ジェレスタ75「閃 光 乱 舞 ! ! 托 都 V S 托 海」



「私の名前は堰櫂托海、貴方のたった1人の妹よ!」


「な――!」

「うそっ!?」

「例の妹さんって、あの人だったのね」


そう、俺の兄貴であり兄貴じゃない、托都にそっくりなタクミこそが本当の妹。ということは、まさか――!


「兄さんをずっと探していた。そして今ようやく見つける事ができたのよ。そこにいる風雅遊矢のお兄さん代わりになってたみたいだけど、残念、私の兄さんだもの!私のところに戻ってきてくれるよね?」


「てめえ!なに勝手な事――!」

「俺は貴様の事は知らん」


「ちょっ・・・」


「お前が誰だろうが、遊矢に危害を加えるなら俺が容赦しない。妹だと言うのなら、もっとマシな嘘をつくんだな」


「嘘じゃないわよ!本当よ、なら、3日後の夕方埠頭に来なさい!」


そんなことを言ってとっとと托海はどっかに行っちまった。結局なにが目的なのか、分からずじまいか・・・。


でも托都、お前が聞いたはずなんだけどなぁ・・・?

まぁ世の中には3人似てる人がいるって聞いたことあるし、やっぱり偶然・・・?いや、托都と初めてデュエルした時と同じようなビリビリくる感じだった。アイツは本当に妹だって言ってるのかも・・・。


帰り道にみんなと別れてから托都に少し話してみた。


「なぁ托都、」

「どうした?」

「アイツってさ、もしかしたら本当にお前の家族なのかも知れないのに、いいのか?」

「分かってる。そんな事はな」

「分かってて突っぱねたのか!?」

「今更俺がアイツに会ったところで何になる?」

「それは・・・・・」

「だからこそだ。俺はアイツとデュエルする気も、アイツと母親の元に行く事も考えていない」


ということは、あれは托都なりに今を過ごすためのツンだったってこと?・・・気持ちは分からなくもない、俺も1度父さんたちと一緒にいないかって聞かれた事があったけどその時はムリしてでも友達を選んだ。

そりゃあ、産まれたばっかりの頃に捨てられたんだし、親がどう思っていたりしても托都にとっては嫌な事だらけなんだろうなって思った。


3日後・・・・・、俺がデュエルを受けてアイツを倒せば、このまま托都はいるのかな・・・。



~~~



3日が経った。俺がデュエルを受ければきっと解決するはず・・・いや、解決してくれねえと困るんだ。


托都も地味に律儀だよな・・・ちゃんと言われて付いてくるとは思わなかった・・・。

後はアミと大河だけ。みんなはさすがに来れないみたいだ。


「ねえ遊矢くん!」

「なんだ?」

「もしかして遊矢くんがデュエルするの!?」

「あぁ!俺がアイツをぶっ倒して!なんとかしてやるからな!大河!」

「うん!」

「緊張感ないの?遊矢は・・・」


ココまで来ると緊張感も何もない、あるのは異様なこのテンションだけだった。とにかく勝つ!それだけの気持ちだった。


埠頭についたらもうアイツがいた、またコイツも結構律儀?


「遅いわ!約束は30分前行動が基本よ、基本」

「はいはい分かってるぜ、さぁデュエルは俺が受けるぜ!掛かってこい!」

「はぁ?なに言ってるの?私がデュエルしたいのは托都の方よ!貴方になんか興味はないわ!」


分かってたけどグサッと刺されるような心の痛みを感じる。


「さぁ兄さん!私とデュエルして!」

「断る」

「なんでよ!」

「そんな時間はない、それに・・・意味がない」

「意味・・・なくて良いわよ。だって兄さんは私の兄さんでしょ?!私より弱いはずないの!それとも、昨日のワンターンキルが怖くて逃げ出すつもり?」

「・・・・、そうか」


あーあ・・・これはマズい・・・。


「敵前逃亡・・・そんな姑息な手、俺が使うと思うのか。いいだろう!そのデュエル、俺が受けて立つ!」

「決まりね・・・!」


悪意を感じるけどとりあえず言える事は托都がすでにキレてるってことだな・・・。


「「デュエルディスク、セット!!」」


《ARヴィジョン、リンク完了》


「「デュエル!」」


「私の先攻、ドロー!私はモンスターを裏守備表示でセット!更にフィールド魔法《悠久の時計城》を発動!」


また同じフィールド魔法を発動したってことは、もうワンターンキルの用意はできてるってことか・・・。


「私はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

《手札:3》


「俺のターン、ドロー!俺はフィールド魔法が発動している時、《ネクロスフィア・フレイヤ》を特殊召喚!更に、レベル8のモンスターが特殊召喚された事で《ネクロスフィア・モルフィーネ》を特殊召喚!」


これでレベル8のモンスターが2体・・・・でも、どうやってあのモンスターを突破するつもりなんだ?


「俺は、レベル8のフレイヤとモルフィーネでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ《ネクロスフィア・ブリザードタイダル》!」

《攻撃力:2400/ランク:8/ORU:2》


「ネクロ・ブラッティじゃない!」

「新しいカードか!すっげえ!」


「ブリザードタイダルの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、このターンのバトルフェイズを無効にする代わりにエクストラデッキからランク8のモンスターエクシーズを特殊召喚する!現れろ《機械堕天使 ネクロ・ブラッティ》!」

《攻撃力:2500/ランク:8/ORU:0》《ORU:1》


すっげえ!!一気に2体の超強力モンスターエクシーズを並べやがった!


「でもそれだけじゃ終わらないよね」

「・・・、そうだな・・・」


「更に、ネクロ・ブラッティをカオスエクシーズチェンジ!今こそ現れろ、《機械堕天使 スフィアディオル》!」

《攻撃力:3500/ランク:8/ORU:1》


これで一気に並べ終わった、だけどここからが正念場だな・・・。


「俺はカードを1枚伏せ、ターンエンド!」

《手札:3》


「私のターン、ドロー!私はスタンバイフェイズに《悠久の時計城》の効果を発動!自分フィールドのモンスター1体を破壊して、相手フィールドのモンスターエクシーズのオーバーレイユニットを墓地に送る!」

《ORU:0》《ORU:0》


「私は墓地に送った《光雷騎士ウィンディーノ》に対して魔法カード《死者蘇生》を発動!蘇れウィンディーノ!」

《攻撃力:1200/レベル:4》


「更に、《光雷騎士サラマンダー》を通常召喚!レベル4のウィンディーノとサラマンダーでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!舞い上がれ《光雷天使 クリスティア》!」

《攻撃力:2500/ランク:4/ORU:2》


遂に来たか!ワンターンキル要員!


「クリスティアの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使う事で相手モンスターの攻撃力を0にして、その分を吸収する!私はブリザードタイダルを選択!」

《攻撃力:0》《攻撃力:4900/ORU:1》


「さぁこれでとどめよ!クリスティアでブリザードタイダルに攻撃!」


これが決まれば托都の負け!でも、托都がそう簡単に負けるわけ――!


「罠カード!《エスケープキャプチャー》発動!このカードは、自分のフィールドのモンスターエクシーズをエンドフェイズまでゲームから除外する事で、相手モンスター1体の攻撃力を0にする!」

《攻撃力:0》


「うまい!」

「これで、フィールドにモンスターはいなくなり、バトルが続行しようとも攻撃力は0!ダメージを受けないわ!」


「バトルを中止。さすが・・・、これだけできなくちゃ面白くないわ・・・!」


確かにこのターンは潜り抜けられた。しかも戻ってきた時のブリザードタイダルの攻撃力は元に戻ってる。

だけどアイツのフィールドにモンスターが召喚される限り、フィールド魔法とのコンボも発動し続ける、これで大丈夫なのか・・・・?


「私はカードを1枚伏せてターンエンドよ!」

《手札:1》《攻撃力:2500》


「エンドフェイズ、2体のモンスターエクシーズは復活する!俺のターン、ドロー!俺は魔法カード《死者蘇生》を発動!蘇らせるのは、ネクロ・ブラッティ!」

《攻撃力:2500/ORU:0》


「更に、《RUM-ライトニングスカイ・フォース》を発動!このカードは、自分フィールドのモンスターエクシーズ1体を素材として、ランクが1つ上のモンスターエクシーズを特殊召喚する!」


来るぜ!!托都の切り札!


「俺はネクロ・ブラッティでオーバーレイネットワークを再構築!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ《機械大天使 クリスタルエンゲーラ》!」

《攻撃力:3000/ランク:9/ORU:1》


「あれが・・・ランクアップ・・・」


「行くぞ、クリスタルエンゲーラでクリスティアを攻撃!」


「私は罠カード《反射装甲-メタリック・シャイニング》を発動!このカードは、発動後に装備カードとなり、装備モンスターは戦闘で破壊されず、戦闘ダメージも半分になる!」

《托海のライフ:3750》


「そのまま続ける!今度はスフィアディオルで攻撃だ!」


「くっ・・・!」

《托海のライフ:2750》


だけど、破壊が無効にされた事で攻撃力2400のブリザードタイダルじゃ攻撃できない・・・それでも十分すぎるコンボってワケか・・・。

瞬間的にエクシーズ召喚して、更にそこからのカオスエクシーズチェンジにランクアップ。全く、いつの間にやら恐ろしいデッキになりやがったぜ、あのデッキは・・・。


「俺はカードを1枚伏せて、ターンエンド」

《手札:1》


「この瞬間!メタリック・シャイニングの効果が発動!このカードはエンドフェイズに破壊され、装備モンスターの攻撃力分のダメージを与える!」


「なにっ!?」

《托都のライフ:1500》


「私のターン、ドロー!私もそろそろ本気で行くわよ!私は魔法カード《超電導蘇生》を発動!このカードは、自分の墓地のモンスター1体を蘇生させ、2体分のエクシーズ素材にする、蘇れウィンディーノ!更に私は《光雷騎士ジャンヌ》を特殊召喚!」


これでレベル4のモンスターが3体分!新しいモンスターエクシーズか!


「私は、レベル4のジャンヌとウィンディーノ2体分でオーバーレイ!3体分のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!舞い踊れ《光雷天使 アルカディアパーシア》!」

《攻撃力:2800/ランク:4/ORU:2》


「あれは!!」

「凄いよ!3体でのエクシーズ召喚!」

「驚く事なのか・・・?」


「アルカディアパーシアの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、このターン、このモンスター以外のバトルを無効にする代わり、オーバーレイユニットをすべて墓地に送り、1つに付き攻撃力を1000ポイントアップするわ!墓地に送られたオーバーレイユニットは2つ、よって攻撃力は2000ポイントアップ!」

《攻撃力:4800/ORU:1》《ORU:0》《ORU:0》


この攻撃が通れば托都の負けだ――!


「罠カード《オーバーレイ・バリア・サンクチュアリ》発動」


「《オーバーレイ・バリア・サンクチュアリ》・・・・!?」


確かあのカードは、自分フィールドにオーバーレイユニットがないモンスターエクシーズが3体以上いて、相手モンスターエクシーズが攻撃してきた時、攻撃を無効にして自分フィールドのモンスターエクシーズをすべて破壊して、相手に攻撃力の合計分のダメージを与えるカードじゃ・・・・ってえええええええ!?


「俺のフィールドにはオーバーレイユニットがないモンスターエクシーズが3体以上、よって攻撃力の合計のダメージを受けてもらう!」


しかも合計のダメージは8900・・・!


「っきゃああああああ!!」

《托海のライフ:0》


《WIN:堰櫂托都》


・・・・なんっか最近托都ってデュエルに対して冷たいよなぁ・・・ヒカルの時もあっさりデュエル終わらせちゃったし、このデュエルに至っては最初ッから計算済みみたいな感じで・・・。


「・・・これで満足か?」

「・・・ええ、まさに私の兄よ・・・、納得せざるを得ないわ・・・」

「こっちのセリフだ・・・」


デスヨネーと心の中で呟いてみる。つか托海の奴確証なしで言ったのか!?人違いだったらどうするつもりだったんだろう・・・。


「なにを勘違いしてるのよ。元々私は貴方が兄さんだって分かってたわ。そうじゃないわよ」

「は?」

「えっ?」

「今から説明してあげるわ、兄さんのお父さんについての話!」


托海はまさか托都の父さんの話まで知ってるのか!?


―――そう、兄さんのお父さんは人ならざる者だったわ


―――5年前にやってきた赤き侵略者と同じ種だったって聞くわね


―――その赤き侵略者は17年前、女性に恋をしたの。普通なら恋なんて感情ありえないのに


―――そして2人は1人の子供を生んだ


「それが兄さんなの」

「ちょっ・・・ちょっと待って!赤き侵略者って!?」

「・・・おそらく、カイトさんの言っていた、バリアンって・・・人たち?」


バリアン。

その単語を聞くだけで分かる。

5年前、遊馬さんたちの前に現れ、この世界とアストラル世界を滅ぼそうとした世界の民たち。

でも最後はバリアン世界の神の暴走を遊馬さんが食い止めて、バリアン世界ごとアストラルとリンさんが封印して今は深い深い眠りについているって・・・。

その世界の住民が・・・托都の父さん!?


「でも、納得できるわね」

「なんで?」

「だって、カオスエクシーズチェンジはRUMによる力か、遊馬さんや凌牙さんのように特殊な力を持つ人たちの力でしょ?」

「確かに・・・」


托都のカオスエクシーズチェンジにはそんな意味があったのか・・・・。


「でも私には関係ないわ、ねえ兄さん!一緒に母さんに会って!1度で良いから!」

「それはできない、」

「なんで!」

「遅すぎたんだ。なにもかも」

「遅すぎるって・・・そんなことないわよ!私の兄さんでしょ!家族なんでしょ!だったら1度くらい良いじゃない!」

「我侭言うな。会いたくても遅かったんだ、俺には俺の今があって、母さんには母さんの今がある。それを今更、変えたところでなにがあるんだ?」

「それは――」


そうだ。今更出会って、今更話をしたところでなにかが変わっても・・・托都には時間の流れが速すぎた、そして遅すぎたんだ。それでも――俺は、俺は・・・・。


「托都、」

「・・・遊矢」

「会わないで・・・いいのか?」

「・・・あぁ。托海には悪いが・・・」

「兄さん・・・ならもう1つ話して良い?」

「・・・?」

「父さんはね、死んだと思われてるでしょ?バリアンの住民が人間と交わるなんてありえない、でも、父さんは今もこの世界の何処かにいるの」


托都の父さんが・・・・生きてる・・・?ミコさん曰く、もう死んでるはずなのに・・・?


「そうか・・・」

「托都?」

「なら、1度そのツラを殴っとかないと気が済みそうにないな」

「えっ!?」

「托海、事情が変わった。1度だけ、な」

「兄さん!」


いきなり心変わりした!?いやいやいやそうじゃなくて!!


「なに考えてるんだよ托都!」

「遊矢、悪いな。ここで俺は離脱だ」

「はぁっ!?」

「復讐なんてもうするつもりはない。それでもだ、あの野郎だけは、俺がなにかしらの方法で倒す!デュエルでも、力でも、絶対に」


・・・それは多分托都なりに考えて、行き着いた結果なんだって分かった。自分を捨てた本来の親に向ける感情はない。母親はきっと後悔しているだろう、妹に兄の存在を伝えたのだ。

だが父はどう?戻ってこない上に、今もこの世界のどこかで生きている、それが許せるとは到底思えなかった。


「托都・・・なら頼みがある」

「?」

「今だけで良い!この戦いが終わるまでは、一緒にいてくれ!托海にとって大切な兄さんかもしれないけど!托都は俺の大切な兄さんなんだ!だから、だからこの戦いが終わるまでは頼む!」

「遊矢・・・・・」

「兄さん、別にいいんじゃないかな?」

「そんなの端からわかってる事だろ・・・。安心しろ、せめてお前が2年になるまでは一緒にいてやるから」

「托都・・・!ありがとなー!」

「こらっ!離れろ!」

「じゃ私もー!」

「おい!」


「これで解決かしらね?」

「うん!」


大丈夫、これからなにがあってもきっと托都は大丈夫、後は――俺たち2人だけだ。



~~~



「ねえねえ聞いた?」「なになに?」

「転校生いるらしいんだ!」

「3年の超美人らしいよ!」


学校に来た時不意にそんな話を聞いたんだけど・・・、


「まさかな・・・?」

「そのまさかよね?」


「あれ?この学校だったのね!遊矢、これからよろしくっ!」


なんかもう・・・大変な事になりそうです。



76話へ続く


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【あとがき】


今回の一言「両手に花」。

このリア充兄貴クッソ爆発しろwwwwwwくそwwwwww


多分托都メイン回がもう1回増えそうですね、この分だとあと2回はありそう。1回は決まってるんですけど今回で地味に伏線張ってしまったのでやるかもしれない。遊矢&托都回が1回決まってるんでその時は解決してると思います。

そして次回シリアスギャグな日常回をやった後にしばらく日常回が続きそうな感じしますね。ゼウラさんが途中退場するけど気にしたら負けだと思ってる。少なくとも3話くらいはやると思いますよw


次回は新たな出会い!不穏な予言と黒き翼の正体は?そしてこの巫女は誰!?

ついに、ついに3期から4期の長い期間を共に過ごすことになる玉藻襷ちゃんの登場になりますよ・・・長いですね、ちなみに4期はラストの辺りまで一緒にいるけど最後はイイハナシダナーな予定。

とにかくシツコイけど良いパートナー?どう考えても少年漫画的展開ッ!是非お楽しみを!


【予告】

ミコに呼ばれて1人で北条神社に訪れた遊矢。ところがミコはそこにおらず、探しているとそこには小さな祠が・・・。

祠を開けるとなんと幽霊のような少女が飛び出してきて遊矢を「ご主人様!」と呼びまくる。しつこく話しかけてくる巫女の正体はなんと平安時代に天照大神の分身と呼ばれた狐女「玉藻の前」であった!

デュエルはできないが未来を予言できるという彼女は遊矢の未来を占い始める。しかし、そこに写っていたのは遊矢の姿ではなく黒き翼だけだった。

次回!第75話「真実を告げる鏡!玉藻の巫女現る!」