ジェレスタ91「 人 形 遣 い の デ ュ エ ル 托 都 V S ト ル テ 」





雨が降りやまない。これでは捜索が続けられない気がしてきた。ゲリラ豪雨のようで予報が当たったこの雨、どうにかならないのだろうか。

ーーピピピ…

「托美か、どうした」
《ンもー!お兄ちゃんったらこんな雨で傘持ってないわけ!?信じらんない!》
「良いから用件を言え」
《あのね、ヒカルくんが~…》


~~~


___


「これで終わりだ!!ファイナルセイクリッドストリーム!!」

「うあぁああぁあああ!!!」

「はぁ……はぁ……っく…!」
「ヒカル!お前……」
「この程度のダメージなら、問題はない…それより」

「くそぉぉっ!!!こんな奴に……俺が…?ありえないよ…!!でも大丈夫、鏡ちゃんならこんな奴……」
『倒せるって?』
「えっ?」

「誰だ!」

『やぁやぁ初めまして、いや久しぶり』

「七罪鏡……」

『あれ、知ってるのか。誠、喋りすぎは、良くねえよな』
「き、鏡ちゃん?助けに来たんだよね?」
『はぁ?なに寝ぼけてるの?僕にしようとした奴に負けるなんて信じられないぜ。…俺はそんな雑魚いらない』
「えっ……ちょちょちょもう満身創痍だからね?見逃してくれないかなぁ…」
『……うん!』
「じゃあ!」
『だ め だ よ』

「ヒッ!!嫌だ嫌だ嫌だぁ!!死にたくないいい!!」

『消え失せろ!!』

「いぃやぁだぁぁぁぁ………!」

「消えた!?」
「……あれが神か…」

『俺とデュエルするなら、』

「え?」

『最高の状態で来い、さもなければ死ぬことになるぞ』

「最高の…状態…」

『じゃあな、次に会うときはお前の最期だ』

___


鏡は誠を始末して消えた、アイツにとっては誠なんて友じゃなかった。あれじゃあ使い捨てだ。

ため息つきそうなくらいの雨、豪雨の中で町を駆け抜けていく。
別に人混みに遊矢がいるなんて考えてない。まずアイツはこの世界にいない。だからどうするかも考えていた。リンさんは知らないの一点張りだし。
ハートランドの奴らも諦めたのか、天気でヘリが出せないのか知らないがいなくなっていた。

「こんな中で遊矢を見つけられるのかよ…」


~~~


誠は結局、あんな風にしかできない出来損ないの神だったってワケだ。使えねえ。

だがいい。これで、奴は俺の元に現れる。……ただ、鏡の城に居座ってるあの女は始末しておきたい…。都合のいい奴に始末してもらうか。

「頼みましたぜ?お兄様」


~~~


「なんだと!?…それは本当か」
《うん…残念ながら》

ヒカル、まさか自分から死にに行っているとは思わなかった…。そこまでのものなのか?
大体呪いだの魔術だのを信じる気はない。だが起こっているのだから信じるしかない、まず何故そんなことをする必要がある?
……相手の意図が読めない、一体なにを考えているんだ…?

《お兄ちゃん聞いてる~?!》
「あっ…!すまない、とにかくヒカルを見つけたらどうすれば………?」

後ろから光が照らしてきた。振り返るとそこには扉のように開いた鏡。自分の姿は写っていない、やはり鏡というより扉だな。

《お兄ちゃん?》
「悪い、遊矢のヒントが見つかりそうだ。また連絡する」
《う、うん…気を付けてね!》
「あぁ」

この先に遊矢がいるなら……行くしかない…!


~~~


「参ったわね……」
「連絡がとれたのにですか?」
「ヒントが見つかったらしいんだけど、なんで私たちを呼ばなかったのかな」

なるほど、そういうこと。

「だって、連絡したのはハートランドシティでも僕らから反対側だよ。僕らがつく頃にはヒントじゃなくなっちゃうかも」
「そっかぁ」


~~~


「ここは………」

透明空間。どこも鏡でできている世界。
形状的には建物、豪邸や城のような場所のようだ。
こんな世界に遊矢が本当にいるというのか?

「行くしかない…か」

階段を登り終えた先、一番広い部屋まで来たが……誰もいないのか?

「……驚きましたわ、朽祈ヒカルじゃなくて貴方が来るとは……」

「!…何者だ」

「あら、会ったことなかったかしら…。では自己紹介を。私はトルテ・マスカローズ。よろしくお願い致しますわ、堰櫂托都さん」

俺の名前を知っている………。トルテ……確か……、そうだ!

「ヒカルから聞いたことがある……」

「呪いをかけた張本人…ですわね」
「簡単に自白するんだな」
「ええ」
「なにが目的だ…一体いつそんなことを」
「貴女方がネオドミノシティにいる時ですわ」


___



「誰だ、お前…」

「トルテ・マスカローズ…ただの傭兵デュエリストですわ」

「ただの…?嘘だな、この世界で更に初対面で俺の名前を知っている奴がいるわけないだろ」

「フフッ…その通り、ただのではないですね。私は時を越えることができる…それ以外は普通ですわ」

「……で、俺に何の用だ」

「私は、貴方を手に入れる」

「手に入れるだと…馬鹿げたことを言うな、断じてごめんに決まってるだろうが」

「そうですか、でも貴方に選択権はありませんわ」

「なにっ?!ッ…!!」

「よく不意打ちをかわしましたね」

「なんだ…今の黒い糸は…」

「次はそうはいきませんわよ、さすがに後ろが壁なら、逃げようがありませんものね」

「うわっ…あ、うっ…くそっ!」
「もう逃しませんわ、安心なさって?終わったらちゃんと帰してあげますから」
「な、何故俺なんだ、答えろ!」
「だって……貴方に会ったことは、運命だから」
「運命……っ!?なにを…!」
「執着は呪いに変わり、侵食する。果たして、貴方は、私のものになるまでどれくらいかかるかしら……」

___


「首筋へのキスは執着……人形の呪いの発動条件は相手への執着ですから、ちょうどいいですわよね?」

訳がわからん……ただ一つ言えること、コイツの頭はおかしい。
ともかく、あの時すでに呪いがかかっていた……?何故気づかなかったんだ……!!

「しかし、何故話す必要があった。話さなくてもよかったはずだ」
「話せば貴方を始末する理由ができますわ。理由なき行動に意味はない、さぁ、デュエルしましょうか」

あぁ、コイツは理由のないことには動けないタイプの人間か……。負ければ終わり、勝てば……。

「俺が勝てばヒカルにかけた呪いを解け!」

「フフフ…良いでしょう、私が負けるなんてあり得ませんけどね」

「どうだろうな、行くぞ!デュエルディスクセット!」

「デュエルディスク、セットですわ!」

《ARヴィジョン、リンク完了》

「「デュエル!」」

「先攻はもらうぞ!俺のターン、ドロー!」

初対面だ、デュエルを見たこともない相手……一気に攻めるか……いや、様子見か……。

「俺は、モンスターを裏守備表示でセット。カードを一枚伏せてターンエンド」
《手札:4》

「私のターン!私は《コラプトマリオネット チェルシィ》を召喚!」
《攻撃力:0/レベル:3》

攻撃力0のモンスターを攻撃表示だと…一体なにがあるんだ……。

「チェルシィは、相手のフィールドにモンスターが二体以下のとき、同じチェルシィをデッキから特殊召喚する!」
《攻撃力:0/レベル:3》

「レベル3のチェルシィ二体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れなさい《コラプトマリオネット リカティナ》!」
《攻撃力:0/ランク:3/ORU:2》

「攻撃力0のモンスターエクシーズだと!?」

「全てがランクや攻撃力で決まるわけではなくてよ?私はカードを二枚伏せ、ターンを終了しますわ」 
《手札:3》

確かにそうだ。恐らく強力な効果を持つに違いない。
大体コラプトマリオネットなど聞いたことすらない。本質の見えないデッキなのだから慎重に戦わなければ…。

「俺のターン、ドロー!俺は《ネクロスフィア・クィーン》を反転召喚」
《攻撃力:800/レベル:4》

「リバース効果発動。効果発動時に他のモンスターが存在しないとき、レベルを二倍にし、二体分のエクシーズ素材になる」
《レベル:8》

「レベル8のモンスターが二体…来ますわね」

「レベル8のクィーン二体分でオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!《機械堕天使 ネクロ・ブラッティ》!」
《攻撃力:2500/ランク:8/ORU:1》

本質の分からないデッキなら下手に様子見をして負けるわけにはいかない。一撃で仕留める…!

「俺は《RUM-ライトニングスカイ・フォース》を発動!ランク8のネクロ・ブラッティで、オーバーレイネットワークを再構築!エクシーズ召喚!降臨しろ!《機械大天使 クリスタルエンゲーラ》!」
《攻撃力:3000/ランク:9/ORU:2》

「来ましたね…」

「クリスタルエンゲーラの効果発動!オーバーレイユニットを全て使い、墓地に送ったオーバーレイユニット一つにつき攻撃力を800ポイントアップする!オーバーレイユニットは二つ、よって1600ポイントアップだ」
《攻撃力:4600/ORU:0》

更に、クリスタルエンゲーラはバトルする時、相手は手札や墓地からモンスター効果を発動できない。これで終わりだ!

「行け!クリスタルエンゲーラでリカティナに攻撃!クリスタルグラスバスター!」

「きゃっ!…永続罠発動《マリオネット・ダンシング》!一度だけバトルを無効にし、相手フィールドに《マリオネットトークン》を二体特殊召喚する!」

《攻撃力:0/レベル:1》

攻撃を無効にし、トークンを呼び出した…。
テキストを見る限り、戦闘や効果で破壊できないし、エクシーズやリリースの素材にもできないのか…しかも表示形式変更不可とは厄介だな…。

「くっ…」
「中々素晴らしい効果ですが…当たらなければ意味はありませんわ!」
「俺はこれでターンエンド。攻撃力は元に戻る」
《攻撃力:3000》《手札:4》

トークンを俺の場に並べたということはなにかある。
本来トークンは自分の場に並べてアドバンス召喚の素材にしたりする。まぁ例外としておジャマ等のダメージを与えたりする奴らもいるが。
この手のトークンはモンスターの展開を防ぐタイプか。

「私のターン、ドロー!私は永続魔法《傀儡人形複製術》を発動!このカードは1ターンに一度、相手フィールドに《マリオネットトークン》がいるとき、一体だけ相手フィールドに《マリオネットトークン》を特殊召喚致しますわ!」

「これで三体目…」

「更に永続罠《マリオネット・サンクチュアリ》発動!相手フィールドに《マリオネットトークン》が召喚された時、《マリオネットトークン》一体を特殊召喚!」

これでクリスタルエンゲーラ以外が全て《マリオネットトークン》になった。

「ここでリカティナの効果!オーバーレイユニットがある時、相手フィールドの《マリオネットトークン》一体につき攻撃力を400ポイントアップ致します!」
《攻撃力:1600》

四体で攻撃力1600か…1600のダメージは痛いが、クリスタルエンゲーラで確実に攻められる!

「攻撃力が1600だからって甘く見ないでくださる?リカティナはオーバーレイユニットがある限り、《マリオネットトークン》全てに攻撃が可能なのです」
「ということは、四体のトークンに攻撃が可能、1600の四回攻撃で6400のダメージか!」
「その通りですわ!飲み込みのいい人は嫌いじゃありませんことよ♪」

冗談じゃない…!三体のダメージを食らった時点で終わりだぞ…!?

「それではまず端から攻撃していきますわ!リカティナのファーストアタック!フローラルウィップ!」

「罠発動!《ハーフショット・シールド》!クリスタルエンゲーラの効果をエンドフェイズまで無効にする代わりにこのターン受けるダメージを半分にする!」
《托都のライフ:3200》

「中々やりますわね…良いでしょう。ですが、バリアンの力を持たないバリアンに負ける道理はありませんわ!」

「くそっ…!」


~~~


「さぁ、盛り上がってきたな」

こっちもお出迎えの準備と行きますか。

「良いデュエルを期待してるぜ」





92話へ続く


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【あとがき】

今回の一言、「遊戯王は男の触手がお好き」。
教養がない意味のバカVS物理的な意味でバカの対決になりました、救いようがないですね。

はい、台詞多めだったんでちょっと分からないところあると思うんで近いうちにまとめようと思います、絵に。絵に。(大事なことなのでry)
なにが今回すごいかって相手ターンも使って容赦なくソリティアするトルテだよ。リカティナは素材軽いかと思いきや機械族指定です。コラプトマリオネットが機械族なんで問題ないですが少々使いづらい…トークンは指定なしですけどね。
托都がバカと言われる所以は様々ありますが、一番はなにかとドジをやらかすからだと思ってる。

次回!!傷だらけの絆を取り戻せ!ヒカルが遂に鏡と激突!!
こちらのデュエルは置いといてヒカルのデュエルが始まります、絆を忘れた友のため、その身を犠牲にしようとするヒカル。ところが予想外の事態が起こり、絶体絶命に!?そして今のデュエルもキーになることでしょう!
さぁ、決戦は近いぜ!


【予告】
托都がデュエルしていた一方でトルテの力で更に追い詰められていたヒカルは鏡の城の隣にある鏡の迷宮に迷い混んでいた。
そこで遂に遊矢を見つけ出したヒカルは鏡の策の全てを聞き出す。
全てを知ったヒカルはデュエルで遊矢を取り戻そうとするが鏡の力によって予想外の事態が起こってしまう!
次回!第92話「傷だらけの決戦 遊矢VSヒカル」