ジェレスタ90「 銀 河 激 昂 ! ! 竜 皇 の 力 」




「真実誠……、七罪鏡……?」

「俺らは神だよ。ただ、元々は半人半神のご貴族様だから、名字持ち。怪しまれるし、人間なのが嫌いな鏡ちゃんは滅多に名乗らないけどね」

お喋りが好きな奴だ。だが分かったこともある。
まず、ハッキリしたのは奴の正体。奴は散々俺や遊矢をおちょくってきた青白クソメガネことポセイラ。
そして鏡と誠は半人半神。今は神だが昔はそうだったようだな。

「ま、イグランジア達と一緒にいたのは鏡ちゃんを探すためだし、最早ポセイラではないかな」

「神の名を偽った神……か。前にも聞いたことはあるが……」

「リンちゃん……そりゃ別の話。とにかく!俺は神様なの!そんな俺のシモベだよ?嬉しいでしょ」
「バカげてるぜ、貴様に従うほど俺は落ちぶれてはいない!!」
「そっかぁ……残念。なら、デュエルで生意気な口を黙らせるしかないね」

奴が神の五王ならなおのこと負けるわけにはいかない…!なによりあんな奴に従うのは断固ごめんだ!!

「ファントム・ボイドドラゴンの効果発動!1ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い、相手モンスター一体の攻撃力をこのモンスターに加える!ギャラクティック・カオスの攻撃力を加えるよ」
《攻撃力:5800/ORU:1》

「行けっ!ファントム・ボイドドラゴンでギャラクティック・カオスを攻撃だ!」

これで2800のダメージ……!だがライフが700あれば十分だ…!

「楽には倒してあげないよ。速攻魔法《スカルダガリー・キュア》を発動!このカードは、戦闘ダメージを半分にする代わり、戦闘した相手モンスターを除外する!」

「なにっ!?っぐ!!」
《ヒカルのライフ:2100》

除外だと……ライフを減らすよりもそっちの方が死活問題だろ…信じられないな…。
エクストラデッキに奴を倒せるモンスターはいない。ならば、除外されたギャラクティック・カオスを墓地に戻すしかない。

「俺は、カードを一枚伏せてターンエンド!」
《手札:0》

奴の手札は0、伏せカードはともかく、あの三枚の魔法カードはなんとかしなければいけない……。
ここはアルテミスギャラクシーになるべき…?だが、デュエルを始めた時点で体はアフロティアとのデュエルの時と変わりないほどダメージを受けてる…。もしダメージが原因でアルテミスギャラクシーになれなかったなら、今回も恐らく不可能。
それでもやらなきゃならない時がある…!失敗したらその時だ、今度は気を失ったりはしない。

「俺は銀河の力で……!」
「そうはさせない!!君の力は俺がもらうよ!」
「なにっ…鏡…!?」

鏡に写った姿にはなにかが欠けていた。そう、あの紅い心層の貝殻が。
数秒でぼやけて消えたが、やはりなにか足りない…真正面を見ると誠の手には心層の貝殻がある。……アイツ!!

「これで君は、力を失ったも同然だね」
「く……!」

「ヒカル!!」

「!…リンさん…!?」

「コイツを使え!!」

飛んできたカードはモンスターエクシーズだ。ただし……厄介なカードだ。

「よし…俺のターン、ドロー!罠発動《エクシーズ・スプラッシュ・リバース》!エクストラデッキからモンスターエクシーズ一体を墓地に送り、墓地から素材と同じ数だけモンスターを特殊召喚できる!ただ、効果は無効、攻撃力は0になる」

これで、ギャラクシー・カオスを墓地に送って《銀河光輝竜》を二体呼び出せた。
だが………このカードを使わなければいけないと思うとあまりいい気分ではないな、そりゃそうか。

「俺は、レベル8の《銀河光輝竜》でオーバーレイ!二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!」

「っ!?この輝きは…!」

「光輝く永遠の銀河、運命と希望をその身に宿し再誕せよ!《No.62 銀河眼の光子竜皇(ギャラクシーアイズプライムフォトンドラゴン)》!」
《攻撃力:4000/ランク:8/ORU:2》


~~~


「雨、どんどんひどくなってる…」
「なんだってこんな時に……」

Dゲイザーのネットワークシステムを使って天気予報を確認してみたら、雨になっていた。一時間近く前からだけど。
狩也くんが「傘を持ってくる暇がない」って言ってる。私もかな……。
今は雪那ちゃんの家の前、近かったしせめて雪那ちゃんは風邪を引かないようにって托美先輩が。

「お待たせ!お母さんに帰りが遅くなるって言ったら長引いちゃって…」
「良いの…って傘五本?」
「みんな風邪引いたら遊矢くん、絶対嫌だろうから、みんなほらっ!」
「あ、ありがと…」

雲行きは更に怪しくなってきてる。……どうすれば…。

「そうだよ!良いこと思い付いた!」
「どうしたの~?」
「ヒカルくんよ!彼がいれば遊矢も探し出せる!」
「でも、ヒカル先輩は今ハートランドに…」
「どうかな?」
「え?」
「Dセンサーに朽祈先輩のデュエル反応がある。それもハートランドじゃない、あのホテルだ」

狩也くんの指差す方向にあるハートランドシティ一番のホテル最上階。確かにセンサーには今そうある。

「じゃああそこに行けば!」
「ヒカルくんに会えるわね!」
「行きましょ!」


~~~


「銀河眼の光子竜皇……だって!?」

「光子竜皇の効果発動!1ターンに一度、フィールドの全てのモンスターのランクを1上げる」
《ランク:9》《ランク:6》

正直、カイトのカードを使うなんて絶対に嫌だが……勝つためにはこれしかないんだ…!!

「光子竜皇はバトルする時、フィールドの全てのモンスターのランク×200ポイントアップする!」
《攻撃力:7000》

「攻撃力7000!?反則級じゃないか!」

「行け光子竜皇!ファントム・ボイドドラゴンに攻撃!エタニティ・フォトン・ストリーム!」

「うわぁぁあああ!!!」
《誠のライフ:2800》

よし!これでファントム・ボイドドラゴンが破壊できた!次のターンでアイツを倒す!

「カードを一枚伏せて、ターンエンド!どうだ、これが俺の仲間を守るための力だ!」
《手札:3》

「仲間を守る力…?…君はやっぱりバカだよ」
「なに…」
「君みたいに自己中心的で、自分が可愛くて仕方ない奴が……俺より仲間を想えるの?」

コイツ……急になにを…!

「分かった、あの悪夢のは…!!」
「気づくの遅すぎ、言ったでしょ。自分が好きすぎて汚れきった心の君には、仲間を想う気持ちなんてない」
「そんなことない!俺はみんなを守るためなら…!」
「ふーん。じゃあなんであの時、鏡ちゃんから遊矢ちゃんを助けてあげなかったの?」

あの時。恐らく遊矢と鏡の力が融合したとき…?
だって助けようがないじゃないか。一階下にあるデュエル施設に上から飛び込むのには勇気が必要だぞ?それに、満身創痍だった俺にできるわけない…。

「まぁ、言い訳したくなるよね。でもさ、なによりも君、一度……天城カイトを殺してるもんね」
「………!」

なんでアイツが知ってるんだ……?

「ま、未遂だけど」

「………そうだよ、知ってるとはビビったぜ」

___二年前


「なに?デュエル指導をゴーシュにしろだと?」
「アンタのやり方にはついていけない。うるさいがゴーシュの方がマシだ」
「理解できんな。そんなに嫌か、俺のデュエルが」
「大体前から気に入らなかったんだ!弟のためなら手段を選ばないアンタのことが!人を犠牲にするやり方しかできないアンタが大嫌いだ!!そんなアンタのデュエルに付き合っていられない!俺は俺の方法で、ヒカリを助ける!」

ーーーパンッ!

「っ…なにしやがる!」
「バカか貴様。なんの犠牲もなく、奇跡は起きない。なにも守れない。貴様の言ってることは正義のヒーローを気取った"悪"だ」

「……悪……ざけんじゃねえよ、アンタの方がよっぽど悪だ!巨悪だよ!」

「ならなんでもいい。倒してみろ。…デュエルなら貴様に負ける道理はないがな」

「そうかよ…デュエルなんかしなくても、アンタは自分のやり方で死ぬんだ!フォトンハンド!」

「………」
《カイト様!》

「オービタル……!」

「ほう、貴様はデュエル以外でも倒せない…か」
《オイ生意気ポニーテール!カイト様ニナンテコトヲ!懺悔ノ用意ハデキテルデアリマスカ!?》

「くっ!」
《ダイレクトアタックデアリマス!》
「う、わっ……!!」

ーーーガランガラン

「…!オービタル、ヒカル!離れろ!」

「なにっ?…!」

___


あの時、フォトンハンドでカイトの魂を奪うことに失敗し、戦闘モードのオービタルが工事中の鉄骨を破壊したせいで崩れ、事故に巻き込まれた。
カイトはその事故をハートランド管理局の権限でもみ消した。

「オービタルのおかげで俺も軽傷だった、それが全容だな」
「へえ、最後はそうなったんだ」

「いつの間にそんなことが…」

確かに、あの時殺意はあった。だがオービタルに阻止され、あれ以降カイトではない指導役が来た。

「でもね、その話を聞いても俺はヒカルちゃんが自己愛の塊だってね」 
「なに…?」
「君の正義を押し付けてるワガママ…気にくわないから魂奪ったり…?挙げ句君は事故の被害者面?」
「……」

言う通りだ。奴が言うことは、正論だ。

「………」

「ヒカル!!」

「あらら~心が折れちゃったかなぁ?まぁいいや、デュエルは続いてるし…俺のターン、ドロー!速攻魔法《鏡影蘇生》発動!墓地のモンスターエクシーズの攻撃力を0にし、特殊召喚する!甦れファントム・ボイドドラゴン!」
《攻撃力:0/ORU:0》

《ヒカルのライフ:1400》

だが、正論だろうが俺の考えを曲げるつもりはない。

「ファントム・ボイドドラゴンをマイナスダークエクシーズチェンジ!現れろ!《幻鏡輝龍 アナイアレーション・ドラゴン》!」
《攻撃力:3800/ランク:-5/ORU:1》

《攻撃力:6000/ORU:0》

「アナイアレーション・ドラゴンの効果、オーバーレイユニットを全て使い、相手フィールドのカードを全て除外する!」

それが自己中心的だったとしても、他から見て悪だったとしても。

「ヒカル!!攻撃が来るぞ!!」

「これで終わりだよ!アナイアレーション・ドラゴンでダイレクトアタック!エターナル・ディサピアランス!!」

「……俺は、俺の正義を貫くだけだ!除外された罠カード《異次元の竜皇激流》を発動!」

「除外された罠カードを発動!?」

「除外されたドラゴン族モンスターで、攻撃力が一番低いモンスターを特殊召喚する!この効果で召喚されたモンスターは、戦闘で破壊できない!現れろ《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》!」
《攻撃力:3000/ORU:0》《ヒカルのライフ:600》

これで耐えきった!ギャラクシー・カオスは墓地にいるが、まだ勝てる見込みある!

「これで終わりなわけないよ!アナイアレーション・ドラゴンの効果!バトルで相手モンスターを破壊できなかったとき、ライフを半分にする!」

「っ!!」
《ヒカルのライフ:300》

それでもライフは300残った………、なんとか耐えきったという感じではあるが…。

「ターンエンドだよ、なんとか耐えたねえ。君はやっぱり自分の正義を振り撒くんだ」
《手札:2》

「あぁ………っぐ…!」
「体痛いよねえ、呪いは君に反して進行を続けてる。これも君への断罪なんじゃない?」
「どういうことだ…」
「君が一番、なにより気が咎めてるように見えて内心は違う」

気が咎めてるように見えて、実際はそんなこと思ってない…?

「忘れちゃったの?だって君は、弟すら殺したじゃないか」

「………」

「ミスターTによって、自分の命と天秤にかけられて、弟が大事とか言っても君は自分の方が大事だもんねえ!それに対しての断罪なんだよ!あっははははは!!自業自得ぅ~!!」

「うっせえんだよゴミ野郎が!!!」

「…え!?」

一々なんだよ、俺とヒカリの何がわかる。奴は、俺が出会った中で最低のゴミだ!カイト以下だ!

「どこまで人を愚弄すれば気が済む……人をバカにし続けるなよ……」

「え…なに、ちょ…」

「俺のターン、ドロー!俺は手札を全て捨てることで魔法カード《銀河激昂》を発動!!」

このカードは、捨てた手札の枚数分、ギャラクティック・カオスの攻撃力を400ポイントアップする。
手札は三枚、よって1200ポイント。

《攻撃力:4200》

「な、なぁんだそれだけえ?」

「それだけじゃない。お前言ったよなぁ?楽には倒さないって、同感だ。今ならお前を原型が残らないまでに叩き潰してやれる」

「なにそれ……冗談だよ…?なに笑ってんのさ……」

「《銀河激昂》の更なる効果、俺はデッキからカードを20枚墓地に送る。これにより、相手モンスターは戦闘で破壊できなくなるが、墓地に送った枚数……つまり20回の攻撃が可能になる…!」


「合計20回の攻撃!?」


叩き潰す……今これほどこの言葉が素晴らしいと思ったことはないかもしれない。奴を、叩き潰すためなら力にもなんにでも溺れてやれる。

「さぁ……覚悟はできたか」

「ヒィッ!?冗談だよ!?ねえ真に受けないでよ!嘘だから!ねえ嘘だから!ね?遊矢ちゃんの居場所教えてあげるからぁ!!」

「行け!まずは一回目!ギャラクティック・カオスでアナイアレーション・ドラゴンに攻撃!!」

「っ!!」
《誠のライフ:2400》

「二回目だ!!ギャラクティック・カオス!」

「ぐぁああ!!」
《誠のライフ:2000》

「三回目!!!」

「うわぁああぁぁ!!!」
《誠のライフ:1600》

ーーー真実の名を冠した神は嘘つきで、それも真実を語ったら力に身を任せた少年に殺される。

「滑稽だな」
「誠がか?」
「いいや、両方ともだ」


「七回目!!」

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
《誠のライフ:0》

「立ち上がれ、まだ終わってないぜ」

「意味わかんないよ……もうライフは尽きてるんだよ…デュエルは終わってるんだよぉ!!」

「デュエルは……な」

「ちょっと……?ねえ……見ないでよ…ゴミを見るような目をしないでよ…!!終わったから!!鏡ちゃん助けてよ!!」

「助けは来ない、…扉を封印したのはお前自身だろうが」

「ひぃぃ………嫌だよぉぉお!!!」


~~~


「このホテルだわ!」
「ここにヒカル先輩が……あっ!」

ホテルの入り口からすでにボロボロのヒカル先輩が現れた。私たちには気づいてない。

「ヒカル先輩!!」

「…!アミ…、それに遊矢の仲間たちか……」
「大丈夫ですか?!怪我は…」
「問題ない……ッ…、お前らは帰れ」
「どうして!?」

ヒカル先輩の方がよっぽどダメージを受けてるのに、私たちに帰れなんて……。

「なんでだよ!朽祈先輩の方こそ」
「俺はいいんだよ。…何をしても、もうすぐいなくなるだろうからな」
「どういう…ことなの…?」

「お前らには関係ない。ここからは、俺が決着をつける」

「ざけんな!俺も!!」

「お前らに何が分かる!!」

「先輩……?」

「…リンさんに、言われた。もうすぐ死ぬかもしれないと、な」

死ぬ……?先輩が……?

「俺は、それまでに遊矢を連れ戻す。それが最後にできる償いだからだ」

「償い…?」

償いってなに?なんでヒカル先輩が死んじゃうの?分からないよ…!!
でもあげきゃ、このカードを渡さなきゃ…!

「待ってください!」

「!…なんだ」
「これを…遊矢と戦うなら…」

「………ありがとう」

今のヒカル先輩、笑顔が怖い。
町外れの方向にいなくなっていくのを私たちは見ていることしかできなくなってた。


「(なんの犠牲もなしに救えるわけがない……なら、俺が犠牲になってやる)」





91話へ続く


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【あとがき】


今回の二言、「除外から罠だと!?」「ヒカルくんマジドS」
ヒカルくんがついにSに目覚める。誠ちゃんによる煽りフェイズは我々に革命を起こしたことを記す。

除外から罠は鏡編前からやってたような……気のせいかなぁ……。でも書いてて面白いよね、反則効果。
ニジュウレンダァの後は次回です。次回やらないとタイミングのがしちゃうからね。
そしてヒカルくんが目覚めすぎててヤバい、ちなみに攻撃時は無表情でその前はずっと不気味に笑ってるイメージ。やだもう怖いよ……。ただし、ヒカルくんの意識はもうほとんどないです。
カイトとの過去で分かったことは、ライバルたちは鉄骨事故多いということ。

さて次回!人形遣いの悪夢が托都を襲う!?トルテ、遂にデュエル!!
話は変わり、托都は遊矢を探し奔走中。ところが突如現れた鏡の世界でトルテと遭遇、トルテの目的が明らかに!!
注目のトルテのデッキとは……?必見!

そして、100話まであと10話!

【予告】
遊矢を探していた托都は鏡の罠で鏡の城に迷い混んでしまう。
城の最上階、王の間に待ち受けていたのは遊矢ではなくヒカルを待っていたはずのトルテだった。
予想外の事態だったトルテは怪しむ托都に自身がヒカルにかけた呪いの全てを話し、托都にデュエルを申し込む。
次回!第91話「人形遣いのデュエル 托都VSトルテ」