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―――その昔、4つの世界に危機が迫った。
―――一人の人間の闇から侵食を始めた邪悪な闇は4つの世界に押し寄せ、世界は滅びの歩みを進め、どの世界の力も止めることはできなかったそうだ。
―――やがて闇は世界を覆い、4つの世界の民は滅びを選んだ。
「ファンタズムアルカディア……」
―――10000年に一度、5日間のみ姿を見せる幻想の理想郷と呼ばれた島。
―――其の島に眠る、希望と絶望の神を従えし、光を身に纏う救世主。
―――光の救世主は世界を包む闇を切り裂き、神は闇を異次元の彼方へと葬り去った。
―――世界は平和を取り戻し、4つの世界の民は後に救世主を光の救世主・オラシオンと呼び、後世に語り継ぐため、島に―――を作ったという。
―――それからと言うもの、救世主を見た者はいなかったという。
「救世主の伝説か」
本を閉じ、自室の棚に戻す。
「一体、誰が記した伝説なんだろうな」
過去からの呼び声―――それがこの本なんだと思う。
「しかし…君も物好きだな」
ただの神話を聞いてくれるなんて、最近じゃめっきりいないからな。
ちょっとは嬉しいよ。
「じゃあ、ちょっと聞いてもらおうかな」
なに、悪い話じゃない。
マナーさえ守ってくれるなら誰にでも話すさ。
「友のために戦った、真実の物語だ」
………なに?
「俺の名前が知りたい?」
うーん…そうだな…。教えないことはない。
「園舞緋式、過去を語り継ぐのが好きな変わり者だ」
~~~
「俺一番乗りじゃね!?今の!」
「今のは俺の方が早かった、デュエルに負けて勝負には勝ったぜ」
「んなっ!?こーぎこぉーぎ!!」
「やなこった」
「こんにゃろー!!」
――何故、お前の世は変わってしまった。
俺から離れられなかったか弱い少年だったお前が。
「何故、俺は苦しんでいるのに…」
お前は、幸せそうにしているんだ。
『貴様ヲ不幸ニスル全テヲ破壊セヨ』
「…あぁ、その通りだ」
全てを破壊する。
それが、破壊者―ディストラクター―の役目だ。
~~~
――きゃあぁあああ!!!
――ぐあぁあああ!!
――うわぁぁぁああ!!
「なんだ…これ……」
辺り一面……火の海……?
「…!3つの世界が空に…!」
バリアン世界、アストラル世界、精霊界……どれも、全て闇に閉じてる……!?
『~~~~~!!!』
「!なにっ…!」
あれは…一体……ドラゴン…?
「助けてえ!!」
「…!」
子供か…!?
まさか、あのドラゴン…子供を狙って―――、
『~~~~~!!!』
「ぐ…!」
「いやぁぁぁ!!」
「!しまった…!」
「熱いぃ……熱いよぉ…!誰かぁ…!」
「……ぁ…いや……やめろ……!」
夢なら、早く…早く覚めてくれ…!!
「助けてよぉ……!!」
「は……ぁ…っ……ぁ…!」
「痛いよぉ……!」
「…い、きが……ぁあ…」
お願いだから―――!!
「おにいちゃん………助け―――」
「いやぁぁぁぁああっ!!」
――チュン……チュンチュン
「っ!!」
夢……?汗が………いや、なんなんだ…。
なにか、おかしな夢を見ていた気がする。
……でも、思い出せない……。
思い出し……、
「……あと、にふ―――」
「おっはよぉーっ!!!」
「………」
目が覚めた、ふざけんな、まだ眠いんだけど…。
くそっ…大体コイツのせいだ…。
「おはよう、遊矢」
少し笑いながら返してやった。…当然この後蹴りを入れたのは言うまでもない。安眠妨害は敵だ。
「っあ~~…ヒカル相変わらず容赦ねえな…」
「人が寝てるのにあんなマネするのが悪いんだよばーか」
「ば、バカじゃねえ!!」
「ったく…で、起こしたからにはなんかあるんだろうな?」
「おう!これこれ!」
封筒か…ハートランドから来てる辺りが嫌な予感を漂わせてるな…。
「…カードパス?」
「しかも二枚も……」
状況報告ならもう三度も断ってるんだが…はぁ…。
「とりあえず…Dパットに接続するか?」
「そうだな。全く面倒な野郎だよ」
…それでも、天城カイトは俺の師匠だ。不服ではあるがそれだけ過保護な目で見られてるらしい。
ハルトはもっとすごいと思うと…ちょっと寒気がする…。哀れ弟…。
《デュエリストの新たな祭典!ハートランド主催「デュエルアーチウォーズ」!!》
《参加資格を持っているのは、これを見ている君たちだよ!》
《優勝賞品はこのカード!》
《さぁ!奮ってご参加くださいっ!》
「………」
「なぁなぁ面白そうじゃん!!参加しようぜ!なぁヒカル!!」
デュエルアーチウォーズ……予選付きのトーナメント大会か…。
しかし、…怪しい……カードが反射で見えなかった?カード名も言っていなかったし、罠か…それとも、WDCの時のようなものか…。
どちらにしてもタチが悪いのには変わりない……よな。
「…ヒカル?」
「!あ、あぁ悪い。考え事だ、気にしないでくれ」
「それなら良いけどさ、…で、参加するのか?」
「…当然!」
ちょっと頑張ってみた……かな。遊矢みたいには笑えなくても自分のペースで取り戻せば良い。
そう、密かに感じていたかった。
「よし!早速ハートランドに戻る準備だ!」
「分かった、じゃあ行こう。ハートランドに」
~~~
――キーンコーンカーンコーン…
「ふぁぁ~疲れたぁ……?」
「…?」
「どうしたの?狩也くん、アミちゃん」
「これは……」
手紙の中にカード…?
でも、なんで俺とアミのところにだけなんだ?
……ラブレター?…まさか。
「うーん…」
「俺の家で接続してみる?」
「やってみる価値はあるよな、なにがなんだか分かんないし」
しかし、これハートランドからか。
ま、帰れば分かることだけど、いやぁな予感がするぜ。
「…!あ!」
あの黒いバイクは…!
「托都さん!」
「来たか、とりあえず、アミと狩也は乗れ」
「はい?」
「ちょっ!?意味わかんないですけど!?」
「というか三人乗りしちゃダメじゃ――!」
「遊矢から連絡があってな、今すぐハートランド駅前…らしいが…」
「遊矢から!?」
遊矢が?というか、なんで今すぐハートランド駅前?アイツ今どこにいるんだっていう話じゃ……。
「な、ならみんなで行きます!!托都さん先に行ってください!」
「そうか、あとこれが来たんだが、お前達は知らないか?」
「あ、……あー!!!」
俺達の持ってるカードパスと同じやつ…だな。…なんか托都さんが持ってるなら理解できそう。
もしかして、…デュエル関連とか異世界的な?
「じゃあ、先に行く」
「…行っちゃったね」
「と、とにかくみんな駅前広場に行くわよ!!」
「だな!」
「あれ~?みんなどうし…」
「袢太くん!ちょっと待ってて!」
「俺のも!!」
「任せた!!」
「えっ、えっ…え~?!」
袢太に荷物見張りを頼んだし、これで駅前に向かえる!!
一体なにが待ってるんだ…!
「……………」
―――――、
―――、
「…!遊矢!!ヒカル先輩!!」
「!よう、久しぶりだな」
「アミ~!みんな~!久しぶり!」
半年ぶりのハートランドシティ。やっと帰ってきた…。
まさか丸一日かかるなんて…半日で帰るって言っといた母さんになんて言おう…。
「元気そうでよかったです」
「すげえ印象変わりまくりッスよ」
「そ、そうか…」
印象…そんなに変わったかな……。
「それと…遊矢ぁ…!!」
「は、はい!!」
「心配したんだからね!!勝手に行っちゃうなんて!全くもう!」
「……な、なぁんだ!悪い悪い!っつか、小鳥姉さんに伝えて…」
「怒ってたわよ」
「ひ、ヒィィ!??」
小鳥さんに怒られるのがそんなに怖いとは…俺なんてまず叱られないからな、逆にそういうのって…たまには母さん達も怒っても良い気がする。
「でも、遊矢が元気そうでよかったよ」
「……ありがとな、アミ!」
「それと、ヒカル先輩!ちょっと考えた方がいいです」
「なにがだ?」
遊矢を連れていくことに問題があるのか、それともなにかやったか?
「…いえ、なんでもありません」
「…?」
一体なんなんだ…?なにか付いてたのかな…。
「アイツは女心がいまだに分からないのか」
「それ、アンタが言うことか」
……なんでもないのか。
「なぁ、そういや袢太は?」
「あ…」
「学園前に置いてきちゃった…」
「はぁ!?」
置いてきた!?
さすがアミと言うべきか…遊矢から聞いたアミの話が本当なら…さすが、ってところだな。
「じゃあ学園まで行こうぜ!…姉さんへの言い訳考えなきゃ…」
…こいつはもう人間的にダメかもしれない。
でも学園に行くのは賛成だし、久々の学園だ、早く行ってみよう。
「……?」
今の影―――…。見覚え……いや、それ以上…あの姿は……!
「…?」
「…ヒカル?早く来いよ!」
「まさか…いや、そんな」
「おーい!」
「悪い!用事思い出した!先に行ってくれ!」
「えっ!?ちょ、待てよ!」
「追いかけるぞ、遊矢!」
「ええっ!?待ってくれよ托都!!」
もしもアイツなら、何故ここに…!?
勘違いであってくれ…!頼む……!
~~~
「……確か、こっちに」
いるはずがない。ここにアイツがいるわけがない。
そう分かっていても目を向けざるを得ない。…別れ方が、悪かったからだと思うけど。だからって、どうして……。
またなにかの力が、働き始めたのか…?
「…シアラ……」
「――来たか」
「!――ぐっ!」
「よぉ、元気そうじゃねえかヒカル」
「遥羽……シアラ…!」
やはりか……!
クソッ…なんで後ろにいるのが気づけなかった…!
「バカみてえにボーッとしてんのは、あの頃からなんにも変わらねえか」
「うるさい…!一体なんのつもりだ、どうしてまだここに…」
「いるのは俺の自由だ、文句はあるか」
「……」
自由…?自由なわけないだろ、なに言ってるんだコイツは…。文句だって言いたくなる。
それに……シアラはこんな奴じゃなかったはずだ。
どうなっている、二度とここには来れないはずなのに、平然と俺の前に現れてるなんて。
「…良い目だな、再会までになにがあったかは聞かねえが……てめえの周りにいる連中、何者だ」
「あれは…」
言って良いものか……いや、思い切り言ってやった方が、もしかしたら効果的なのかもしれない…!!
「あれは俺の仲間だ、あいにく昔とは違うんでな」
「――仲間?」
「お前に頼らなくても、俺には仲間がいる、だから―――」
「ふざけるな!!」
「っ…いっ…!」
な、んだ…?急に様子が変わった……?
「お前に仲間なんて要らない!特にあの青い奴と黒い奴、何故だ!何故お前が…!」
「シアラ…違う…!俺には…」
「……まず、あの連中を消してからお前にしようと思ったが、気が変わった」
「……っ…」
青と黒…多分遊矢と托都のことか。
それにしても消す?しかも、何故ここまで拒絶反応を起こす?別に他人事だしシアラには関係ないはずだ、いや、関係があったらいけない。
「まずは、お前からだ」
「…なるほど」
まぁ結局、面倒事はデュエルで決着をつけるって訳か。
「お前を倒し、お前の仲間に俺の存在を見せてやる」
「……やるしかないのか…良いだろう…!シアラ、お前の目を覚まさせてやる!」
シアラの実力があの頃と変わらないかは分からない、慎重にいかないと……。
遊矢に知られる前に、なんとか終わらせたい。
「「デュエル!!」」
~~~
「ったく~どこ行ったんだ?」
「…嫌な予感がするな」
「予感?」
托都が言ってることだし、洒落にならないのは事実だけど…まさかヒカルに限ってそんなこと…。
「(さっき俺達を見ていた人影を追っていった気がするんだが…)」
「あっ!」
「どうした?」
「Dセンサー使えるかな」
全然使ってないから故障したかもしれないし不安だけど、この辺の地区でのデュエル履歴を見れば――!
「あった!」
「終わったばかりか…!しかもこれは…」
【Unknown=dat0524】、これはヒカルのDパットだ。登録してないから誕生日になってるけど。
合ってればそこに、ヒカルがいるはず…!
「ヒカル!…!ヒカル!!」
「……アイツは…」
「……今頃お出ましかよ、てめえの仲間も案外冷たいんだな」
「っ…」
「大丈夫かよ、おい!」
「…問題ない…と、思う…」
もしかして、デュエルダメージが現実になった…?ARヴィジョンで、こんな怪我は見たことないし。なんだよ、アイツ…!
「何者だ、貴様」
「そっちこそ、俺の所有物に手出ししたからには消される覚悟があるわけだな」
「所有物…?」
「突然なに言ってんだ」
なんだよ、俺らなんにも手出ししてないけど。つか初対面なんだけど、どうなんだ?
「ふっ…」
「なにがおかしい、黒男」
「所有物か、面白い男だな。だが、コイツはコイツだ。お前が所有者を名乗るなど、片腹痛い」
コイツ……ってえ!!今こっちチラ見した!?あの怪しい男とヒカルは知り合い!?初耳なんだけど!!
「チッ…その減らず口、さすがと言ったところか」
「名が知れてて不名誉だが光栄だな」
「…ならばデュエルアーチウォーズ、そこで決着はどうだ」
「…確かに、今この場でやるのは面白いが…どうせなら観衆の前で恥をかかせるのも悪くないか」
なんか俺たちには伝わらない冷戦的な恐ろしい会話をしてる気がする…。
「次に会う時は必ず消去させてもらう。…ヒカル、その時まで冷めた友情ごっこを楽しむんだな」
いなくなった…。
「………」
「アイツ、なんだったんだよ…!」
友情ごっことか、意味わかんないことばっか言いやがって!ヒカルは俺たちの仲間だっての!
「…アイツは知り合いか」
「……あぁ、詳しくは後で話す」
あんな知り合いがいるなんて知らなかったし、なによりなんで知り合いなのに……。
~~~
―――遥羽シアラ、ハートランドに行く前に隣に住んでた俺より3つ上の兄貴分みたいな奴だ。
―――友達はいないし、根本的に外があんまり好きじゃなかった俺を外に連れ出したお人好しのバカだ。
―――昔は優しくて本当に底無しに明るい奴だった。
―――ハートランドに行ってからは…会わなくなったんだけどな。
「じゃあ、遥羽はヒカルの兄ちゃん代わりみたいなもんなんだ」
「うん、…いっつ!?…母さん、なんか当たりキツくない?」
「気のせいよ!帰ってきていきなりシアラくんと再会してデュエルして怪我してきちゃうなんてまだまだヤンチャね!ヒカル!」
「……ヤンチャで済むのかそれ」
済みません、済んだら困るし俺が済まさねえ。つか、ヒカルのお母さんが遥羽を知ってるから本当に仲良しだったんだな。
「しかも、お友達連れてきてくれてお母さん嬉しいわ!」
「なっ…シアラの話するために連れてきただけだから!別に家に連れてきたのはそういうなにかじゃないから!」
「そういうなにかってなぁに?」
「あーもう!!」
「母親にはいつもの生意気な態度じゃないのか」
「反抗期だと思われんだろうが…」
「だが、そこが唯一の可愛らしさだな」
「うっさい!誰が可愛らしさだ!」
托都も母親に会ったって前に言ってたけどどうだったんだろ。素っ気なかったのかな?
「はいおしまい、帰ってきて怪我なんて困っちゃったわ。気を付けてね」
「ごめん、ありがと」
「おさげ二つ結びかわいいわよ、どこで知ったの?」
「た、頼むから余計な質問は遊矢達が帰ってからにしてくれ!」
「たじたじだなぁ…」
「女は怖いぞ」
「そうなの?」
「あぁ」
まぁ、ドン・サウザンドはともかく女家族だし、仕方ないのかな。…うちも小鳥姉さんが怖いけど。
「とにかく…シアラは悪い奴じゃない…あんなこと、言う奴じゃないんだ」
「…そっか、なら!俺はヒカルを信じるぜ!」
「遊矢…」
「そうだな、お前は嘘を吐くような奴じゃないのは、俺達が一番知っている」
「…ありがとう、二人とも」
ヒカルを信じる。遥羽はきっとなにかあってあんな風になってるだけなんだ。だから、きっとなんとかして目を覚まさせる方法があるはず…。
そう信じたい。
《続いてのニュースです。》
「…?」
《連日発生している連続デュエリスト行方不明事件、本日も7名が行方不明となり、セキュリティは未だ犯人を捜索中。目撃証言から、犯人は髪の長い20歳前後の青年と思われ――――》
物騒な話だなぁ…デュエリスト行方不明事件かぁ……嫌だな、寒気が…。
「……シアラだ」
「えっ?」
「消すって……デュエリストのことだったのか」
……あ、確かに消すとか消去とか言ってた…。でも、アイツの目的が俺達ならなんで一般人を巻き込んだり…。
「ヒカルに対してアピールまがいの行動か」
「アピール?」
「奴がさんざん言っていただろう、'所有物だ'とな」
理論はトルテと同じ、ってことか。
大切なものを手に入れるために他を犠牲にする、そんなの…本当には大切だ、って思ってないも同然だ。
「……」
「アイツとの間に何があったか、今は聞かない。だが、いつか聞かせてもらうぞ」
「…近い内にな」
「遊矢くん、時間は大丈夫?」
「あぁー!!言い訳考えるの忘れてた!!」
「俺の家に来るか?」
「いいの!?」
「あぁ」
「よっしゃあ!サンキュー托都!」
「……気楽なバカばっか…」
《本日の行方不明者7名が、開催を明日に控えたデュエルアーチウォーズ参加デュエリストだと言うことから、犯人は―――》
~~~
「なぁ托都、」
「なんだ」
「あんまり言いづらいかもしれないけどさ、母さんに会えたのか?」
「……」
やっぱり聞かない方がよかったかな……。ちょっと気まずいような……。
「会った」
「えっ?」
「どちらにもな、育ての親は今も嫌いだが」
実の母さんにも俺たちの母さんにも会えたんだ……よかった…。
「母さんはよく似てた、托美にな」
「托美に?じゃあ托都にも…」
「…まぁ、それなりに」
托美がいつか言ってた、托都の母さんは托都に似てるって。
「俺の顔見るなり泣いてたな」
「ええっ!?泣かせた!?」
「いや、そうじゃないが…それでも、困るんだよ。そういう感動とか、今更な」
「…そっか」
そう、だよな……困るよな。だって、18年間ずっとほったらかしてた癖に、いつの間にか妹がいたなんて…さ。
「まぁ…吹っ切れたがな」
「え…」
「俺は今も昔もこの先も、家族なんて嫌いだ。だが、嫌いだとしても守りたいものなのかもしれない。だから、会いに行った」
嫌い、でもそれが大切だから守る…か。
「今度こそは、遊矢もヒカルも、必ず守り抜く。仲間として」
「托都……」
「遊矢は、兄弟としてもな」
「……期待してるぜ、兄貴!」
托都なら、きっと大丈夫。だから、今度は離れないように、ずっと一緒にいてほしい。
……だから、ヒカルも―――。
~~~
「クソがぁぁぁッ!!」
なんだあの笑顔は。俺にも見せなかった顔を、薄っぺらい絆で結ばれた仲間に見せるなど……。
『ソウイキリ立ツナ、モウスグ世界ハオ前ノイノママニ操ルコトガデキル』
「はぁ…はぁ…分かっているさ、だが」
許さん、まずは青い奴。アイツから、潰してやる…!
~~~
「……?あら、まだ起きてたの?」
「…うん」
「心配なんだ、シアラくんのこと」
どうしてここに戻って…どうすればいいんだ…。
「ヒカルがシアラくんを想ってるのは遊矢くんも分かってくれたはずよ、怖がらなくてもいいの」
「…臆病だけど、シアラを恐れてるかもしれない…」
「…ヒカルは優しい子よ、だから…また救えるわ、私達のように」
「………」
もしなにか、シアラに唆した奴がいるならそれは俺が倒さなきゃいけない。
必ず、明日…やってみせる。
→Next Act.2
※深夜0時~5時までのコメントや読者登録はマナー違反です。おやめください。
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―――その昔、4つの世界に危機が迫った。
―――一人の人間の闇から侵食を始めた邪悪な闇は4つの世界に押し寄せ、世界は滅びの歩みを進め、どの世界の力も止めることはできなかったそうだ。
―――やがて闇は世界を覆い、4つの世界の民は滅びを選んだ。
「ファンタズムアルカディア……」
―――10000年に一度、5日間のみ姿を見せる幻想の理想郷と呼ばれた島。
―――其の島に眠る、希望と絶望の神を従えし、光を身に纏う救世主。
―――光の救世主は世界を包む闇を切り裂き、神は闇を異次元の彼方へと葬り去った。
―――世界は平和を取り戻し、4つの世界の民は後に救世主を光の救世主・オラシオンと呼び、後世に語り継ぐため、島に―――を作ったという。
―――それからと言うもの、救世主を見た者はいなかったという。
「救世主の伝説か」
本を閉じ、自室の棚に戻す。
「一体、誰が記した伝説なんだろうな」
過去からの呼び声―――それがこの本なんだと思う。
「しかし…君も物好きだな」
ただの神話を聞いてくれるなんて、最近じゃめっきりいないからな。
ちょっとは嬉しいよ。
「じゃあ、ちょっと聞いてもらおうかな」
なに、悪い話じゃない。
マナーさえ守ってくれるなら誰にでも話すさ。
「友のために戦った、真実の物語だ」
………なに?
「俺の名前が知りたい?」
うーん…そうだな…。教えないことはない。
「園舞緋式、過去を語り継ぐのが好きな変わり者だ」
~~~
「俺一番乗りじゃね!?今の!」
「今のは俺の方が早かった、デュエルに負けて勝負には勝ったぜ」
「んなっ!?こーぎこぉーぎ!!」
「やなこった」
「こんにゃろー!!」
――何故、お前の世は変わってしまった。
俺から離れられなかったか弱い少年だったお前が。
「何故、俺は苦しんでいるのに…」
お前は、幸せそうにしているんだ。
『貴様ヲ不幸ニスル全テヲ破壊セヨ』
「…あぁ、その通りだ」
全てを破壊する。
それが、破壊者―ディストラクター―の役目だ。
~~~
――きゃあぁあああ!!!
――ぐあぁあああ!!
――うわぁぁぁああ!!
「なんだ…これ……」
辺り一面……火の海……?
「…!3つの世界が空に…!」
バリアン世界、アストラル世界、精霊界……どれも、全て闇に閉じてる……!?
『~~~~~!!!』
「!なにっ…!」
あれは…一体……ドラゴン…?
「助けてえ!!」
「…!」
子供か…!?
まさか、あのドラゴン…子供を狙って―――、
『~~~~~!!!』
「ぐ…!」
「いやぁぁぁ!!」
「!しまった…!」
「熱いぃ……熱いよぉ…!誰かぁ…!」
「……ぁ…いや……やめろ……!」
夢なら、早く…早く覚めてくれ…!!
「助けてよぉ……!!」
「は……ぁ…っ……ぁ…!」
「痛いよぉ……!」
「…い、きが……ぁあ…」
お願いだから―――!!
「おにいちゃん………助け―――」
「いやぁぁぁぁああっ!!」
――チュン……チュンチュン
「っ!!」
夢……?汗が………いや、なんなんだ…。
なにか、おかしな夢を見ていた気がする。
……でも、思い出せない……。
思い出し……、
「……あと、にふ―――」
「おっはよぉーっ!!!」
「………」
目が覚めた、ふざけんな、まだ眠いんだけど…。
くそっ…大体コイツのせいだ…。
「おはよう、遊矢」
少し笑いながら返してやった。…当然この後蹴りを入れたのは言うまでもない。安眠妨害は敵だ。
「っあ~~…ヒカル相変わらず容赦ねえな…」
「人が寝てるのにあんなマネするのが悪いんだよばーか」
「ば、バカじゃねえ!!」
「ったく…で、起こしたからにはなんかあるんだろうな?」
「おう!これこれ!」
封筒か…ハートランドから来てる辺りが嫌な予感を漂わせてるな…。
「…カードパス?」
「しかも二枚も……」
状況報告ならもう三度も断ってるんだが…はぁ…。
「とりあえず…Dパットに接続するか?」
「そうだな。全く面倒な野郎だよ」
…それでも、天城カイトは俺の師匠だ。不服ではあるがそれだけ過保護な目で見られてるらしい。
ハルトはもっとすごいと思うと…ちょっと寒気がする…。哀れ弟…。
《デュエリストの新たな祭典!ハートランド主催「デュエルアーチウォーズ」!!》
《参加資格を持っているのは、これを見ている君たちだよ!》
《優勝賞品はこのカード!》
《さぁ!奮ってご参加くださいっ!》
「………」
「なぁなぁ面白そうじゃん!!参加しようぜ!なぁヒカル!!」
デュエルアーチウォーズ……予選付きのトーナメント大会か…。
しかし、…怪しい……カードが反射で見えなかった?カード名も言っていなかったし、罠か…それとも、WDCの時のようなものか…。
どちらにしてもタチが悪いのには変わりない……よな。
「…ヒカル?」
「!あ、あぁ悪い。考え事だ、気にしないでくれ」
「それなら良いけどさ、…で、参加するのか?」
「…当然!」
ちょっと頑張ってみた……かな。遊矢みたいには笑えなくても自分のペースで取り戻せば良い。
そう、密かに感じていたかった。
「よし!早速ハートランドに戻る準備だ!」
「分かった、じゃあ行こう。ハートランドに」
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――キーンコーンカーンコーン…
「ふぁぁ~疲れたぁ……?」
「…?」
「どうしたの?狩也くん、アミちゃん」
「これは……」
手紙の中にカード…?
でも、なんで俺とアミのところにだけなんだ?
……ラブレター?…まさか。
「うーん…」
「俺の家で接続してみる?」
「やってみる価値はあるよな、なにがなんだか分かんないし」
しかし、これハートランドからか。
ま、帰れば分かることだけど、いやぁな予感がするぜ。
「…!あ!」
あの黒いバイクは…!
「托都さん!」
「来たか、とりあえず、アミと狩也は乗れ」
「はい?」
「ちょっ!?意味わかんないですけど!?」
「というか三人乗りしちゃダメじゃ――!」
「遊矢から連絡があってな、今すぐハートランド駅前…らしいが…」
「遊矢から!?」
遊矢が?というか、なんで今すぐハートランド駅前?アイツ今どこにいるんだっていう話じゃ……。
「な、ならみんなで行きます!!托都さん先に行ってください!」
「そうか、あとこれが来たんだが、お前達は知らないか?」
「あ、……あー!!!」
俺達の持ってるカードパスと同じやつ…だな。…なんか托都さんが持ってるなら理解できそう。
もしかして、…デュエル関連とか異世界的な?
「じゃあ、先に行く」
「…行っちゃったね」
「と、とにかくみんな駅前広場に行くわよ!!」
「だな!」
「あれ~?みんなどうし…」
「袢太くん!ちょっと待ってて!」
「俺のも!!」
「任せた!!」
「えっ、えっ…え~?!」
袢太に荷物見張りを頼んだし、これで駅前に向かえる!!
一体なにが待ってるんだ…!
「……………」
―――――、
―――、
「…!遊矢!!ヒカル先輩!!」
「!よう、久しぶりだな」
「アミ~!みんな~!久しぶり!」
半年ぶりのハートランドシティ。やっと帰ってきた…。
まさか丸一日かかるなんて…半日で帰るって言っといた母さんになんて言おう…。
「元気そうでよかったです」
「すげえ印象変わりまくりッスよ」
「そ、そうか…」
印象…そんなに変わったかな……。
「それと…遊矢ぁ…!!」
「は、はい!!」
「心配したんだからね!!勝手に行っちゃうなんて!全くもう!」
「……な、なぁんだ!悪い悪い!っつか、小鳥姉さんに伝えて…」
「怒ってたわよ」
「ひ、ヒィィ!??」
小鳥さんに怒られるのがそんなに怖いとは…俺なんてまず叱られないからな、逆にそういうのって…たまには母さん達も怒っても良い気がする。
「でも、遊矢が元気そうでよかったよ」
「……ありがとな、アミ!」
「それと、ヒカル先輩!ちょっと考えた方がいいです」
「なにがだ?」
遊矢を連れていくことに問題があるのか、それともなにかやったか?
「…いえ、なんでもありません」
「…?」
一体なんなんだ…?なにか付いてたのかな…。
「アイツは女心がいまだに分からないのか」
「それ、アンタが言うことか」
……なんでもないのか。
「なぁ、そういや袢太は?」
「あ…」
「学園前に置いてきちゃった…」
「はぁ!?」
置いてきた!?
さすがアミと言うべきか…遊矢から聞いたアミの話が本当なら…さすが、ってところだな。
「じゃあ学園まで行こうぜ!…姉さんへの言い訳考えなきゃ…」
…こいつはもう人間的にダメかもしれない。
でも学園に行くのは賛成だし、久々の学園だ、早く行ってみよう。
「……?」
今の影―――…。見覚え……いや、それ以上…あの姿は……!
「…?」
「…ヒカル?早く来いよ!」
「まさか…いや、そんな」
「おーい!」
「悪い!用事思い出した!先に行ってくれ!」
「えっ!?ちょ、待てよ!」
「追いかけるぞ、遊矢!」
「ええっ!?待ってくれよ托都!!」
もしもアイツなら、何故ここに…!?
勘違いであってくれ…!頼む……!
~~~
「……確か、こっちに」
いるはずがない。ここにアイツがいるわけがない。
そう分かっていても目を向けざるを得ない。…別れ方が、悪かったからだと思うけど。だからって、どうして……。
またなにかの力が、働き始めたのか…?
「…シアラ……」
「――来たか」
「!――ぐっ!」
「よぉ、元気そうじゃねえかヒカル」
「遥羽……シアラ…!」
やはりか……!
クソッ…なんで後ろにいるのが気づけなかった…!
「バカみてえにボーッとしてんのは、あの頃からなんにも変わらねえか」
「うるさい…!一体なんのつもりだ、どうしてまだここに…」
「いるのは俺の自由だ、文句はあるか」
「……」
自由…?自由なわけないだろ、なに言ってるんだコイツは…。文句だって言いたくなる。
それに……シアラはこんな奴じゃなかったはずだ。
どうなっている、二度とここには来れないはずなのに、平然と俺の前に現れてるなんて。
「…良い目だな、再会までになにがあったかは聞かねえが……てめえの周りにいる連中、何者だ」
「あれは…」
言って良いものか……いや、思い切り言ってやった方が、もしかしたら効果的なのかもしれない…!!
「あれは俺の仲間だ、あいにく昔とは違うんでな」
「――仲間?」
「お前に頼らなくても、俺には仲間がいる、だから―――」
「ふざけるな!!」
「っ…いっ…!」
な、んだ…?急に様子が変わった……?
「お前に仲間なんて要らない!特にあの青い奴と黒い奴、何故だ!何故お前が…!」
「シアラ…違う…!俺には…」
「……まず、あの連中を消してからお前にしようと思ったが、気が変わった」
「……っ…」
青と黒…多分遊矢と托都のことか。
それにしても消す?しかも、何故ここまで拒絶反応を起こす?別に他人事だしシアラには関係ないはずだ、いや、関係があったらいけない。
「まずは、お前からだ」
「…なるほど」
まぁ結局、面倒事はデュエルで決着をつけるって訳か。
「お前を倒し、お前の仲間に俺の存在を見せてやる」
「……やるしかないのか…良いだろう…!シアラ、お前の目を覚まさせてやる!」
シアラの実力があの頃と変わらないかは分からない、慎重にいかないと……。
遊矢に知られる前に、なんとか終わらせたい。
「「デュエル!!」」
~~~
「ったく~どこ行ったんだ?」
「…嫌な予感がするな」
「予感?」
托都が言ってることだし、洒落にならないのは事実だけど…まさかヒカルに限ってそんなこと…。
「(さっき俺達を見ていた人影を追っていった気がするんだが…)」
「あっ!」
「どうした?」
「Dセンサー使えるかな」
全然使ってないから故障したかもしれないし不安だけど、この辺の地区でのデュエル履歴を見れば――!
「あった!」
「終わったばかりか…!しかもこれは…」
【Unknown=dat0524】、これはヒカルのDパットだ。登録してないから誕生日になってるけど。
合ってればそこに、ヒカルがいるはず…!
「ヒカル!…!ヒカル!!」
「……アイツは…」
「……今頃お出ましかよ、てめえの仲間も案外冷たいんだな」
「っ…」
「大丈夫かよ、おい!」
「…問題ない…と、思う…」
もしかして、デュエルダメージが現実になった…?ARヴィジョンで、こんな怪我は見たことないし。なんだよ、アイツ…!
「何者だ、貴様」
「そっちこそ、俺の所有物に手出ししたからには消される覚悟があるわけだな」
「所有物…?」
「突然なに言ってんだ」
なんだよ、俺らなんにも手出ししてないけど。つか初対面なんだけど、どうなんだ?
「ふっ…」
「なにがおかしい、黒男」
「所有物か、面白い男だな。だが、コイツはコイツだ。お前が所有者を名乗るなど、片腹痛い」
コイツ……ってえ!!今こっちチラ見した!?あの怪しい男とヒカルは知り合い!?初耳なんだけど!!
「チッ…その減らず口、さすがと言ったところか」
「名が知れてて不名誉だが光栄だな」
「…ならばデュエルアーチウォーズ、そこで決着はどうだ」
「…確かに、今この場でやるのは面白いが…どうせなら観衆の前で恥をかかせるのも悪くないか」
なんか俺たちには伝わらない冷戦的な恐ろしい会話をしてる気がする…。
「次に会う時は必ず消去させてもらう。…ヒカル、その時まで冷めた友情ごっこを楽しむんだな」
いなくなった…。
「………」
「アイツ、なんだったんだよ…!」
友情ごっことか、意味わかんないことばっか言いやがって!ヒカルは俺たちの仲間だっての!
「…アイツは知り合いか」
「……あぁ、詳しくは後で話す」
あんな知り合いがいるなんて知らなかったし、なによりなんで知り合いなのに……。
~~~
―――遥羽シアラ、ハートランドに行く前に隣に住んでた俺より3つ上の兄貴分みたいな奴だ。
―――友達はいないし、根本的に外があんまり好きじゃなかった俺を外に連れ出したお人好しのバカだ。
―――昔は優しくて本当に底無しに明るい奴だった。
―――ハートランドに行ってからは…会わなくなったんだけどな。
「じゃあ、遥羽はヒカルの兄ちゃん代わりみたいなもんなんだ」
「うん、…いっつ!?…母さん、なんか当たりキツくない?」
「気のせいよ!帰ってきていきなりシアラくんと再会してデュエルして怪我してきちゃうなんてまだまだヤンチャね!ヒカル!」
「……ヤンチャで済むのかそれ」
済みません、済んだら困るし俺が済まさねえ。つか、ヒカルのお母さんが遥羽を知ってるから本当に仲良しだったんだな。
「しかも、お友達連れてきてくれてお母さん嬉しいわ!」
「なっ…シアラの話するために連れてきただけだから!別に家に連れてきたのはそういうなにかじゃないから!」
「そういうなにかってなぁに?」
「あーもう!!」
「母親にはいつもの生意気な態度じゃないのか」
「反抗期だと思われんだろうが…」
「だが、そこが唯一の可愛らしさだな」
「うっさい!誰が可愛らしさだ!」
托都も母親に会ったって前に言ってたけどどうだったんだろ。素っ気なかったのかな?
「はいおしまい、帰ってきて怪我なんて困っちゃったわ。気を付けてね」
「ごめん、ありがと」
「おさげ二つ結びかわいいわよ、どこで知ったの?」
「た、頼むから余計な質問は遊矢達が帰ってからにしてくれ!」
「たじたじだなぁ…」
「女は怖いぞ」
「そうなの?」
「あぁ」
まぁ、ドン・サウザンドはともかく女家族だし、仕方ないのかな。…うちも小鳥姉さんが怖いけど。
「とにかく…シアラは悪い奴じゃない…あんなこと、言う奴じゃないんだ」
「…そっか、なら!俺はヒカルを信じるぜ!」
「遊矢…」
「そうだな、お前は嘘を吐くような奴じゃないのは、俺達が一番知っている」
「…ありがとう、二人とも」
ヒカルを信じる。遥羽はきっとなにかあってあんな風になってるだけなんだ。だから、きっとなんとかして目を覚まさせる方法があるはず…。
そう信じたい。
《続いてのニュースです。》
「…?」
《連日発生している連続デュエリスト行方不明事件、本日も7名が行方不明となり、セキュリティは未だ犯人を捜索中。目撃証言から、犯人は髪の長い20歳前後の青年と思われ――――》
物騒な話だなぁ…デュエリスト行方不明事件かぁ……嫌だな、寒気が…。
「……シアラだ」
「えっ?」
「消すって……デュエリストのことだったのか」
……あ、確かに消すとか消去とか言ってた…。でも、アイツの目的が俺達ならなんで一般人を巻き込んだり…。
「ヒカルに対してアピールまがいの行動か」
「アピール?」
「奴がさんざん言っていただろう、'所有物だ'とな」
理論はトルテと同じ、ってことか。
大切なものを手に入れるために他を犠牲にする、そんなの…本当には大切だ、って思ってないも同然だ。
「……」
「アイツとの間に何があったか、今は聞かない。だが、いつか聞かせてもらうぞ」
「…近い内にな」
「遊矢くん、時間は大丈夫?」
「あぁー!!言い訳考えるの忘れてた!!」
「俺の家に来るか?」
「いいの!?」
「あぁ」
「よっしゃあ!サンキュー托都!」
「……気楽なバカばっか…」
《本日の行方不明者7名が、開催を明日に控えたデュエルアーチウォーズ参加デュエリストだと言うことから、犯人は―――》
~~~
「なぁ托都、」
「なんだ」
「あんまり言いづらいかもしれないけどさ、母さんに会えたのか?」
「……」
やっぱり聞かない方がよかったかな……。ちょっと気まずいような……。
「会った」
「えっ?」
「どちらにもな、育ての親は今も嫌いだが」
実の母さんにも俺たちの母さんにも会えたんだ……よかった…。
「母さんはよく似てた、托美にな」
「托美に?じゃあ托都にも…」
「…まぁ、それなりに」
托美がいつか言ってた、托都の母さんは托都に似てるって。
「俺の顔見るなり泣いてたな」
「ええっ!?泣かせた!?」
「いや、そうじゃないが…それでも、困るんだよ。そういう感動とか、今更な」
「…そっか」
そう、だよな……困るよな。だって、18年間ずっとほったらかしてた癖に、いつの間にか妹がいたなんて…さ。
「まぁ…吹っ切れたがな」
「え…」
「俺は今も昔もこの先も、家族なんて嫌いだ。だが、嫌いだとしても守りたいものなのかもしれない。だから、会いに行った」
嫌い、でもそれが大切だから守る…か。
「今度こそは、遊矢もヒカルも、必ず守り抜く。仲間として」
「托都……」
「遊矢は、兄弟としてもな」
「……期待してるぜ、兄貴!」
托都なら、きっと大丈夫。だから、今度は離れないように、ずっと一緒にいてほしい。
……だから、ヒカルも―――。
~~~
「クソがぁぁぁッ!!」
なんだあの笑顔は。俺にも見せなかった顔を、薄っぺらい絆で結ばれた仲間に見せるなど……。
『ソウイキリ立ツナ、モウスグ世界ハオ前ノイノママニ操ルコトガデキル』
「はぁ…はぁ…分かっているさ、だが」
許さん、まずは青い奴。アイツから、潰してやる…!
~~~
「……?あら、まだ起きてたの?」
「…うん」
「心配なんだ、シアラくんのこと」
どうしてここに戻って…どうすればいいんだ…。
「ヒカルがシアラくんを想ってるのは遊矢くんも分かってくれたはずよ、怖がらなくてもいいの」
「…臆病だけど、シアラを恐れてるかもしれない…」
「…ヒカルは優しい子よ、だから…また救えるわ、私達のように」
「………」
もしなにか、シアラに唆した奴がいるならそれは俺が倒さなきゃいけない。
必ず、明日…やってみせる。
→Next Act.2