水星(すいせい、英:Mercury、羅: Mercuriusメルクリウス)は、太陽系にある惑星の1つで、太陽に最も近い公転軌道を周回している。岩石質の「地球型惑星」に分類され、太陽系惑星の中で大きさ、質量ともに最小のものである。
軌道
公転
・水星の公転周期は約88日である。その軌道離心率約0.21は太陽系惑星の中でもっとも大きく、近日点が 約0.31 AU (46 ×106 km) で遠日点が 約0.47 AU (70 ×106 km) という、太陽を焦点のひとつとする大きな楕円軌道を描いている。公転面は地球の公転面(黄道)に対して7度の傾きがある。その結果、水星の日面通過は黄道に水星があるタイミングに限られ、平均7年に1度しか観測されない。
この軌道の近日点は太陽の周りを周回する形でゆっくりと移動しており、その度合いは100年で5600秒である。このうち5557秒については古典力学で説明ができたが、残り43秒については説明できず、この問題は「水星の近日点移動」と呼ばれた。このため、ある条件で逆2乗の法則が成り立たなくなるという説や、水星の内側にもう1つ惑星があるという説が現れた(バルカン参照)。このニュートン力学では説明できなかった43秒は、後にアインシュタインの一般相対性理論によって「太陽の重力により時空が歪んだ結果」として説明づけられた。
自転
・水星の自転周期は58日である。1965年にレーダー観測が行われるまで、水星の自転は地球の月や他の多くの衛星と同様に、太陽からの潮汐力によって公転と同期しており、常に太陽に同じ面を向けて1公転中に1回自転していると考えられていた。しかし実際には水星の自転と公転は 2:3 の共鳴関係にある。
すなわち、太陽の周囲を2回公転する間に3回自転する。水星の公転軌道の離心率が比較的大きいため、この共鳴関係は安定して持続している。水星の自転と公転が同期していると考えられた元々の理由は、地球から見て水星が最も観測に適した位置にある時にはいつでも同じ面が見えたからであった。実際にはこれは 2:3 の共鳴の同じ位置にある時に観測していたためだった。この共鳴があるために、水星の恒星日(自転周期)は58.7日なのに対して、水星の太陽日(水星表面から見た太陽の子午線通過の間隔)は176日と、3倍になっている.。誕生直後の水星は8時間程度の速さで自転していたが、太陽の潮汐力によって段々と遅くなり現在の同期状態になったと考えられるが、なぜ2:3の比となったのかは分っていない。
水星表面の特定の場所では、水星の1日において日の出の途中で太陽が逆行して一度沈み、その後再び上るという現象が見られる。これは、水星が近日点を通過する約4日前から水星の軌道速度と角度で測定した自転速度(英語)がちょうど等しくなるため、水星表面から見て太陽固有運動が止まって見えることに起因する。そこに、近日点である楕円型公転軌道の尖った部分(円弧と長辺の交点)を水星が通り過ぎるために公転による角速度が自転のそれを上回とことが重なり、太陽が逆に進むように見える。近日点通過の4日後には太陽は順行に戻る。
水星の赤道傾斜角(自転軸の傾き)は惑星の中で最も小さく、わずか 0.027度以下でしかない。これは2番目に傾斜が小さい木星の値(約3.1度)に比べても1/300と非常に小さい値である。このため、日の出の位置は2.1分以上ぶれない。
内部構造から考えられる水星の起源
水星には半径 1,800 km 程度の核が存在する[7]。これは惑星半径の3/4に相当し、水星全体では質量の約 70 % が鉄やニッケル等[18]の金属、30 % が二酸化ケイ素で出来ている[16]。
平均密度 5,430 kg/m3は地球と比べわずかに小さい[7][3]。核の比率が大きい割に密度がそれほど高くないのは、地球は自重によって惑星の体積が圧縮され密度が高くなるのに対し、小さな水星は圧縮される割合が低いためである。地球中心部の圧力は366万気圧に達するのに対し、水星中心部は約25-40万気圧にとどまる[18]。しかし、天体の大きさと平均密度の相関関係では、水星は唯一他の地球型惑星が示す傾向から60%程度重い方向に外れている[7]。自重による圧縮を除外して計算された平均密度は、水星が 5,300 kg/m3、地球が 4,000-4,100 kg/m3となり、水星のほうが有意に高い値をとる[18][19]。
水星の体積は地球の 5.5 % に相当する。しかし地球の金属核は 17 % にすぎないのに対し、水星の金属核はその 42 % を占める[20][21][22]。核は地球の内核と外核のように、固体と液体に分離している可能性がある。核の周りは厚さ 600km 程度の岩石質マントルで覆われている[7][23][24]が、これは他の岩石惑星と比べごく薄いためマントルの対流が小規模となり、惑星表面に特有の影響を及ぼした可能性が指摘されている[7]。地殻は、マリナー10号の観測結果から厚さ 100-300km と推測されている[25]。
水星は太陽系の他のどの天体よりも鉄の存在比が大きい。この高い金属存在量を説明するために、主に三つの理論が提唱されている。一つ目は、水星は元々ありふれたコンドライト隕石と同程度の金属-珪酸塩比を持ち、その質量が現在よりも約2.25倍大きかったが、太陽系形成の初期に水星の 1/6 程度の質量を持つ原始惑星と衝突した[14]ために元々の地殻とマントルの大部分が吹き飛んで失われ、延性を持つ金属核は合体したために比率が高い現在の姿になったという理論である[26][14]。これは地球の月の形成を説明するジャイアント・インパクト理論と同様なメカニズムであり[14]、「巨大衝突説」と呼ばれる[27][28]。また、このような現象は原始惑星形成時から起こり、水星軌道では選択的に金属が集まりやすかったという「選択集積説」も有力な仮説として唱えられている[28][27]。
二つ目は、水星が原始太陽系星雲の歴史のごく初期の段階に形成され、その時には未だ太陽からのエネルギー放射が安定化していなかったことが原因という理論である[27]。この理論では、当初水星は現在の約2倍の質量を持っていたが、原始星段階の太陽が収縮するにつれて活動が活発化してプラズマを放出し[28]、このために水星付近の温度が 2,500 - 3,500 K、あるいは 10,000 K 近くにまで加熱された。表面の岩石がこの高温によって蒸発して岩石蒸気となり、これが原始太陽系星雲風によって吹き飛ばされたために地殻部分が痩せ細って薄くなったという[29]。これは「蒸発説」と呼ばれる[27][28]。
三つ目は、原始太陽系星雲からの太陽風が水星表面に付着していた軽い粒子に抗力を生じさせ、奪い去る現象が重なったという理論である[30]。他にも、水星は地殻部分がコアとマントルの冷却よりも先に形成されたため、これが影響したという説もある[31]。
これらの各仮説では、水星表面の構成に異なった影響を与えると考えられている。 探査機メッセンジャーと打ち上げが予定されているベピ・コロンボは、この課題を観測する目的を担う予定である[32][33][28]。
大気
水星は重力が小さいため、長く大気を留めておくことは難しい。しかし、ごく薄く分子同士の衝突がほとんど無い無衝突大気の存在が確認されている[36][47][48]。水星の気圧は10-7 Pa(10-12気圧)程度と推測され、その成分は水素、ヘリウムの主成分[49]に加え、ナトリウム、カリウム、カルシウム、酸素などが検出されている[36][6][50]。
この大気組成は一定しておらず、絶えず供給と放出を繰り返している。水素やヘリウムは太陽風の粒子を水星磁場が捕捉したものと考えられ、やがて宇宙空間に拡散されてゆく。地殻で生じる放射性崩壊もひとつのヘリウム供給源であり、ナトリウムやカリウムも同様である。水蒸気も存在しており、これは水星の表面が崩壊して生じたものと、太陽風の水素と岩石由来の酸素がスパッタリングを起こして生成されるもの、永久影にある水の氷が昇華して発生するものがある。探査機メッセンジャーによる水の存在に関連するO+、OH-、H2O+などのイオン発見は、驚きをもって受け止められた[51][52]。これら発見されたイオンの量から、科学者らは水星の表面は太陽風に吹き晒されている状態にあると推測した[53][54]。
大気中にナトリウム・カリウム・カルシウムがあることは1980-1990年代に発見され、当初は隕石衝突による地殻の蒸発がこれらを供給していると考えられた[55]。さらに探査機メッセンジャーによってマグネシウムの存在が確認された[56]。その時点での研究の結果、ナトリウムの供給は惑星磁場に対応する部分からに絞られた。これは水星の表面と磁場が相互作用を起こしていることを示す
軌道
公転
・水星の公転周期は約88日である。その軌道離心率約0.21は太陽系惑星の中でもっとも大きく、近日点が 約0.31 AU (46 ×106 km) で遠日点が 約0.47 AU (70 ×106 km) という、太陽を焦点のひとつとする大きな楕円軌道を描いている。公転面は地球の公転面(黄道)に対して7度の傾きがある。その結果、水星の日面通過は黄道に水星があるタイミングに限られ、平均7年に1度しか観測されない。
この軌道の近日点は太陽の周りを周回する形でゆっくりと移動しており、その度合いは100年で5600秒である。このうち5557秒については古典力学で説明ができたが、残り43秒については説明できず、この問題は「水星の近日点移動」と呼ばれた。このため、ある条件で逆2乗の法則が成り立たなくなるという説や、水星の内側にもう1つ惑星があるという説が現れた(バルカン参照)。このニュートン力学では説明できなかった43秒は、後にアインシュタインの一般相対性理論によって「太陽の重力により時空が歪んだ結果」として説明づけられた。
自転
・水星の自転周期は58日である。1965年にレーダー観測が行われるまで、水星の自転は地球の月や他の多くの衛星と同様に、太陽からの潮汐力によって公転と同期しており、常に太陽に同じ面を向けて1公転中に1回自転していると考えられていた。しかし実際には水星の自転と公転は 2:3 の共鳴関係にある。
すなわち、太陽の周囲を2回公転する間に3回自転する。水星の公転軌道の離心率が比較的大きいため、この共鳴関係は安定して持続している。水星の自転と公転が同期していると考えられた元々の理由は、地球から見て水星が最も観測に適した位置にある時にはいつでも同じ面が見えたからであった。実際にはこれは 2:3 の共鳴の同じ位置にある時に観測していたためだった。この共鳴があるために、水星の恒星日(自転周期)は58.7日なのに対して、水星の太陽日(水星表面から見た太陽の子午線通過の間隔)は176日と、3倍になっている.。誕生直後の水星は8時間程度の速さで自転していたが、太陽の潮汐力によって段々と遅くなり現在の同期状態になったと考えられるが、なぜ2:3の比となったのかは分っていない。
水星表面の特定の場所では、水星の1日において日の出の途中で太陽が逆行して一度沈み、その後再び上るという現象が見られる。これは、水星が近日点を通過する約4日前から水星の軌道速度と角度で測定した自転速度(英語)がちょうど等しくなるため、水星表面から見て太陽固有運動が止まって見えることに起因する。そこに、近日点である楕円型公転軌道の尖った部分(円弧と長辺の交点)を水星が通り過ぎるために公転による角速度が自転のそれを上回とことが重なり、太陽が逆に進むように見える。近日点通過の4日後には太陽は順行に戻る。
水星の赤道傾斜角(自転軸の傾き)は惑星の中で最も小さく、わずか 0.027度以下でしかない。これは2番目に傾斜が小さい木星の値(約3.1度)に比べても1/300と非常に小さい値である。このため、日の出の位置は2.1分以上ぶれない。
内部構造から考えられる水星の起源
水星には半径 1,800 km 程度の核が存在する[7]。これは惑星半径の3/4に相当し、水星全体では質量の約 70 % が鉄やニッケル等[18]の金属、30 % が二酸化ケイ素で出来ている[16]。
平均密度 5,430 kg/m3は地球と比べわずかに小さい[7][3]。核の比率が大きい割に密度がそれほど高くないのは、地球は自重によって惑星の体積が圧縮され密度が高くなるのに対し、小さな水星は圧縮される割合が低いためである。地球中心部の圧力は366万気圧に達するのに対し、水星中心部は約25-40万気圧にとどまる[18]。しかし、天体の大きさと平均密度の相関関係では、水星は唯一他の地球型惑星が示す傾向から60%程度重い方向に外れている[7]。自重による圧縮を除外して計算された平均密度は、水星が 5,300 kg/m3、地球が 4,000-4,100 kg/m3となり、水星のほうが有意に高い値をとる[18][19]。
水星の体積は地球の 5.5 % に相当する。しかし地球の金属核は 17 % にすぎないのに対し、水星の金属核はその 42 % を占める[20][21][22]。核は地球の内核と外核のように、固体と液体に分離している可能性がある。核の周りは厚さ 600km 程度の岩石質マントルで覆われている[7][23][24]が、これは他の岩石惑星と比べごく薄いためマントルの対流が小規模となり、惑星表面に特有の影響を及ぼした可能性が指摘されている[7]。地殻は、マリナー10号の観測結果から厚さ 100-300km と推測されている[25]。
水星は太陽系の他のどの天体よりも鉄の存在比が大きい。この高い金属存在量を説明するために、主に三つの理論が提唱されている。一つ目は、水星は元々ありふれたコンドライト隕石と同程度の金属-珪酸塩比を持ち、その質量が現在よりも約2.25倍大きかったが、太陽系形成の初期に水星の 1/6 程度の質量を持つ原始惑星と衝突した[14]ために元々の地殻とマントルの大部分が吹き飛んで失われ、延性を持つ金属核は合体したために比率が高い現在の姿になったという理論である[26][14]。これは地球の月の形成を説明するジャイアント・インパクト理論と同様なメカニズムであり[14]、「巨大衝突説」と呼ばれる[27][28]。また、このような現象は原始惑星形成時から起こり、水星軌道では選択的に金属が集まりやすかったという「選択集積説」も有力な仮説として唱えられている[28][27]。
二つ目は、水星が原始太陽系星雲の歴史のごく初期の段階に形成され、その時には未だ太陽からのエネルギー放射が安定化していなかったことが原因という理論である[27]。この理論では、当初水星は現在の約2倍の質量を持っていたが、原始星段階の太陽が収縮するにつれて活動が活発化してプラズマを放出し[28]、このために水星付近の温度が 2,500 - 3,500 K、あるいは 10,000 K 近くにまで加熱された。表面の岩石がこの高温によって蒸発して岩石蒸気となり、これが原始太陽系星雲風によって吹き飛ばされたために地殻部分が痩せ細って薄くなったという[29]。これは「蒸発説」と呼ばれる[27][28]。
三つ目は、原始太陽系星雲からの太陽風が水星表面に付着していた軽い粒子に抗力を生じさせ、奪い去る現象が重なったという理論である[30]。他にも、水星は地殻部分がコアとマントルの冷却よりも先に形成されたため、これが影響したという説もある[31]。
これらの各仮説では、水星表面の構成に異なった影響を与えると考えられている。 探査機メッセンジャーと打ち上げが予定されているベピ・コロンボは、この課題を観測する目的を担う予定である[32][33][28]。
大気
水星は重力が小さいため、長く大気を留めておくことは難しい。しかし、ごく薄く分子同士の衝突がほとんど無い無衝突大気の存在が確認されている[36][47][48]。水星の気圧は10-7 Pa(10-12気圧)程度と推測され、その成分は水素、ヘリウムの主成分[49]に加え、ナトリウム、カリウム、カルシウム、酸素などが検出されている[36][6][50]。
この大気組成は一定しておらず、絶えず供給と放出を繰り返している。水素やヘリウムは太陽風の粒子を水星磁場が捕捉したものと考えられ、やがて宇宙空間に拡散されてゆく。地殻で生じる放射性崩壊もひとつのヘリウム供給源であり、ナトリウムやカリウムも同様である。水蒸気も存在しており、これは水星の表面が崩壊して生じたものと、太陽風の水素と岩石由来の酸素がスパッタリングを起こして生成されるもの、永久影にある水の氷が昇華して発生するものがある。探査機メッセンジャーによる水の存在に関連するO+、OH-、H2O+などのイオン発見は、驚きをもって受け止められた[51][52]。これら発見されたイオンの量から、科学者らは水星の表面は太陽風に吹き晒されている状態にあると推測した[53][54]。
大気中にナトリウム・カリウム・カルシウムがあることは1980-1990年代に発見され、当初は隕石衝突による地殻の蒸発がこれらを供給していると考えられた[55]。さらに探査機メッセンジャーによってマグネシウムの存在が確認された[56]。その時点での研究の結果、ナトリウムの供給は惑星磁場に対応する部分からに絞られた。これは水星の表面と磁場が相互作用を起こしていることを示す