ジェレスタ81「 吹 き 荒 べ 風 の 力 ! シ ル フ ィ ー ド ・ ネ オ ! ! 」


文化祭から一週間くらい経った。
あの日は色々ありすぎたけど面白かったよなぁ!!

……、と感傷に浸りたいんだけどそうもいかないんだよな。
まず1つは五王な。奴らの動きが活発化してるというか、…文化祭のは単にヒカルの邪魔したかっただけじゃねーのって思ってるけどな。
でもヒカルが言ってた「異常なほどの雑魚の人数」って話だけど…、もしかしたらゼウラ以外にも五王がいるのかも知れない。
二つ目は慶太ん時のもう一人のヒカルだ。本人はただ自分と母親が似てるから帰ってきたくせにふざけてるって言ってたけど……まず、失礼だけどヒカルのお母さんって推定でも35歳以上だよな…?違和感あるし、声もヒカルそっくりだったらしいし(ヒカルの声は成長期男子にしては高めだけど)。

そして三つ目は………、

「……托都…………」
「なに呟いてるの?」
「うわぁぁぁ!!…なんだ、アミか…」
「なぁに?私で悪いの?」
「いや…そうじゃねえけどさ」

学校の、それも昼飯前に考えてたらそりゃアミも来るよな。今日もみんなで昼飯だしな。

そう、今一番心配してること。
最近の托都のデュエルを見て思うんだけど、なんだか面白そうじゃない。本人もつまんなそうで、なんか……楽しくないっていうか…。

「はーぁ………」
『ため息ばっかじゃつまんないですよ!ほぅら!スマイルスマイル☆』
「スマイルか…、うーん……」

スマイル…スマイル……。
参ったなぁ…。どうすりゃいいんだろ。


~~~


「?…あれは」

珍しい奴とあったな、帰りなんだろうけど。

「久しぶりだな、托都」
「……」
「無視かよ!」
「別に、話すことがないだけだ」
「ふーん」

前からそんなに話したことなかったけど、今日はやけに静かっつーか、まぁ接点はないし関係ないけどさ。

「遊矢が言ってたぜ、文化祭の演劇の途中に見たって」
「…そうか」

…………なんだコイツ、いくらなんでも無視されすぎじゃねえか…?仲間として認められてない感すごいんだけど…。
俺、なんかしたか?アイツに対して都合の悪いことしたか?

「お兄ちゃん!!」

「……?誰だっけ」
「托美!!堰櫂托美よ!!」
「あー、誰だったっけ」
「あぁああああ!!!最低よ!!コイツ最低よ!!」
「叫ぶな托美、うるさい」
「うん………」

正論だな、これはそうだな、ていうか変わったやつだな。

「で、なんの用だ?」
「探してたわよ…だって家のカードキー忘れちゃって~」
「よくこんな町中で見つけられたな…」
「だってお兄ちゃんが学校の辺りにいたの見たんだもん、足速いから追っかけるの大変だったわ」

学園の……?一体どういうことなんだ?

「はぁ…分かった、先に帰れ」

「ありがとー!んじゃ、バイバイ!ポニーテールの後輩ちゃん♪」

「ちゃんは余計だ!!…って後輩…?」
「フッ……、アイツは15だぞ」
「マジかよ…」

「それじゃあな」

なんだこの取り残されてる感。
にしても、托都が学園の近くに…それも帰りの時間か………。

「アイツは、なにを考えてんだ…」


~~~


ーーーピンポーン

「はーい!いらっしゃい、遊矢くん」
《イラッシャイ、イラッシャイ》

今日は遊馬さん家にお泊まりー!色々お話ししたいぜ!
と、その前に、だ!

「要するに、最近托都の様子がおかしい?」
「はい。さっきヒカルからメール来てて、学校の辺りにいたらしいんですよね」
『その前に言った、デュエルに魅力を感じられないというのが気になるな』

ヒカルがさっき托都に会ったなんてビックリするようなこと言うから……。

「お!遊馬!面白そうな話だな!」

「父ちゃん!」
「どれっ、人生の先輩としてアドバイスしてやるから、聞かせてみろー!」
『一馬、君は今、ヨッパライというものだろう』
「酔っぱらってなーい!」

面白い………個性的な家族だなぁ。
九十九一馬、世界中を旅する冒険家で、アストラル世界の研究の第一人者らしい。アストライトを発見して実用化させたのもこの人だとか。
まぁアストライトやバリアライトにはまだ謎が多いらしいけどね。スピリチュアライトよりマシだって遊馬さんが言ってたけど。

『すげーですね、アストラル世界の住民』
『君もだな』

…とりあえず話進めようか。

___


「なるほどなぁ」
「ということは、遊矢くんは、その仲間でもあって兄弟でもある托都というヤツの、魅力のあるデュエルを取り戻したいってワケなんだな」
「はい」

結局一馬さんにも聞いてもらった。
別に托都はデュエルが強いからって理由なら今のままでも良い。
でも今のままじゃいけない気がする、本当に托都がいなくなっちゃうんじゃないかって思えるから。

『以前、カイトにも似たようなことがあったな』
「あー!あれな!」
「あれってなんですか?」

遊馬さんによると、
五年前のWDC終結後、遊馬さんとカイトさんのデュエルがあったらしい。
んで、そのデュエルの最中に、カイトさんはデュエル対するやる気や目的を見失ってしまったらしい。
それを遊馬さんがかっとビングで取り戻したって……。

「それでカイトさんが……」
「遊矢くんにも、きっと取り戻せるさ!」
「父ちゃん!?」
「遊馬にできたことが遊矢くんにできないわけがない!そうだろ?」
「一馬さん……」
「かっとビングだ!そいつのデュエル、取り戻してこい!」

かっとビングで……、遊馬さんにできたことが………。

「タスキ、行くぞ!」
『はい!ご主人!』


『……、良いのか、一馬』
「…あぁ良いんだろう?遊馬」
「うん。ヌメロンコードの運命通りなら、きっと托都は姿を消すだろ?それを変えられるのが、遊矢なんだよ」
「…アイツもやっぱり、俺の息子だな」


~~~


『飛び出してきたのは良いですが、ホントにここにいるんですか?』
「間違いねえ、必ず…いるはずなんだ」

初めてデュエルしたところ。
俺のカンが叫んでる、托都は必ずここに来るって…。だから来たんだ。もう一度、デュエルするために。

「…!遊矢……」

「托都、やっぱり来たな!」
「なんの用だ、一体一日で何人面倒なヤツに出くわさなければ…」
「ムッ…俺とデュエルだ!!」
「断る。何故今更お前とデュエルしなければならないんだ」

そう来ると思ってたぜ!

「デュエリストなら、デュエルから逃げるなんてありえないぜ」

「何…?」

「まぁ托都は決勝でも俺に負けてるし、勝てるわけないんだよな!デュエル受けたくない気持ちも分かるぜ!」

「遊矢…貴様……!」

「ヘヘッ!」
『すごい挑発ですね』
「さぁどうすんだ!デュエルするのかよ!」

「当然だ!貴様にそこまで言われるとはな…とてつもない屈辱だ…!」

実際ここまで言うことなかったはずだけど、托都を挑発してデュエルまで持ち込むことができたなら大丈夫だな!

「行くぜ!Dシューター、展開!!」
「「デュエルディスク、セット!」」
「Dゲイザー、セット!」

《ARヴィジョン、リンク完了》

「「デュエル!!」」

「俺の先攻!ドロー!俺は、《Ss-スフィアソード》を召喚!」
《攻撃力:1900/レベル:4》

「スフィアソードは、手札の魔法カードを墓地に送ることで、相手ターンのエンドフェイズまで相手のスフィアソードを対象とするカード効果を無効にする!」

まずはこれで効果破壊されることはなくなった。次だ!

「更に装備魔法《白銀の双球剣》をスフィアソードに装備!これを装備したスフィアソードを攻撃で破壊することはできない!俺はカードを一枚伏せてターンエンド!」
《手札:2》

これでワンターンキルされるようなフィールドじゃなくなった!しかもこのコンボならスフィアソードを次のターンまで守れる!
手札には魔法カードが2枚、少なくとも2ターンまでならモンスターが来るのを待てるはず!

「フッ……、この装備魔法とモンスター効果で場を固めたつもりだろうが、逆にそれが苦しめることになることを知れ!」

『うっわ~怖いですねー』
「……」

「俺は《ネクロスフィア・サンダーバード》を特殊召喚!このモンスターは自分フィールドにモンスターがいなければ、攻撃力を0にして特殊召喚できる。更にレベル8のモンスターがいる時、《ネクロスフィア・モルフィーネ》を特殊召喚!!」
《攻撃力:0/レベル:8》《攻撃力:2000/レベル:8》

レベル8のモンスターが2体……来るのか…!

「俺はレベル8のサンダーバードとモルフィーネでオーバーレイ。二体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ!《激天龍 プラズマソードドラゴン》!!」
《攻撃力:3000/ランク:8/ORU:2》

新しいモンスター…ダメージは受けるけどスフィアソードを倒すことはできない!大丈夫だ…!

「装備魔法《機龍の衣》をプラズマソードドラゴンに装備!これにより、攻撃力は1000ポイントアップし、相手フィールドにモンスターがいる限り攻撃することができる!」
《攻撃力:4000》

「なにっ!?」
『二回の攻撃がヒットした時点でご主人は敗北…』

「行け!プラズマソードドラゴンでスフィアソードを攻撃!トライデントスパイラル!」

「っうわぁぁっ!」
《遊矢のライフ:1900》

あと一回、攻撃を防ぐには…!

「カウンター罠!《パワーストーム》発動!スフィアソードをリリースし、受けたダメージと同じダメージを与える!」

《托都のライフ:1900》
「これで俺は攻撃できない……、だが、プラズマソードドラゴンの効果発動!1ターンに一度、オーバーレイユニットを1つ使い、このターンにプラズマソードがバトルで与えたダメージを相手に与える!」
《ORU:1》

「手札から速攻魔法《幻影の風》発動!墓地のスフィアソードを除外して、発生したダメージを半分にする!」
《遊矢のライフ:850》

「カードを1枚伏せてターンエンド」
《手札:2》

これでダメージは防ぎきった……でも、托都はどうしてダメージを与えるだけの戦法に…いつもの、相手の動きを封じて倒す、いつもの托都の戦法は一体どうしちまったんだよ…!!

「托都!!お前どうしてこんな……!!」
「おかしなこと言うんだな、至って普通のデュエルだが?」
「そうじゃねえ!!いつもの、あのえげつない托都じゃないのが、俺は嫌だ!」
「…」
『え、えげつないってそんな…』

言い過ぎかもしれないけど、そう考えてる。
攻撃ばっかり考えてる今より、勝利のための戦略を練ってる前の托都に魅力を感じてたのに……。

「……勝てないだろ、お前らには…」
「えっ…」
「遊矢は、異世界の神を倒すまでの実力をつけた。ヒカルも、負けはしたが武藤遊戯を相手に善戦していた。そんなお前らに勝つための戦法を考えれば考えいた、だがそんなことをしてる間にお前らは強くなっていく……」

『思い詰めていたんですね、彼』
「……托都…」

「最早お前らに俺の力は必要ない、俺が勝ちに拘ることもない」

勝ちに拘る…?

「だから…」
「矛盾してるよな、それって」
「?」
「勝ちに拘らないってことだろ?要するに。なのに、どうして勝ちたがるんだよ…」
「なっ…」
「デュエリストだからって言うかもしれないけど、でも拘らないなら、どうでもいいなら、こんなデュエルだってできない!俺ならデュエルすらできないかもしれねえのに…」

俺がアイツのこと、一番分かってるつもりだし、一番じゃなくても分かりたいし、それが兄弟だって思ってる。

「ホントは勝ちたがってて、勝利に拘って誰より強くなりたいのなんて分かってる。それが本心と嘘なのも知ってる。デュエル好きだろ?托都の強さ、俺が取り戻す!」

「……遊矢…お前……」

「誰よりも強くなるのを目指してデュエルする!いつもの托都に戻れよ!!托都!!」

俺は信じてる、托都のデュエルに対する気持ちを!!

「………、デュエルを再開しろ」

「托都!!」

「次のターン!守りきってみせる!」

托都が………笑った……。

「守りきれるものなら!行くぜ、ドロー!」

「罠発動!《ダークチャージ・ブレイク・サモン》!表側表示の魔法カードを墓地に送り、この効果によって、遊矢はこのターン、魔法・罠による特殊召喚ができなくなる!」
《攻撃力:3000》

これで手札の《死者蘇生》は使えない、でも…!!

「俺は《Ss-疾風のカーツ》を召喚!召喚に成功したことで、カーツの効果発動!手札に加えた《Ss-シュート・ブレイブ》を自身の効果で特殊召喚だ!」

レベル4が2体、さすがにカーツがいなければ打開できなかった。やっぱり托都はよく考えてるよな、すげえぜ…!!

「俺はレベル4のカーツとシュート・ブレイブでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!吹き荒べ風の精霊!《Ss-風精霊シルフィード・ネオ》!」
《攻撃力:2500/ランク:4/ORU:2》

「シルフィード・ネオ……だが攻撃力は2500!それじゃあ俺を倒せない!」

「それはどうかな!俺は、シルフィード・ネオの効果発動!1ターンに一度、オーバーレイユニットを1つ使い、エクストラデッキのモンスター一体を装備する!俺はエア・ストリームソードを選択!これでシルフィード・ネオの攻撃力は2100アップだ!」
《攻撃力:4600/ORU:1》

攻撃力4600!!これで決めるぜ!

「いけっ!シルフィード・ネオでプラズマソードドラゴンを攻撃!!スパイラルクロススラッシュ!」

「……っ!」
《托都のライフ:300》

「耐えきった…!これで次のターン!」

「いいや!シルフィード・ネオの更なる効果発動!自身に装備したモンスターを墓地に送り、もう一度攻撃することができる!」

「なにっ!?」

「いっけえシルフィード・ネオ!托都にダイレクトアタック!!」

「っぐっ……うぁああぁあっ!!」
《托都のライフ:0》

《WIN:風雅遊矢》

勝った……、でも托都は俺が勝ったらどうなるんだろう……分からない、それは托都が決めることだから。

「托都!」

「っ…たく、容赦しないな」
「いや……別に…」
「強さ加減を知らない無限の力、それを持つ遊矢を、俺は見届けたい」
「托都…」
「俺は強さを勘違いしていた、だがこのデュエルでそのことに気づけた。ありがとう、遊矢」
「……托都ぉ…!!」
「な、泣くな!なんだお前は!」
「だってえ!!」


『うんうん、美しき兄弟愛ですね。…羨ましい限りです…』




82話に続く

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【あとがき】


今回の一言、「九十九家の愉快な仲間たち」。
どうも小説内初登場の一馬さんです。今までよく現れなかったなぁと逆に感心するくらい出てこなかったね。
つか書いてる間に意味わかんなくなった。

さて、スピリチュアライトとはなんぞやという方に説明しますと、精霊界の鉱物です。アストライトやバリアライトみたいな異世界の鉱物です。鉱物とかに関しては詳しい精霊に聞きましょうアドルイちょおまなにす…ぬわあああああ!!!
……はい、まぁスピリチュアライトはこの後出てくるんで今は無視。
とりあえず久々に遊矢が熱血だった、遊馬の意図も見え隠れし始めましたが一体どんな意味かは秘密です。

次回!!遊矢とヒカル、最強デュエリストによるガチンコ喧嘩デュエル!?
遊矢の余計な一言でキレました、さすがはヒカルくんだ、ぶれない。しかし喧嘩の理由は一体どういうこと?年始最初のLS更新で明らかに!!

ということで、LS本編も書き納めです!
来年は遊戯王新作を見守りつつ一年間、どうかよろしくお願いいたします!

【予告】
冬休みが始まった遊矢たち、神の五王を倒すべく強化合宿を行うことに。
ヒカルを誘うも断られた遊矢はヒカルに対して言ってはいけない言葉を放ってしまい、ヒカルの怒りを買ってしまった!
お互いにいがみ合いが続く中、それは遂にデュエルで決着をつけることに!?
最強デュエリスト同士の喧嘩デュエルは一体どうなってしまうのだろうか!
次回!第82話「最強の喧嘩デュエル!遊矢VSヒカル!」