101 青年 ≪ 凛太朗  ≫

 長文です。 何回かに分け お読み頂ければ

  幸いです。

 

 ご訪問戴いた 足跡 あしあと足が あれば

  その都度訪問し ブログを拝見させて

  戴きます。

1. 凛太朗

 

『 あーぁッ 』

 

      『 あーぁッ 』

 

          『 あーぁッ 』

 

Dotpedが 立ち上がろうとする 

左手に力が入らず 身体が左に傾く。

 

『 あーぁ・あーぁゥ 』声にならない。

ここは 激しく波立つ 咸臨丸船上か ?

 

 

 咸臨丸 勝海舟 福沢諭吉 ジョン万次郎らを乗せ 

太平洋を横断した江戸幕府海軍の軍艦

 

脚を もつれさせながら立ち上がるが 左手の

感覚が おかしい。横になり 少し安静を保つ。

 

Dotpedは その時 * 凛太朗 ( 勝海舟 )が

脳溢血で意識不明 息を引き取った事を 

思い出す。

 

* 凛太朗 ( 安房守・安芳とも呼ばれていた )

 

勝海舟の 最後の言葉は『 コレデオシマイ

命日は1月21日。Dotpedの誕生日ある。

 

Dotpedは 『 俺も コレデオシマイ か?

 

 

Dotpedが 凛太朗に 出会ったのは 確か

咸臨丸の船上だったはずだ。 

頭の中が 騒動を起こし 混乱している

 

 

吾輩 (紫蘇焼酎)は Dotpedが 何を言い

出すのか 冗談だろうと 苦笑していた。

 

以前 吾輩は 彼に『 最近 ブログを書いて

いないが それでは語彙力が 衰えてしまう

のではないか 』と 言うと

 

      彼は応えて

     

『 な~に ブログは書いていないが 小説を

    眼で読まないが 心で聴いているのだ。』

 

と言っていた事を 覚えている。

 

吾輩 (紫蘇焼酎)は 『 それでは 彼が語る 

 美意延年」は何処へ行ったのだ! 』

問う。

 

Dotpedは応え。『 美意・・は 美意延年は

俺の心の中だ。』

 

何を言っているのだろう。これは いつものDotpedではない? 稀有に思う。

 

 

これは語彙力の衰え問題ではないどころか

美意延年の問題でもない。

 

やはり おかしい。 急ぎ 救急車を呼ぶ。

2023年2月11日夜半の事である。

 

フェリーでもタンカーでもなく 担架に

乗せられ 救命救急センターへ。

 

2022年1月 前立腺癌を支援ロボット ダ・

ヴィンチ手術で全摘出した病院の隣だ

 

     

 

12日午前4時前に到着 脳神経外科の若い

女医が診察・MRIを撮り 担架に乗せられ 

診察室に戻る。

 

女医は付添人に画像を見せながら

 

『 脳梗塞ですね。白い部分は 壊死して

    いるので もう元には戻りません。』

 

『 頭はしっかりしているので 言語障害は 

    ないですね。』

 

Dotpedは 救命救急センター内に移され

末梢留置カテーテル(点滴)が始まる。

 

 

2.救命救急センター

 

救命救急センター内は 野戦病院のようだ。

 

骨折した人 包帯を巻いた人 担架に乗せられ

次から次へと 搬送されてくる。 

 

センター内は 約35人が ベットに横たわり

慌ただしく 騒然 呻き声も聞こえ 夥しく

 

往来し 走り回る看護師の 機敏な動きは

更に緊張感を与える。

 

Dotpedの両腕の静脈に 末梢留置カテーテルが 何本も刺さり ットに横たわったままだ。

 

トイレに行く時は 車椅子に座り 看護師が

連れて行く。 

 

 

それから 少し安定した3日後に 救命救急

センター内の 小部屋に移される。

 

病棟の病室に空室がなく 移されたのは 搬送

1週間後だ。

 

 

『 このまま 寝たきり? 車椅子? 

  退院後は 介護施設?』

 

『 道を 歩けるようになるのか? 

    泡沫夢幻 これが 生きる道なのか?』

 

気も心も重くなる。でも心に満ち事は沢山

ある。

 

あの青年 あの老人 いや ≪ 魯迅 ≫ の言葉も 

そうだ。

 

一週間で 末梢留置カテーテルは 全て外され 

両腕が楽になった。

 

 

3.魯迅の言葉

中国と日本の近現代・文学交流の象徴と言える文学者は 魯迅と夏目漱石だ。
 

魯迅の言葉に『 歩く人が多くなれば それが

道となるのだ。 』とある。

 

 

Dotpedは 他の患者が 誰も歩いていない

病棟廊下を 一回に5往復歩く。往復150㍍

以上を4・5回  一日約4㌔歩く

 

だが 他に歩く人が いなかった為か 廊下は 

決して道になる事はなかった。

 

 

吾輩は Dotpedが 悄然としている思って

いたが そうではなかった。

 

病棟を そっと覗くと 何と 彼は 若い女性

看護師達と談笑したり 元気で笑っている

ではないか。

 

ナース・ステーション横で データを打ち込んでいる 航空会社のキャビンアテンダントの

ような女性看護師。 

 

脚が長くスタイルのいい素敵な彼女は 

Dotpedの病室担当ではなく まだ話を

した事がない。

 

Dotpedは 勝手に 彼女に 話しかけている。

 

『 セイチョウイザイを飲んでいるのですが

    人間的に成長する薬は ないですか?』

 

『 セイチョウ?   あぁ整腸剤の事ね アハハハ 

    あれば 私も欲しいです。』

 

矢鱈とモチベーションが高い

 

 

 

4. 尊厳

 

彼の高いモチベーションは Dotpedが

若い頃 白馬八方尾根スキー場・黒菱の

ゲレンデ(37度傾斜)を滑降したり

 

蔵王の春スキーで 長いアイスバーンを

一度も転倒せず滑降していた あの頃の

ようだ。

 

      

 

理学療法士達が 脚や手の基本動作能力回復や維持に心から親切に対応し  廊下を歩く度に

『 頑張ってくださいね! 』

 

男性看護達も 病棟の色々な人も 励ましの声

をかける。

 

 

退院する前日 芽を吹くサクラ🌸の木の下で

凛太朗と会っていたら 明日 退院と お告げ

届く。

 

凛太朗とは リハビリより寧ろ 現在の政治

経済の話をし 人の生き方についても話す。

 

勝海舟の心磨く名言に『 生業に貴賤はない

けれど 生き方に貴賤があるねえ。』そして

名言 美意延年 を 好んでいたと 伝える。

 

彼は 急に時空を超えた 目つきで 真剣に耳を

傾けた。

 

 

双子のような女性看護達の一人が 廊下で

データを打ち込んでいる。

 

明日 退院する事になったと 伝えると 

『 〇子ちゃん 今日は非番 彼女 聞いたら

泣いてしまうよ。 私も泣いちゃう。』と

涙ぐむ。

 

 

病室やトイレ清掃の 女性達は

おめでとうございます!

あんなに頑張っていらしたものね。

 

 

3月 窓から見える 桜の木々は芽を吹く

 

そん綺麗なサクラ🌸が咲いたような 素敵な

女性看護師にDotpedが勝手にづけた名は

サクラちゃん。

 

サクラちゃんは 廊下で 交差する度に 笑顔で

ジャンケンをするのだ。

 

彼女は 美しく優しいだけではない 誠

しているのだ。

 

近くの病室で 寝たきり患者が 大声で唸ったり わけの分からない言葉を 発していた。

 

同室の四六時中 独り言ばかりを言う患者が 

彼に対し 決して口にしていけない言葉を

吐き出した

 

サクラちゃんは として ピシャリ

 

『 そんな事を 言うものではありません!

    人には 尊厳と言うものがあるんですよ!』

 

 

 

5. モチベーション

 

脳神経外科の女医は 『 再検査のMRIでは

何もなく 普段通りの生活に戻って大丈夫。

 

後は 掛かりつけ医に通って下さい。』

 

『 次の再検査日は? 』と聞く

 

『 もうありません。MRIで ないものは

    ないですから!』

 

これで普段通りの生活に戻れるのだと

安堵し 期待していた。

 

春 日本最大級の複合施設タワーマンションの 内覧会に参加したい願いは叶った。 

* 現在は不動産会社に 賃貸管理を任せている。

 

 

それから2年半 リハビリを続け食欲は十分

よく食べているのだが 体力・筋力は まだ

回復しない。

 

特に左手の感覚が薄く ジワーっとし なかなか筋力が つかないのだ。

 

脳梗塞の後遺症が こんなに長期間になるとは

まだ数年 いや一生続くかも知れない。

 

 

退院後 近くの整形外科に通う。医師は

『 骨密度は 20歳の若者よりあるし 

モチベーションは高いですね。』

 

リハビリ理学療法士に『 かなり厳しい

リハビリでも大丈夫・・・ 』と伝える。

Dotpedは 結構シゴカレていた。

 

   

 

Dotpedが 退院一年後の或る日 兄から時空を

超えた 不思議なメールが届く。

 

美意延年  同日には 昔 兄達とフェリー船

車で国内旅行をした写真 更に 兄から貰った

スケッチ等を 懐かしく見ていた。

 

届いたメールには 同じく 懐かしい京都・石庭 

奥入瀬清流等 造形美 自然美綴った内容だ。

 

 

今は 運動機能の 新しい神経回路が出来る事を

祈りながら  凛太朗に約束したブログを書いて

いる。