アナタとワタシの関係はね・・・運命ってことですよ」

・・・オイラ、背中越しに聞いてて・・
きっと、耳まで真っ赤になったと思う。
ニノって・・時々、すごく・・キザなこと・・言うんだ。

恥ずかしくって、振り返れないままでいたら・・
頬にキスが落ちてきた。
思わず、振り返ったら。

今度は口唇に・・
「チェックのマフラーだったら・・隠れてキス・・しないとね」



(O)