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ーーキーンコーン


「愛里ー!」

新学期の学園は昨日の入学式を終えて、新しい一年生も迎え入れていた。
私ーー園依愛里は呼ばれた方向に顔を上げる。

「あっ!香奈ちゃん!穂香ちゃん!」

「やっほ~!」

二人のいる二階へ歩を進める。
御崎香奈ちゃんと相生穂香ちゃんは私のこの学園に入学してから出会った友達、春休みは私が忙しくて会えなかったんだけど会えて良かった。
西棟二階の階段を駆け上がると二人が待ってくれていた。
香奈ちゃんがクラス替えの電工掲示板を見て新しいクラスを教えてくれた、良かったぁみんな一緒だぁ!……アイツもね。

「久しぶりだよね、終業式以来かな?」
「私は春休みは毎日愛里の後ろにいたよ?」
「えぇっ!?」
「ウソだよ…」

良かった…本当にずっと後ろにいたなら香奈ちゃんとは少し距離を置かなきゃならなかった…。

「そう言えば、今日は遊斗くん来てないね」
「えっ!?」
「新学期早々にサボりなんてね~。愛里、なんか聞いてない?」
「ん~…まぁ…聞いてるには聞いてるんだけど…」

…まさか今日だったとは……。

~~~

お気に入りのスケボーが風を切りながら進んできて数時間。
朝の風がむちゃくちゃ気持ちいい、空腹を堪えるには十分すぎる風に浸っていたいんだけどそうもいかない。
到着が近い、後400m先の崖を使って町に入らなきゃならないこともしっかり頭に入ってる。

グッと顎を引いて風や石ころが顔に直撃しないようにして崖を猛スピードで翔んだ。
ボードに内蔵された翼を広げ、町の壁も越えていく。町が小さく見えて人なんか見えないくらい小さい。

ーーザワッ

「見ろ!空に少年が!」

「危ないわ!」

地上を走るのも嫌いじゃないけど空を翔ぶ感覚はジェットコースターみたいで大好きだ。

「ヒュ~♪やっぱキレイな町ッスね~」

ネオドミノは工業排水ならなんやらで空気が汚いからそう感じるのかな?

「でもまぁ…早いとこ探し出して帰りてぇッス」

~~~

「確か知り合いが来るって…」

遊斗の唯一無二のライバルにして、大親友でもある少年が。


~~~

【Charge-1 再会の二人


「ふふーんふー…んん!!?」

飛んで、気付いたら川の上。どうやらとか多分ってレベルじゃなくて間違いなく川に落ちるのは不回避。
どんどん水面が近づいてくる、まずい。

「あ~…でも春だし暖かくなってきたから多分涼しいんじゃって…ンなわけあるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

ーーーバッシャァァァン

ブクブクと水の中から出てきて辺りを見渡す。川原は水浸しで金髪の男の人にも掛かっちゃったみたいだ、あとで謝んないと。

「うっわ…これはひどいッス…とりあえず…上がらないとっダメッスね」

スケボーに荷物が置いてあるのを確認した。置いといて良かったぁ……。
浮いたスケボーを押して泳いで岸に辿り着く。

「うっへ……キレイな川で良かった……」

「よっ!」

「はい…?」

男の人が声をかけてきたみたい、ゴーグルを外すと大親友が笑顔で手を振っていた……びしょ濡れだけど。

「久しぶりだな!レン!」
「ゆ、遊斗!こんなとこいたッスか!」
「あぁ~待ち合わせ場所に行こうとしてたら宙に浮いたスケボー見つけてさ、追い掛けたらレンだった上にこのザマだよ」
「ご…ごめんッス…」

さっきの金髪は遊斗だったんだ……余計に罪悪感が…っていうか遊斗って白髪メッシュだったっけ?
……まぁ…何年かぶりだし、いっか。

ーーーぐぅぅ…

「あ、」
「朝飯の時間だし、食いに行くか!」
「おうッス!」

朝飯のため、町中に歩き出した。

ーーーー

つい3日前、

ーーーピルルルルルル

「もしもーし」
《あれ?遊斗くんかしら?声低くなったわね~》
「ど…どちら様ですか…」
《覚えてない?ほら、太刀風レンって覚えてる?》

太刀風レン、小さい頃に俺が出会った親友にしてライバルだ。俺の1つ年下で、ネオドミノシティに遊びに行った時知り合ったんだ。
確か……可愛いオレンジの髪の女の子連れてたよな~名前は……り…りい……りいちゃんだっけかな?…忘れた。

「はい!ええっと…レンは一人っ子だったはずだから…和奏さん!」
《…はい当たり!レンのお母さんよ!》
「にしても、なんで急に?」
《それがね?レンが聖録学園に進学するらしくて…しばらくセインメモリシティに滞在するんだけど…》

レンのお母さんの言いたいことは、セインメモリの聖録学園とネオドミノのデュエルアカデミアの交換生徒の一年代表でレンが選ばれたから、一年間聖録学園にに来るとか。
んで、滞在場所を探してる時に俺のことを思い出して電話してきたそうだ。

「別に構わないですよ?」
《でも両親に相談は…》
「今、どっちも上層部命令で海外行ってるんで、気にしないでください」
《そう?じゃあ3日後、よろしくね》
「はい!」

ーーー

そんなわけでレンはここに来たとか。だから今日は二人揃ってサボりなわけ。

で、俺は聖遊斗。聖録学園中等部二年の14歳だ。色々事情はあるけど、今は一人暮らししてる。
家はでかいし、父さん母さんの部屋とか以外に空いた部屋が多すぎるんだ。

「11時間!?夜食もなし!?」
「うーん、忘れちゃったんスよねー!」
「だからあの豪快な腹の音か…」

ファストフード店、朝飯のバーガーを頬張りながら嬉しそうにそんな話をしていた。…ちなみにこれは俺の自腹だ。

「食ったら家に移動しような!」
「うん…!」

「あぁ!?やんのかゴラァ!」
「おやめくださいお客様…」

「ん…?」

植物や小さい壁を挟んだ先、どうやら例のアホが暴れてるみたいだ。

「んだとクソアマ!ここはお客様に対してそんな態度なのかよォ!」
「ですから、…他のお客様にご迷惑ですので…」
「ハァ?んなの我慢させろや!アァ?」

「うっわぁ…マーカー付きかぁ…関わりたくないッスね」
「…」

あんまり奴らとは絡みたくない、だけど一般人に迷惑をかけるのはやっちゃいけないことだ。なら、やるしかないか。

「…遊斗?」

「あぁ腹立つ!なんなんだこの店ァ」
「…おい」
「なんだよてめっうっぼぁあぁぁぁぁ!!?」

「アー…!?」

顔面に鉄拳制裁、まずはウェイトレスさんに迷惑かけた分な。ってわけで、

「……デュエルしようぜ」

「…ゲホッ…!な、なにしやがるクソガキ!!人様殴っといてデュエルとかざけんじゃねえ!」
「人様に迷惑かける犯罪者野郎が言えた義理じゃねえだろ、唯一の慈悲だしありがたく思いやがれ」
「ぐぬぬ……」

「ゆ…遊斗ってあんなヤツだったっけ…」

中々引き下がらない犯罪者予備軍(つか犯罪者)に交換条件を持ち出した。
デュエルで俺が勝ったら出ていく、でコイツが勝ったら好きにしていいし俺が1つだけ何でもやってやるっていうこと。
ま、俺が負けるなんてありえないんだけど。

「……い、良いぜ…だけどな、相手をするのは俺じゃないぜ」
「敵前逃亡か?まぁ好きにしな」
「ヘッ…お前の相手はな」

野郎の後ろからスーツを着た外人が現れた、安定のマーカー付き。…いや、それ以上に…。

「ストリートデュエルランキングでも2位の実力を誇る俺の兄貴、ヘルチェル様だ!」
「何度も言わせるな、兄貴ではない」

「反逆軍……か」
「連れが世話をかけたな、その点は謝罪しよう」
「まぁ、アンタが謝ることないぜ。ヘルチェル・レギロッテさん」
「…!なるほど、まぁいい。デュエルは受ける。連れを殴ったこと、後悔させてやる」
「ああ、アンタも端整な顔面が潰れないように努力しな」

反逆軍……確か、この町のシステムやら何やらが気にくわない連中が集まって謀反起こそうとか考えてる物騒な連中だったか……。

「行くぞ!」

《ARworld set on》

「「デュエル!!」」
《両者ライフ:4000/手札:5》

この前のデュエルモンスターズルール改訂で先攻ドローはできなくなったんだよな、忘れそうになるぜ。

「先攻は俺がもらうぞ」

「どーぞ」

「俺はモンスターを裏守備表示でセット、カードを一枚伏せてターンエンドだ」
《手札:3》

先攻仕掛けたわりにそれだけか、まぁいいけどさ。

「俺のターン、ドロー!…俺は《炎の記録天使(メモリアエンジェル) ウリエル》を召喚!」
《攻撃力:1600/レベル:4》

「め…記録天使だと!?」

「懐かしいなぁ…あの頃からデッキ、変わってないんスね」

レンに見せるのは久々だよな。そりゃあ強くなったし色々新しくもなったからな、見せてやる、俺のデュエル!

「俺は装備魔法《神炎の剣》をウリエルに装備!これによりウリエルは攻撃力は800ポイントアップし魔法罠の効果を受けない!更にウリエルは守備モンスターに攻撃した時に貫通ダメージを与える!」
《攻撃力:1600→2400》

「あの男の子面白い!」
「記録天使なんて聞いたことないがなぁ…」
「大会出たことないのか?」

大会……か、出たことないな。公式戦は。

「いけっウリエルで裏守備モンスターに攻撃!フレイムスラッシュ!!」

「裏守備モンスターは《スネークバタフライ》だ」
《守備力:800/レベル:4》

守備力800か、思っていた以上に弱い…いや、そうじゃない。

「っ!」
《ヘルチェルのライフ:4000→2400》

「よしっ!攻撃が通ったッス!」

「兄貴~!」
「煩い!!《スネークバタフライ》の効果発動!バトルで破壊された時、相手モンスター1体を破壊し500ポイントのダメージを与える」

「ウリエル…!」
《遊斗のライフ:4000→3500》

「《神炎の剣》の効果発動!墓地に送られた時、除外することでウリエルを手札に戻し、カードを一枚ドローする!!」

…次のターンで決める!

「カードを1枚伏せ、ターンエンド!」
《手札:5》

「俺のターン!…俺の勝利は決まったな」

「……」

「来るぜ、兄貴のエースモンスターが!」

確かコイツのエースは……、まぁ一時の妄想を楽しめばいいさ。

「俺は永続罠《リビングデットの呼び声》を発動!蘇れ《スネークバタフライ》!」
《攻撃力:100》

「更に、チューナーモンスター《チューニングコックローチ》を召喚」
《攻撃力:1000/レベル:3/チューナー》

チューナー…なるほど、シンクロ使いか!

「レベル4の《スネークバタフライ》にレベル3の《チューニングコックローチ》をチューニング!シンクロ召喚!《女王蜘蛛 ベノムスパイダー》!!」
《攻撃力:3000/レベル:7/シンクロ》

「シンクロ召喚…チューナーとチューナー以外のモンスターのレベル合計と同数になるシンクロモンスターを呼び出す召喚法…俺も使うけどいきなり攻撃力の高いモンスターッスね、…どうするッスか、遊斗」

シンクロかぁ…別にストリートじゃ良くある話だし、問題は効果だ。

「ベノムスパイダーは1ターンに1度、相手フィールドに《スパイダートークン》を特殊召喚する」

《攻撃力:0/レベル:1》
「…気色わりぃ…」

「行け!ベノムスパイダーで《スパイダートークン》に攻撃!ベノムスパイダーの攻撃する時、相手の魔法・罠を無効にする!ベノムバレット!!」

「……!」
《遊斗のライフ:3500→500》

「《スパイダートークン》は破壊された時、プレイヤーに300ポイントのダメージを与える!」

《遊斗のライフ:500→200》

………。

「遊斗追い込まれてるじゃないッスか!」

「フッ…言ったろう、お前は勝てない」

あーあ、周りからざわついてんのが聞こえてるよ。負けると思ってんのかな…。

「…勝てるとか言ってるけどそもそもこのターン中にたかが3500のライフを削りきれないなんてお前、本当にストリートで2位かよ」

「なっ…ライフ200がなにを…」

「ベノムスパイダーのバトル終了時、罠発動《リチュアル・オブ・ディセント》!このカードは2000ポイント以上ダメージを受けたバトルフェイズ時、手札のレベル4以下天使族モンスターを可能な限り特殊召喚できる!」

「なに!?」
「天使を可能な限り召喚だと!?」

元々あれの攻撃時に罠を発動する気なかったし、手札にある天使は3枚。

「現れろ!《炎の記録天使 ウリエル》《博愛の記録天使 ザドキエル》《栄誉の記録天使 ハニエル》!」
《攻撃力:1600》
《攻撃力:1000/レベル:4/チューナー》
《攻撃力:1400/レベル:4》

「レベル4が3体…エクシーズ召喚…?」
「くっ…所詮低レベルモンスターを集めたにすぎない、ターンエンド!」
《手札:3》

伏せるカードもないってわけか、じゃあ、ありがたく勝たせてもらうぜ。

「俺のターン!!シンクロ召喚を見せてくれた礼と言ったらなんだけど、俺も見せてやるぜ?シンクロ召喚」

「ま、まさか…!」
「やっぱりアイツは!!」

「レベル4のウリエルにレベル4のザドキエルをチューニング!!魂を解放せし蒼き焔、聖なる光の下、天を守護せよ!シンクロ召喚!!降臨せよ《戦熾の聖天使(セイントエンジェル) ミカエル》!」
《攻撃力:2500/レベル:8/シンクロ》

俺のエースモンスター1体目!!シンクロモンスターのミカエル!…実際まだ2体ほどいるんだけどな。

「は…はっ!攻撃力は2500、俺のモンスターには…」

「それはどうかな?ミカエルの効果発動!バトル時、墓地の天使族モンスター1体につき攻撃力を400ポイントアップできる!」

「墓地に存在する天使族モンスターは3体…!」

「攻撃力は1200ポイントアップ!」
《攻撃力:2500→3700》

「よっしゃー!!これでベノムスパイダーをミカエルが上回ったッス!」

これでベノムスパイダーを破壊できる!

「行け!!ミカエルでベノムスパイダーを攻撃!サファイアフラムソード!!」

「ぬわっ!!」
《ヘルチェルのライフ:2400→1700》

ふう、破壊耐性はない、と。

《攻撃力:3700→2500》
「バトルが終了した時、攻撃力は元に戻る」

「ライフは1700も残っているぞ…!」
「兄貴にあれだけ言っといてこの程度かよ!」

「うっせーな、外野は黙ってろ。速攻魔法《エンジェルハウリング》!ダメージ1000ポイント以下でバトルが終了した時、攻撃力を半分にしもう1度バトルできる!」
《攻撃力:2500→1250》

「それでもライフは残る、大口を叩いたわりには呆気ないな!」

「慌てんなよ…ミカエルは攻撃力が変化する効果を無効にする。よって攻撃力は2500のまま、バトルを続行!」
《攻撃力:2500》

《エンジェルハウリング》は半分にしなければ攻撃できない強制効果ではない、無効にしてしまえば攻撃可能!

「フィニッシュだ!ミカエルでダイレクトアタック!サファイアフラムソード!!」

「ぐっ!バカな!!うぁぁぁ!」
《ヘルチェルのライフ:1700→0》

《Winner:聖遊斗》

ふぅ……快勝、と。

「遊斗ー!すごいッス!」
「ありがとなーレン!」
「いつの間にあんな強くなったんスか…!羨ましいッス!」
「ははっ、まだまだだよ」

「記録天使に……ユウトだと…!?」

「ん?」

「アイツは…間違いなく…」
「ストリートデュエルで1位を誇る…あのユウトか!?」

辺りがそれを聞いてざわつく、こ…この野郎……!!

「ストリートに子供…?」
「あんな評判の悪いところに…?」

「や、ヤバい…母さんたちにバレたら電話で叱られる…!」
「へ?」

「逃げるぞレン!こっち!」

「あー!待ってくれッスー!」


ーーーこんなトラブルが物語の始まり。

ーーーこのデュエルが俺、でもそれ以上にレンの運命をねじ曲げることになるなんて、

ーーー俺は想像すらしていなかった。




第2話へ続く

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【あとがき】

今回の一言、「おい、デュエルしろよ」。
さすが遊斗、言葉選びからなにまで中学生じゃねえよコイツ。初期はなんかウザがられそうな感じだよね。

さぁ漫画化は遅れすぎて諦めた第1話です。コイツは大物の臭いがするぜ。まぁすでに人外っぷりを露呈してますからね、さすが遊斗(二度目)。
レンのデュエルは数話後です、しばらくは遊斗のエースモンスター紹介デュエルにお付き合いください。
サリエルだの上層部皆様だのはもうちょい待ってね、以外と呆気なく出てくるから。
次回はなんとヒロインに出番が全くないという状況です、最早野郎だらけで焼け野原。その代わり悪いアイツが出てきますよーと。

次回!!ストリートに行ってみよう!
ってその前からいきなりケンカ!?レンの小さな秘密に遊斗が迫る!
そしてあの薔薇系女子が姿を見せる!!

【予告】
ストリートデュエリスト達の思わぬ発言でストリートでデュエルしていることがレンにバレてしまった遊斗はレンに頼み込まれストリートに行くことになってしまう。
ストリートで妙なデュエリストに絡まれ、遊斗はそのデュエリストとデュエルすることに。
しかしそのデュエルにはある組織の秘密が隠されていた…。
次回!第2話「鉄壁のシールドガーディアン!守りの壁を打ち砕け!」


【今回のキャラクター紹介】


聖 遊斗
聖録学園中等部2年生、14歳の少年。
普段は明るく飄々としているが、物事一つ一つに冷めた一面を持ち大人な側面を見せることが多い。
しっかり者ではあるがどこか抜けている。
レンとは親友にしてライバルという立ち位置を取り、互いに信頼しあっている。
使用デッキは天使をモチーフにした【記録天使】。エースモンスターは《戦歌の聖天使 ガブリエル》、《戦熾の聖天使 ミカエル》、《治癒の聖天使 ラファエル》。