ジェレスタ85「 ア ル テ ミ ス ギ ャ ラ ク シ ー 発 動 不 可 … ! ? 」
「なぁんだお前!男のくせに可愛いモンつけてんじゃねえの?」
「やめろよ~相手は子供だぜ?」
「あー悪い悪い、すまねえなぁ女の子に対してさ」
「プッ…ギャハハハ!!やめろって!」
「~~~っ!オレ、泣かないからな!絶対泣かないからな!」
「は~~ん?泣かないなら~泣かせたくなるな~」
「あっ!返せ!母さんからもらった大事な…」
「へ~親無しの朽祈兄弟長男クンは仮想お母さんの贈り物大事にしてんのか?」
「母さんを悪く言うな!」
「なにをしている」
「げえっ…!」
「Mr.ハートランド様!…しかもカイト…」
「子供に手を出してはいけないだろう、彼は来たばかりなのだ、もっと優しく接しなさい」
「「ハッ!」」
「チッ…!覚えとけよ!」
「ありがとう!Mr.ハートランド!」
「お礼ならカイトに言いなさい、この状況を見つけたのはカイトなのだから」
「カイトも、ありがとう!」
「……礼は良い、ハルトを頼むぞ」
「…うん」
カイト……忘れることもできない記憶を作り出したのはコイツだった。
出会った頃こそ良い奴だったけど……、今は…言うまでもないか……6年の月日は大きかったような気がする。
でも……、今はーーーー。
「貴様、神の五王か」
『何度も繰り返し言うつもりはありませんわ。私は神の五王が一人、アフロティア。最高神の意向に従い、罪深き者達を粛清します!』
「はっ、笑わせんなよ。良いぜ、そのデュエル受けて立つ!」
『朽祈ヒカル……良いでしょう』
……?アイツの姿、どこかで見たことあるような………、気のせいじゃない?
仮面のせいで見覚えが分からないのか。
「…カイト、あの女性の髪…」
「……まさかな」
「『デュエルディスク、セット!』」
「Dゲイザーセット!」
《ARヴィジョン、リンク完了》
「『デュエル!』」
~~~
「はぁ……」
『お疲れ様です~!』
「お疲れじゃねえ!」
ったく……なんかタスキのせいで今日負けまくった気がするぜ…デュエルをなんにも知らなかったから仕方ないか。
今は6時過ぎ、小鳥姉さんに頼まれてたおつかいが終わって帰る途中。人付き合いの荒い姉さんだぜ…。
結局、あの胸騒ぎはなんだったんだろう……、ものすごい嫌な予感だったけど。
『どうされたんですか?浮かない顔です』
「いや、なんでもないさ」
なんでだろう、早く強くならなきゃって思えてくる…。このままじゃ、なんか大事なものを失う気がして………なんで?
『不安なら、俺に力を貸せ。全てを与えてやる』
「!?」
『ご主人…?』
「なんでもない…」
幻聴…?にしてはハッキリしてたような?
でも誰もいないし、いるのはタスキだけ。声は俺に似てたけど…俺じゃない。
また新たな神の五王なのか……?
~~~
「俺の先攻、ドロー!…っ…!?」
「…?」
「ヒカルくん、様子がおかしいわ…」
「一体なにが…」
なんだ…今の目眩は……、一瞬だったが……。いや、今はデュエルに集中しなければ。
「俺は《カオス・パージ ドラゴプス》を召喚!ドラゴプスは、召喚に成功した時、手札からカオス・パージと名の付くモンスターを特殊召喚できる。現れろ《カオス・パージ ヴァルキリー》!」
《攻撃力:1200/レベル:4》《攻撃力:1800/レベル:4》
「ヴァルキリーの効果発動、このターンのバトルを放棄する代わりに俺のフィールドのレベル6以下の全てのモンスターのレベルを二倍にする!」
《レベル:8》《レベル:8》
『先攻はバトルフェイズがない…そしてレベル8のモンスターが2体……』
相手の実力が分からない…、だが今は攻めるしかない!
「レベル8になったドラゴプスとヴァルキリーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》!」
《攻撃力:3000/ランク:8/ORU:2》
『《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》……』
「まだ終わりじゃない、ギャラクティック・カオスをエクシーズ素材として、ギャラクティックエクシーズチェンジ!現れよ!《ギャラクシー・カオス・ダークネスドラゴン》!」
《攻撃力:4000/ランク:8/ORU:3》
『……懐かしい、ですね』
……?懐かしいってどういうことだ。
ギャラクティック・カオスはだいぶ前から使っていたが、ギャラクシー・カオスは……………いつからだ。確かに他のジェレスタエクシーズだったものは覚えがある……。
「どういうことだよ…」
『忘れたのですか?貴方にそのカードを惹き逢わせたのは、他でもない私自身だと言うことを』
「なに寝言言ってやがる、コイツは俺の相棒だ!お前みたいな奴に与えられたって言うのかよ!」
『では思い出しなさい、貴方の、その銀河の力を』
「…!」
~~~
「うわあああ!!」
《???のライフ:0》
「こんなものか…(これじゃあ、遊矢には勝てない…もっと強力な力が…)」
『力を欲する……それはデュエリストの性…』
「誰だ!」
『例え、貴方が弟を救うためと戦おうとも、最終的に貴方が良ければそれで良い。……そんな貴方に力を差し上げましょう』
「これは……」
『ジェレスタエクシーズ内でも強力なカード………貴方は結局、運命に身を任せるしかない…そのカードが貴方に加護を与えれば良いですね』
「おい!!待て!何者だ貴様、何故俺に力を貸す」
『……この体の主が、貴方に力を授けろと言ったのです。見覚えがあるでしょう』
「まさか……いや、そんなはずない…?」
『貴方の記憶、今は良いでしょう。私が誰なのか、そのカードを与えたのが誰か、今は忘れなさい。いずれ再び運命が交差した時、思い出すのです』
~~~
『どうです、これでも私ではないと?』
「……」
今のビジョンが、ギャラクシー・カオスを手に入れたときの記憶なのか……。
「俺は信じない…ギャラクシー・カオスが貴様が与えたカードだと?ふざけんな!」
「偏屈ね~…」
「まるでミザエルだ」
『貴方の相棒だから?』
「そうだ」
『全く…これだからドラゴン使いは…』
……俺はそんなに偏屈か…?
『そりゃあそうですよね、貴方は自分勝手で我が儘、自分大好きな人間。自分にとって悪い結果は認めない……私が知らないとでも?』
自分勝手で我が儘で自分大好きなつまり自己中か…?
ドラゴン使いって本当に凄い奴らだな。まぁ恐らく俺もそのドラゴン使いの中に入るんだろうが、……考えないようにしよう。
「………デュエルを再開する」
『賢明ね、これ以上貶されたくないなら良い判断と言える』
「言えるもんなら今すぐにでも言ってみろよ、その分倍にしててめえに返してやる」
「怖いわね…」
《顔ハ笑ッテイルトイウノニ》
とにかく、まずは勝たなければ意味がない。勝手からアイツの減らず口を折ってやる…!
「俺はカードを2枚伏せて…ッ…」
『あら?どうしたのかしら』
「…るせえ、なんでもない。ターンエンドだ」
《手札:2》
俺の伏せたカード…一枚目は《ディストーション・ビクティム》、手札の闇属性モンスターをリリースして戦闘してきた相手モンスターの攻撃力を0にして、カードを一枚ドローできる…。
もう一枚は《シャイニングリフレクト》、自分のフィールドの光属性モンスターの攻撃力を0にして、カードを二枚ドローし、破壊を無効にするカード。
これでカード三枚はドロー可能、しかも《シャイニングリフレクト》の破壊程度なら全く問題はねえ…!
『私のターン、ドロー!私は《虹の女神 イリシア》を召喚!』
《攻撃力:1000/レベル:3》
『イリシアの効果発動!デッキの一番上のカードを墓地に送り、手札から女神と名の付くモンスターを特殊召喚する!現れよ《花盛りの女神 タレイア》!』
《攻撃力:800/レベル:3》
レベル3のモンスターが2体……来るか…!
『私は、レベル3のイリシアとタレイアでオーバーレイ!2体の光属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!最高神の加護を受けし女神よ、我を導け!《禁断の女神 パンドラ》!』
《攻撃力:1800/ランク:3/ORU:2》
「ランク3のモンスターエクシーズか」
「攻撃力は1800、ギャラクシー・カオスには劣るけど…」
「ギャラクシー・カオスを与えた奴が、無策で来たとは思えんな」
攻撃力1800、オーバーレイユニットは2つ。思っていたより神の五王の連中は普通のカードを使うんだな。
ゼウラのデュエルは見てなかったし、これから本格的に奴らと戦うのならこういうデュエルは大事かな。
『私はパンドラの効果発動!1ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い、デッキからカードを三枚確認し、このモンスターのオーバーレイユニットにする。クリスタルチャージ!』
《ORU:4》
「オーバーレイユニットを増やした?」
『まだ効果はあるのよ、パンドラはオーバーレイユニットの数×800ポイント攻撃力がアップし、このターンの罠カードの発動を無効にする』
《攻撃力:5000》
「なにっ!?」
ということは二枚の伏せカードが発動できない…!
ただ、ギャラクシー・カオスは相手ターンにも効果を発動できるカードだ、これで4000のダメージを与えれば!
『更に、魔法カード《花園の罠》を発動!デッキの上からカードを二枚墓地に送り、相手モンスターエクシーズのオーバーレイユニットを全てパンドラに吸収する!』
《攻撃力:7100/ORU:7》《ORU:0》
………もうなにも言えないレベルだなこれ…。
考えてみたら墓地にカードを送るハンディに見せ掛けてそれを必ず有効活用する手だてを持っているはず…、アイツのデッキ……なんて意味不明な…。
『行きなさいパンドラ!ギャラクシー・カオスに攻撃!ドゥームパニッシュ!』
「うぁぁあぁああ!!」
《ヒカルのライフ:900》
「一気にライフが900に!」
《アノ女、恐ロシクワカッテイルノデアリマス!》
「カイト、やはり彼女の正体は…」
「………」
「くっ…そ……!…うっ…!」
こんな時に頭痛までしてきたか…!嫌がらせかよ…!
『随分派手にやられましたね』
トルテ…!?姿が見えない……一体どこにいやがる!
『心の中から話してますからね、仕方ないです。どうですか?もし私の力を受け入れるのなら、勝たせてあげますよ』
冗談じゃねえ…、誰がてめえの策なんかに引っ掛かるかよ!
『ふーん?でもあの巫女に言われたんでしょう?心が死んでしまうって』
どうせてめえの仕業だろうが。分かってるさ。
てめえの力を借りなくても、ギャラクティック・ヒグスの力を使えば奴には勝てる。
いい加減諦めろ!何度俺に声かけようがてめえには興味の欠片もない!
『そうですか、なら苦しんで苦しんでから私に力を与えてくれと言ってくれる日を待つとしましょう。まぁ…ギャラクティック・ヒグスも、出せればの話ですけど』
出せれば……?一体なんのことだ。
『上の空ね』
「……チッ…」
『本当に余裕がないように見える…私はカードを一枚伏せてターンエンド!』
《手札:2》
ギャラクティック・ヒグスを召喚するにはアルテミスギャラクシーになる必要がある。
俺の手札には《死者蘇生》……。
ギャラクティック・ヒグスはオーバーレイユニットを使って、相手モンスターエクシーズのオーバーレイユニットを除外できる効果がある。更に召喚時の効果無効効果と攻撃時の攻撃力アップ……これで、勝つ!
「俺は、俺の魂を銀河の力に………ッ!?」
なんだ……!?今の…感覚……。
《カイト様!》
「今、ペンダントにヒビが!」
「あれは一体…どうなっている…呪いの力?」
「っぁあ…!!頭が……っ…」
頭が割れるように痛い……!
今、アルテミスギャラクシーになろうとした時 急にこんな……。触った感覚で分かるが、ペンダントにもヒビが入ったか…遂にコイツ…ダメになっちまうのか。
「もう…一度…!……くっ…う…っ…」
『やめなさい、見苦しい』
「なん…だと……」
『どうやら試みようとするだけで今貴方は傷を負っている。そんな貴方を見て、貴方の母親は喜ぶかしら』
母さんが……?この場にいないのに…いや、違う、アイツが言いたいのはそうじゃない…!
やはり、アイツの…あの人の正体は…!
『仮面の下を見た時、それは絶望の時よ。貴方はこの仮面の下を見て、どう思うのでしょう』
「やめろ…!頼む…!!」
『現実を受け入れなさい、それが今私から言える言葉よ』
目の前が霞んでよく見えない、あの人だろうアフロティアは仮面を取ったみたいだ。
こんな形で再会したくなかった、満身創痍の姿としても、そして敵味方としても………。
「かあ……さ…ん……っ………」
「ヒカルくん!」
「オービタル!早く救護班を呼べ!」
《デ、デスガ…》
「早くしろ!!」
《カ、カシコマリッ!》
『あら、力尽きたのね。決着はまた今度にしましょう』
「貴様…!」
『……天城カイト…フフッ…またいずれ会いましょう』
「消えたか」
「…あぁ…(あれが、ヒカルの母親…ならヒカルは一体、何者なんだ)」
「カイト、救護班が来たわ、行きましょう」
「……分かった」
~~~
「リン…リン…!」
「なんだ、アーチャー」
「良いのか…今の気配は明らかに…」
「気にするな」
「だが…!……分かったよ」
やはり、偽物には限界がある。
ヒカル……お前は本物なのか…幻影ではなく、真実なのか…?
心層の貝殻の、真の姿はお前を受け入れてくれるのだろうか……分からない、だが今は確かめるしかない。
アイツらが動き出した今、遊矢たちに時間は残されていない……、ここからが、勝負どころだ。
86話へ続く
=====================
【あとがき】
今回の一言、「俺のギャラクシー・カオスが敵からもらったカードなわけがない」
私は信じぬ!!タキオンが裏切るわけない!に通ずるなにかを感じ取った気がする今回の話。
ヒカル満身創痍すぎィ!!前回からだいぶ元気じゃなくなったような気もしながら全部トルテさんが悪いとほざいてみる。
アフロティア様のデッキはギリシャ神話の女神が元ネタでちょっと面白い疑似ライロみたいなデッキだったね、デッキ切れしそうな感じしなくもないね。つかパンドラ強すぎィ!!
最後のヒカルくん気絶したのは満身創痍なのもあるし、母親が敵になったっていう精神的な理由もあります。じゃあ父親はどこなんだって話ですけどね、それはまだまだ秘密ですよ、教えちゃいけない。
そして鏡編入ってから里奈氏のノリの良さが跳ね上がった。内容がキチガイ染みてるもの。
次回!鏡ちゃん遂に始動!!
カイトと遊馬からヒカルの話を聞き、驚く遊矢に追い討ちかのように鏡ちゃんが現れます!!鏡ちゃんのデッキ……果たしてなんなんだろうか…。
鏡ちゃんゲスすぎんのよ。
【予告】
遊馬とカイトに呼ばれた遊矢はそこでヒカルがギャラクシーになることができなくなったことを知り驚愕する。
驚き戸惑う遊矢の前にタスキが探していた「鏡」が現れ、遊矢にデュエルを仕掛ける。
「デュエルの相手の心を映す」という鏡の力をタスキから聞き、鏡を再封印すべく遊矢はこのデュエルを受けるのだが…。
次回!第86話「遊矢VS闇の鏡!疾風迅雷の対決」
「なぁんだお前!男のくせに可愛いモンつけてんじゃねえの?」
「やめろよ~相手は子供だぜ?」
「あー悪い悪い、すまねえなぁ女の子に対してさ」
「プッ…ギャハハハ!!やめろって!」
「~~~っ!オレ、泣かないからな!絶対泣かないからな!」
「は~~ん?泣かないなら~泣かせたくなるな~」
「あっ!返せ!母さんからもらった大事な…」
「へ~親無しの朽祈兄弟長男クンは仮想お母さんの贈り物大事にしてんのか?」
「母さんを悪く言うな!」
「なにをしている」
「げえっ…!」
「Mr.ハートランド様!…しかもカイト…」
「子供に手を出してはいけないだろう、彼は来たばかりなのだ、もっと優しく接しなさい」
「「ハッ!」」
「チッ…!覚えとけよ!」
「ありがとう!Mr.ハートランド!」
「お礼ならカイトに言いなさい、この状況を見つけたのはカイトなのだから」
「カイトも、ありがとう!」
「……礼は良い、ハルトを頼むぞ」
「…うん」
カイト……忘れることもできない記憶を作り出したのはコイツだった。
出会った頃こそ良い奴だったけど……、今は…言うまでもないか……6年の月日は大きかったような気がする。
でも……、今はーーーー。
「貴様、神の五王か」
『何度も繰り返し言うつもりはありませんわ。私は神の五王が一人、アフロティア。最高神の意向に従い、罪深き者達を粛清します!』
「はっ、笑わせんなよ。良いぜ、そのデュエル受けて立つ!」
『朽祈ヒカル……良いでしょう』
……?アイツの姿、どこかで見たことあるような………、気のせいじゃない?
仮面のせいで見覚えが分からないのか。
「…カイト、あの女性の髪…」
「……まさかな」
「『デュエルディスク、セット!』」
「Dゲイザーセット!」
《ARヴィジョン、リンク完了》
「『デュエル!』」
~~~
「はぁ……」
『お疲れ様です~!』
「お疲れじゃねえ!」
ったく……なんかタスキのせいで今日負けまくった気がするぜ…デュエルをなんにも知らなかったから仕方ないか。
今は6時過ぎ、小鳥姉さんに頼まれてたおつかいが終わって帰る途中。人付き合いの荒い姉さんだぜ…。
結局、あの胸騒ぎはなんだったんだろう……、ものすごい嫌な予感だったけど。
『どうされたんですか?浮かない顔です』
「いや、なんでもないさ」
なんでだろう、早く強くならなきゃって思えてくる…。このままじゃ、なんか大事なものを失う気がして………なんで?
『不安なら、俺に力を貸せ。全てを与えてやる』
「!?」
『ご主人…?』
「なんでもない…」
幻聴…?にしてはハッキリしてたような?
でも誰もいないし、いるのはタスキだけ。声は俺に似てたけど…俺じゃない。
また新たな神の五王なのか……?
~~~
「俺の先攻、ドロー!…っ…!?」
「…?」
「ヒカルくん、様子がおかしいわ…」
「一体なにが…」
なんだ…今の目眩は……、一瞬だったが……。いや、今はデュエルに集中しなければ。
「俺は《カオス・パージ ドラゴプス》を召喚!ドラゴプスは、召喚に成功した時、手札からカオス・パージと名の付くモンスターを特殊召喚できる。現れろ《カオス・パージ ヴァルキリー》!」
《攻撃力:1200/レベル:4》《攻撃力:1800/レベル:4》
「ヴァルキリーの効果発動、このターンのバトルを放棄する代わりに俺のフィールドのレベル6以下の全てのモンスターのレベルを二倍にする!」
《レベル:8》《レベル:8》
『先攻はバトルフェイズがない…そしてレベル8のモンスターが2体……』
相手の実力が分からない…、だが今は攻めるしかない!
「レベル8になったドラゴプスとヴァルキリーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!現れろ《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》!」
《攻撃力:3000/ランク:8/ORU:2》
『《ギャラクティック・カオス・ドラゴン》……』
「まだ終わりじゃない、ギャラクティック・カオスをエクシーズ素材として、ギャラクティックエクシーズチェンジ!現れよ!《ギャラクシー・カオス・ダークネスドラゴン》!」
《攻撃力:4000/ランク:8/ORU:3》
『……懐かしい、ですね』
……?懐かしいってどういうことだ。
ギャラクティック・カオスはだいぶ前から使っていたが、ギャラクシー・カオスは……………いつからだ。確かに他のジェレスタエクシーズだったものは覚えがある……。
「どういうことだよ…」
『忘れたのですか?貴方にそのカードを惹き逢わせたのは、他でもない私自身だと言うことを』
「なに寝言言ってやがる、コイツは俺の相棒だ!お前みたいな奴に与えられたって言うのかよ!」
『では思い出しなさい、貴方の、その銀河の力を』
「…!」
~~~
「うわあああ!!」
《???のライフ:0》
「こんなものか…(これじゃあ、遊矢には勝てない…もっと強力な力が…)」
『力を欲する……それはデュエリストの性…』
「誰だ!」
『例え、貴方が弟を救うためと戦おうとも、最終的に貴方が良ければそれで良い。……そんな貴方に力を差し上げましょう』
「これは……」
『ジェレスタエクシーズ内でも強力なカード………貴方は結局、運命に身を任せるしかない…そのカードが貴方に加護を与えれば良いですね』
「おい!!待て!何者だ貴様、何故俺に力を貸す」
『……この体の主が、貴方に力を授けろと言ったのです。見覚えがあるでしょう』
「まさか……いや、そんなはずない…?」
『貴方の記憶、今は良いでしょう。私が誰なのか、そのカードを与えたのが誰か、今は忘れなさい。いずれ再び運命が交差した時、思い出すのです』
~~~
『どうです、これでも私ではないと?』
「……」
今のビジョンが、ギャラクシー・カオスを手に入れたときの記憶なのか……。
「俺は信じない…ギャラクシー・カオスが貴様が与えたカードだと?ふざけんな!」
「偏屈ね~…」
「まるでミザエルだ」
『貴方の相棒だから?』
「そうだ」
『全く…これだからドラゴン使いは…』
……俺はそんなに偏屈か…?
『そりゃあそうですよね、貴方は自分勝手で我が儘、自分大好きな人間。自分にとって悪い結果は認めない……私が知らないとでも?』
自分勝手で我が儘で自分大好きなつまり自己中か…?
ドラゴン使いって本当に凄い奴らだな。まぁ恐らく俺もそのドラゴン使いの中に入るんだろうが、……考えないようにしよう。
「………デュエルを再開する」
『賢明ね、これ以上貶されたくないなら良い判断と言える』
「言えるもんなら今すぐにでも言ってみろよ、その分倍にしててめえに返してやる」
「怖いわね…」
《顔ハ笑ッテイルトイウノニ》
とにかく、まずは勝たなければ意味がない。勝手からアイツの減らず口を折ってやる…!
「俺はカードを2枚伏せて…ッ…」
『あら?どうしたのかしら』
「…るせえ、なんでもない。ターンエンドだ」
《手札:2》
俺の伏せたカード…一枚目は《ディストーション・ビクティム》、手札の闇属性モンスターをリリースして戦闘してきた相手モンスターの攻撃力を0にして、カードを一枚ドローできる…。
もう一枚は《シャイニングリフレクト》、自分のフィールドの光属性モンスターの攻撃力を0にして、カードを二枚ドローし、破壊を無効にするカード。
これでカード三枚はドロー可能、しかも《シャイニングリフレクト》の破壊程度なら全く問題はねえ…!
『私のターン、ドロー!私は《虹の女神 イリシア》を召喚!』
《攻撃力:1000/レベル:3》
『イリシアの効果発動!デッキの一番上のカードを墓地に送り、手札から女神と名の付くモンスターを特殊召喚する!現れよ《花盛りの女神 タレイア》!』
《攻撃力:800/レベル:3》
レベル3のモンスターが2体……来るか…!
『私は、レベル3のイリシアとタレイアでオーバーレイ!2体の光属性モンスターでオーバーレイネットワークを構築!エクシーズ召喚!最高神の加護を受けし女神よ、我を導け!《禁断の女神 パンドラ》!』
《攻撃力:1800/ランク:3/ORU:2》
「ランク3のモンスターエクシーズか」
「攻撃力は1800、ギャラクシー・カオスには劣るけど…」
「ギャラクシー・カオスを与えた奴が、無策で来たとは思えんな」
攻撃力1800、オーバーレイユニットは2つ。思っていたより神の五王の連中は普通のカードを使うんだな。
ゼウラのデュエルは見てなかったし、これから本格的に奴らと戦うのならこういうデュエルは大事かな。
『私はパンドラの効果発動!1ターンに一度、オーバーレイユニットを一つ使い、デッキからカードを三枚確認し、このモンスターのオーバーレイユニットにする。クリスタルチャージ!』
《ORU:4》
「オーバーレイユニットを増やした?」
『まだ効果はあるのよ、パンドラはオーバーレイユニットの数×800ポイント攻撃力がアップし、このターンの罠カードの発動を無効にする』
《攻撃力:5000》
「なにっ!?」
ということは二枚の伏せカードが発動できない…!
ただ、ギャラクシー・カオスは相手ターンにも効果を発動できるカードだ、これで4000のダメージを与えれば!
『更に、魔法カード《花園の罠》を発動!デッキの上からカードを二枚墓地に送り、相手モンスターエクシーズのオーバーレイユニットを全てパンドラに吸収する!』
《攻撃力:7100/ORU:7》《ORU:0》
………もうなにも言えないレベルだなこれ…。
考えてみたら墓地にカードを送るハンディに見せ掛けてそれを必ず有効活用する手だてを持っているはず…、アイツのデッキ……なんて意味不明な…。
『行きなさいパンドラ!ギャラクシー・カオスに攻撃!ドゥームパニッシュ!』
「うぁぁあぁああ!!」
《ヒカルのライフ:900》
「一気にライフが900に!」
《アノ女、恐ロシクワカッテイルノデアリマス!》
「カイト、やはり彼女の正体は…」
「………」
「くっ…そ……!…うっ…!」
こんな時に頭痛までしてきたか…!嫌がらせかよ…!
『随分派手にやられましたね』
トルテ…!?姿が見えない……一体どこにいやがる!
『心の中から話してますからね、仕方ないです。どうですか?もし私の力を受け入れるのなら、勝たせてあげますよ』
冗談じゃねえ…、誰がてめえの策なんかに引っ掛かるかよ!
『ふーん?でもあの巫女に言われたんでしょう?心が死んでしまうって』
どうせてめえの仕業だろうが。分かってるさ。
てめえの力を借りなくても、ギャラクティック・ヒグスの力を使えば奴には勝てる。
いい加減諦めろ!何度俺に声かけようがてめえには興味の欠片もない!
『そうですか、なら苦しんで苦しんでから私に力を与えてくれと言ってくれる日を待つとしましょう。まぁ…ギャラクティック・ヒグスも、出せればの話ですけど』
出せれば……?一体なんのことだ。
『上の空ね』
「……チッ…」
『本当に余裕がないように見える…私はカードを一枚伏せてターンエンド!』
《手札:2》
ギャラクティック・ヒグスを召喚するにはアルテミスギャラクシーになる必要がある。
俺の手札には《死者蘇生》……。
ギャラクティック・ヒグスはオーバーレイユニットを使って、相手モンスターエクシーズのオーバーレイユニットを除外できる効果がある。更に召喚時の効果無効効果と攻撃時の攻撃力アップ……これで、勝つ!
「俺は、俺の魂を銀河の力に………ッ!?」
なんだ……!?今の…感覚……。
《カイト様!》
「今、ペンダントにヒビが!」
「あれは一体…どうなっている…呪いの力?」
「っぁあ…!!頭が……っ…」
頭が割れるように痛い……!
今、アルテミスギャラクシーになろうとした時 急にこんな……。触った感覚で分かるが、ペンダントにもヒビが入ったか…遂にコイツ…ダメになっちまうのか。
「もう…一度…!……くっ…う…っ…」
『やめなさい、見苦しい』
「なん…だと……」
『どうやら試みようとするだけで今貴方は傷を負っている。そんな貴方を見て、貴方の母親は喜ぶかしら』
母さんが……?この場にいないのに…いや、違う、アイツが言いたいのはそうじゃない…!
やはり、アイツの…あの人の正体は…!
『仮面の下を見た時、それは絶望の時よ。貴方はこの仮面の下を見て、どう思うのでしょう』
「やめろ…!頼む…!!」
『現実を受け入れなさい、それが今私から言える言葉よ』
目の前が霞んでよく見えない、あの人だろうアフロティアは仮面を取ったみたいだ。
こんな形で再会したくなかった、満身創痍の姿としても、そして敵味方としても………。
「かあ……さ…ん……っ………」
「ヒカルくん!」
「オービタル!早く救護班を呼べ!」
《デ、デスガ…》
「早くしろ!!」
《カ、カシコマリッ!》
『あら、力尽きたのね。決着はまた今度にしましょう』
「貴様…!」
『……天城カイト…フフッ…またいずれ会いましょう』
「消えたか」
「…あぁ…(あれが、ヒカルの母親…ならヒカルは一体、何者なんだ)」
「カイト、救護班が来たわ、行きましょう」
「……分かった」
~~~
「リン…リン…!」
「なんだ、アーチャー」
「良いのか…今の気配は明らかに…」
「気にするな」
「だが…!……分かったよ」
やはり、偽物には限界がある。
ヒカル……お前は本物なのか…幻影ではなく、真実なのか…?
心層の貝殻の、真の姿はお前を受け入れてくれるのだろうか……分からない、だが今は確かめるしかない。
アイツらが動き出した今、遊矢たちに時間は残されていない……、ここからが、勝負どころだ。
86話へ続く
=====================
【あとがき】
今回の一言、「俺のギャラクシー・カオスが敵からもらったカードなわけがない」
私は信じぬ!!タキオンが裏切るわけない!に通ずるなにかを感じ取った気がする今回の話。
ヒカル満身創痍すぎィ!!前回からだいぶ元気じゃなくなったような気もしながら全部トルテさんが悪いとほざいてみる。
アフロティア様のデッキはギリシャ神話の女神が元ネタでちょっと面白い疑似ライロみたいなデッキだったね、デッキ切れしそうな感じしなくもないね。つかパンドラ強すぎィ!!
最後のヒカルくん気絶したのは満身創痍なのもあるし、母親が敵になったっていう精神的な理由もあります。じゃあ父親はどこなんだって話ですけどね、それはまだまだ秘密ですよ、教えちゃいけない。
そして鏡編入ってから里奈氏のノリの良さが跳ね上がった。内容がキチガイ染みてるもの。
次回!鏡ちゃん遂に始動!!
カイトと遊馬からヒカルの話を聞き、驚く遊矢に追い討ちかのように鏡ちゃんが現れます!!鏡ちゃんのデッキ……果たしてなんなんだろうか…。
鏡ちゃんゲスすぎんのよ。
【予告】
遊馬とカイトに呼ばれた遊矢はそこでヒカルがギャラクシーになることができなくなったことを知り驚愕する。
驚き戸惑う遊矢の前にタスキが探していた「鏡」が現れ、遊矢にデュエルを仕掛ける。
「デュエルの相手の心を映す」という鏡の力をタスキから聞き、鏡を再封印すべく遊矢はこのデュエルを受けるのだが…。
次回!第86話「遊矢VS闇の鏡!疾風迅雷の対決」