今日は２週間ぶりのハイキング。尾籠（びろう）な話だが、切れ痔に苦しみ、且つ腰が痛くてハイキングどころではなかった。やっと回復してきて今日はリハビリ低山ハイキング。法隆寺駅から矢田丘陵を縦走。

法隆寺駅から歩いたので法隆寺近くは当然歩いているが、今日は法隆寺は予定に入っていなかったので法隆寺の築地塀を抜けハイキングコースに入る。

法隆寺の築地塀はなかなかいいものだ。

法隆寺の側を通り、矢田丘陵の山道に入る手前に斑鳩（いかるが）神社というのがあった。なかなか立派な神社だ。

神社へ行くと千木を見るのが癖になっている。そしていつも思う。奈良はアマテラスの影が薄いと。奈良の都は天皇家の皇祖神であるはずのアマテラスの影が薄いのである。この神社の千木も伊勢神宮の内削ぎではなく外削ぎである。

神社の摂社も見てみたが、恵比須（イザナミが生んだ蛭子の生まれ変わりと言われる）と伊香流我志古男命（いかるがしこおのみこと）という大国主の別名の葦原醜男神（あしはらのしこおのかみ）を思わせる「しこお」という名前が付いている。

斑鳩神社を後にして、松尾寺へ向かう。松尾寺は松尾山にあり、その頂上までの標高を表す道しるべ。かなり新しい。「八丁」は「八号目」ということなのだろうが、高い山と違って１丁の距離が非常に短い。

低山ハイキングに良いコース。山ハイキングの「初心者コース」に分類されている。確かに歩き易い。

知らなかったがこの松尾寺、『日本書紀』編集の総責任者である舎人（とねり）親王ゆかりのお寺。

松尾寺の石階段はなかなかのもの。

日本のお寺は水子供養をするところが多い。このお寺は水子観音があった。

水子観音ばかりでなく水子供養のお地蔵さんが数多く並んでいる。お地蔵さんの赤い前掛けを見る度に思う。英語で言ったら aborted babies「中絶した赤ちゃん」くらいにしかならないのであろう。それを「水子」と日本人は言う。「水子」を供養するのはこの世に生を得られなかった「水子」のことばかりではない。生めなかった母親の悲しみの癒やしを担っているのも水子観音であり、数多くのお地蔵さんなのである。今でもこの風習が残っているのを見ると、日本にはアメリカのように生むのも「権利」、中絶も「権利」だという発想、逆にキリスト教の神の教えに逆らって中絶など許せないという pro-life「生命派＝中絶反対派」の思想も生まれてこない。この世に生を受けられなかった「水子」への悲哀の気持ち、母親の悲しみへの共感の情、日本人にはそれがとても大切なのである。

松尾寺も神仏習合の典型的なお寺。このお寺では寺より標高の高いところに松尾山神社がある。松尾山神社が松尾寺をお守りするという形になっている。たまたまこの神社の受付けの人に話を聞いていたら、松尾寺は法隆寺の奥の院であったとのこと。法隆寺の奥の院ではあるが、この一帯は興福寺の管轄でいわゆる「税金」は幸福寺が持って行ったとのこと。要するに興福寺の荘園のようなものであったのであろう。戦国時代となると戦国武将の筒井順慶の支配下にあったようだ。

松尾寺を後にして、やはり山の上にある矢田寺に向かう。ハイキング道は紅葉も綺麗で、天気も良く気持ちの良い日である。ハイキング途中にある国見台から見た奈良の風景。霞んでいて今一つである。

矢田丘陵の道はとても分り易い道であった。ところがどういう訳か私は道を間違える。どこで間違えたのか分らないが、途中で道がなくなった。周囲を見渡しても人が歩いたような跡がない。google map は山道は出てこないが、距離だけは表示がある。で、見たら目的地の矢田寺まで300メートルくらいになっていた。方角だけ確かめて、小枝を払い、また草や小枝につかまりながら登る。それにしても、どうして私はこんな初心者向けのハイキングコースで道を間違えるのか。自分ながら不思議に思う。我が人生と同じか。人がそんなところでと思うところで道に迷い、あちらに行き、こちらに行き余分な苦労をする。そんなことを山の斜面を登り下りして、幸いハイキング道に出た後で思っていた。