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ジェレスタ93「 記 憶 の 世 界 へ 絆 の 奇 跡 」
「………冗談でも笑えねえ…」
「えっ?」
「見てわかんねえのかよ、あれ…」
リンさんも狩也くんも動揺してる……?確かに笑えない…けど…。
「ふ………ハハハハハ!!!クッソ笑えるぜ!なんだそのザマはよ!」
「御託はいい、さっさとデュエルを続けろ」
「……チッ、俺はこれでターンエンドだ」
《手札:4》
様子はあんまり変わってないみたいだけど……でもなにかが違ってる…なんか、怖い…。
「俺のターン、ドロー!」
~~~
「トドメよ!リカティナで《マリオネットトークン》を攻撃!」
「っ…!」
最早ここまでなのか…!!
「ファイナルフローラルウィッ………!!」
「…?動きが止まった…」
「……デュエルは終わりですわ」
「なんだと!?」
「目的は果たしました、だから、貴方とデュエルする必要はなくなりましたわ」
目的を果たしただと……まさか…、
「ヒカルは!!」
「あら、勘がよろしいですわね。ですけど、貴方に用はありませんわ」
「チッ…」
「この隣に鏡の迷宮がありますわ、そこに彼らはいる。早く血を拭いて行ってあげなさい」
「なんだと…何故場所を教える?!」
「何にしても貴方は無意味、行ったところでなににもなりませんわ」
……消えた…。
「無意味…か」
~~~
ーーーピチャン…ピチャン…
「んっ…」
あれ……ここ、どこだ…?
「確かトルテに力を借りて…だが…」
一体どうなってるんだ…?デュエルの様子が全く分からないし、記憶も曖昧だし、なにより真っ暗だし。
なにより………、
「鏡だらけ…?」
~~~
「俺は《カオス・パージ ウィッチ》を召喚」
《攻撃力:0/レベル:2》
「攻撃力0の雑魚しかいねえんだよな?だっせえ」
「ウィッチは手札が0の状態で通常召喚されたとき、このモンスターをリリースすることで墓地のモンスターエクシーズ一体を選択し、そのランク分カードをドローする」
墓地にはホープ・オブ・ソードしかいないから、ドローは4枚よね。……って4枚!?そんなに増やしちゃうの!?
手札がなかった状態から手札を4枚に増やすなんて凄い効果…。
「なんつー奴……だが、通常召喚権は失ってんだし…そこまでの驚異じゃねえ…」
「魔法カード《ワンショットエクシーズ》発動!手札から素材となるモンスター二体以上を墓地に送り、モンスターエクシーズを特殊召喚する」
「なに!?」
ということは《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》……?
「俺はレベル7の《カオス・パージ ジャッジメント》二体を墓地に送り、《混沌槍騎士 ジャベリン・パージャー》を特殊召喚!」
《攻撃力:2800/ランク:7/ORU:0》
「ジャベリン・パージャー…?聞いたことねえ」
「だけどオーバーレイユニットがないから…」
「《ワンショットエクシーズ》で召喚するモンスターだ、オーバーレイユニットを使う効果じゃないと見た方がいいぜ」
「そっか」
「ジャベリン・パージャーの効果、オーバーレイユニットのないこのモンスターは攻撃力を半分にすることでダイレクトアタックすることができる」
「なにっ!」
半分になった攻撃力は1400だけど、それでも十分すぎる攻撃力だよ…!
「ゆけっ!ジャベリン・パージャーでダイレクトアタック!」
~~~
「いってえ…頭でも打ったか…?」
とにかく、少し探索してみよう。もしかしたら鏡に脱出のヒントがあるかもしれない。
…そもそも、俺が望んだことかもしれないけど、騙されたようにも感じるんだよな。托都のデュエルは多分本当。
そこじゃなくて俺が遊矢を助けたい気持ちはあるけど果たしてアイツが操ってる意思はどうなのか。ただ邪魔者を排除しようとしてるだけじゃないかって思う。
もしも当たっていたとしたら…どうしよ、変なこと言ってたらアミたちに顔二度と見せられない気がする。
そんなこと考えてるなら手かがり見つけろよ俺……。
「この鏡…カイトと最初にデュエルした時の映像が流れてる…?」
あっちの鏡にはヒカリが生まれた時の…?向こうはWDGの時の……。
あちこちにある鏡は俺の記憶なのか?それだったら大量にあるのも納得できるが……。
「!消えた…?」
目の前の鏡が消えた…!?そういえば、さっきから鏡が少しずつなくなっているような…。
さっき消えた鏡は………………?
「なんだっけ…」
思い…出せない…。確か、カイトに関することだったはず……ぼやけて分からない…。
というか……、
カイト…?カイトって…
「誰…だったっけ…?」
分からない…?分からないはずない、------は…一番嫌いな奴。この世で、何故かは思い出せないけど大嫌いな。だけど、この世で一番----------いる奴。
……一度落ち着け、落ち着こう。
この世界の仕組みが分かったから整理もしよう。鏡は俺の記憶、そして鏡…記憶は徐々に暗闇に消えていく、それは俺の記憶が消えているも同然。
恐らく全ての鏡が消えた次に消えるのは俺自身…。
多分鏡とデュエルしてるのは俺であって俺じゃない奴だ。今はトルテが考えてることが嫌でも解る。
まず俺をここに放り込んだってことは、記憶からなにまで消し去ってマジで奴の意のままに操れるようにするためってこと。そして邪魔者になる遊矢を鏡ごと葬る。そうすれば奴に勝てる奴はいなくなるから……だな。
「んなことさせて溜まるかよ…」
さっきも同じこと考えてたけどまんまと騙されたって感じだ。
状況が飲み込めた今、ここから抜け出す方法を本格的に考えなきゃな。
視界は悪いが進めないこともない。誰かがいる気配もしないし、今のうちだな。とにかく行くしかねえ。
「…記憶がなくなる前にな」
~~~
「クソ……なんだってんだよ…」
《鏡のライフ:1500》
「俺はカードを二枚伏せ、ターンエンド」
《手札:1》《攻撃力:2800》
あの青い目、リンさん曰く「最悪の状況」らしい。覚えでは多分グレンとのデュエルの時に……。
でも今回は完全にヒカル先輩っぽくないっていうか…、ヒカル先輩じゃないんじゃないかって思っちゃう。リンさんの言う最悪の状況がどういう意味かは分からないけど…。
多分、今の先輩は……遊矢を救うだなんて微塵も思ってない…。
「イイ顔してんじゃねえかよ。…甘ったるい絆のためにするような顔じゃねえ、ぶっ倒すことに躊躇のねえ顔だぜ」
「…何が言いたい」
「怖い顔すんなよ…ビビるじゃねえか。俺は"お前が何者か"知りたいだけだよ」
何者か……それはみんな知りたいよ…。
「魔女の力と言ったら信じるか…?」
「魔女…?……トルテ・マスカローズのことか」
「魔女の力を得た代償に記憶と本来の姿を失う……だが、この力があればお前を倒せる!そうすれば…きっと、誰かが喜んでくれる……はず…」
誰か…?私たちじゃないの?遊矢じゃないの…!?
「一体どうなっている…これが奴の言っていた目的なのか…?」
「うわっ托都さん…」
「いつの間に…っていうか血ぃ出てます!」
「…止まってなかったか…」
「呑気なこと言ってんなよバカが!…とりあえず今の話で大体分かったぜ」
リンさんにまとめてもらったところ、記憶が混在してるからうまく意識のコントロールができていないとか。
托都さんの方はキャスターさんに止血だけしてもらってた。…何があったのかは後で聞こう。
「へぇ…倒したいなら倒してみろってんだよ、俺のことは誰も止められねえ。魔女の力だろうが倒せねえ!」
「やってみれば分かることだ」
「ふん…んじゃ行くぜ!俺のターン!」
~~~
どこまで走った…?もう息切れするほどだぞ、広すぎる。
鏡は走るほど少なくなっている、実際、もうほとんど空っぽだ。いや、霧かなにかで見えなくなってる。
点々とする鏡を覗きながら残り時間を考える、あれからまだ5分くらいしか経ってない。なら後2分か3分くらいで消えてしまう気がする。
現に心層の貝殻はどんどん崩れていってるし。
「…さっきも見たような鏡だな、ということは無限ループか」
鏡に写った記憶は特に変わっていない。見た感じ、遊矢関係やアルテミスギャラクシーの時の記憶はある。それじゃあ他は……ダメか、なにか名前を思い出そうとするだけで思考が止まりそうだ。
「……!あれは…」
銀の枠の鏡、大きさからなにまで他と違う。…まず、記憶が見えない。記憶じゃない……のか…?
近づいてみてみよう。
「…………お前、」
よく知ってるし覚えてる。無い記憶で最も分かってる大切な仲間。
「遊矢…?」
~~~
「俺は《Ds-ダークサイド・エンジェル》を召喚!ダークサイド・エンジェルはDsのエクシーズ召喚に使う時、二体分のエクシーズ素材となる!」
《攻撃力:1200/レベル:3》
まだモンスターエクシーズが出てくるなんて…、確かにドミネイトダークネスはもうオーバーレイユニットがないから順当だと思うけど。
「レベル3のダークサイド・エンジェル二体分でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ《Ds-流星のダークエンジェル》!」
《攻撃力:1400/ランク:3/ORU:1》
「新たなモンスターエクシーズか…」
「……一体どんな効果を」
「………」
「ダークエンジェルは1ターンに一度、オーバーレイユニットを自分フィールドのモンスターエクシーズに渡すことができる」
《ORU:0》《ORU:1》
ということはドミネイトダークネスはまた効果を発動できるの!?墓地にはカードがない、つまり次に除外されるのは手札…!
「効果発動!オーバーレイユニットを使い、手札を除外する!」
《ORU:0》
「……」
「無反応かよ…」
「罠カード《混沌の影討ち》を発動!このカードは相手モンスターエクシーズがオーバーレイユニットに墓地に送った時、相手の攻撃力が一番低いモンスターを破壊し、攻撃力の半分のダメージを与える」
「なに…!」
これでダークエンジェルが破壊されて、ライフは残り800……。
《鏡のライフ:800》
「だが…ドミネイトダークネスにはもう一つ効果がある!俺が効果ダメージを受けたとき、同じ数だけ攻撃力がアップする」
《攻撃力:3900》
「攻撃力…3900……」
「行け!!ドミネイトダークネスでジャベリン・パージャーに攻撃!ホープテイント!!」
「っ……!!」
《ヒカルのライフ:1200》
~~~
「遊矢、なのか…?」
「………えっ…ヒカル、どうしてこんなとこ…」
話が通じてる…?どうなってるんだ……。
とにかく呼び掛けて一緒に出口を探さなければ……!
「遊矢!帰ろう!みんなお前を心配してるんだぞ!?」
「…それはムリだよ」
「どうして…」
「ヒカルだってホントは分かってる。ここに出口はない」
…出口がなかったとしても、きっと帰れるはず。
「きっと帰れる…だから!」
「お互い笑っちゃえるよな、仲間のために手にした力に騙されて……挙げ句、今、姿も声も分かるのに触れることもできないなんて…!」
……そうだ、遊矢もきっと誰かを守るために、力を手に入れた。俺も遊矢を守るために力をもらったのに……騙されていた、知っていたのに…。
「寂しいよ…みんなに…会えないよ……ヒカルも、すぐ近くにいるのに、すっごく遠いんだ」
「………」
「もう、希望なんてない。だって俺もヒカルも、戻ってこれないから…」
「遊矢、」
「…なんだ…?」
伝えたい、今の今まで伝えられなかったこと。
「俺の大切なもの、見つけてくれてありがとう」
「どうしてそんなこと…もう戻れないのに、大切なものなんて!!」
「いや、今目の前にあるんだ」
「目の前…」
遊矢の記憶だけ消えなかったのには意味がある。何故か一緒にいると、記憶が浮かんでくる。
「俺は、一人だった」
「一人…だった…?」
両親がいなくなって、俺はずっとハートランドにいた。ヒカリを守るために必死で、大人は誰も力を貸してくれなかったし、楽しくデュエルすることすら許されなかった。
カイトに反発してハートランドを去った後も、学校に転入してきても、仲間も頼れる人もいない。むしろ頼ったらいけないと思ってたから。
でも、遊矢は俺を仲間と言った。最初は目障りだとか思ったし、デュエルで倒すだけだと思ってた。
ただ、過去を飛び回ったりしてる間にだんだん、遊矢と一緒にいられるのが嬉しくなっていた。
「初めての、仲間だったんだ」
「……そんな良い奴じゃない、俺と一緒にいたって良いことなかっただろ!?ヒカリをあんな目に遭わせて、それに今だって…俺のせいでこんなところに!」
「確かに、最悪なことの連続だ。バカバカしいくらいな。だけど、それでも知りたかった、"友達"がなんなのか」
「とも…だち…?」
「生まれてから一人もいなかった友、初めてが遊矢だった。仲間に囲まれて、いつも笑顔なのが羨ましくて…」
遊矢の周りにいる奴らはみんな笑顔だったから、笑ってみたい。あの頃のように純粋に笑ってみたい。
「だから…笑ってくれ」
「笑って……」
「その遊矢の笑顔をなにより今は守りたい」
「守り……ヒカル…、お前良い奴すぎるぜ…!」
「な、泣くな…!ビックリした…」
「ありがと…ホントに、嬉しくて…泣かずにいられなくて…」
「やっぱガキだな」
「なんだと!ヒカルは辛辣すぎるんだ!全く…」
あれ、なんかいつもの調子に戻ってきた…?
「ヒカル、」
「なんだよ」
「この力、ヒカルに預けるぜ」
「!これは…」
英雄たちの、奇跡の光。ただ遊矢のだけないけど…。
鏡をすり抜けて手元で輝いてる。
「遊矢のは…?」
「それはヒカルが作り出すから俺の光はいいんだよ」
「そうか…」
「今、鏡を倒せるのはヒカルだけ。きっと鏡を倒せば、俺も戻ってこれる」
「分かってる、必ず倒してお前を連れ戻す!」
「最後にさ、聞きたいことがあるんだけど」
「なにを?」
「…大切なもの、教えてくれよ」
「………戻ってきたら教えてやる」
「そっか、多分奇跡の光が連れていってくれるから、あとは頼んだぜ」
「あぁ…!」
4つの光が輝くといつの間にか鏡はなくなっていた。
絶対に倒してみせる、奴らの思い通りにはさせねえ、ヌメロンコードの力も俺が変えてやる!
「………、俺の笑顔か…。ヒカル、ありがと」
~~~
「これでダイレクトアタックはできなくなったな!手札も0の状態で、笑えるぜ!」
「先輩…」
「……誰が、笑えるとか言いやがった…」
「な、まさか…」
体の違和感はライフが減ったからか…最悪……。
「もしかして…」
「ヒカルくん!!」
「よう、帰ってきたぜ」
「すごい!!」
「心配させやがって…」
「(エメラルドグリーンの目……そうか、会ったんだな、遊矢に)」
「信じられねえ…こんなことが…」
「信じられないなら黙ってろ。俺は遊矢と約束した、必ずお前を倒すとな!」
「クッ…!」
「速攻魔法《異次元解放埋葬》を発動!このカードは除外された全てのカードを墓地に送り、カードを二枚ドローする!」
「なに!?」
これで再び手札が二枚にまで戻ってきた、まだまだ巻き返せるはずだ…!!
「勝負はここからだ!鏡!!」
94話へ続く
=====================
【あとがき】
今回の一言、「大胆な愛の告白(男同士)」。
ヒカルの遊矢好き好き伝説の幕開けである、まぁお互いに大好きだから良いんですけどね。
だんだんヒカルが遊星っぽくなっていってる希ガス。絆厨というかなんというか……。なんというか普通に事故。
コイツら四期でナチュラルにデートしてるんだぜ…?爆発しろ。
つか自己解決しちゃったヒカルパネエ!!トルテざまぁと言えてしまう不思議、いや、普通かなぁ……。
文章量が多すぎてキツかった、おかげで重いぜ……これが愛か……((違
シリアスな笑いを提供してくれる托都は偉大。
最後のリンの、目がエメラルドグリーンっていうのは一瞬見えただけ、ただ色々察してあげて優しい。
さぁ次回!!鏡戦完結!奇跡再び!
新たな切り札を召喚した鏡に立ち向かうヒカル、奇跡の光が再び力を発揮する!遂に「エクススパイラルギャラクシー」が登場!!
そして奴も現れる…?
【予告】
記憶の世界から脱出し、意識を取り戻したヒカルは記憶の中で会った遊矢のために鏡を倒そうと奮闘する。
傷だらけ、満身創痍の中、遊矢を信じるヒカルは遊矢から受け継いだエクススパイラルの奇跡を遂に覚醒させる!!
絆を信じる力は新たな銀河、新たなギャラクシーを時を経て目覚めさせるのだった。
次回!第94話「奇跡の旋風再び!銀河旋風降臨!」
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ジェレスタ93「 記 憶 の 世 界 へ 絆 の 奇 跡 」
「………冗談でも笑えねえ…」
「えっ?」
「見てわかんねえのかよ、あれ…」
リンさんも狩也くんも動揺してる……?確かに笑えない…けど…。
「ふ………ハハハハハ!!!クッソ笑えるぜ!なんだそのザマはよ!」
「御託はいい、さっさとデュエルを続けろ」
「……チッ、俺はこれでターンエンドだ」
《手札:4》
様子はあんまり変わってないみたいだけど……でもなにかが違ってる…なんか、怖い…。
「俺のターン、ドロー!」
~~~
「トドメよ!リカティナで《マリオネットトークン》を攻撃!」
「っ…!」
最早ここまでなのか…!!
「ファイナルフローラルウィッ………!!」
「…?動きが止まった…」
「……デュエルは終わりですわ」
「なんだと!?」
「目的は果たしました、だから、貴方とデュエルする必要はなくなりましたわ」
目的を果たしただと……まさか…、
「ヒカルは!!」
「あら、勘がよろしいですわね。ですけど、貴方に用はありませんわ」
「チッ…」
「この隣に鏡の迷宮がありますわ、そこに彼らはいる。早く血を拭いて行ってあげなさい」
「なんだと…何故場所を教える?!」
「何にしても貴方は無意味、行ったところでなににもなりませんわ」
……消えた…。
「無意味…か」
~~~
ーーーピチャン…ピチャン…
「んっ…」
あれ……ここ、どこだ…?
「確かトルテに力を借りて…だが…」
一体どうなってるんだ…?デュエルの様子が全く分からないし、記憶も曖昧だし、なにより真っ暗だし。
なにより………、
「鏡だらけ…?」
~~~
「俺は《カオス・パージ ウィッチ》を召喚」
《攻撃力:0/レベル:2》
「攻撃力0の雑魚しかいねえんだよな?だっせえ」
「ウィッチは手札が0の状態で通常召喚されたとき、このモンスターをリリースすることで墓地のモンスターエクシーズ一体を選択し、そのランク分カードをドローする」
墓地にはホープ・オブ・ソードしかいないから、ドローは4枚よね。……って4枚!?そんなに増やしちゃうの!?
手札がなかった状態から手札を4枚に増やすなんて凄い効果…。
「なんつー奴……だが、通常召喚権は失ってんだし…そこまでの驚異じゃねえ…」
「魔法カード《ワンショットエクシーズ》発動!手札から素材となるモンスター二体以上を墓地に送り、モンスターエクシーズを特殊召喚する」
「なに!?」
ということは《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》……?
「俺はレベル7の《カオス・パージ ジャッジメント》二体を墓地に送り、《混沌槍騎士 ジャベリン・パージャー》を特殊召喚!」
《攻撃力:2800/ランク:7/ORU:0》
「ジャベリン・パージャー…?聞いたことねえ」
「だけどオーバーレイユニットがないから…」
「《ワンショットエクシーズ》で召喚するモンスターだ、オーバーレイユニットを使う効果じゃないと見た方がいいぜ」
「そっか」
「ジャベリン・パージャーの効果、オーバーレイユニットのないこのモンスターは攻撃力を半分にすることでダイレクトアタックすることができる」
「なにっ!」
半分になった攻撃力は1400だけど、それでも十分すぎる攻撃力だよ…!
「ゆけっ!ジャベリン・パージャーでダイレクトアタック!」
~~~
「いってえ…頭でも打ったか…?」
とにかく、少し探索してみよう。もしかしたら鏡に脱出のヒントがあるかもしれない。
…そもそも、俺が望んだことかもしれないけど、騙されたようにも感じるんだよな。托都のデュエルは多分本当。
そこじゃなくて俺が遊矢を助けたい気持ちはあるけど果たしてアイツが操ってる意思はどうなのか。ただ邪魔者を排除しようとしてるだけじゃないかって思う。
もしも当たっていたとしたら…どうしよ、変なこと言ってたらアミたちに顔二度と見せられない気がする。
そんなこと考えてるなら手かがり見つけろよ俺……。
「この鏡…カイトと最初にデュエルした時の映像が流れてる…?」
あっちの鏡にはヒカリが生まれた時の…?向こうはWDGの時の……。
あちこちにある鏡は俺の記憶なのか?それだったら大量にあるのも納得できるが……。
「!消えた…?」
目の前の鏡が消えた…!?そういえば、さっきから鏡が少しずつなくなっているような…。
さっき消えた鏡は………………?
「なんだっけ…」
思い…出せない…。確か、カイトに関することだったはず……ぼやけて分からない…。
というか……、
カイト…?カイトって…
「誰…だったっけ…?」
分からない…?分からないはずない、------は…一番嫌いな奴。この世で、何故かは思い出せないけど大嫌いな。だけど、この世で一番----------いる奴。
……一度落ち着け、落ち着こう。
この世界の仕組みが分かったから整理もしよう。鏡は俺の記憶、そして鏡…記憶は徐々に暗闇に消えていく、それは俺の記憶が消えているも同然。
恐らく全ての鏡が消えた次に消えるのは俺自身…。
多分鏡とデュエルしてるのは俺であって俺じゃない奴だ。今はトルテが考えてることが嫌でも解る。
まず俺をここに放り込んだってことは、記憶からなにまで消し去ってマジで奴の意のままに操れるようにするためってこと。そして邪魔者になる遊矢を鏡ごと葬る。そうすれば奴に勝てる奴はいなくなるから……だな。
「んなことさせて溜まるかよ…」
さっきも同じこと考えてたけどまんまと騙されたって感じだ。
状況が飲み込めた今、ここから抜け出す方法を本格的に考えなきゃな。
視界は悪いが進めないこともない。誰かがいる気配もしないし、今のうちだな。とにかく行くしかねえ。
「…記憶がなくなる前にな」
~~~
「クソ……なんだってんだよ…」
《鏡のライフ:1500》
「俺はカードを二枚伏せ、ターンエンド」
《手札:1》《攻撃力:2800》
あの青い目、リンさん曰く「最悪の状況」らしい。覚えでは多分グレンとのデュエルの時に……。
でも今回は完全にヒカル先輩っぽくないっていうか…、ヒカル先輩じゃないんじゃないかって思っちゃう。リンさんの言う最悪の状況がどういう意味かは分からないけど…。
多分、今の先輩は……遊矢を救うだなんて微塵も思ってない…。
「イイ顔してんじゃねえかよ。…甘ったるい絆のためにするような顔じゃねえ、ぶっ倒すことに躊躇のねえ顔だぜ」
「…何が言いたい」
「怖い顔すんなよ…ビビるじゃねえか。俺は"お前が何者か"知りたいだけだよ」
何者か……それはみんな知りたいよ…。
「魔女の力と言ったら信じるか…?」
「魔女…?……トルテ・マスカローズのことか」
「魔女の力を得た代償に記憶と本来の姿を失う……だが、この力があればお前を倒せる!そうすれば…きっと、誰かが喜んでくれる……はず…」
誰か…?私たちじゃないの?遊矢じゃないの…!?
「一体どうなっている…これが奴の言っていた目的なのか…?」
「うわっ托都さん…」
「いつの間に…っていうか血ぃ出てます!」
「…止まってなかったか…」
「呑気なこと言ってんなよバカが!…とりあえず今の話で大体分かったぜ」
リンさんにまとめてもらったところ、記憶が混在してるからうまく意識のコントロールができていないとか。
托都さんの方はキャスターさんに止血だけしてもらってた。…何があったのかは後で聞こう。
「へぇ…倒したいなら倒してみろってんだよ、俺のことは誰も止められねえ。魔女の力だろうが倒せねえ!」
「やってみれば分かることだ」
「ふん…んじゃ行くぜ!俺のターン!」
~~~
どこまで走った…?もう息切れするほどだぞ、広すぎる。
鏡は走るほど少なくなっている、実際、もうほとんど空っぽだ。いや、霧かなにかで見えなくなってる。
点々とする鏡を覗きながら残り時間を考える、あれからまだ5分くらいしか経ってない。なら後2分か3分くらいで消えてしまう気がする。
現に心層の貝殻はどんどん崩れていってるし。
「…さっきも見たような鏡だな、ということは無限ループか」
鏡に写った記憶は特に変わっていない。見た感じ、遊矢関係やアルテミスギャラクシーの時の記憶はある。それじゃあ他は……ダメか、なにか名前を思い出そうとするだけで思考が止まりそうだ。
「……!あれは…」
銀の枠の鏡、大きさからなにまで他と違う。…まず、記憶が見えない。記憶じゃない……のか…?
近づいてみてみよう。
「…………お前、」
よく知ってるし覚えてる。無い記憶で最も分かってる大切な仲間。
「遊矢…?」
~~~
「俺は《Ds-ダークサイド・エンジェル》を召喚!ダークサイド・エンジェルはDsのエクシーズ召喚に使う時、二体分のエクシーズ素材となる!」
《攻撃力:1200/レベル:3》
まだモンスターエクシーズが出てくるなんて…、確かにドミネイトダークネスはもうオーバーレイユニットがないから順当だと思うけど。
「レベル3のダークサイド・エンジェル二体分でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ《Ds-流星のダークエンジェル》!」
《攻撃力:1400/ランク:3/ORU:1》
「新たなモンスターエクシーズか…」
「……一体どんな効果を」
「………」
「ダークエンジェルは1ターンに一度、オーバーレイユニットを自分フィールドのモンスターエクシーズに渡すことができる」
《ORU:0》《ORU:1》
ということはドミネイトダークネスはまた効果を発動できるの!?墓地にはカードがない、つまり次に除外されるのは手札…!
「効果発動!オーバーレイユニットを使い、手札を除外する!」
《ORU:0》
「……」
「無反応かよ…」
「罠カード《混沌の影討ち》を発動!このカードは相手モンスターエクシーズがオーバーレイユニットに墓地に送った時、相手の攻撃力が一番低いモンスターを破壊し、攻撃力の半分のダメージを与える」
「なに…!」
これでダークエンジェルが破壊されて、ライフは残り800……。
《鏡のライフ:800》
「だが…ドミネイトダークネスにはもう一つ効果がある!俺が効果ダメージを受けたとき、同じ数だけ攻撃力がアップする」
《攻撃力:3900》
「攻撃力…3900……」
「行け!!ドミネイトダークネスでジャベリン・パージャーに攻撃!ホープテイント!!」
「っ……!!」
《ヒカルのライフ:1200》
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「遊矢、なのか…?」
「………えっ…ヒカル、どうしてこんなとこ…」
話が通じてる…?どうなってるんだ……。
とにかく呼び掛けて一緒に出口を探さなければ……!
「遊矢!帰ろう!みんなお前を心配してるんだぞ!?」
「…それはムリだよ」
「どうして…」
「ヒカルだってホントは分かってる。ここに出口はない」
…出口がなかったとしても、きっと帰れるはず。
「きっと帰れる…だから!」
「お互い笑っちゃえるよな、仲間のために手にした力に騙されて……挙げ句、今、姿も声も分かるのに触れることもできないなんて…!」
……そうだ、遊矢もきっと誰かを守るために、力を手に入れた。俺も遊矢を守るために力をもらったのに……騙されていた、知っていたのに…。
「寂しいよ…みんなに…会えないよ……ヒカルも、すぐ近くにいるのに、すっごく遠いんだ」
「………」
「もう、希望なんてない。だって俺もヒカルも、戻ってこれないから…」
「遊矢、」
「…なんだ…?」
伝えたい、今の今まで伝えられなかったこと。
「俺の大切なもの、見つけてくれてありがとう」
「どうしてそんなこと…もう戻れないのに、大切なものなんて!!」
「いや、今目の前にあるんだ」
「目の前…」
遊矢の記憶だけ消えなかったのには意味がある。何故か一緒にいると、記憶が浮かんでくる。
「俺は、一人だった」
「一人…だった…?」
両親がいなくなって、俺はずっとハートランドにいた。ヒカリを守るために必死で、大人は誰も力を貸してくれなかったし、楽しくデュエルすることすら許されなかった。
カイトに反発してハートランドを去った後も、学校に転入してきても、仲間も頼れる人もいない。むしろ頼ったらいけないと思ってたから。
でも、遊矢は俺を仲間と言った。最初は目障りだとか思ったし、デュエルで倒すだけだと思ってた。
ただ、過去を飛び回ったりしてる間にだんだん、遊矢と一緒にいられるのが嬉しくなっていた。
「初めての、仲間だったんだ」
「……そんな良い奴じゃない、俺と一緒にいたって良いことなかっただろ!?ヒカリをあんな目に遭わせて、それに今だって…俺のせいでこんなところに!」
「確かに、最悪なことの連続だ。バカバカしいくらいな。だけど、それでも知りたかった、"友達"がなんなのか」
「とも…だち…?」
「生まれてから一人もいなかった友、初めてが遊矢だった。仲間に囲まれて、いつも笑顔なのが羨ましくて…」
遊矢の周りにいる奴らはみんな笑顔だったから、笑ってみたい。あの頃のように純粋に笑ってみたい。
「だから…笑ってくれ」
「笑って……」
「その遊矢の笑顔をなにより今は守りたい」
「守り……ヒカル…、お前良い奴すぎるぜ…!」
「な、泣くな…!ビックリした…」
「ありがと…ホントに、嬉しくて…泣かずにいられなくて…」
「やっぱガキだな」
「なんだと!ヒカルは辛辣すぎるんだ!全く…」
あれ、なんかいつもの調子に戻ってきた…?
「ヒカル、」
「なんだよ」
「この力、ヒカルに預けるぜ」
「!これは…」
英雄たちの、奇跡の光。ただ遊矢のだけないけど…。
鏡をすり抜けて手元で輝いてる。
「遊矢のは…?」
「それはヒカルが作り出すから俺の光はいいんだよ」
「そうか…」
「今、鏡を倒せるのはヒカルだけ。きっと鏡を倒せば、俺も戻ってこれる」
「分かってる、必ず倒してお前を連れ戻す!」
「最後にさ、聞きたいことがあるんだけど」
「なにを?」
「…大切なもの、教えてくれよ」
「………戻ってきたら教えてやる」
「そっか、多分奇跡の光が連れていってくれるから、あとは頼んだぜ」
「あぁ…!」
4つの光が輝くといつの間にか鏡はなくなっていた。
絶対に倒してみせる、奴らの思い通りにはさせねえ、ヌメロンコードの力も俺が変えてやる!
「………、俺の笑顔か…。ヒカル、ありがと」
~~~
「これでダイレクトアタックはできなくなったな!手札も0の状態で、笑えるぜ!」
「先輩…」
「……誰が、笑えるとか言いやがった…」
「な、まさか…」
体の違和感はライフが減ったからか…最悪……。
「もしかして…」
「ヒカルくん!!」
「よう、帰ってきたぜ」
「すごい!!」
「心配させやがって…」
「(エメラルドグリーンの目……そうか、会ったんだな、遊矢に)」
「信じられねえ…こんなことが…」
「信じられないなら黙ってろ。俺は遊矢と約束した、必ずお前を倒すとな!」
「クッ…!」
「速攻魔法《異次元解放埋葬》を発動!このカードは除外された全てのカードを墓地に送り、カードを二枚ドローする!」
「なに!?」
これで再び手札が二枚にまで戻ってきた、まだまだ巻き返せるはずだ…!!
「勝負はここからだ!鏡!!」
94話へ続く
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【あとがき】
今回の一言、「大胆な愛の告白(男同士)」。
ヒカルの遊矢好き好き伝説の幕開けである、まぁお互いに大好きだから良いんですけどね。
だんだんヒカルが遊星っぽくなっていってる希ガス。絆厨というかなんというか……。なんというか普通に事故。
コイツら四期でナチュラルにデートしてるんだぜ…?爆発しろ。
つか自己解決しちゃったヒカルパネエ!!トルテざまぁと言えてしまう不思議、いや、普通かなぁ……。
文章量が多すぎてキツかった、おかげで重いぜ……これが愛か……((違
シリアスな笑いを提供してくれる托都は偉大。
最後のリンの、目がエメラルドグリーンっていうのは一瞬見えただけ、ただ色々察してあげて優しい。
さぁ次回!!鏡戦完結!奇跡再び!
新たな切り札を召喚した鏡に立ち向かうヒカル、奇跡の光が再び力を発揮する!遂に「エクススパイラルギャラクシー」が登場!!
そして奴も現れる…?
【予告】
記憶の世界から脱出し、意識を取り戻したヒカルは記憶の中で会った遊矢のために鏡を倒そうと奮闘する。
傷だらけ、満身創痍の中、遊矢を信じるヒカルは遊矢から受け継いだエクススパイラルの奇跡を遂に覚醒させる!!
絆を信じる力は新たな銀河、新たなギャラクシーを時を経て目覚めさせるのだった。
次回!第94話「奇跡の旋風再び!銀河旋風降臨!」