とある事情で一時的に暇なので最近読んで面白かった本を紹介します。

今回紹介するのは、厳選して小説から1冊だけということにしました。

 

面白かった小説「カンディード」

今回みなさんにご紹介するのは、小説「カンディード」です。

 

小説といっても最近出てきたようなベストセラー本とかライトノベルではなく、18世紀にヨーロッパで書かれたガチガチの古典です。

 

作者はヴォルテール。18世紀にフランスで活躍した哲学者です。

哲学をかじったことがある人ならかろうじて聞いたことがあるかもしれません。

 

 

とまあ、ヴォルテールの話は置いといて、、、

 

この小説をざっとまとめると

 

主人公の青年カンディードが、ただ不幸に不幸を重ねるだけの物語

 

となります。

 

不幸の内容をちょっと紹介すると

  • 愛する姫が隣国の野蛮な軍隊により凌辱セックスされたのち殺される
  • 姫の父親が隣国の野蛮な軍隊によって頭をカチ割られて死ぬのを目撃
  • 師パングロス先生が絞首刑に課されるのを目撃
  • 旅の途中でゲットした棚ぼたの財宝を小さな港町の狡賢い漁師に掠め取られる

 

そうやって、これでもかってくらいの不幸を経験しながらカンディードはヨーロッパじゅうをあてもなく彷徨いつづけます。

 

とまあカンディードのあらすじはこんなところですね。

 

 

一見するとただ趣味の悪い小説にしか見えませんが、物語はここでおわりません。

 

ちゃんと続きがあるので安心してください。

 

 

先ほど姫が殺されたり、先生が絞首刑に課せられたりしたと話しましたが、カンディードはヨーロッパの旅を続ける中で、彼らと再会を果たします。

 

「あれ、死んだんじゃなかったの?」と感じる方もいるかもしれませんが、殺されたというのはカンディードの勘違いに過ぎなかったというものです。

 

実際には姫は殺されていないし、絞首刑も吊るす紐が緩くパングロス先生も九死に一生を得たようで。

 

まあそんなこんなで結局彼らは再会を果たします。

 

再会を果たした後話を聞いてみると、姫も先生もカンディードに匹敵するくらいの不幸を味わってきたことが分かりました。

 

なるほど不幸のどん底にいたのは自分だけじゃなかったんだなぁ、とカンディードは気づくわけです。

 

とまあ結局のところ、これが小説「カンディード」のあらすじ。

 

 

 

でもぶっちゃけこのままだとこの小説、いわゆる普通の小説となんら変わりません。

 

実はカンディードの神髄は小説としてのおもしろさ、というより哲学的なところにあるのです。

 

「カンディード」の主張は主にオプティミズム、つまり「楽観主義」に対する批判です。

 

「楽観主義」とは一言で言えば

どんなに不幸に思えることでも、すべては神がそれが最善だと思ってやってくれたこと。つまりすべての物事は人間がどう思うかどうかに限らず最善なのだ。

 

とする立場。


具体的に言えば

・不慮の事故にあって全身麻痺になっても、それは神が最善だと思ってやってくれたことだと考える。

・隣家の火事が飛び火して自分の家が全焼したとしても、それは神が最善だと思ってやってくれたことだと考える。

 

「カンディード」はこの楽観主義をとことん皮肉った小説なのです。

 

小説を一通り読めば、最後を飾る

「とにかく、僕たち、自分の畑を耕さなくちゃ」

といった何気ない一文にすげー意味が込められていることが分かることでしょう。

 

こんな名作が今から250年くらい前に書かれていたということですから驚きです。

 

というわけで1月に読んで面白かった本「カンディード」の感想文は以上!

ばいばい

 

 

ヴォルテールに関する豆知識

ちなみにヴォルテールは実はペンネームにすぎず、別にフランソワ=マリー・アルエという本名を別に持っています。

 

ペンネームを使っているのは、個人を特定され、迫害を受けるのを恐れたためです。というのもヴォルテールが活躍した18世紀は、カトリックによって出版物が厳しく統制されていた時代でした。

 

そんな時代においてカンディードの論調はかなり物議を醸していたようです。