さて、この章は「生活課題を軸にした考え方ができる」というテーマを、臨床推論の流れに沿って解説しました。

章の冒頭(1)でも述べた通り、「まずは本人らの思いは無視して『専門職としてどう考えるのか?』が表出できることが目標」でした。

しかし、個人的には「本人の思いを大切にすること」は生活期リハで一番大切な要素だと考えていますし、実務において本人の思いを除外して考察することはありえないと思います。

 

ではなぜ第1章をあえて「リハ職の考え方」に限定して解説したかというと、リハ職自身が考えをまとめられていないことと対象者の意向を尊重していることの区別がつけられていない場合が少なくないからです。

NeedとDemandを区別して考えられていないとも言えますかね。

 

上述した通り、実務においてこの章の流れに忠実に本人の思いを除外することはないでしょうが、学習者が生活課題を軸にした考え方(第1章の内容)を身につけられていない場合、対象者の思いを汲めていないという課題(第2章の内容)は強調せずに指導した方が学習者も自身の課題を認識しやすいと思います。

 

※KSAフレームの態度領域の問題(対象者のことを思いやらず独善的な考えをする)の場合はこの限りではありません!

 

本人の思いを除外したにもかかわらず、第1章で扱った内容はそれなりに多かったと思います。

・臨床推論の進め方

・生活課題を軸にした見方、考え方

・目標設定の5原則

 

まずはこれらの考え方が無意識にできるようになることが重要です。

そしてここから、本人の思いも含めた生活期リハの複雑・不確実な世界へ向かっていきます!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

※当ブログの記事は随時更新される可能性があります。ご了承ください。

(最終更新2020,02,01)

(6)治療、介入

 

5原則に沿った具体的な目標を設定したら、いよいよ肝心のプログラム立案です。

そして、くどいようですが…この項も生活課題を軸に考察していきます!

しかし、(4)問題概念の展開のところで問題点は掘り下げて考えていますから、あとは目標を達成するのに必要な要素を当てはめれば良いのでは?

 

再び「キッチンに立って簡単な調理をすることは可能だが、大きめの鍋を持ち運ぶことができないので料理の種類が限られる」を例に考え方を見ていきましょう!

-----------------------------------
生活行為 「調理の際の調理器具の持ち運び」
 ↓
何が原因か? 「身体=右片麻痺」
 ↓
さらに掘り下げ(身体→動作、など)
「右上肢麻痺のため右手は物をつかめるが1kg以上の物を持ち上げることができない」

-----------------------------------

 

これをそのままプログラムに当てはめたら 『両手を使って1kgの物を持ち上げる練習』 になりますよね。

カッコ良くはないですが、個人的にはまずこれで十分だと思います。やってみて改良を加えればいいですからね。

 

 

ちなみに、【欲を言えばもうひとつ掘り下げ(動作→筋活動など)】のところまで考えてみた場合は
「前鋸筋の筋緊張低下により肩甲骨が安定しない、棘上筋や三角筋の筋出力低下により上肢挙上困難」…とかですかね?

これはもう迷子になりそうですね!

紙に書きながらでも進めないと、多くの若いリハ職はこの時点で「生活課題は調理」を見失っているでしょう。

 

いきなり遠出するのは良くありません。

自分の論理的思考力をわきまえて、原点(生活課題)に戻ってこれる位置まで掘り下げるようにしましょう!

 

おそらく最初の「両手を使って1kgの物を持ち上げる練習」案を『カッコ悪い』と思う人は多いでしょう。

学校の先生には『そんなんじゃリハ職にあらず』と怒られてしまうかもしれません…!

それでもこのカッコ悪いプログラムは、「生活課題と無関係な、脳卒中片麻痺っぽいプログラム」をカッコつけて当てはめるよりもよっぽどマシだと思っています。

そのそれっぽいプログラムは機能が回復する時期だから有効なんです。

我々が対象とするのは主に機能が回復しない時期の方たちですから、機能回復ありきのプログラムを当てはめたところで問題が解決される可能性は少ないのです。(予後の見極めについては第3章で触れます)

 

 

そして、ここでは技術的なことは言及しません。各々のノウハウ本に委ねます。

しかし、大切なのは「生活課題をキチンと押さえていること」です。

これができていれば、数年は特殊な技能を持っていなくても対象者のニーズには応えられると思っています。

 

スポーツで「育成世代では駆け引きや戦術ではなく、基礎的な体力、技術を身につけさせる」みたいな感じですかね?

本質を押さえる前にうわべだけのテクニックに走っても大抵良いことはありません。

生活期リハでまず大切なことは「生活課題を軸に考察を進めること」です。

これだけでもきっと多くのことが解決できます。そして、何年かしてどうしてもそれだけでは解決できない問題があった場合に初めて、巷で持て囃されている技術に手を出してください。

きっとその対象者のニーズに合致したその「技術」は、正しい「使い手」によって大きな効果を発揮してくれることでしょう!

 

(7)再評価

着眼した生活課題に沿った再評価を行ってください。

第1章はこれだけに留めます。

 

◆今回の格言◆

生活課題を押さえたプログラムだけでも多くのことが解決できるはず!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

※当ブログの記事は随時更新される可能性があります。ご了承ください。

(最終更新2020,01,19)

(5)意思決定、診断、管理

 

さて、この項も(これ以降も)生活課題を軸に考察していくのは変わりません!

前回の(4)問題概念の展開で、具体的な問題が何なのかにたどり着きました。

…厳密に言えば、「意思決定」はこの項なので、問題点はこれだ!と今、意思決定しました(笑)。

そして、「目標設定」「プログラム立案」をひとまとめに決定していきます。

 

この章では、目標設定の5原則(SMART)について説明します。(英語は苦手なのでそれぞれ何の頭文字なのかは自分で調べてください笑)

-----------------------------------

・具体的であること

・あとから測定可能であること
・達成可能であること
・重要であること

・期限が決められていること

-----------------------------------

 

これ、すごく大切だと思うんですよね。でも実践できる人ってあまり多くないんです。

リハ職の養成学校に限らず、中高生のうちから長期休暇の目標、学級目標、部活動の目標を立てる時にこれを意識するように徹底的に叩き込めば良いのではないか…と思うぐらいなのですが。

良い目標を立てることによって、少しは過程も変わるでしょうし、結果の振り返り方もずいぶん違うはずなんですけど。

社会人になってからこれを意識して…というところから始めると、なかなか時間がかかってしまいます。

 

さて、では5原則についてひとつずつ具体例を挙げながら解説していきましょう。

 

具体的であること

ひょっとするとこれは徹底すれば「測定可能」「期限」も包括されるような気がします。

 

・居間からトイレまでの8mの距離を…

・一日3回、食後1時間以内に…

・ベッド柵に右手で掴まって立ち上がり、両足を3歩ずつ動かして車椅子に乗り移る

・週1回は孫の好きな揚げ物を作って、娘宅まで届けに行く

 

少々極端かもしれませんが、こういうことですね。

生活課題に着眼した評価をしていないと、なかなか短時間でここまで詳細な描写はできません。

 

あとから測定可能であること
リハ業界ではこれについてはうるさく言われることが多いですが、介護現場ではなあなあになりやすい気がします。

あるいは、数値化に偏り過ぎて、生活課題と関連しない場合が見受けられます。

必ずしも数字に表れる必要はありませんので、最低限あとから振り返られるレベルを意識しましょう。

 

・トイレでの下衣の介助の際に、手摺に掴まって10秒立っていられる

・週1回はデイサービスに来れる

・200m先の商店まで買い物に行ける(ために6MDが400m、とか)

・尻の下にクッションを置いて仏壇の前で正座ができる(ために膝屈曲140度、とか)

 

カッコ内のように検査の数値も挙げられればプログラム立案や後からの振り返りのに大変役立ちますが、検査に置き換えられなくて良いと思っています。

少々不格好でも良いので、対象者の生活課題がきちんと反映されている目標を立てましょう!

 

達成可能であること
当たり前のことなんですが、意識されていないことがしばしばあります。

指導者「この目標、達成できそう?」

学習者「…難しいと思います」 みたいに(笑)。

先の見立てができないのであれば(例えば1か月とか)、ごくごく短い期間の目標を設定してみるのも良いでしょう。

 

・今週1週間、今日一緒にやった運動を家でもやってみる

・次回も肩の痛みなく動かせる

・昼食後すぐに寝るのではなく、1時間はテレビの前で起きている生活をあさってまで続けてみる

・(長期目標はデイ利用だが)来週も訪問リハが来ても嫌がることなく、翌日に疲労を残さない

 

こんな目標でも、意外と達成は難しいと思いますよ!

 

重要であること

「どうでもいいことを目標にしても仕方ない」ということですね(笑)。

これも当たり前のようですが、意外とできていないことが多いかな。

「何が重要か」は対象者の意向も大きく関係してくるので、次章以降に詳しく取り上げることにします。

まずは、自分の中で「これは重要か?」と考えるようにしましょう。

 

期限が決められていること

これはリハ職に限らず、医療業界だと徹底されている感はありますかね。

ただし、「2週間後」「3か月後」のように制度上の再評価時期を当てはめただけの場合は多いかもしれません。

経験の浅いうちは当てずっぽうな期限を設けることになってしまうと思いますが、この積み重ねが予後予測の精度に関わってきますので丁寧にやっておいた方が良いですよ!

 

◆今回の格言◆

目標設定は5原則を意識して!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

※当ブログの記事は随時更新される可能性があります。ご了承ください。

(最終更新2020,01,17)

(4)問題概念の展開(仮説修正)

 

前回の(3)情報収集、医療面接で生活課題を抽出しました。

次はこれらの原因が何かについて掘り下げていきます!いわゆる「問題点の抽出」ってやつですね。

 

-----------------------------------

課題となっている生活行為

 ↓

何が原因か?(身体、認知、環境、心理)

 ↓

さらに掘り下げ(身体→動作、など)

 ↓

欲を言えばもうひとつ掘り下げ(動作→筋活動、など)

-----------------------------------

よく言われる「なぜを3回繰り返す」ってやつですね!
学生や卒後数年のリハ職では、最後の「欲を言えば~」まで辿りつける人はあまりいない印象です。不思議ですよね、学生の頃は「動作→筋活動」ばかり見てきたのにですよ?いかに本人のニーズと関係のないところで動作分析をしていたか…ということかもしれません。

一生懸命掘り下げていくと最初の生活課題とは全然関係ないものを考察していたり…ということもしばしば。

基本的な考え方はすべてのリハ職が行うものと変わりませんが、抽出した生活課題を軸に進めていくのは鉄則です!

 

「キッチンに立って簡単な調理をすることは可能だが、大きめの鍋を持ち運ぶことができないので料理の種類が限られる」を例に掘り下げ方を見ていきましょう!

-----------------------------------

生活行為 「調理の際の調理器具の持ち運び」

 ↓

何が原因か? 「身体=右片麻痺」

 ↓

さらに掘り下げ(身体→動作、など)

「右上肢麻痺のため右手は物をつかめるが1kg以上の物を持ち上げることができない」

 ↓

欲を言えばもうひとつ掘り下げ(動作→筋活動、など)

「肩関節周囲の筋緊張低下、筋出力低下」

-----------------------------------

こんな感じでしょうか?

 

ちなみに(3)には「心身機能評価」が含まれているのですがあえて省いています。これも「生活課題に沿った評価」を行うのが鉄則です。

しかし、これに夢中になってしまうのはリハ職のサガですかね…(笑)。必要ないものは行わないようにしましょう。そうすると、評価項目は極めて少なくなることに気付くと思います。

 

 

もうひとつ重要なのは、タイトルに「仮説修正」とあるように、「誤っていたら元に戻って考え直す」ことが必要ということですね。

(1)(2)で形成した仮説はあくまで仮説なので、読みに誤りがあれば都度修正する必要があります。

せっかく苦労して生み出した仮説なのでそれにこだわりたくなるところですが、速やかに誤りに気付いて思考プロセスを戻るのが大切です!

 

◆今回の格言◆

問題点の考察も、生活課題を軸に掘り下げろ!

仮説に誤りがあれば執着することなくすぐ修正!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

※当ブログの記事は随時更新される可能性があります。ご了承ください。

(最終更新2020,01,17)

前回は(2)初期概念、仮説形成においては、機能障害ではなく生活障害に着眼する重要性をお伝えしました。

方向性が定まったので、徐々にそれを深化、検証する作業に移っていきます。

 

(3)情報収集、医療面接、心身機能評価

 

(1)の情報収集は「焦点を絞るための大まかなもの」、こちらは掘り下げていくための情報収集です。

前者はOpen Questionを用い、後者はClosed Questionを上手く使って進めていく必要があります。

 

-----------------------------------

リハ「退院して3日経ちましたが、どうですか?」

患者「まあ、悪くないね」・・①

リハ「前の病院の担当からトイレまでの歩行が心配と聞いていましたがどうですか?」・・②

患者「トイレは問題ないわ」

リハ「家の中の生活は大丈夫そうですね。デイサービスには通い始めたんですか?」

患者「ああ、昨日行ってきたよ。風呂も入れてくれるし助かるね。でも帰ってきてから疲労感があったよ」

-----------------------------------

 

本人の認知面に問題がないと仮定すれば、自宅内には問題はなさそうなケースですね。

①でほぼ問題はなさそうなことを察し、②でどうしても確認しておきたかった点だけを確認しました

例えば自宅では入浴はせずデイで実施しているのであれば、入浴のことを細かく聞かなくてもデイの様子をざっくりと聞けば答えてくれるかもしれません。

これらのやり取りで「自宅内は問題なさそうだから、屋外活動を含めた余暇活動を検討する」とか「デイでの疲労感があるようなので、数週はペース配分に気を付けて生活を送る」といった方向性が見えてきました。

逆に、この過程で「トイレに行くのが困難」等の問題が見つかったらすぐにそこを掘り下げます。

 

あとは、生活行為の「漏れ」がないようにチェックできるよう準備しておきましょう。

*日本作業療法士会 http://www.jaot.or.jp/mtdlp/whats ←の「作業と生活行為(用語解説)」をクリック

 

ただし、漏れを恐れるあまりボトムアップ的にひとつひとつ確認しては本末転倒です。

まずは自分の感覚を信じて生活課題を抽出してから、確認のために一覧を見るようにすると良いと思います!

 

◆今回の格言◆

Closed Questionを駆使して核心に迫れ!

忘れ物は最後にチェック!

 

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

 

※当ブログの記事は随時更新される可能性があります。ご了承ください。

(最終更新2020,01,17)