※〈〈読者・なう及びTwitterフォロー・アメブロ外〉〉以外のコメントは固くお断りいたします。コメントは削除されます上、不快と思った場合はそれなりのコメントをさせていただきます。また、宣伝やいいね返し目的のいいねはお断りします。
※深夜0時~5時までのコメントや読者登録はマナー違反です。おやめください。
===
TRIGGER.001「白銀の氷」
――――明見空市、初音町
「おい~いいだろ?」
「や、やや…やめ……くだ、さ……」
「聞こえねえなぁ?ちょっと付き合えって言ってるだけだろ?」
「ぼ、ぼく…ががっ…学校が……」
――――、
「知らねえよンなモンよォ?」
「じゃあ金だけでも、いつも通りだろ?」
「きょ…今日は持って…な……」
――――、
――――――、
「アァン?ナメてんのかテメエ!」
「ひっ…!」
「いっつも持っとけって言ってンだろうがグズ野郎!」
「だ、だって昨日のが、さ、最後だから……」
――――――、
――――、
「だったら親からでも―――」
「邪魔、」
「あ…?」
いい加減邪魔臭いんだよグズ。
「ここ公道、アンタら邪魔なんだけど」
「ガキが一丁前に命令してンじゃねえよ、やんのかゴラ」
「…………」
「―――、」
「……!」
邪魔なのがまず一人減った…と、
「テメエ!!俺らの獲物逃がしやがって!」
「耳元でうるせえ、少しは黙れねえのかよ」
「中坊…!!」
「やんのかよ、良いぜ。掛かってこいよ」
喧嘩上等、売られたなら買うしかねえだろ。
「後悔しても知らねえからな!クソガキ!」
~~~
――――初音学園中等部
――キーンコーンカーンコーン……
「全くお前は!!」
「………」
「あれだけ言ってまだ分からんのか!校内でも、校外でも喧嘩はするな!聞いているのか?!」
退屈な話、もう同じ話を何十回聞いたか分からない。
「なぁ知ってるかアイツ…」
「聞いた聞いた!2年A組の…」
「朝っぱらから高校生三人ボコボコにしたらしいぜ…」
「うわぁ…近づきたくねえ…」
みんな、みんな俺を遠巻きに見る。
それは全く構わない、むしろ近付いてくる奴がいたなら面白くて腹抱えて笑うだろうし。
退屈な日常、つまらない日々。
なにか、……楽しいことはないのか。…なんて簡単に思い付くわけねえけど。
「…!」
「………」
「あ、あの…!!」
「…なに……、お前…さっきの」
「さ、さっきはあ、ありがとう…ございます……」
……律儀な奴。
「勘違いすんなよ、道にあんなん突っ立ってたら邪魔だろうが」
「そう…だったんですか……」
制服の色的に、一年か…俺のこと知らなくても…いや、半年もしたら俺のことくらい知ってるはず……ビビってないのか、コイツ。
「……震えてんの?」
「ッ!ご、ごめんなさい!!」
「謝らなくていい。目付き悪いってよく言われる。……お前、名前は?」
「あ、あう…えっと…氷樫雅、です…」
氷樫……か、
「栞遊紗だ、遊紗でいい」
~~~
――キーンコーンカーンコーン……
「……」
昇降口、…なんだけど。
「……なんだこれ」
下駄箱に紙の束…今までにない新手のいじめか?
別にこれくらいどうってことねえけど。
やった奴見つけ出して一発殴るくらいはしねえと反省しないだろうし。
「…地図…?」
ここに来いってことか、朝の連中か?何にしても行くけど。
…最寄り駅は――ここから10駅近いな…。明見空の外れじゃ…。つか、外れどころかここって……。
「ゆ、遊紗先輩…?」
「…悪い、野暮用あるから。また明日な」
「は…はい…!」
家寄ってから行っても20分くらいで行けるか。さっさと着替えていくか。
氷樫のヤツ置いてきてよかったのかな…また朝の連中に取っ捕まってなければいいけど。
…なに考えてんだよ俺。アイツがどうなろうが知らねえって話だっての。
~~~
「はぁ……」
な、なにここ……。
マジで心霊スポット扱いされてるんだな。
こんなところの地図寄越してきたバカは誰だよって話だ。
で、ここに人がいるのか。
人が住んでるなんて聞いたこと――。
――ギィィ…
「…!!うぉっ!?」
なんだよ今の…刃物か?カマイタチってヤツか?
狙ってきたのは頭と足と胸辺り…か、避けなかったら死んでたぞ…!一体なに考えて――!!
「何者だ、お前」
「…アンタは……」
「ここの家主だよ。何の用だ?初見であれを避けたんだ、誰かに聞いたのか?」
家主……知らないってことは、この地図と紙束置いたのはアイツじゃないのか。
「地図と紙束をもらった、それを辿ったらここに着いただけだ」
「紙束………!」
「コイツ、なんなんだよ。なんで俺の靴箱に…」
「……入れ、教えてやる」
教えて、って………そんな重要なんだ、この紙束。
「ここって人住めたんだ…」
「まぁ…掃除に手間はとったが……って、お前、名前くらいは名乗ったらどうなんだ」
「…栞遊紗…」
「遊紗……?……」
驚かれた、俺の名前おかしいか…?
「そういうアンタは?」
「…ヒカルでいい」
ヒカル…か。年はかわらな…いや、俺より背高いぞコイツ……。背高いの…いいなぁ……。
「適当に座っていいから。安心しろ、今日は面倒なヤツいないから」
「面倒なヤツ?」
「まっ、いつか分かる。じゃあまずはその紙束の正体を教えてやる」
紙束の正体……か。
「それは、デュエルモンスターズっていうカードゲームのカードを集めたデッキだ」
「デッキ……」
「ちょっと貸してくれ」
「あ、はい」
「…………見たことのないカードだな、偽装品ではないみたいだけど…お前、どこで手に入れた?」
ヒカルが見たことないなら、そんなん分かるわけないし…ただ靴箱に入ってただけだ。
「知らねえ」
「自分で持ってきたくせによく言うな…で、お前はこれを紙束って言ったな。つまり、初心者か」
「…まぁ。ルールも知らないし……!」
シルバーアイス……銀色の氷……銀か。
「銀色好きなのか」
「えっ、まぁ…」
みんなは金が一番とか言ってるけど、多分俺は銀が一番だと思う。
銀は月とか星を表してる、誰も手に入れることができない孤高が、羨ましい…と思う。
「ルール、興味あるなら教えてやるけど」
「…!本当か!」
「嘘つくように見えるか?俺はデュエリストだ、デュエリストを増やすことに悪いことはない。そういうことだ」
聞いてみるだけ聞いてみるのも悪くないか…。
「なら、教えてくれ」
「…分かったよ、なるべく初心者にも分かりやすいように教えてやる」
もし、これになにか意味があるなら、きっと……。
~~~
――ピピピピピピ…カシャッ
「……」
遅刻か……。なんでお婆ちゃん起こしてくれなかったんだよ…。
昨日あんな夜遅くに帰ったから……、
「…夢じゃ、なかったんだ」
テーブルにデッキとデュエルディスク…がある、つまり、あれが夢じゃないって証明されたんだ。
「よし、」
今日はいいや、休もう。氷樫には悪いけど。
「おはよーお婆ちゃん」
「あらおはよう、今朝は遅かったねえ」
「しゃーないじゃん。家事やっとくからお婆ちゃんゆっくりしてなよ」
「そうかい?じゃあお言葉に甘えようかねえ」
佳恵お婆ちゃん、俺の母方のお婆ちゃんで引き取ってくれた人だ。
こんなひねくれた俺でも育ててくれるんだから、すっげえ寛大な人なのは間違いない。
どうせやることないならたまには家の手伝いくらいやらないと……。
「そうじゃ遊紗ちゃん、」
「なに?」
「ポストにお手紙が入っておったけども、友達かい?」
手紙って……誰も俺の家なんて知らないはずだろ……。
「―――!」
「どうしたんだい?遊紗ちゃん」
「…ごめんお婆ちゃん、ちょっと用事できた!!」
「あらまぁ…」
「帰ったら家事やるから!」
クソが…!!アイツらふざけんじゃねえよ!!
―――【栞遊紗、昨日はよくもやってくれたな。】
―――【氷樫雅は俺らが預かった。】
―――【返してほしくば初音町埠頭の倉庫28-3まで来ること。】
―――【暗礁クズキ】
待ってろよ氷樫、必ず助けてやるからな…!!
~~~
――――初音町埠頭倉庫
「氷樫!!」
「来たな」
「!遊紗せんぱーい!」
昨日の三人……よくも…!!
「助ける義理なんてねえだろうに、よく来たなぁ」
「俺が氷樫を助ける義理はないかも知れねえ、だけど俺に復讐するために他人を利用するのが許せないだけだ…!」
「ヘッ!いいこちゃん気取ってんなよ」
コイツら昨日あれだけ打ち負かしてやったのによくもやってくれたじゃねえか。
「落とし前はきっちり着けさせてもらうぜ」
「まぁ待てよ、暴力じゃあ俺たちが圧倒的に不利だ」
「……だろうな」
「つまり、俺とお前がデュエルして、勝ったら氷樫を返してやるよ」
デュエルで勝ったら…まだデュエルはやったことない、つまりこれが初デュエル…!!
なら……!
「良いぜ、上等だ」
「やる気になったな。なら始めるぜ!」
「あぁ―――!!」
《Field set Duel standby》
「うっお…!」
これがデュエルモード…!今まで使ったことなかったからビビった……。
「先行はくれてやる、ハンディーってヤツだ」
「ざけんな、ハンデなんて必要ねえ!」
「なら先攻はもらうぜ!俺は《サイコウルフ》を召喚!」
《ATK:1800/level:4》
攻撃力1800…高めと言ったら高めの攻撃力だな。
「先攻は攻撃ができねえ、ターンエンドだ」
《hand:4》
ヒカルには伏せカードがなくても警戒は解くなって言われたけど………、氷樫になにかあれば俺の責任だ。できれば俺のせいでなんの罪もない誰かを傷付けたくない…。
なら、一気に攻める!!
「俺のターン!…俺は、《Si(シルバーアイス)-グランドフェンリル》を召喚」
《ATK:1700/level:4》
「し、シルバーアイスだァ!?」
「…聞いたことのない……カード…」
コイツの攻撃力が現状俺の持ってる手の中じゃ一番高い…、だけど、高い攻撃力だけが強さじゃないってところ見せてやる!
「グランドフェンリルの効果発動!手札の魔法カードを一枚墓地に送ることで、相手モンスター1体の攻撃力を0にする。スパイラルブレイク!」
「なにっ!?」
《ATK:0》
「すごい!すごいや先輩!」
これで攻撃力は逆転した!
「グランドフェンリルで《サイコウルフ》を攻撃!アイススマッシュ!」
「うっ…ぐ!!」
《Kuzuki life:2300》
「よし…!」
「やったぁ!先輩すごいです!」
氷樫のヤツ、両隣の二人忘れてんじゃねえか……?なにされるかわかんねえのにデュエルに夢中になるなんて隙だらけなヤツ。
だが、これでヤツには一発見舞ってやれた…!
「《サイコウルフ》の効果!破壊され墓地に送られた時、デッキから《サイコウルフ》を特殊召喚できる!」
《ATK:1800/level:4》
「また…カードを一枚伏せてターンエンド」
《hand:3》
「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード《融合》を発動!」
ゆ、ゆうごう……?なんだそれ…。
えっと…特定モンスターを使った召喚法……で合ってたっけ……?
「俺はフィールドの《サイコウルフ》と手札の《サイコアルティメーター》を融合!現れろ!《電脳魔獣 サイコデストラクター》!!」
《ATK:3000/level:8》
「出たぁぁ!!クズキのエースモンスター!」
「コイツには俺達だって敵わねえ、アイツが敵うわけなんか絶対ない!」
「遊紗先輩……」
あれがアイツの切り札……デカいし強そうだけど、どんなヤツだろうが俺のシルバーアイスで必ず倒す!
「サイコデストラクターのバトルする時、相手の魔法・罠効果を無効にする!」
「なっ…!」
「食らえ!サイコデストラクターでグランドフェンリルを攻撃!!バスターショック!」
「ぁ、っぐ…!!」
《Yusa life:2700》
「更に俺は速攻魔法《強化進化》を発動!サイコデストラクターの効果を無効にする代わりに、攻撃力を1000ポイントアップさせもう1度バトルする!」
《ATK:4000》
「なんだと!?」
1ターンに2度目のバトルとか、ふざけてんのかあの野郎…!!
「トドメだ!サイコデストラクターでダイレクトアタック!バスターショックセカンド!」
「よっしゃ!これが決まれば、」
「クズキの勝ちだ!」
「先輩…頑張ってください…」
「終わりだァ!!」
――――――!
「それはどうかな?」
「なに…?」
サイコデストラクターの効果を無効にしてくれなかったら発動できなかったぜ。
「罠発動!!《白銀の蘇生術》!このカードは、このターン破壊された【Si-】と名の付くモンスターを1体選択し、それを攻撃表示で特殊召喚する!甦れ《Si-グランドフェンリル》!」
《ATK:1700/level:4》
「この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン破壊されない…!」
「だが、ダメージは受けてもらうぞ!」
「っ…うぁあああっ!!」
《Yusa life:400》
だけど、これでライフとモンスターをフィールドに残せた…!
アイツが《サイコウルフ》を召喚した時、攻撃力が高い《サイコウルフ》で攻撃して、召喚しただろうモンスターで攻撃――そこをあのカードで狙った、我ながらうまく作戦ができてると思う。
「その場凌ぎで防ぐとは…、ターンエンドだ!!」
《hand:3》
《ATK:3000》
「はぁ…はぁ……っくそ…!」
意外とデュエルってハードなんだな…。なんか思い知らされたぜ。
それに、耐えたとはいえ状況は最悪。手札に逆転の切り札はない…グランドフェンリルだけじゃあのモンスターは倒せないし、バトル中は魔法や罠が使えないとなると…どうすれば…。
「所詮、初心者じゃあ俺達には敵わないよなぁ?」
「なっ…なんでそれ知ってんだよ……」
「先輩が…初心者…?」
「偽善者が不馴れな喧嘩で相手の土俵に踏み込んだら惨敗して大恥!初音学園中でお前は負け犬って呼ばれるだろうなぁ!」
負け犬………だと…!
「大体俺らに喧嘩売ったのが運の尽きだ。独りぼっちで孤高気取った中坊が、人助けなんてするからこうなるんだよ!」
「…ひとり…ぼっち………」
「ホラ、後輩を助けに来た勇気ある先輩を笑ってやるよォ!ガッハハハハハ!」
「負け犬こぞー!」
「大人っぽく気取ってんなよ中坊!」
「先輩……」
ひとり、そうか、やっぱり俺はみんなからそう見られてる。なら、氷樫だって助ける必要はなかった……なら、いっそこのまま―――ひとりになるのも、
「ちがう………」
―――あぁ、そうだ、俺はいつだってひとりだ。信じられるものは自分だけ、最後は自分の力を信じるのみ。
だから、自分でなんとかできるって今回も思ったから、
「俺は今ここにいるんじゃねえか…!」
「な、なんだ…!!」
一人だ、俺は一人だけど、今はこのカードたちを俺と合わせて一人という存在、だから、俺は負けるなんて絶対に許さない!!
――ドクン
「――――!」
高鳴った――――、
確かに俺には感じた、
それは――――、
「――白銀の翼……」
「あァ…?」
「俺のターン、ドロー!俺はグランドフェンリルをリリースし、《天使の召喚通路》を発動。このカードは、フィールドのモンスター1体をリリースして発動しデッキからゲートモンスター二体を守備表示で特殊召喚する」
「ゲート……」
「モンスター…?」
「現れろ《Si-疾風のアルテミス》、《Si-閃光のアマテラス》!」
《DEF:1000/level:3/ring gauge:4》
《DEF:1000/level:3/ring gauge:8》
これで、リングゲージが4と8のモンスターが召喚できた。
あとは、アレを呼び出すだけだ。
「なんだそのカード…!見たことも聞いたこともねえぞ…!!」
「条件は揃った、行くぞ」
「ッ…!?」
「俺は、リングゲージ4のアルテミスとリングゲージ8のアマテラスでアンリミテッドチャージ!!」
「なん、だありゃ……」
「二つの輪を巡る時、新たな境地の扉は開ける。光のアーチよ、輝け!エンジェリング召喚!!」
「エンジェリング……召喚……」
「風を纏う銀河の竜、《Si-空眼の運命竜(エアーアイズフェイトドラゴン)》!!」
《ATK:2500/level:8/ring gauge:8》
これが、俺に力を与える、新たな召喚法―――エンジェリング召喚だ。
「バカな…」
「あんなカード見たことない……」
「空眼の運命竜の効果、発動!相手フィールドのこのモンスター以外の効果を無効にし、攻撃力をエンドフェイズまで二倍にする!ディストーションクリア!」
《ATK:5000》
「効果を!?」
「まだだ、魔法カード《シルバーアイス・ウインド》を発動!【Si-】と名の付くモンスターの攻撃力が変化した時、その攻撃力を二倍にする」
《ATK:10000》
「攻撃力…10000…!?」
「フィニッシュだ、空眼の運命竜でサイコデストラクターを攻撃!白風のシャイニングスパーク!!」
「ひっ…う、ぐ、ぐあああああああ!!!」
《Kuzuki life:0》
《Winner:Yusa Shioli》
――――、…………。
「俺の勝ちだな」
「て、てめえは…一体…」
「………」
「お、おい!野郎共!そいつをやっちまえ!」
「「あ、おう!!」」
「えっ!?ちょっ、先輩!!助けてえ!」
「――――!氷樫!お前らやめろ!」
なんでアイツら氷樫のこと――!!
「やめろって、言ってんだろうが!!」
「ぐふぁっ!!」
「た、タダシ!」
「てめえら…!俺が勝ったんだ、氷樫に手出しすんじゃねえ…!」
「ヒッ……!」
「ご、ごめんなさぁぁぁぁい!!」
「ま、待ってくれえ!!」
………逃げやがったか。…というか、俺勝ったんだ……いつの間にかに…。
「……空眼の、運命竜……?」
なんだ、このカード……。
~~~
「きょ、今日は本当にありがとうございます…」
「礼なんて要らねえ。何度も言わせるなよ、お前を助けるために行ったんじゃない、あくまで俺の名誉のために行っただけだ」
「それでも…嬉しかったです…」
…誰かに守ってもらえることが、助けてもらえることが嬉しいなんて……変なヤツだな。
「……じゃ、俺の家こっちだから」
「ぁ…あの!」
「……なに」
「よければ、また学校で…声をかけていいですか……?」
「……………」
ホント変なヤツ。
「……勝手にしろ」
「…!あ、ありがとうございます!!また、明日学校で!」
「…じゃあな」
「わぁぁ…!」
勝手に感動しやがって、………、なんで俺になんか。
~~~
「………」
空眼の運命竜…コイツは一体何者なんだ…?
デュエル中の記憶が途切れ途切れだ。
―――………もしかして、
「お父さん、お母さん……俺は―――」
俺は、やっぱり――生きていたらいけないのかな。
楽しむことが、許されないのかな…。
「……みんな…」
デュエルで、なにか変われたらなんてムシの良い話あるわけなかったんだ。
だったら、
「お父さん、お母さん、明日そこに行くから」
2話に続く
=================
【あとがき】
今回の一言、「主人公が重い」。
前代未聞の設定の重さ、扱いづらさが史上最高レベルとかさすがに俺も困りますから本当に。
やっと一話更新になりました。Museなんかより早いとか言うんじゃない。
遊紗の設定がちょっと出てくるようにしてこれだよ!さすがネタバレの塊、これは次回以降のネタバレが危ういことになるね。
エンジェリング召喚した時の遊紗はARC-V一話の遊矢くんみたいに別人になってる感じ?なのかな。とりあえず遊紗の意識じゃないのでデュエルに勝ったって言うのはデュエルディスクで確認しました。
リアルファイターすぎる主人公でなにより、不良とはこうあるべきだけど祖母孝行しすぎやしませんか。
そしてなによりも!!皆さん、あの屋敷にいたヒカルという謎の人物!!さぁ本物なんでしょうかね!!つかヒカルって名前は別に珍しくないからね!
屋敷で聞いたデュエルやデッキのこと以外の話は次回で判明します、どんなこと話したのかなかな?
次回!遊紗の暗い過去、そして不思議な不思議な図書館の不思議な少年とは?
10月のある日、ある事故で両親を亡くした遊紗はある場所に来ていた。そして次の日、図書室で見つけた秘密の部屋…そこには……。
【予告】
10月のある日に起きたある事故で両親を亡くした遊紗は両親の亡くなったある場所に来ていた。
デュエルを始めたこと、人助けをしたことを良しと思わない遊紗はそこにデッキを置いていってしまう。
次の日、氷樫を助けたことが学園の噂になってしまい、図書館に逃げ込む。しかし、そこには不思議すぎる秘密が隠されていた。
次回!第2話「図書室の魔術師 園舞緋式」
【本日のカード紹介】
《Si-空眼の運命竜》
読み→シルバーアイス-エアーアイズフェイトドラゴン
level:8/ATK:2500/DEF:2000/ring gauge:8/エンジェリング
①リングゲージ4のモンスター×リングゲージ8のモンスター。
②このモンスターはエンジェリング召喚でしか特殊召喚することができない。
③このモンスターが召喚に成功した場合、フィールドに存在するこのモンスター以外の効果を無効にし、次の相手のエンドフェイズまで攻撃力を二倍にする。
④1ターンに1度、自分のフィールドに存在するゲートモンスターを1体墓地に送ることで相手のフィールドのカードを二枚まで手札に戻すことができる。
『作者からコメント!』
遊紗の使うエースモンスターの1つ、《Si-空眼の運命竜》!
強力なバウンス能力や攻撃力二倍効果を駆使して、強大な敵に向かっていきます!!
新召喚法「エンジェリング召喚」でしか呼び出せない特殊なモンスターではありますが、遊紗の圧倒的閃きできっと強さを発揮するでしょう!!
※深夜0時~5時までのコメントや読者登録はマナー違反です。おやめください。
===
TRIGGER.001「白銀の氷」
――――明見空市、初音町
「おい~いいだろ?」
「や、やや…やめ……くだ、さ……」
「聞こえねえなぁ?ちょっと付き合えって言ってるだけだろ?」
「ぼ、ぼく…ががっ…学校が……」
――――、
「知らねえよンなモンよォ?」
「じゃあ金だけでも、いつも通りだろ?」
「きょ…今日は持って…な……」
――――、
――――――、
「アァン?ナメてんのかテメエ!」
「ひっ…!」
「いっつも持っとけって言ってンだろうがグズ野郎!」
「だ、だって昨日のが、さ、最後だから……」
――――――、
――――、
「だったら親からでも―――」
「邪魔、」
「あ…?」
いい加減邪魔臭いんだよグズ。
「ここ公道、アンタら邪魔なんだけど」
「ガキが一丁前に命令してンじゃねえよ、やんのかゴラ」
「…………」
「―――、」
「……!」
邪魔なのがまず一人減った…と、
「テメエ!!俺らの獲物逃がしやがって!」
「耳元でうるせえ、少しは黙れねえのかよ」
「中坊…!!」
「やんのかよ、良いぜ。掛かってこいよ」
喧嘩上等、売られたなら買うしかねえだろ。
「後悔しても知らねえからな!クソガキ!」
~~~
――――初音学園中等部
――キーンコーンカーンコーン……
「全くお前は!!」
「………」
「あれだけ言ってまだ分からんのか!校内でも、校外でも喧嘩はするな!聞いているのか?!」
退屈な話、もう同じ話を何十回聞いたか分からない。
「なぁ知ってるかアイツ…」
「聞いた聞いた!2年A組の…」
「朝っぱらから高校生三人ボコボコにしたらしいぜ…」
「うわぁ…近づきたくねえ…」
みんな、みんな俺を遠巻きに見る。
それは全く構わない、むしろ近付いてくる奴がいたなら面白くて腹抱えて笑うだろうし。
退屈な日常、つまらない日々。
なにか、……楽しいことはないのか。…なんて簡単に思い付くわけねえけど。
「…!」
「………」
「あ、あの…!!」
「…なに……、お前…さっきの」
「さ、さっきはあ、ありがとう…ございます……」
……律儀な奴。
「勘違いすんなよ、道にあんなん突っ立ってたら邪魔だろうが」
「そう…だったんですか……」
制服の色的に、一年か…俺のこと知らなくても…いや、半年もしたら俺のことくらい知ってるはず……ビビってないのか、コイツ。
「……震えてんの?」
「ッ!ご、ごめんなさい!!」
「謝らなくていい。目付き悪いってよく言われる。……お前、名前は?」
「あ、あう…えっと…氷樫雅、です…」
氷樫……か、
「栞遊紗だ、遊紗でいい」
~~~
――キーンコーンカーンコーン……
「……」
昇降口、…なんだけど。
「……なんだこれ」
下駄箱に紙の束…今までにない新手のいじめか?
別にこれくらいどうってことねえけど。
やった奴見つけ出して一発殴るくらいはしねえと反省しないだろうし。
「…地図…?」
ここに来いってことか、朝の連中か?何にしても行くけど。
…最寄り駅は――ここから10駅近いな…。明見空の外れじゃ…。つか、外れどころかここって……。
「ゆ、遊紗先輩…?」
「…悪い、野暮用あるから。また明日な」
「は…はい…!」
家寄ってから行っても20分くらいで行けるか。さっさと着替えていくか。
氷樫のヤツ置いてきてよかったのかな…また朝の連中に取っ捕まってなければいいけど。
…なに考えてんだよ俺。アイツがどうなろうが知らねえって話だっての。
~~~
「はぁ……」
な、なにここ……。
マジで心霊スポット扱いされてるんだな。
こんなところの地図寄越してきたバカは誰だよって話だ。
で、ここに人がいるのか。
人が住んでるなんて聞いたこと――。
――ギィィ…
「…!!うぉっ!?」
なんだよ今の…刃物か?カマイタチってヤツか?
狙ってきたのは頭と足と胸辺り…か、避けなかったら死んでたぞ…!一体なに考えて――!!
「何者だ、お前」
「…アンタは……」
「ここの家主だよ。何の用だ?初見であれを避けたんだ、誰かに聞いたのか?」
家主……知らないってことは、この地図と紙束置いたのはアイツじゃないのか。
「地図と紙束をもらった、それを辿ったらここに着いただけだ」
「紙束………!」
「コイツ、なんなんだよ。なんで俺の靴箱に…」
「……入れ、教えてやる」
教えて、って………そんな重要なんだ、この紙束。
「ここって人住めたんだ…」
「まぁ…掃除に手間はとったが……って、お前、名前くらいは名乗ったらどうなんだ」
「…栞遊紗…」
「遊紗……?……」
驚かれた、俺の名前おかしいか…?
「そういうアンタは?」
「…ヒカルでいい」
ヒカル…か。年はかわらな…いや、俺より背高いぞコイツ……。背高いの…いいなぁ……。
「適当に座っていいから。安心しろ、今日は面倒なヤツいないから」
「面倒なヤツ?」
「まっ、いつか分かる。じゃあまずはその紙束の正体を教えてやる」
紙束の正体……か。
「それは、デュエルモンスターズっていうカードゲームのカードを集めたデッキだ」
「デッキ……」
「ちょっと貸してくれ」
「あ、はい」
「…………見たことのないカードだな、偽装品ではないみたいだけど…お前、どこで手に入れた?」
ヒカルが見たことないなら、そんなん分かるわけないし…ただ靴箱に入ってただけだ。
「知らねえ」
「自分で持ってきたくせによく言うな…で、お前はこれを紙束って言ったな。つまり、初心者か」
「…まぁ。ルールも知らないし……!」
シルバーアイス……銀色の氷……銀か。
「銀色好きなのか」
「えっ、まぁ…」
みんなは金が一番とか言ってるけど、多分俺は銀が一番だと思う。
銀は月とか星を表してる、誰も手に入れることができない孤高が、羨ましい…と思う。
「ルール、興味あるなら教えてやるけど」
「…!本当か!」
「嘘つくように見えるか?俺はデュエリストだ、デュエリストを増やすことに悪いことはない。そういうことだ」
聞いてみるだけ聞いてみるのも悪くないか…。
「なら、教えてくれ」
「…分かったよ、なるべく初心者にも分かりやすいように教えてやる」
もし、これになにか意味があるなら、きっと……。
~~~
――ピピピピピピ…カシャッ
「……」
遅刻か……。なんでお婆ちゃん起こしてくれなかったんだよ…。
昨日あんな夜遅くに帰ったから……、
「…夢じゃ、なかったんだ」
テーブルにデッキとデュエルディスク…がある、つまり、あれが夢じゃないって証明されたんだ。
「よし、」
今日はいいや、休もう。氷樫には悪いけど。
「おはよーお婆ちゃん」
「あらおはよう、今朝は遅かったねえ」
「しゃーないじゃん。家事やっとくからお婆ちゃんゆっくりしてなよ」
「そうかい?じゃあお言葉に甘えようかねえ」
佳恵お婆ちゃん、俺の母方のお婆ちゃんで引き取ってくれた人だ。
こんなひねくれた俺でも育ててくれるんだから、すっげえ寛大な人なのは間違いない。
どうせやることないならたまには家の手伝いくらいやらないと……。
「そうじゃ遊紗ちゃん、」
「なに?」
「ポストにお手紙が入っておったけども、友達かい?」
手紙って……誰も俺の家なんて知らないはずだろ……。
「―――!」
「どうしたんだい?遊紗ちゃん」
「…ごめんお婆ちゃん、ちょっと用事できた!!」
「あらまぁ…」
「帰ったら家事やるから!」
クソが…!!アイツらふざけんじゃねえよ!!
―――【栞遊紗、昨日はよくもやってくれたな。】
―――【氷樫雅は俺らが預かった。】
―――【返してほしくば初音町埠頭の倉庫28-3まで来ること。】
―――【暗礁クズキ】
待ってろよ氷樫、必ず助けてやるからな…!!
~~~
――――初音町埠頭倉庫
「氷樫!!」
「来たな」
「!遊紗せんぱーい!」
昨日の三人……よくも…!!
「助ける義理なんてねえだろうに、よく来たなぁ」
「俺が氷樫を助ける義理はないかも知れねえ、だけど俺に復讐するために他人を利用するのが許せないだけだ…!」
「ヘッ!いいこちゃん気取ってんなよ」
コイツら昨日あれだけ打ち負かしてやったのによくもやってくれたじゃねえか。
「落とし前はきっちり着けさせてもらうぜ」
「まぁ待てよ、暴力じゃあ俺たちが圧倒的に不利だ」
「……だろうな」
「つまり、俺とお前がデュエルして、勝ったら氷樫を返してやるよ」
デュエルで勝ったら…まだデュエルはやったことない、つまりこれが初デュエル…!!
なら……!
「良いぜ、上等だ」
「やる気になったな。なら始めるぜ!」
「あぁ―――!!」
《Field set Duel standby》
「うっお…!」
これがデュエルモード…!今まで使ったことなかったからビビった……。
「先行はくれてやる、ハンディーってヤツだ」
「ざけんな、ハンデなんて必要ねえ!」
「なら先攻はもらうぜ!俺は《サイコウルフ》を召喚!」
《ATK:1800/level:4》
攻撃力1800…高めと言ったら高めの攻撃力だな。
「先攻は攻撃ができねえ、ターンエンドだ」
《hand:4》
ヒカルには伏せカードがなくても警戒は解くなって言われたけど………、氷樫になにかあれば俺の責任だ。できれば俺のせいでなんの罪もない誰かを傷付けたくない…。
なら、一気に攻める!!
「俺のターン!…俺は、《Si(シルバーアイス)-グランドフェンリル》を召喚」
《ATK:1700/level:4》
「し、シルバーアイスだァ!?」
「…聞いたことのない……カード…」
コイツの攻撃力が現状俺の持ってる手の中じゃ一番高い…、だけど、高い攻撃力だけが強さじゃないってところ見せてやる!
「グランドフェンリルの効果発動!手札の魔法カードを一枚墓地に送ることで、相手モンスター1体の攻撃力を0にする。スパイラルブレイク!」
「なにっ!?」
《ATK:0》
「すごい!すごいや先輩!」
これで攻撃力は逆転した!
「グランドフェンリルで《サイコウルフ》を攻撃!アイススマッシュ!」
「うっ…ぐ!!」
《Kuzuki life:2300》
「よし…!」
「やったぁ!先輩すごいです!」
氷樫のヤツ、両隣の二人忘れてんじゃねえか……?なにされるかわかんねえのにデュエルに夢中になるなんて隙だらけなヤツ。
だが、これでヤツには一発見舞ってやれた…!
「《サイコウルフ》の効果!破壊され墓地に送られた時、デッキから《サイコウルフ》を特殊召喚できる!」
《ATK:1800/level:4》
「また…カードを一枚伏せてターンエンド」
《hand:3》
「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード《融合》を発動!」
ゆ、ゆうごう……?なんだそれ…。
えっと…特定モンスターを使った召喚法……で合ってたっけ……?
「俺はフィールドの《サイコウルフ》と手札の《サイコアルティメーター》を融合!現れろ!《電脳魔獣 サイコデストラクター》!!」
《ATK:3000/level:8》
「出たぁぁ!!クズキのエースモンスター!」
「コイツには俺達だって敵わねえ、アイツが敵うわけなんか絶対ない!」
「遊紗先輩……」
あれがアイツの切り札……デカいし強そうだけど、どんなヤツだろうが俺のシルバーアイスで必ず倒す!
「サイコデストラクターのバトルする時、相手の魔法・罠効果を無効にする!」
「なっ…!」
「食らえ!サイコデストラクターでグランドフェンリルを攻撃!!バスターショック!」
「ぁ、っぐ…!!」
《Yusa life:2700》
「更に俺は速攻魔法《強化進化》を発動!サイコデストラクターの効果を無効にする代わりに、攻撃力を1000ポイントアップさせもう1度バトルする!」
《ATK:4000》
「なんだと!?」
1ターンに2度目のバトルとか、ふざけてんのかあの野郎…!!
「トドメだ!サイコデストラクターでダイレクトアタック!バスターショックセカンド!」
「よっしゃ!これが決まれば、」
「クズキの勝ちだ!」
「先輩…頑張ってください…」
「終わりだァ!!」
――――――!
「それはどうかな?」
「なに…?」
サイコデストラクターの効果を無効にしてくれなかったら発動できなかったぜ。
「罠発動!!《白銀の蘇生術》!このカードは、このターン破壊された【Si-】と名の付くモンスターを1体選択し、それを攻撃表示で特殊召喚する!甦れ《Si-グランドフェンリル》!」
《ATK:1700/level:4》
「この効果で特殊召喚されたモンスターはこのターン破壊されない…!」
「だが、ダメージは受けてもらうぞ!」
「っ…うぁあああっ!!」
《Yusa life:400》
だけど、これでライフとモンスターをフィールドに残せた…!
アイツが《サイコウルフ》を召喚した時、攻撃力が高い《サイコウルフ》で攻撃して、召喚しただろうモンスターで攻撃――そこをあのカードで狙った、我ながらうまく作戦ができてると思う。
「その場凌ぎで防ぐとは…、ターンエンドだ!!」
《hand:3》
《ATK:3000》
「はぁ…はぁ……っくそ…!」
意外とデュエルってハードなんだな…。なんか思い知らされたぜ。
それに、耐えたとはいえ状況は最悪。手札に逆転の切り札はない…グランドフェンリルだけじゃあのモンスターは倒せないし、バトル中は魔法や罠が使えないとなると…どうすれば…。
「所詮、初心者じゃあ俺達には敵わないよなぁ?」
「なっ…なんでそれ知ってんだよ……」
「先輩が…初心者…?」
「偽善者が不馴れな喧嘩で相手の土俵に踏み込んだら惨敗して大恥!初音学園中でお前は負け犬って呼ばれるだろうなぁ!」
負け犬………だと…!
「大体俺らに喧嘩売ったのが運の尽きだ。独りぼっちで孤高気取った中坊が、人助けなんてするからこうなるんだよ!」
「…ひとり…ぼっち………」
「ホラ、後輩を助けに来た勇気ある先輩を笑ってやるよォ!ガッハハハハハ!」
「負け犬こぞー!」
「大人っぽく気取ってんなよ中坊!」
「先輩……」
ひとり、そうか、やっぱり俺はみんなからそう見られてる。なら、氷樫だって助ける必要はなかった……なら、いっそこのまま―――ひとりになるのも、
「ちがう………」
―――あぁ、そうだ、俺はいつだってひとりだ。信じられるものは自分だけ、最後は自分の力を信じるのみ。
だから、自分でなんとかできるって今回も思ったから、
「俺は今ここにいるんじゃねえか…!」
「な、なんだ…!!」
一人だ、俺は一人だけど、今はこのカードたちを俺と合わせて一人という存在、だから、俺は負けるなんて絶対に許さない!!
――ドクン
「――――!」
高鳴った――――、
確かに俺には感じた、
それは――――、
「――白銀の翼……」
「あァ…?」
「俺のターン、ドロー!俺はグランドフェンリルをリリースし、《天使の召喚通路》を発動。このカードは、フィールドのモンスター1体をリリースして発動しデッキからゲートモンスター二体を守備表示で特殊召喚する」
「ゲート……」
「モンスター…?」
「現れろ《Si-疾風のアルテミス》、《Si-閃光のアマテラス》!」
《DEF:1000/level:3/ring gauge:4》
《DEF:1000/level:3/ring gauge:8》
これで、リングゲージが4と8のモンスターが召喚できた。
あとは、アレを呼び出すだけだ。
「なんだそのカード…!見たことも聞いたこともねえぞ…!!」
「条件は揃った、行くぞ」
「ッ…!?」
「俺は、リングゲージ4のアルテミスとリングゲージ8のアマテラスでアンリミテッドチャージ!!」
「なん、だありゃ……」
「二つの輪を巡る時、新たな境地の扉は開ける。光のアーチよ、輝け!エンジェリング召喚!!」
「エンジェリング……召喚……」
「風を纏う銀河の竜、《Si-空眼の運命竜(エアーアイズフェイトドラゴン)》!!」
《ATK:2500/level:8/ring gauge:8》
これが、俺に力を与える、新たな召喚法―――エンジェリング召喚だ。
「バカな…」
「あんなカード見たことない……」
「空眼の運命竜の効果、発動!相手フィールドのこのモンスター以外の効果を無効にし、攻撃力をエンドフェイズまで二倍にする!ディストーションクリア!」
《ATK:5000》
「効果を!?」
「まだだ、魔法カード《シルバーアイス・ウインド》を発動!【Si-】と名の付くモンスターの攻撃力が変化した時、その攻撃力を二倍にする」
《ATK:10000》
「攻撃力…10000…!?」
「フィニッシュだ、空眼の運命竜でサイコデストラクターを攻撃!白風のシャイニングスパーク!!」
「ひっ…う、ぐ、ぐあああああああ!!!」
《Kuzuki life:0》
《Winner:Yusa Shioli》
――――、…………。
「俺の勝ちだな」
「て、てめえは…一体…」
「………」
「お、おい!野郎共!そいつをやっちまえ!」
「「あ、おう!!」」
「えっ!?ちょっ、先輩!!助けてえ!」
「――――!氷樫!お前らやめろ!」
なんでアイツら氷樫のこと――!!
「やめろって、言ってんだろうが!!」
「ぐふぁっ!!」
「た、タダシ!」
「てめえら…!俺が勝ったんだ、氷樫に手出しすんじゃねえ…!」
「ヒッ……!」
「ご、ごめんなさぁぁぁぁい!!」
「ま、待ってくれえ!!」
………逃げやがったか。…というか、俺勝ったんだ……いつの間にかに…。
「……空眼の、運命竜……?」
なんだ、このカード……。
~~~
「きょ、今日は本当にありがとうございます…」
「礼なんて要らねえ。何度も言わせるなよ、お前を助けるために行ったんじゃない、あくまで俺の名誉のために行っただけだ」
「それでも…嬉しかったです…」
…誰かに守ってもらえることが、助けてもらえることが嬉しいなんて……変なヤツだな。
「……じゃ、俺の家こっちだから」
「ぁ…あの!」
「……なに」
「よければ、また学校で…声をかけていいですか……?」
「……………」
ホント変なヤツ。
「……勝手にしろ」
「…!あ、ありがとうございます!!また、明日学校で!」
「…じゃあな」
「わぁぁ…!」
勝手に感動しやがって、………、なんで俺になんか。
~~~
「………」
空眼の運命竜…コイツは一体何者なんだ…?
デュエル中の記憶が途切れ途切れだ。
―――………もしかして、
「お父さん、お母さん……俺は―――」
俺は、やっぱり――生きていたらいけないのかな。
楽しむことが、許されないのかな…。
「……みんな…」
デュエルで、なにか変われたらなんてムシの良い話あるわけなかったんだ。
だったら、
「お父さん、お母さん、明日そこに行くから」
2話に続く
=================
【あとがき】
今回の一言、「主人公が重い」。
前代未聞の設定の重さ、扱いづらさが史上最高レベルとかさすがに俺も困りますから本当に。
やっと一話更新になりました。
遊紗の設定がちょっと出てくるようにしてこれだよ!さすがネタバレの塊、これは次回以降のネタバレが危ういことになるね。
エンジェリング召喚した時の遊紗はARC-V一話の遊矢くんみたいに別人になってる感じ?なのかな。とりあえず遊紗の意識じゃないのでデュエルに勝ったって言うのはデュエルディスクで確認しました。
リアルファイターすぎる主人公でなにより、不良とはこうあるべきだけど祖母孝行しすぎやしませんか。
そしてなによりも!!皆さん、あの屋敷にいたヒカルという謎の人物!!さぁ本物なんでしょうかね!!つかヒカルって名前は別に珍しくないからね!
屋敷で聞いたデュエルやデッキのこと以外の話は次回で判明します、どんなこと話したのかなかな?
次回!遊紗の暗い過去、そして不思議な不思議な図書館の不思議な少年とは?
10月のある日、ある事故で両親を亡くした遊紗はある場所に来ていた。そして次の日、図書室で見つけた秘密の部屋…そこには……。
【予告】
10月のある日に起きたある事故で両親を亡くした遊紗は両親の亡くなったある場所に来ていた。
デュエルを始めたこと、人助けをしたことを良しと思わない遊紗はそこにデッキを置いていってしまう。
次の日、氷樫を助けたことが学園の噂になってしまい、図書館に逃げ込む。しかし、そこには不思議すぎる秘密が隠されていた。
次回!第2話「図書室の魔術師 園舞緋式」
【本日のカード紹介】
《Si-空眼の運命竜》
読み→シルバーアイス-エアーアイズフェイトドラゴン
level:8/ATK:2500/DEF:2000/ring gauge:8/エンジェリング
①リングゲージ4のモンスター×リングゲージ8のモンスター。
②このモンスターはエンジェリング召喚でしか特殊召喚することができない。
③このモンスターが召喚に成功した場合、フィールドに存在するこのモンスター以外の効果を無効にし、次の相手のエンドフェイズまで攻撃力を二倍にする。
④1ターンに1度、自分のフィールドに存在するゲートモンスターを1体墓地に送ることで相手のフィールドのカードを二枚まで手札に戻すことができる。
『作者からコメント!』
遊紗の使うエースモンスターの1つ、《Si-空眼の運命竜》!
強力なバウンス能力や攻撃力二倍効果を駆使して、強大な敵に向かっていきます!!
新召喚法「エンジェリング召喚」でしか呼び出せない特殊なモンスターではありますが、遊紗の圧倒的閃きできっと強さを発揮するでしょう!!