ジェレスタ72「燃 え 上 が る 魂 ! ヒ カ ル の 弟 ・ ヒ カ リ !」
今日も今日でもう学校に入っていた、広い校門から校舎への道は急ハートランド学園を模した造りになってるらしいけど実は相当危ない、うん、実は。
「遊矢くん!お弁当作ってみたんだ~」
「大河って料理もできるのか!すげえな!」
「2人とも、仲いいわね~」
「うん!だって友達だから!」
そう、つい2日前転入してきた大河。俺の友達なんだけど、舌足らずでちょっと子供っぽいところがあった。それにちょっとだけ泣き虫でなんか勝気だ、こんなんで良いかって思ったりもしたけど多分それもコイツの個性なんだなって思ってそれ以上はなにも感じてない。
普通に友達、それならそれで良いじゃないか。
アミと大河と一緒に3人で校舎への階段を降り終わったところで後ろから女子の「キャー!」という悲鳴が聞こえてきた、それも数人。
「まさかこれって・・・・!」
「また神の五王なんじゃ!」
「行くぞアミ!!」
叫び声のあるところまで駆け上がっていく・・・・・・・が、そこで見たのはキャーキャー良いながら集まっている女子の集団、そしてその隣にはそれを避けて困り顔のヒカルがいた。
「ヒカル!こりゃ一体なんなんだ?」
「これか?あー・・・」
「かわいーいー!」
「ねえお名前なにかな?」
「教えてー!」
女子の集団の真ん中を目を凝らしてみてみると小さくなったヒカルらしき子供がいた、アミが手早くその女子を退けてあげると勢いよくこっちに走ってきた。
近くで見るとヒカルそっくりだ、というか女の子みたいだ。
「ヒカリ、大丈夫か?」
「うん!へーきだよ!」
「ひ・・・・ヒカリ!?」
「えっとぉ~ぼ・・・・・・オレ!ヒカル兄ちゃんの弟なんだゼッ!」
「よろしくな!」
「遊矢さんだよナッ!これからよろしくッ!」
「おう!」
なんか子供らしくて好きだな、こういう子は。というか、凄い慣れないんだろうな・・・男言葉が・・・。
昼食の時間になって全員が集まって弁当食べる事になった。ヒカリはどうやらパンみたいだけど、慣れた手つきでもきゅもきゅ食べてる。
「病気はもういいのか?」
「うん、オレはすっかり元気だゼッ!」
「ヒカリ・・・別に素の状態でも良いんだぞ?ムリしなくても――」
「でもね、オレだって・・・」
「俺はいつもの通りのヒカリが良いと思うぜ」
「お兄ちゃん・・・!」
なんだろう、物凄くまざまざと兄弟愛を見せ付けられてる気がする・・・・!お、俺だって弟だもん!もっと甘えてやるんだからな!
でもヒカリって普段は「僕」なんだな、一体そこまでして俺たちになにを見せたかったんだろうなぁ・・・。
「そういえばヒカリくんってお勉強とか大丈夫なの?今までずっと病院にいたんでしょ?」
「うん、だけどね、お兄ちゃんも教えてくれたし教科書もすぐ読めたよ!」
「偉いね~!どこかの誰かさんとは大違いね」
「誰だよそれ!!俺か!?」
確かに俺のほうがバカかもしれないのは認めるけど、だってヒカルの弟だぜ?同じDNAがあるとしか思えないぜ全く。
「朽祈くん、朽祈ヒカルくん」
「・・・はい?どうかしました?」
突然弁当食べてる所に2年の先生がやってきた、多分ヒカルのクラスの先生だと思うんだけど・・・。
「朽祈くんの先月の通学率、先々月より下がっている気がするんだけど、どういうことだい?」
「それは――、俺にも俺の事情があるんです。ヒカリの退院が近かったから、それだけです」
「そうですか、ただし補習は受けてもらいますからね、今日の夕方、いいね?」
「はいはい、勝手にお願いします」
ヒカル、この先生のこと嫌いなのかな・・・。でも授業出てなかったのは、ドリーミストとのデュエルや、ヒカリのことがあったからだし、それにヒカル自身だって今急に発作があってもおかしくないのに。
大丈夫・・・・なのかな。
「お兄ちゃん、へーき?」
「大丈夫だ。ヒカリのせいじゃない、俺が悪いだけだから気にするな」
「・・・・うん」
なんか嫌な予感がする、変なくらい・・・。
「おーい!ヒカリ~!」
「ん?」
「慶太!?」
「な、俺とデュエルしてみよーぜ!ヘヘッ!」
「デュエル?しよしよ!今しようよ!」
「今するのね・・・」
慶太がそんなデュエルを申し込むなんて驚いたぜ、というかなに考えてるんだ?またいたずら心に花咲かせてるみたいな感じにも見えるんだけど・・・。
「「デュエル!」」
~~~
「くっ・・・あの男・・・!我々教師に逆らおうというのか・・・、フザけるな・・・!」
『そうだな、アイツは俺らに逆らおうとしていやがる!それを許せるか!』
「君は何者だ?」
『俺はゼウラ、てめえは今から誰よりも強くなる。そしてコイツで朽祈ヒカルを倒せ!』
~~~
《WIN:朽祈ヒカリ》
「負けたぁ・・・・」
「やったぁ!勝った勝ったぁ!」
「か、勝っちゃった・・・」
「病院にずっといたのによくやるぜ・・・」
「凄いね!」
「まぁ俺が教えたしな」
これがヒカルの弟の実力なんだ。というか、結局慶太はなにしにデュエルしてたんだ?ワケわかんねえ・・・。
「ちぇ・・・勝ったらカード譲ってもらおうと思ったのに・・・」
アンティデュエルかよ―――!!
とりあえずなんだかんだで今日の授業が終わって夕方頃、デュエルしてたんだけどヒカルが補習行くからってことでそこまで俺たちもついていく事にした。
「あの――、補習なんですけど――」
ヒカルが扉を開いてそう言うと教室の窓際に座っていた先生が立ち上がった。
「やぁ、遅かったじゃないか朽祈くん」
「やるならさっさと終わらせたいんですけど・・・」
「そうだな。じゃあ早めに終わらせよう、デュエルを!」
「は?」
多分ここにいた全員がヒカルと同じように声を上げただろう。だが俺はすぐに分かった。アイツの手にあるあのカード・・・・間違いない!
「ヒカル!アイツはマイナスエクシーズを持ってる!」
「なにっ!?」
「先生が洗脳されちゃったってこと?」
「えっ?どういうことなの!」
「?」
「俺に歯向かう奴らは全員叩きのめしてやる!さぁ最初はお前だ!」
人差し指がヒカルに向いている、というか先生が生徒に人差し指を向けるっていうのはどうかと思うんだけど・・・。
「良いぜ、受けて立って―「僕が受ける!」
「ええっ!?」とここにいた全員が声を上げる。ヒカルに至っては後ろを見て唖然としている。
それはヒカリの声、要するにヒカリがこのデュエルを受けると言ったのだ。
「ヒカリダメだ!あのデュエルは普通じゃない!」
「お兄ちゃんは僕を守ってくれたよ!だから次は僕がお兄ちゃんを守りたいんだ!」
「ヒカリ・・・・」
「ヒカル、ここは任せてやれよ」
「遊矢・・・・・・・・・・分かったよ、ヒカリ、思う存分デュエルしてこい!」
「うん!」
ヒカルが言うと満足そうにヒカリが笑顔を見せて前へ走っていく。
「ほう、朽祈の弟か。良いだろう!俺が叩き潰してやる!」
「行くよ!Dシューター展開!――デュエルディスク、セット!」
「「Dゲイザー、セット!」」
《ARヴィジョン、リンク完了》
「「デュエル!!」」
「先攻は俺だ、ドロー!俺は《書物天使ミハエル》を召喚!」
《攻撃力:1100/レベル:3》
「更にミハエルの効果を発動!このカードは、自分の手札のフィールド魔法1枚を墓地に送り、手札から天使族モンスター1体を特殊召喚する!現れろ《数式天使クリスティア》!」
《攻撃力:1200/レベル:3》
レベル3のモンスターが2体、来るのか・・・!
「俺はレベル3のミハエルとクリスティアでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ《文学大天使ネイスアルファ》!」
《攻撃力:2100/ランク:3/ORU:2》
「・・・・・」
「俺はネイスアルファの効果を発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使い、デッキからカードを1枚ドローする!カードを2枚伏せ、ターンエンド」
《手札:2》《ORU:1》
カードドロー系のモンスターエクシーズ・・・・・なるほど、そういうデッキか。
「僕のターン、ドロー!僕は《FB(ファイアーバレット)-アマリリス》を召喚!」
《攻撃力:1600/レベル:4》
「更に、アマリリスの効果を発動!アマリリスはこのモンスターをリリースすることで、相手モンスター1体の攻撃力を0にする!」
《攻撃力:0》
うまい!これでネイスアルファの攻撃力は0!だけど・・・・どうやって攻撃するつもりなんだ?
「攻撃力が0になろうと、お前のフィールドにモンスターはいないではないか!」
「そうじゃないよ!僕は手札から速攻魔法《ファイアーバレットリボーン》を発動!このカードは、FBと名の付くモンスターが効果で墓地に送られたとき、相手に攻撃力の半分のダメージを与え、特殊召喚する!」
「なにっ!?ぐぉおっ!」
《先生のライフ:3200》
これでアマリリスも蘇生、ここで攻撃に成功すれば一気に大ダメージも狙える!
「そうはさせん!永続罠《銀幕の灯台》を発動!このカードが発動している間、自分のフィールドにモンスターエクシーズがいるとき、相手はバトルフェイズを行えない!」
「これでヒカリはバトルフェイズに入れないか・・・」
「うまいですね」
「僕はカードを3枚伏せてターンエンド!」
《手札:1》
フィールドに3枚の伏せカード、一体ヒカリはなにを考えてるんだろう・・・・・単に手札が事故ってるのか・・・・。それともなにか策があるのか・・・。
「貴様ら、その骨身に教え込んでやる!この最強の力を!俺のターン、ドロー!俺はネイスアルファを素材にしマイナスエクシーズチェンジ!1体のモンスターでオーバーレイネットワークを逆構築、エクシーズ召喚!」
来るのか・・・・!新たなマイナスエクシーズが・・・!
「闇から生まれし裁きの力よ、愚かなる者どもに終焉の幕をたらせ!現れろマイナスエクシーズ!《教祖神アルファドレイク》!」
《攻撃力:2400/ランク:-3/ORU:2》
「マイナスエクシーズ!」
「あれって前と違う・・・?」
「これがお兄ちゃんの言ってたカード・・・」
「アルファドレイクの効果発動!オーバーレイユニットを1つ使い、3つの効果から1つを選択する。俺は、相手フィールドの伏せカード1枚に付き500ポイントのダメージを与える効果を選択!喰らえ!オーバーストームバスター!!」
《ORU:1》
「うわぁあああ!」
《ヒカリのライフ:2500》
3つの効果ということはあと2つ効果が残ってる、その効果のどれかによりはヒカリの勝敗を分けるかもしれない・・・!
このデュエル、やっぱり俺かヒカルが受けなきゃいけないのか・・・!
「俺はアルファドレイクでアマリリスを攻撃!セカンダリーバスター!!」
「くっ・・・!」
《ヒカリのライフ:1700》
「僕は、罠カード《バーニングサーチ》を発動!このカードは、僕のデッキから破壊されたモンスターと同じレベルの炎属性モンスター1体を特殊召喚する!現れろ《FB-エンテイ》!」
《攻撃力:2000/レベル:4》
「小賢しい!俺はオーバーレイユニットを1つ使い、効果発動!2つ目は、戦闘で相手モンスターを破壊したとき、その破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」
《ORU:0》
「うわぁああああ!!」
《ヒカリのライフ:100》
「ヒカリ!」
残りライフは100、このままだとヒカリは!
「俺は速攻魔法《オーバーザユニット》を発動!このカードは、召喚されたモンスターエクシーズが召喚されたターンに全てのオーバーレイユニットを使い切ったとき、このカードをオーバーレイユニットにする!」
《ORU:1》
ということは、オーバーレイユニットが1つ復活して、残りの効果・・・・いや今までの2つの効果も発動できる・・・!
それでダメージを受ければヒカリの負けだ!
「俺は3つ目の効果を発動!オーバーレイユニットを1つ使い、相手の手札1枚に付き500ポイントのダメージを与える!」
《ORU:0》
「ヒカリくんの手札って1枚だよね?」
「ということは500のダメージを受けておしまい・・・!」
「神に歯向かう愚かな奴ら、今こそ裁きを!行け!インフェルノバスター!」
「っ!」
―――ドオオオオオオオオオオオン
教室内が土煙に包まれて何も見えない・・・!ヒカリは無事なのか・・・!?
「危なかったよ・・・」
《ヒカリのライフ:100》
「なんだと!?何故ライフが・・・・いや、手札がない!」
「僕は速攻魔法《ファイアーダスト》を発動したんだよ。《ファイアーダスト》葉僕の手札を全て墓地に送り、1枚に付き500ポイントのダメージを与える!これで僕の手札はなくなって先生に500ポイントのダメージだ!」
「ぐあっ!」
《先生のライフ:2700》
「先生は間違ってるよ!みんななんにも間違ったことしてないもん!それにお兄ちゃんだって僕のためにいてくれたんだ、だからお兄ちゃんはなんにも悪くない!」
「ぐ・・・ターンエンドだ・・・・・」
《手札:2》
これでヒカリのライフは残ってる、ということは次のターンにヒカリが決着をつけないと、敗北が確定する・・・・!
「行くよ。僕のターン、ドロー!僕は《FB-グレン》の効果発動!このモンスターは、手札がこのカードしかないとき、特殊召喚できる!現れろ《FB-グレン》!」
《攻撃力:1000/レベル:4》
これでレベル4のモンスターが2体!!来るのか!
「来るな、ヒカリのエースが」
「僕はレベル4のグレンとエンテイでオーバーレイ!2体のモンスターでオーバーレイネットワークを構築、エクシーズ召喚!現れろ《FB-火星竜マーズ》!」
《攻撃力:2700/ランク:4/ORU:2》
「あれが・・・!」
「ヒカリくんのエース!」
「僕はマーズの効果を発動!1ターンに1度、オーバーレイユニットを1つ使って、相手フィールドのモンスターの攻撃力を0にする!」
《ORU:1》《攻撃力:0》
「アルファドレイクの攻撃力が!!」
「いっけえ!マーズでアルファドレイクに攻撃!ツヴァインストリーム!!」
「っぐあぁああああああ!!」
《先生のライフ:0》
《WIN:朽祈ヒカリ》
すっげえ・・・あの状況からまさか大逆転するとは・・・。というか良いのかよマイナスエクシーズ・・・こんなにあっけなく倒されちまって・・・・。
「・・・?私は一体なにを・・・・・」
しかもまた寝ぼけてるみたいだし、やっぱり洗脳されてるときと全然違うな、主にキャラが。
「ヒカリ!大丈夫か?」
「うん!それにお兄ちゃんがいたから頑張れたんだ!」
「・・・そうか、良かった」
ヒカリも怪我1つないみたいだし、これでまた事件解決かな?
『また失敗か・・・!くっ・・・』
~~~
「くう~!ヒカリはつええな~、ヒカルもデュエルしよーぜ!」
「断る。その時が来たら、な?」
ヒカルもなにか考えて俺にいつかデュエルしようって言ってるのかなぁ・・・。でもいつか本気で本気のヒカルとデュエルしてみたいぜ!!
「ね!お兄ちゃん、早く帰ろうよ!」
「あ、あぁ・・・」
「2人ともまた明日な~!」
「お母さん心配してるかも・・・」
「やっべえ!俺も小鳥姉さんが――、アミ急ぐぞ!」
「うん!」
「・・・・・親、か」
73話へ続く
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【あとがき】
今回の一言、「ずるずるさん」。
あの先生は夜にデュエル仕掛けてたらデュエルする前に殺されていたかもしれない。
ということでヒカリくん登場回でした!!ヒカリくん可愛いよヒカリくん。
しかし・・・・兄貴であるヒカルはともかく遊矢も中々なメインだったな、まぁデュエルパートで空気になるのはいつもの事だけどね。そしてまだまだお兄さんは出てこない、そろそろ出てこいよ状態ですwww大丈夫、次回は兄さんメイン回第1だから。
まぁ第4期までに兄さんがどれだけ出てこれるかは数えられるくらい少ないんじゃないかな?4期に至っては指で数えられるくらいしか出てこないし。
次回はヒカルVS托都!?この2人に一体なにがあったのか!そして最強デュエリストのデュエルの幕が切って落とされる!!
ヒカルVS托都という作中内でもパワーインフレの激しいバカ2人のデュエルになります。つかバカって言ってもヒカルと托都じゃ教養の差が凄すぎるんですけどね、その辺はまぁ許してあげてください。
【予告】
遊矢ばかりにマイナスエクシーズとデュエルさせたくないと思うヒカルはマイナスエクシーズ対策のためにカイトの元に訪れる。
ところがカイトから「両親が生きている」という話を知らされ、ヒカリを置いて両親を探しにいこうとする。が、そんなところに同じことをカイトに告げられた托都が現れる。
「自分を倒さなかったらここから先は行かせない」と言う托都に対してヒカルはデュエルを申し込む。
次回!第73話「両親を探せ!ヒカルVS托都」