ジェレスタ74「真 実 の 物 語 隠 さ れ た 過 去」
―――キーンコーンカーンコーン
「よッス!」
「遊矢~!昨日のこと、ちゃーんと説明してもらうからね!」
「あ・・・」
そうだった。すっかり忘れてたぜ・・・。
昨日はアミに頼んでとっとと行っちゃってなんにも説明してなかったんだった・・・しかもその事で小鳥姉さんからも怒られて俺は大変だったっていうのによ・・・。
とりあえずアミには全部話しておいた、別に驚きもしてなかったけど。
「そっか・・・、とりあえずヒカル先輩の方は一時解決って感じよね」
「あぁ。だけど俺も知らないんだよな、托都のこと・・・。父さんはなんにも教えてくれないし」
昨日まで家にいたことを良いことに父さんや母さんにも色々な話を聞いてみたんだけど、絶対に教えてくれなかったしむしろそこまで昔の事は覚えてないとかなんとかではぐらかされてしまった。
本人に聞いても「知らん」の一点張りだし、しつこく聞いたらキレそうだし。
「だったら私達で調べましょうよ!」
「お、俺らで!?」
「そうよ!ハートタワーとかだったら、何年前に1回来たかもしれないって分かるでしょ?」
「ま、そうだろうけど・・・」
「それなら僕も手伝うよ!」
「た、大河ぁ!?」
「私たちもいるよ!」
気づいたら何故かアミと俺だけじゃなくてみんな集まってた。まさか・・・、
「俺たちも手伝うぜ!」
「遊矢さんばっかりに迷惑かけてられませんから!」
「僕も情報なら任せて」
「お前の役に立てるのは俺だけだろ?」
「狩也・・・、みんな、分かったぜ!一緒に調べてやろーぜ!」
「「「「「「おー!!」」」」」」
こうしてなんでか俺にもわからないけど自然と托都の過去について調べる事になってしまった。
放課後、全員でハートタワー前に集合してカイトさんに入れてもらった。
カイトさんにはそれなりに事情を話してカイトさんにもちょっと調べてもらう事にした。
「なにか分かりましたか?」
「あぁ、ハートランドシティへ来た履歴はあるな」
「何回?」
「つい最近と、この間の大会の時――の数ヶ月前辺り、もう1回・・・あるな」
もう1回?ということはなにかあったのかな。
「5年前のWDC、アイツも参加している」
「参加!?」
「うそっ!」
「一応記録だけ残っているが――、一応確認だけでもしておくか?」
「はい!」
旧式のDパットを手渡してもらってWDCの出場者リストを確認する、当然だけど俺もいるんだよね、一応出てるし。
その中で1人見つけた。
「・・・間違い、ないわね」
「あぁ。これは・・・托都だな」
トーマスさんと見分けが面倒だけど、実際こう見ると今は分かりやすく感じるのが不思議だ。
確かに出場者リストに記録は残ってる。でも明確な出身地も生年月日も記録はないし、今までの公式大会出場経験にもなにも書かれていない。ハートピースは2つだけ、弱小に見えるけどそうじゃない、なにか意味があっての予選敗退。
なぜかといえば俺がハートピースを全部取られて敗退してるのに対して托都は3日目までハートピースを所持し続けていた。それはつまり、デュエルを1人とのみ行っていて意図的に3日間持っていたのか、持っていた分を取られたかの選択になる。
だけど托都が取られるわけがない、この頃が例え12歳の少年だったとしても、それは変わらないだろう。
「でもなんで遊矢くんのお兄さんはすぐに大会やめちゃったのかな?」
「やめたというより、・・・探してたのかも」
「えっ?」
「だってほら、決勝の時の言い分じゃ、まるで遊矢くんを探し続けてたように聞こえるわ」
「確かに・・・」
そうだ、決勝の時、探し続けてやっと見つけてここで倒してやろうっていう感じだった。ということはWDCの参加はそれの?
「それだけじゃない、」
「リンさん?」
「遊矢の父がWDCの挨拶に来た時、何者かに襲撃されている。その時のカードも、ここに残っている」
「いつの間に・・・」
カードは《復讐の選択》、自分のモンスターが破壊された時、破壊した相手プレイヤーにその攻撃力分のダメージを与えるカード。まさに復讐のカード・・・か。
それじゃあ托都は5年前からもうグレンの分身・・・というか抜け殻にとり憑かれてたってことなのか?
「これだけ見たらまったく訳が分からないですね」
「そうだな・・・・」
「・・・別にお前に言ったわけじゃない」
「へえ、それはどうも」
狩也と敏也がいがみ合ってるのはどうでもいいとして、結局前にも1度来てるってことなんだよな。今は出入りを続けてる感じだけど。
でもそれがどういう意味を持ってるのか、相変わらず分からずじまい・・・か。
「どういうことなのかしら・・・」
「・・・分からないけど、・・・」
なんだろう、このなんとも言えない思い。まるでこれ以上詮索しても無意味だって言いたげそうな感じ・・・。
「これ以上、ダメかな・・・・」
「そんなこと、ありません」
後ろから女の人の声が聞こえた。その正体、北条神社にいた巫女である祭囃子ミコさん。つかなんでこんなところにいんの!?
「堰櫂托都の過去を知りたいんでしょ?」
「知ってたんだ」
「ええ、あの時のデュエルにはそういう意味もあった。心の深層世界を見つめる事、それは私の心理的な力でもある」
ミコさんに目を瞑って、托都が俺と出会ってからの関係を思い出してみてと言われる。
大河はすでにドキドキしながらビシッと目を閉じていた、・・・ダメだコイツ・・・。
とにかく俺も目を閉じてみた。
今までの事、最初は普通にジェレスタエクシーズを巡ってデュエルするだけのライバルだったのかもしれない。アイツがどう思っていたとか関係なく、俺は多分そう思ってた。
でも決勝戦で、アイツが自分から俺の兄さんだって教えてくれて、でもって分かり合えて嬉しかったしちょっとの間いなくなったのも寂しかったし。それでも托都がいたから《銀河眼の星屑竜》とも出会えたんだ。
そして一緒にグレンを倒してくれた。なんだかんだで実は良い仲間なんじゃないかってさ。
「時は流れ行きます、今から17年前の事――男女が1人の赤子を産み落としました。その赤子は人ならざる力を持つ人。女は考えた、「そうこの子供を捨ててしまおう」と」
話は続く。
―――それから時は流れて彼が4歳の時だった、仮の親に捨てられた少年は青年と出会う。青年は言う「無駄だ」と。
―――少年はいつの日か、青年の言葉を真に受けた。
―――そして突然出会った誰かに心を受け渡してしまった。心をなくしてひたすら自分に害を加えた者に怒りをぶつける事だけを選択した。
―――彼はついに見つけてしまった、もっともと言えるほどの怒りの対象を。
―――しかし、親のいないその子を見て彼は薄っすらと過去の自分と重ねてしまった。
―――運命は必然なのか、彼はその子と出会ってしまう。
「話はここで終わりよ」
言った事は分かる。何故か分かってしまった。
俺は少なくとも1度托都と出会っているということ。5年前のWDCの時、あの時も俺の近くに父さんも母さんもいなくて独りぼっちだった。
遠めから見てたんだろう、俺に関してはそんな覚えは一切ない。
でも托都は俺が父さんの息子だと分かっていて手を出さなかった。失ったはずの感情が揺り動かされたから、昔の自分と被ったから、それだけじゃないはずなのに。
でも分からない、青年が一体誰だったのか、それがどういう意味だったのか。
「もう1つ、お話はあるわ」
「もう1つ?」
「まだあるんだ」
ミコさんがゆっくり話を始める、その後の女の人と男の人の話を。
―――人ならざる男と人として生きてきた女はその後、男の死で愛に幕を閉じた。
―――「こんなことになるなら」と女は絶望した。唯一の子を手放して1年の事だった。
―――その後女は道を見失い、1人の男と恋をした。やがて2人の間に子は生まれた。
簡単に言ってしまえば、托都と唯一血の繋がった兄弟、そう、本当の兄弟の話。
「この話は彼の記憶じゃない、彼と血の繋がった彼女の話」
「彼女ってことは・・・女?」
「そういうことだな」
「話はここまでよ。後は彼の心が詮索を許さなかった、これ以上の詮索は控えた方が良い。そして遊矢くん、」
「えっ?」
「今度私の神社にいらっしゃい、ちょっとした話があるわ」
神社に?またいやーな予感がしてならないんだけどなぁ・・・。変な予言とかされたら今度こそ俺の人生が終わる気がする。
気づいたらもう夜だった。カイトさんに「さっさと帰れ」と言われて全員でハートランドから出る。月明かりが眩しい。
「まさか托都さんに妹さんがいたなんて驚きね」
「でも、妹さんは知らないんじゃないかしら?托都さんなんて兄がいることを」
「そうだよな~でもお母さんから聞けるんじゃ?」
「バカ!お母さんが言うわけないだろ・・・」
みんな口々に言うけど実際どうなんだろう。実は今探してる途中なのかもしれない。もしかしたらそんな事なくてお母さんと幸せに暮らしてるかもしれない。
「なにしてるんだろうな、そいつ」
「・・・分からないけどね?僕はその女の子がお兄さんを探してると思うんだ」
「根拠があるのか?」
「ないよ!」
「おい・・・」
まぁそれが大河らしいと言えば大河らしいんだけど。
・・・これ以上なにか詮索するのはやめよう。きっと誰も望まないし、それに俺たちには五王との戦いだってあるんだ。
別のことに焦ったらまたおかしなことに―――。
「はぁい、そこの子供達」
「?」
橋の真ん中、女の子がいる。その女の子は多分俺たちに声をかけたんだと思う。
「ねえ、ジェレスタエクシーズと世界の命運、どっちがほしい?」
「世界の命運・・・?」
「そうよ。私は世界をも動かせる、神の五王が一人」
「神の五王!?」
「一体どこから・・・・・」
いや、ツッコむところが違う気がするんだけど・・・・。
「私の名前はタクミ、さぁ!誰からこの世界の生贄になってくれるかしら!」
「タクミ・・・・?」
なんでだろう、物凄い近くて遠い仲間と被ってる・・・?容姿とかじゃない雰囲気でもない、これは一体―――。
なにか・・・狂気を感じないような神の五王・・・コイツは本当にそうなのか?
~~~
「・・・・!なんだ、この感覚は・・・」
まさか、なにかがまた起こったのか・・・?
~~~
「さぁ!誰から来るの?それとも、全員?」
「上等だ!俺が相手になってやる!」
「ええ、どうぞ、それじゃあ行くわよ!Dシューター、展開!」
「デュエルディスク、セット!Dゲイザーセット!」
《ARヴィジョン、リンク完了》
「「デュエル!!」」
「私の先攻、ドロー!私はモンスターを裏守備表示でセット!更にカードを1枚伏せてフィールド魔法《悠久の時計城》を発動!ターンエンドよ!」
《手札:3》
伏せカード1枚でフィールド魔法・・・しかもモンスターが裏守備表示・・・か。考えてもしかたねえ!ここは一気に攻めるぜ!
「俺のターン、ドロー!俺は《Ss-疾風のカーツ》を召喚!このモンスターは、召喚に成功した時、デッキからレベル4以下のSsを手札に加える事ができる!俺が手札に加えるのは《Ss-シュート・ブレイブ》!シュート・ブレイブはSsの効果で手札に加わった時、特殊召喚できる!」
《攻撃力:1400/レベル:4》《攻撃力:1600/レベル:4》
「レベル4のモンスターが2体!」
「来るぜ!」
「俺はレベル4のカーツとシュート・ブレイブをオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ《Ss-エア・ストリームソード》!」
《攻撃力:2100/ランク:4/ORU:2》
エア・ストリームソードにはオーバーレイユニットを1つ使って、破壊を無効にしてダメージを半減させる効果がある。これならなんらかのカードでも未然に破壊を防げる!
ここは一気に攻めるしかない!
「いけっ!エア・ストリームソードで裏守備モンスターを攻撃!」
「私のセットモンスターは《光雷騎士シャイニング》!このモンスターはフィールド魔法があるとき、戦闘で破壊されない!」
《守備力:1500/レベル:4》
フィールド魔法はそのためのカードだったってわけか・・・・驚きだぜ・・・。
「俺はこれでターンエンドだ!」
《手札:5》
「私のターン、ドロー!このスタンバイフェイズに《悠久の時計城》の効果を発動!自分フィールドのモンスター1体を破壊する事で、相手モンスターのオーバーレイユニットをすべて墓地に送る!」
《ORU:0》
「オーバーレイユニットが!」
「更に魔法カード《死者蘇生》を発動!蘇りなさい、シャイニング!更に《光雷騎士ジャンヌ》を召喚!」
《攻撃力:1000/レベル:4》《攻撃力:1800/レベル:4》
これでレベル4のモンスターが2体!来るのか!
「私は、レベル4のシャイニングとジャンヌでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!咲き誇れ《光雷天使 クリスティア》!」
《攻撃力:2500/ランク:4/ORU:2》
あれがタクミのエースモンスター・・・なんて神々しいんだ・・・。
「クリスティアの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、相手モンスターの攻撃力を0にし、その分をこのモンスターに加える!」
《ORU:1》
「なにっ!?」
《攻撃力:0》《攻撃力:4600》
「貴方のモンスターにオーバーレイユニットはない。そして伏せカードも0。木偶人形と化したそのモンスターで守りきれるかしら?」
「くっ・・・!」
「さぁ行きなさいクリスティア!エア・ストリームソードに攻撃!オーバーフラウソード!!」
このままだと、負ける!!
「待て!!」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
「た、托都!?」
息切れしてる所を見ると相当走ってきたっぽいけど・・・、でも一体なにが・・・。
「遊矢、そいつは何者だ」
「コイツは・・・新しい神の五王を名乗ってるタクミって奴だ」
「タクミ・・・・・」
「・・・デュエルはおしまいよ、次に決着をつけるわ」
「なにっ!?」
「3日後、そこにいる堰櫂托都を連れて埠頭まで来て。そこで決着を着けるわ」
3日後?しかもなんで托都を連れて!?
「待て!」
「・・・・?」
「お前、何者だ。その顔、見覚えがある」
「・・・・あら、自分の顔にそっくりとでも言いたいわけ?」
「当たり前だ!お前、一体何処の誰だ!」
言われなくてもそうだ。あのタクミって奴、その溢れるようなエネルギーもさることながら容姿もそっくりだった、まさに女の子になった托都みたいな感じ。・・・まさか!!
「へえ、そこまで感づいてるなら教えてあげるわ」
「遊矢、これって・・・」
「あぁ・・・間違いなく・・・・」
「・・・」
「私の名前は堰櫂托海、貴方のたった1人の妹よ!」
その姿は、まさにここにいる近いようで遠い存在と同じだった。
75話へ続く
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【あとがき】
今回の一言、「どうあがいてもストーカー」。
托都くんの性癖がいつかバレることを願っている俺は多分普通の腐女子なんだと思う。ゴーウィwwwwwwですねwww
つーことで様々な事が明らかになりすぎて飲み込めない回です、あと「托」の字のゲシュタルトがいつか崩壊しそうで怖い。兄妹共通漢字なら尚更面倒な事になっているwwww
妹である堰櫂托海が初登場しました。なんか最後がレジーナっぽいなwwwキングジコチューの娘ではありませんw
デュエル中断は考えていた事なんですけどなんかそこまで面白みがある過去ってどんなかなって考えてやめたんですよ。まぁ考えてもやめたくなりますよね、こんなキャラだと特に。
お友達連中が大集合だったのに袢太くんが一言しか喋っていない絶望。
次回!これが光と闇の戦いだ!!閃光乱舞と漆黒乱舞の混沌のデュエルの勝敗はどっちに!?
閃光乱舞はタイトルなんですけどねwwww
とにかく次回は兄妹のデュエルになります、托都がどう思っているのかや感情の話は多分次回で色々と完結すると思います。これが終わると説教フェイズまでほとんど出番のない托都さん。
そしてあと2話・・・・。
【予告】
「托都の妹」と名乗った托海は兄の托都にデュエルを申し込む!
嫌々ながら認めた托都もこのデュエルを素早く終わらせるため、一気に強力モンスターエクシーズを並べてしまう!しかし負けじとモンスターエクシーズを並べる托海。
そんなデュエルの最中、托海から托都に対しとんでもない発言が待っていた!
次回!第75話「閃光乱舞!!托都VS托海」