私の父は今年86歳です。認知症で要介護5でした。棺桶に片足突っ込んだような状態で七転八倒はあったけど、今、なんとか人らしい生活を取り戻して平和に暮らしています。こんなケースもあることを知ってほしいと思います。

 

 身体機能は良好でも脳の萎縮で問題行動の多かった父です。今、介護サービスを全く受けずに自宅で普通に暮らしています。


 この父に、精神病院から始まり、介護施設、警察や救急車に何度もお世話になり振り回された7年間でした。


 2年前に最初の介護施設に入所したのですが1年ほどで追い出されました。次の施設は病院が母体だったので、深夜の徘徊や物の取り込みを精神薬で押さえ込むための精神薬の種類と量がどんどん増え、1年経った頃、ほとんど自力で歩くことができなくなってしまいました。
 

 そんな父を見て、これまでの父をめぐる介護にうんざりしていた私ですが、社会資源の支援を断ち、父を自宅で看取る覚悟を決めた私は昨年10月に父を実家に連れて帰りました。


 最初の3ヶ月は毎日、地下鉄と市バスを利用して父と市内観光を続けました。地下鉄の階段の上り下りで足の筋肉を鍛え、市バスの窓からの風景を眺めることで日中の傾眠を防ぎました。薬は一切飲ませず、水分を補給しながら、どんなに時間がかかっても車椅子を使わないで、休憩を取りながら、自力で歩かせました。

 

 「いろんな所に連れて行ってくれる」と姉に話すのを聞いて、私に対する信頼感が生まれてきていることを知りました。そしてどうすることもできなかった物の取り込みがなくなって行ったのです。

 

 深夜の徘徊や物の取り込みが消え、「ラジオ無し」で市内観光を続けたことから生活の中でもラジオを必要としなくなりました。

 

 高齢者の徘徊や物の取り込みなどの問題行動のほとんどは不安から来るものだと言えます。私の父の場合は特に、ふと目覚めた時、側に家族がいることが父に安心や安堵を与えるようです。その他では不可能だったことが後々わかるようになります。

 さて、施設では6時に朝食、12時に昼食、3時におやつ、6時に夕食が出されていたので、1日3度の食事とおやつを用意していました。

 

 ところがある日、父がゴミ箱におかずを捨てているのを目撃しました。最初は怒りの気持ちが湧いてきて思わず叱りました。「食べ物を粗末にした」と苦言を呈したのですが、何度言ってもまた同じことをします。

 

 ご飯やパンなど炭水化物と甘いものだけを好んで食べて、おかずはほとんど食べないで捨てるのはなぜなのか考えました。考えてみれば簡単です。運動量も少なく高齢になった身体には、食べ物を身体が消化するのが大変で、量や回数が多すぎたことに気づきました。

 

 それに戦争を経験した父は食べ物を「要らない」と言えなかったのです。食べ物を断るという考えがないところで、食べなくてはいけない。でも食べれない。食べたくない。叱られる。見てない間に捨てる。

 

 テレビはあれもこれも、おいしいもの、栄養のあるもの、どんどんたくさん食べることが身体に良いことのように勧めます。でもおいしいと言われる肉や魚、卵などの動物性の食品を好んで常食しているグルメの人で健康な人を私は見たことがありません。私は30代の時、周りを見まわしてそのことに気づいていました。40代になって韓国、中国、インドで暮らしましたが、私の見た限り、どこも同じです。グルメの人はほとんど糖尿病を患っていました。

 それから母の猛反対を押し切って父の食事を「食事は1日2回。おやつ無し」を宣言しました。
 

 長年、断食少食に慣れた食事をしてきた私は断食療法に精通しています。でも父に無理やり押し付けるつもりはないのですが、父の好物は「いなり寿司」だけなのでそれほど無理強いではありません。

 肉や魚、卵など動物性の食べ物を減らしていき、今は私と同じ完全ビーガン食です。便通も毎日あり、肌の艶も良く、日中はテレビを見て落ち着いて過ごすようになりました。


 絶対肉食の母は「牛の餌」と言ってバカにしていましたが、父の健やかさを見て真似するようになりました。時々、自分一人分の野菜サラダを買ってきては食べています。


 さて、現在の父の食事ですが、1回目の食事は朝8時です。葉っぱ類3種以上は必須で(小松菜、ケール、チンゲンサイ、チシャ、レタスなど)その他に人参、大根(擦り下ろすか、薄くスライス)パプリカ、ピーマン、柑橘類(オレンジや夏蜜柑など)トマト、レーズン 、くるみ、ゴマ、ショウガ(酢とてんさい糖で漬けたもの)らっきょ、玉ねぎなど、冷蔵庫にある野菜やドライフルーツやナッツなど適当に入れます。


 食べやすいサイズに切ったりおろしたりしたサラダにめんつゆ、酢(らっきょ酢やショウガ酢)オリーブ油、ごま油などで適当に味をつけたものを丼鉢に盛ってよく噛んで時間をかけて食べます。

 

 生野菜なので山盛り食べても大した量にはなりませんが、見た目が大きな丼鉢に大盛りで、時間をかけて食べるので相当な満腹感があります。

 

 これを食べた後、小さめのお椀にかるく一杯の自家製納豆にレーズンやくるみを入れ、めんつゆを少しかけて食べます。

 

 その後、トーストを1枚とインスタントコーヒーに純正ココアを小さじ1杯入れたものをコーヒーカップ1杯。その後、柑橘類やバナナがあれば一つ食べます。

 

 最後、自家製甘酒(米麹と蒸したご飯で作る)をコップに1杯。サラダの量が少ない場合は有機野菜ジュースを1本足します。これが朝食です。

 

 2回目の食事は午後3時です。1回目の内容とあまり変わりません。サラダと果物は欠かせません。朝の納豆、パン、コーヒーの代わりに、ご飯をかるく茶碗1杯と野菜を入れた豆乳の味噌汁を出します。

 

 たまに甘いものが食べたい時は2回目の食事の最後にきんつばか、かりんとう、大福餅などを一つだけ食べます。必ず最後です。


 この2回の食事だけですが、父は満足感があるらしく文句はありません。以前はおやつを3時に出さないとないと暴れていましたが、今はおやつのことも忘れているのかと思うくらいです。

 

 満腹感だけでなく気持ちも満たされているらしく、甘いものを以前のように要求することはなくなりました。

 この食事を続けてますます健康になったと言えるのは、まず便通です。施設での頑固な便秘は解消されました。ほとんど毎日便通があります。他に何が違ってきたかというと、便の匂いです。

 以前はおならも一日中でした。寝ても起きてもおならばかりしていて、匂いも相当ひどいものでしたが、今はおならの回数も減り、匂いも以前のように強烈なものではなくなりました。

 肉や魚、卵などの動物性のものを体内に入れず、野菜、果物、納豆と甘酒(米麹と蒸したご飯で作る)だけにすることで腸内の悪玉菌を増やす材料がほとんどなく、腸内の善玉菌が増え、腸内環境が俄然よくなったのだと思います。そばに居る者としては、おならの悩みから解放されたことは大きな収穫です。

 毎日、夕方5時にさっとお風呂に入ってもらいます。マッサージ機で身体をほぐした後、ポカリスエットを飲み、テレビを見ながら眠る体制に入ってもらいます。

 窓は開け、換気扇と空気清浄機はつけたまま、カーテンを閉め、布団を敷き、電気を消して部屋を暗くします。まだ寝るには早いのですが、すぐに寝ることにはならないので寝る体制に入ってもらうため、寝る雰囲気を作っています。

 2回の食事以外は、カルピス かポカリスエットで水分補給を心がけています。1日に1リットルが目安です。


 最近、父を連れて歩くことを拒んでいた母が2週間ほど前から父を連れて朝のウォーキングに出かけ始めました。今は日が昇るのが早くなってきたので5時頃、近所の公園に行ったり、小学校の前にある陸橋を登ったり降りたりして運動しているようです。


 父が徘徊で問題行動を起こすことがなくなり、大人しく朝まで寝てくれるようになったので、母は父が横で寝ることを許すようになりました。母の横で寝ている父を見るととても落ち着いていて幸せそうです。

 
 今、父は自宅で平和に暮らしています。7年前からの騒動を思い出すと嘘のような日常です。