2021年10月15日〜12月17日 全10話
毎週金曜 22:00 - 22:54
TBSテレビ系「金曜ドラマ」枠
「すべては、愛するがゆえに…」
2017年4月期に同枠で放送された『リバース』の制作陣が再集結して制作された本作品。
以前書いた『着飾る恋には理由があって』の、TBS黄金ペアが組んだ作品ということもあって、放送前から期待の作品であった。
TBS黄金ペア
〈演出家〉塚原あゆ子
〈プロデューサー〉新井順子
『リバース』は小説・湊かなえ原作のドラマだったが、今回は完全オリジナル脚本。
期待していた以上の面白さで、本作品は数々の賞を受賞した。
〈脚本家〉奥寺佐渡子
1995年、『学校の怪談』で日本アカデミー賞脚本賞受賞。
2010年、『サマーウォーズ』で第9回東京アニメアワード個人賞(脚本賞)を受賞。
2012年、『八日目の蝉』で第35回日本アカデミー賞最優秀脚本賞を受賞。
〈脚本家〉奥寺佐渡子は、映画脚本をメインに書いているイメージだったので、今回完全オリジナル脚本の作品を初めて観た。
本作品もサスペンスドラマであるし、サスペンス脚本が得意な印象である。
ちなみに、わたしは普段ドラマばかりで映画はほとんど観ないのだが、『八日目の蝉』はとても好きな作品だった。
2006年の事件
※朝宮梨央(吉高由里子)→のちに真田梨央となる。
朝宮梨央(吉高由里子)の父・朝宮達雄(光石研)は岐阜県白川郷にある、白山大学の大学寮夫をしていた。
梨央(吉高由里子)は宮崎大輝(松下洸平)の所属する陸上部を、寮夫の娘として支えていた。
そしてある嵐の日に事件が起こる。
寮に友人を訪ねてきた渡辺康介(朝井大智)との会話後、梨央(吉高由里子)の記憶は途切れ、父・達雄(光石研)が不審な行動を見せる中で、梨央(吉高由里子)は東京での受験に出かける。
だが程なくして父・達雄(光石研)は、くも膜下出血で急死する。
その後、梨央(吉高由里子)は"新薬開発"の夢を叶えるためにひとり、東京の実母・真田梓(薬師丸ひろ子)の元で暮らすこととなる。
恋愛模様
事件を受けて、真田梨央(吉高由里子)と宮崎大輝(松下洸平)は、お互いを思い合っていたのに離れ離れになってしまう。
そして15年後に二人は、殺人事件の関係者と警視庁捜査一課の刑事として再会することとなる。
今でも思い合っている二人なのに、事件のことを探り合わなければならない切なさ。
その心情が非常に丁寧に描かれていて、サスペンスドラマでありながら恋愛模様もしっかりと描かれていたのはさすが。
やはり素晴らしい演出
今回もやはり〈演出家〉塚原あゆ子の演出が大変素晴らしかった。
毎回冒頭でモノローグ(独白)が入るのだが、それが毎回役者が変わり、主に"それぞれの愛について語る"という演出が、冒頭から視聴者を釘付けにしてくれた。
次回のモノローグは誰だろう、と毎回楽しみな演出のひとつであった。
また、本作品は現在のシーンと15年前の回想シーンが混在するドラマであるが、
「場面転換をより、分かりやすくした」
〈演出家〉塚原あゆ子自身がコメンタリーでそう話していただけあって、確かに今までの彼女の作品よりも遥かに場面転換が分かりやすくなっていた。
そのため観ている側は、今流れているのがいつの時代のシーンなのかで悩むことが無いので、すこぶる観やすくなっていたように思う。
「主題歌を聴きながらでないとカット割りができない」
と、話すほど主題歌と演出との親和性を大事にしているだけあり、本作品は主題歌である『君に夢中』が内容に自然に溶け込んでいたのが、きわめて印象的であった。
加瀬賢一郎(井浦新)
最終話での加瀬賢一郎(井浦新)と宮崎大輝(松下洸平)の電話のシーン。
約14分間に渡る、双方迫真の演技の長いシーンであった。
その長いシーンでひとつひとつの真実が明らかになっていく。
そのひとつひとつの真実が切なくて、何も言えない気持ちになった。
宮崎大輝(松下洸平)は加瀬賢一郎(井浦新)に辿り着きそうで、辿り着きそうで……
辿り着けない。
「戻るつもりはありません。」
おわりに
圧巻のストーリー構成。
最終話まで犯人を分からせないように脚本が描かれていて、毎週ネットには考察を書く人が山ほど出るほど、息もつかせぬ展開が素晴らしかった。
もう幾度となく本作品を観直しているが、結末が分かっていても毎回のめり込んでしまう。
ただ純粋に、それぞれが"それぞれの愛"を胸に、懸命に生きていた。
"恋愛"だけでなく"家族愛"など、さまざまな形の愛が丁寧に描かれていて、だからこそ観ている者は胸打たれ、そして全俳優陣の演技が素晴らしいものだったからこそ、そこまでのめり込むことができた。
そして最後に、もちろん触れないわけにはいかない。
本作品の主題歌『君に夢中』は、宇多田ヒカルが本作品のために自身で書き下ろしたものであり、1曲全てが『最愛』のストーリーを想起させるような歌詞になっている。
この名曲が無ければ、本作品は語れない。
by.ドラまいまい