入院生活が始まって2年。 その間、誰とも面会は

 

禁止されていた。 親でさえも5分程度、着替えと、

 

最小限のお金を置いてゆくだけ。

 

なぜかは分からなかったが、弱って全てに怯えている自分には友人と楽しく談笑という場面は思い浮かばなかった。

 

酒井さんという秋田から入院してきた人がいた。

 

歳は2つ上でかなり痩せて黒ぶちメガネの男性。 

 

この人が、よく、みずきと口ゲンカというプロレスで、

 

周囲を笑わせていた。

 

 「あいつ、ここに入院してきたことを後悔させてやるわ!」

 

と、みずきが言う。    「もう、後悔してると思うけどね。」

 

と言って、みずきの顔を覗き込もうとした時。

 

ふいに、みづきが

 

「範ちゃん、なんか、、、最近、こわいんだよね。」

「わたし、死ぬのが、、、ほんと、こわくなって、、、、」

 

 

みずきは、うつむきかげんのまま、ハラハラと涙をこぼした。

 

 声も発せず、震える華奢な体から、涙がこぼれ続ける。

 

わたしは、みずきの背中を、軽くたたきながら、何も言えずにいた。

 

しばらくすると、髪をかきあげ、鼻をすすり、こちらを向いて

 

 「ごめんね! ブスが泣いちゃって!」  と、言い微笑んだ。

 

 「ブスは死なないよ。 」   

        精一杯おどけて、わたしは嘘をついた。

 

みづきを守るためでも、その場をしのぐためでもない。

 

 ただ、何かに気付いてしまった自分自身をダマす嘘を。

 

日に日に、透けるような白肌に黒髪が映えて、

 

真っすぐに見つめてくる、憂いをおびた、やわらかな瞳。

 

 わたしには、燃え尽きゆくことを覚悟した、

気高き炎のように見えて、直視することがつらかった。

 

いや、ちがう。そうではない。

 

目の前の清らかな光を失うこと、そのことに耐えられず

 

 おびえていたのだ。

 

 

 

 

 

 

あなたは、なんのために、何をしようと

 

思い生きていますか? 

 

別に、なにかしら、ひとかどの人物にならなくともいい。

 

何かしらを、形に残さなくてもいい。

 

ただ、何かしらを思い生きている、それさえも、

 

きついなら、そういう生き方をした人間がいた。

 

それで、いいじゃないか。 

 

虎は死して皮を残し、人は死して名を残す。

 

「たいそう、お偉いことで!」ってな感じです。

 

わたしには、そんな、たいそうな生き方は出来ない。

 

なにかしらを成そうと思いつつ生きている。

 

それでは、いけないのだろうか。