第2章 vol 11 | 秘密の扉

秘密の扉

ひと時の逢瀬の後、パパとお母さんはそれぞれの家庭に帰る 子ども達には秘密にして


2005-06-28
干潟 7
テーマ たかし 第2章


「二人で暮らすとなったら、どうせいつもくっついているから良いんじゃない」
この部屋で暮らすことがあるのだろうか。
「あはは…そうかもな」
たかしの携帯の画像を眺めながら嬉しいようなそれでいて不安な気持ちが湧いてくる。見たこともない所でたかしだけの生活がほんとうに私にできるのだろうか。
「で、どうするの?来るの?」
「一年くらい待ってくれる?」
たかしは鼻で笑った。
「そう来ると思った」
たかしの声に皮肉っぽさが漂っていた。
「ごめんなさい」
「doorがそれで納得するなら」
「わがまま言ってごめんなさい」
「車の中でずっと考えていたんだ、doorは何がそんなに不安なのか」
「俺さ、人を好きになるのに理由なんてないと思う。会社にいるんだよ、島野ってやつなんだけど経理の女の子好きになっちゃってさ」
「相手結婚していて子供だっているのに頑張っちゃってるんだよ」
「それ~ちょっといくらなんでも無理じゃない」
「俺もそう思うんだけど、もうそんなの関係無いって。なんだか見ているこっちが切なくなってくる」
「そう」
「飲みに行った時にいい加減目をさませよって言ったんだ、俺だって。そうしたらなんて言ったと思う?」
「わからない」
「僕は条件で人を好きになったんじゃない、彼女が彼女だから好きなんだって。F
さんだってそうでしょうって」
「私のこと知ってるの?」
「うん、前ちょっと話した。ちょっとくらい年上で遠距離くらいなんでもないって、僕なんかこれから離婚させて子供の面倒まで見なきゃいけないんですよって」
「えっ、そこまで話が行っているの?」
「いや、詳しいことはしらないけど。それ聞いて思ったんだ、俺も同じだなって」
「……」
「だけどさ、doorは違うんだよね」
「なにが?」
「そこまで俺のこと好きじゃないでしょう」
「ちょっと待ってよ、それとこれとは…」
「同じだよ」
「同じじゃないわ、私はもう少し理性的になって気持ちが落ち着いたら考えましょうって」
「言っていることは解るけど俺はいつもdoorは俺のことそんなに好きじゃないって思っている」
どうして何時も分かってもらえないのだろう。私はこんなに好きなのに。好きな気持ちに溺れてしまってきちんとした判断が出来ないから待ってくれと言っているだけなのに。
「ねえ、恋愛と結婚は違うのよ。いくら好きでも別なものになっていくの。今はただ、別なものにしたくないだけ」
「そんなに好きじゃないからそんなことが言えるんだ。好きだから一緒にいたい、結婚したい。別なものになったって一緒にいられるならそれでイイじゃないか」
「……」
「まあいいさ、それでdoorの気が済むなら」
「ごめんなさい」
「謝んなくても良いよ、ああdoorのこと、うちの親にも話してあるから」
「えっ、…なんておっしゃっていらした?」



2005-06-29
干潟 8
テーマ たかし 第2章

「まあ実際にはぶつぶつは言ってた」
「でしょうね」
「俺の気持ちとか全部話して、分かってもらえた」
「そう…」
親としては仕方がなく認めるといった所だろうなと思った。それはそれで仕方がない。恋愛結婚なんてそんなものかも知れない。
「正月にでも一度連れてこいって言われた」
どんどん話が決まっていくような勢いだ。私はなんとも答えられなかった。
「あ~そうそう、土曜日杉山達の結婚式だから、doorも来られる?」
「えっ、あ、そうか。急がなくちゃいけなかったのよね」
「腹出て来ちゃうからな~ははは」
「私が行ってもいいの?」
「うん、年末に急に決まったことだから。青山の方のレストランを借り切ってやるらしい。立食だし、来られないやつも出て来ているみたい。doorのことも紹介できるし」
「わかった、昼間?」
「うん」
二人だけの関係からどんどん広がって行く。そうやって既成事実として何かが積み上がって行くのだろう。外堀を埋められて行くような、しかしそれでも嬉しいようななんとも言えない感慨がそこにあった。でもまだ出会ってから半年。心の中でブレーキがかかる。もう少し待ってね、たかし。



2005-06-29
干潟 8
テーマ たかし 第2章


 師走はただでさえ慌ただしく過ぎて行く。たかしもずいぶん忙しそうで、バタバタとしているうちに土曜日はやって来た。
 美容院に行く間もなかったので、朝、丁寧に髪を引っ付め、付け毛を付けてなんとかごまかす。たかしはスーツ姿で化粧をする私を楽しそうに眺めていた。ワンピースの背中のファスナーをやっとのことで上げる。このところ運動不足でずいぶん背中に肉が付いているような気がする。ボディスーツを着ても肩周りが余裕の無い感じだ。最近の服はどうも身体にフィットし過ぎるデザインで私にはかなり厳しくなってきている。一昨日のパーティーの時はそんなに気にならなかったのに、たかしの友達と会うと思うと少し緊張してしまう。
「ねえたかし、ちょっとこれやばいかな」
「ふふん」
たかしはニヤニヤと笑っている。
「いっそのこと、こっちのノースリーブのドレスの方が良い?」
「どっちでも良いよ」
「一応平服でって書いてあるからやっぱりこっちかな。クリスマスシーズンだから赤のワンピースでも良いかも」
「door、昨日のうちに決めておけよ」
急いで着替えた赤のワンピースもウエストがかなりきつかった。
「うわ、だめだ!」
サイズに余裕のある黒のベルベットのスーツは鏡の前に立ってみると、いかにも落ち着き過ぎてしまってミセスの風格が漂い、たかしの隣には合わない感じだった。諦めて再びベロアのワンピースに着替える。
「door、そろそろ」
と言ってたかしはコートに袖を通した。実はコートフェチな私は、ああそのコート姿に痺れてしまう。慌ただしく玄関を出て二人で駅に向かった。商店のウインドウに映ったたかしに改めて惚れ惚れとする。
「いやあ、いいな~、格好良いよ、たかし。コートが良い、すっごい似合う」
「えへ?」たかしはさすがに照れている。mill
「コート好きなのよ、コートが」
「なんだよそれ」
「いやあ、格好良いよ~」
「コートがだろ」
クリスマスの街角はなんだかウキウキとしていて心まで踊るようだった。
「そう言えばこんなふうにビチッと決めて二人で歩くのって初めてかも」
「そだね」
「クリスマスイブはこんなふうに外で食事したいな」
たかしはにっこりと微笑んだ。



2005-07-01
干潟 10
テーマ たかし 第2章


 表参道で地下鉄を降りて青山通りを通って行くことにした。たかしはコートを揺らしながらさっさと歩いてゆく。彼と歩くと私は時々小走りになってしまう。だいたいコンパスが全然違うのに、歩調まで早いときては追いつけない。今日は履き慣れないピンヒールだから余計だった。たかしは私と並んでいないことに気がついて振り返る。私はたかしの姿を楽しみながらゆっくりと歩いて行って彼の腕をとった。
「一緒に歩いて行こうよ」
「ごめんごめん」
たかしは歩調を緩めのんびりと歩き始めた。木枯しの吹く中でも心が暖かくなり幸せな気持ちで一杯だった。すぐには静岡にはいけないけれど彼と一緒に生きて行きたい。心からそう思った。
 
 会場になっているフレンチレストランはワインショップの2階にあった。バラバラと人がやってきて口々に挨拶しながら花婿と花嫁を祝福している。幸せな光景だった。いつか私もたかしとこんなふうに祝福される日が来るのだろうか。人前での簡単な式は指輪の交換が済み、花婿と花嫁は誓いのキスを冷やかされていた。見ているのが恥ずかしくなって、たかしの顔を見上げると、たかしも私の顔を見降ろしていた。繋いだ手をぎゅっと握り合いお互いの瞳で心を通じ合わせる。花嫁はシンプルなウエディングドレスを着ていた。お腹はちっとも目立たない。彼女は大輪の薔薇のように微笑んでいた。人生最良の日のひとつなのだろう。
 式が済み乾杯も終わって私達は料理を取りに行く。顔見知りや友人同士でそちらこちらに固まりとなって話したり笑ったりしている。たかしは前に並んでいた友人と話しはじめた。




2005-07-04
干潟 11
テーマ たかし 第2章


レストランのあちらこちらから笑い声が聞こえる。幸せな気持ちのお裾分けが私のところまで届いてくるようだった。その声に混じって
 「えっ!たかしの彼女ってあの人?」
という声が聞こえた。一瞬胸がドキッとして後ろを振り返ることもできなかった。身体も心も凍り付いたようになってしまう。つづくその声はもう低くなって聞き取れなかった。私は頭をまっすぐに立ててたかしの隣に移動する。胸の鼓動が大きくなったような気がする。
 誰かが私について何かを言っている。それは決して気分の良いものではなかった。その声は意外性を含んでいたから、続く言葉は肯定的なものではないのだろう。けれど、他の人がどう思おうと、たかしは私を選んだのだという自信が胸の奥に在った。自分でも少し意外な気持ちがする。以前の私だったらきっと落ち込んでしまったことだろう。他の人がどう思おうと私は私。たかしが私をとても大切に想ってくれているという実感が私のプライドだった。こんなに素敵な人が私のことを好きって言ってくれるのだもの。それを疑ったり、不安に思ったりしていては彼をも貶めることになってしまう。
 私がたかしを愛しているから、たかしが私を愛しているから。これから二人で生きて行きたいから。今までよりもっと自分のことが好きでいられるし、大切に思える。彼を素敵だと思えば思う程、自分にも自信が湧いてくる。それが自分達だけの満足でも良い。だって、それが恋愛というものじゃないかしら。
 若くもない、子供だって産めるかどうかも分からない。どう考えても条件が悪い、けれどそんな私でいい、それでも結婚したいと言ってくれる彼の想いを心の底から有り難いと想った。



2005-07-05
干潟 12
テーマ たかし 第2章

 私には特に知っている人も居ないので置いてあった椅子に腰掛けて料理を食べていた。たかしは向こうで誰かと話し込んでいる。そこに女の子がやってきた。4.5才だろうか。薄いピンクのレースの服がとても可愛らしかった。両親は向こうで話し込んでいるらしい。誰か相手になってくれる人を探しているのだろう。
「こんにちは」
「こんにちは」
「お名前は?」
「わたなべさやか」
「さやかちゃんなにか食べたいものがあったら取ってきてあげるよ」
さやかちゃんははにかんだ。
「ケーキとジュース」
自分の皿を席に置いてケーキを取りに行く。ケーキの皿を渡すと消え入りそうな声でありがとうと言った。彼女と二人でな取り留めもない話をする。彼女はは椅子に座り、足をぶらぶらさせながらゆっくりケーキを食べていた。
「さやかちゃん、大きくなったら何になりたいの?」
「えっとねー、ケーキやさんになりたかったんだけど、やっぱりお嫁さんにする」
「なんで?今日の花嫁さん綺麗だったから?」
女の子は頷いた。
「だけど花嫁さんの服を着られるのは1日だけだよ、それでもいいの?」
女の子は少し困った顔をしていた。
私は大人気ないのは承知していた。禅問答の問いを彼女に投げかけて欲しかった。問いに意味はなく、その問いを味わうことで自分の答えを探るかのような。あるいはなにかのお告げを伺うような
「さやかちゃんのママも花嫁さんだったんだよ」
「そうなの?」
「花嫁さんになって、さやかちゃんが生まれてママになったの」
なにか言いたげな女の子の唇はクリームの脂がついてつやつやと光っている。ピンク色の頬と唇のバラ色が抱き締めたくなる程愛らしかった。
「ケーキやさんになったら花嫁さんになれる?」
「なれるよ、ケーキやさんになって、花嫁さんになって、おかあさんにもなれるよ」
彼女はニコニコしながら実をよじって考えていた。そのかわいらしい様子に私の心の古傷は痛んでいた。
「おかあさんにはなりたくないの?」
「わかんない」
「さやかちゃんのお母さんはいつも楽しそう?」
「わかんない」
「そっか」
ケーキを食べ終えて椅子から滑り降り彼女は母親の近くに行った。母親に私を指し示し、母親と私は目顔でお互い挨拶をする。
 分からない、やっぱり確かな保証などどこにもないのだ。ただ今の気持ちを持ち続けていられたら幸せになれるのだろう。第1章を書いた時の詩で「吐息はため息に変わり、愛は無関心に変わる」と書いた。それでも初めから諦めては何も手には入らない。
 たかしが話を終えて私の方に近付いてきた。



2005-07-06
干潟 13
テーマ たかし 第2章

「いい結婚式だったね」
たかしは先ほどまで女の子が座っていた席に腰掛けた。
「そうね」
話の接ぎ穂は喧噪に巻き込まれて漂って行った。二人とも黙ったまま相手に言うべき言葉を探している。ここで誤魔化してしまうのは私達ではなかった。
「私達にもいつかこんな日が来るのかしら」
絡み合わなかった視線がようやく交わる。
「僕は来てほしいと思っている」
「あなたが旅行中にやっていた例の仕事が繋がりそうなの」
たかしの表情は変わらなかった。
「うん」
「でも私あなたと離れたくない」
「うん」
私達はしばらく目で会話していた。そこにあるのはただ相手を求める気持ちだったのではないだろうか。
「どうしても今はどちらかを選べる状態じゃないわ」
たかしはゆっくり瞬きをした。そして口だけで微笑んだ。
「別に急がなくていいさ」
「無理していない?」
「していないって言ったら嘘になる」
「ごめんね」
その顔を見るのが辛くてたかしの肩に頭を預ける。
「俺さ~、バイク持っているんだよね」
「えっ」
「あんまり乗らないし、アパートのところに置いとけないから実家に置いてあってさ、
だから来る」
「私も行く」
確かな保証は何処にもない人生だけど、私らしく、彼らしくそのままで生きて行きたかった。泣き出したいような衝動にかられ、歪んでしまった私の唇の端に彼の指が触れ、たかしは微笑んでいた。のどの奥はひりひりと痛んで言葉が出て来ない。
「まだどうなるか良く分からないの。案外早くダメになって、しっぽを巻いて都落ちするかも」
たかしは頷いた。
「バイクに乗っていたなんて初めて知った」
たかしは再び頷いた。もしかしたら、声が出なかったのかも知れない。



2005-07-07
七夕
テーマ たかし 第2章

今宵は七夕。
離ればなれに暮らす恋人達が年に一度だけ逢える日です。
 
 天帝の織姫が仕事に励んでいたので牽牛とめあわせてやったらお互いに相手に夢中になって仕事もしない。それではと年に一度しか逢えなくなってしまったと言う、悲しいお話です。
 好きな人に逢えない辛さや切なさが、今とても分かるので、今年ばかりは心から星空が見たいと思います。
 巡り会わなければ仕事に励んでいられたのに、出会ってしまったために返って辛い思いをする。一時も離れたくない、いつもずっと一緒に居たい。好きなんだもの当たり前ですよね。
 好きであればずっと一緒にいくらでもいられる。そんな子供のころの恋愛と違って大人の恋愛は少しほろ苦く、より切ないような気がします。
 それでも一緒に成長して行けたらイイと言ってくれる人と出逢えたことはとても幸せなことだとつくづく思っているのですよ。
 今東京は微妙に曇り空。夜には晴れてくれるようにハラハラしながら見守っています。あの人もきっと同じ気持ちだと思うから。
今夜、星空に向かってつぶやきます。
「逢いたい」と。



2005-07-08
自分に恋する
テーマ 恋愛についてあれこれ

いきなりですが。
 2、3日前から降って湧いたように、私の中で革命的なことが起こった。何と表現してよいか分からない。突然自分のことがとても大切になってしまったのである。それは自分を愛すると言うことなのだけれど、余りにも突然に起こったので、もうこれは恋と言っても良いかも知れない。

 以前「秘密の扉」は自分の解放作業とどこかで書いたと思うのだけれど、ようやくその効果が出て来たと言うところだろうか。とにかく自分が可愛くて愛おしくて仕方がない。以前、自分を愛する という記事を書いた。その時は自分を好きになりつつある所と書いたが、それは無理に自分を愛そうとつとめたと言うべきだろう。今は理屈ではなく、とにかく自分が大切で大切で仕方がない。

 前は自分の愛する人が自分より大切だった。それは心の癖とでも表現したらよいのだろうか。まず第一に相手があった。自分を二の次に据えてしまうことでどこか自己満足していたのだろう。だからといっていま相手への愛が少なくなったわけではないのだ。むしろより真直ぐに愛せる感じがする。

 皆さんには当たり前の事かも知れない。長かった。それに気がつくまで私は何と遠回りして来たのだろう。いろいろな人が指摘してくれても、頭で理解するばかりで心に届かなかった。けれど、いまそれがとても実感できる。身体中に元気が出て来る。

ああ、なんだかとっても幸せ。
そしてこれからは今よりもっともっと幸せになれるに違いない ♪



2005-07-09
今度はリーディングバトン
テーマ ブログ

今度は、リーディングバトンw
・・●モ~ロモ~ロ記●・・ のわかめさん から廻って来ました!


Q1. お気に入りのテキストサイト(ブログ)

ごめんなさい、最近全然他のブログを見て廻る余裕がないです。
それでも廻る所wアメブロ外で選んでみました。

中東に降る雪@Jerusalem
らくださんはフォトグラファーですから写真も素晴らしいです。通い詰めてほぼ1年w

まなざしの快楽
ブログタイトルがしょっちゅう変わります。最近発見して夢中になって読んでいます。
ブログや2ちゃんの考察が面白いと思います


Q2. 今読んでいる本

「神々の沈黙~意識の誕生と文明の興亡」
ちょっと前に買って今2回目を読んでいます。人間の意識に関する本、とても面白いです。


Q3. 最後に買った本

「男というもの」
rennaimodoさんのお勧めでアマゾンのユーズドで1円で購入w
わたし的には浮気な男の言い訳本wま~本音なんでしょうけどw

Q4. 好きな作家

「おばちゃまは飛び入りスパイ」 のシリーズのドロシー・ギルマンは全部買って読みましたw
たかしちゃまにもプレゼントw特に一人で生きる勇気 で、彼女の素顔を読むことが出来て感動しました!

Q5. よく読むまたは、思い入れのある本

「大草原の小さな家」 シリーズ 
小学校5年生の頃からなん10回となく読んでいます。是非福音館の単行本で挿し絵を楽しんで頂きたいw

Q6. この本は手放せません!

「黙示録の秘密」松居桃楼 著

私の人生が変わった本。絶版ですからっ!
とんでもなタイトルですがところがどっこい名著です。多分出版部数も少ないだろうし、これを持っている人は手放さないでしょうw
私はこの本だけは絶対に誰にも貸しません。万が一古書店で見かけたら即買いです!
私は20万積まれても売らないw それ以上だったら応相談w


Q7. 次にバトンを渡すヒト

johnさん、 きびさん  よろしく~



2005-07-10
隘路 1
テーマ たかし 第2章

 年末は慌ただしく過ぎて行く。
 結婚式の日に大きく動いた気持ちはいつの間にか日常の中に埋没していった。どうしてどちらかを選ばなければならないのか、頭では理解できてもどうしても心が追い付いていかない。選択を迫られていること自体に理不尽さを覚えていた。
 たかしは連日日付けが変わらなければ帰って来なかった。それでも毎日私の部屋に来て私達は毎晩抱き合って眠った。私は何度も何度もすべてを捨ててたかしと一緒に静岡にいこうと考えた。けれど何度考えても、やっぱりもう少しだけここに残ろうと考え直すのが常だった。
 たかしだけが私にとっての総てじゃない。そう考えてしまう私は冷たいのだろうか。もし私がたかしの立場だったら私のことを愛していないのねと詰め寄ったかも知れない。けれどたかしはそれをしなかった。ずっと私を見守っていた。

 クリスマスイブに約束していた食事の予約を入れる余裕もなかったようで、私は勝手に高層ビルのチーズフォンジュの店に予約を入れた。たかしは前日も休日出勤しているような状態で時間に間に合うかどうか私は心配していた。クリスマスプレゼントはジルサンダーのマフラーを選んだ。あきたりだけれど趣味のうるさい彼に何を選んでいいか良く分からなかったからだ。
 内緒で編んでいたセーターは途中でベストに変更されてそれでもお腹の辺りまでしか出来上がらなかった。以前はテレビを見ながらあっという間に編めたものだから充分間に合うと思っていたのだけれど、ブログばかりの毎日では編み棒を手に取ることも忘れていた。

 たかしは約束の時間からに15分程遅れて走りながらやってきた。コンタクトを入れてくるのを忘れてきてしまったのに一目で彼だと分かる。そばを通ったカップルの女の子がたかしを振り返り目で追っていた。私はそれを見て少なからず優越感に浸る。中身も良いけれどガワだってそれなりには大切だ。素敵デショ、ワタシノモノヨ。私は相変わらず彼のコート姿にすっかり満足していた。
「ごめん、遅れた」
私は抱きつきたい衝動にかられたけれど、黙って彼の腕をとって歩き始める。
「こっちこそ無理させちゃったんじゃないの」
「クリスマスイブだぜ、当たり前だよ」
少し上がった息が白かった。Xmas
 レストランでの食事は会話が弾んで楽しかった。もう少しでこんなふうに一緒じゃなくなるかと思うと私の胸は痛む。どうしても静岡行きを決断できない自分が申し訳なかった。
「doorこれ、クリスマスプレゼント」
たかしはごそごそしながら一目見ただけで中身の明らかな小さな包みを私に差し出した。
「たかし、私それ受け取って良いかどうか分からない」
静岡行きの決断も出来ない私に婚約指輪を受け取る資格があるとは思えなかった。戸惑っている私を見てたかしは悪戯っぽく笑った。
「うん、御期待の物と少し違うかも知れないけど、受け取ってほしい」
たかしは自分で包みを開け始めた。不思議に思いながら彼の手先を見つめる。彼の手の中でその包みは本当に小さく見えた。



2005-07-10
交錯
テーマ  あいしてる

yakei
メールを送って5秒後の
あなたから来た着信は
私のメールと入れ違い
こぼれた涙は知っている
おんなじ時を過ごしてる
同じ想いをいだいてる



2005-07-11
隘路 2
テーマ たかし 第2章

ポコッと音がしてケースが開くとずいぶん小さなパヴェダイヤのリングが入っていた。
「小指にして」
私は左手の小指に指輪をはめる。ぴったりだった。
「どう?これならしてくれる?」
それは私達の折衷案のようだった。無責任にイエスといいたくない私と、それでも示したい彼の意志がひとつの小さな形になっていた。もし立爪の婚約指輪なんかだったら、そうでなくとも薬指用だったらやはり心の中に抵抗を感じただろう。けれど指輪というものを贈ることで彼の意志はしっかりと私に伝わっていた。
「ごめんね、気を使わせちゃったね。なんて言ったらいいか…」
喉が詰まって言葉が出て来なかった。たかしは私の顔を見ながら静かに微笑んでいる。
「…ありがとう、とっても嬉しい」
「ほんと?」
頷きながら自分の意志を押し付けること無く私の気持ちも尊重してくれる彼とだったら、この先も上手くやっていけるに違いないと思った。
「こんなに気の効いたものを貰ったのに、なんにも芸がなくて申し訳ないんだけど」
私はマフラーの包みをたかしに渡した。たかしは包みを開けてマフラーを取り出した。
「ありがとう」
「向こうに行ったら必要無いかも知れないけど、風邪引かないようにね」
「うん」
「私の事だからたくさんメールしちゃうかも知れないけど、返事はいいからちゃんと仕事をしてね」
「おいおい、別に今日でお別れじゃないんだからさ」
「うん、これ素敵、嬉しい、ずっとする」
歪んでしまいそうになる口元を見せまいと思わず俯いてしまった私の頬をたかしの手が撫でる。嬉しいような少し恥ずかしいような甘酸っぱい素敵な気持ち。

照れくさくなって私は急いで話題を変えた。
「ねえ、引っ越しは何時するの」
「うん、年内にやっちゃいたい。正月doorのところで過ごして良いだろ」
「うん」
「実家に帰ったりするの?」
「ちょこっと顔は出さないといけないと思う」
「何日?」
「いつもは2日だけど今年はどうなのか…妹たちの都合もあるし、明日にでも聞いてみる。たかしは実家に帰らないの?」
「それなんだけどさ…」
「…?」
「ちょっとうちの親にあってくんねえ」
「えっ、…御挨拶に伺うの?」
なんだか急に胸がドキドキして来た。たかしは親に何と言っているのだろう。
「だめ?」
「ダメじゃないけど」
「別に結婚するとかしないとかじゃなくて、doorの事を話したら正月に連れてこいって言われてるんだ」



2005-07-13
女の子だけのお話
テーマ ブログ
 「秘密の扉~第2章~」もそろそろ更新終了です。
昨日は気分の悪いことが二つも重なってとても物を書く気持ちになりませんでした。楽しみにして下さった方、ごめんなさい。
 今日は女の子だけのお話をしたいと思いますので男性の方はスルーして下さいませ。ごめんね。

たかし第2章では生理が上がりそうwな恐怖に怯えておりますが、今現在順調に復活。どうも男ッ気があるといかんようですw
もしくは身体が過剰反応していたのでしょうか。
夏の生理ってうっとうしく無いですか?生理ってそもそもうっとうしいものなんですが。
蒸れたりかぶれたり。前はそんなことは余り無かったような気がします。
今現在私はメインで羽根つきナプキンを使用しています。昔の生理用品にくらべると格段にズレないモレない、素晴らしいです。それでも三日目ぐらいになるとカブレて来るんですよね。結構頻繁に取り替えているつもりなんですがやっぱりカブレる。これは私だけじゃないみたい。かぶれちゃう人多いみたいですよね。

どうしてなんだろう。

もしかしたら、余りにフィットし過ぎるのかも知れない。ナプキンの形も立体的になって、より身体に密着するようになっていますよね。密着するからモレないんですが密着し過ぎてカブレるのかも。少し前まで100円ショップに昔ながらの四角いナプキンが売っていてそれが意外に良かったので三日目ぐらいからそちらを使うようにしていたのですが、最近もう置いていないんですよ(ToT)仕方なくこのところ三日目からはタンポンに変更でございます。どこかに四角いナプキン売っていませんかね~

それにしても!
ちゃんと下wからこどもを産んだのに未だに生理になると下腹部痛と頭痛と吐き気!
どうにかならないものでしょうか。あ”~~!気分悪っ!



2005-07-13
隘路 3
テーマ たかし 第2章

いよいよ来るべきものが来るのだ。逃げたところで、いつかは避けられない道だ。
「わかった。どこまで話しているの」
「う~ん、一通り」
「バツ一で、7才年上でってこと?一緒に住んでいないけれど子供も居るってことも?」
「うん」
「何もそんな人とって言われたでしょう」
「だけど俺、他に考えられないって言ったら納得してた」
たかしの言葉は嬉しかったけれど、親の立場なら反対するだろうし、当たり前だと思った。
「どうしよう、何着ていこう」
普通だったらせっかくのお正月、振り袖姿で
「まぁ可愛いお嬢さんね」
などと言われてニコニコしている所なのだろうけれど。
「それでいいよ」クリスマス用の真っ赤なワンピースでは行けない。
「これじゃ…なんか、スーツでも来ていくわ。なんだかちょっとドキドキしてきた」
「はははっdoorでもそんなことがあるんだ」
「失礼ね」
いくら笑いに誤魔化しても不安は水にたらした墨のように広がっていく。先入観はあるだろうし、かと言ってどうすれば良い印象が与えられるのかも分からなかった。
 たかしの引っ越しの日、私は古いiMacを引っ越し荷物の中に入れてもらった。これを繋げばネットで彼ともやり取りできる。年末はいろいろなことがあって、私も辛い毎日を送っていた。不安はいっぱいだけれど、なんとか良い年にしたかった。

 いよいよ年が開けてたかしの家に二人で向かった。連れ立って歩きながら心臓の鼓動を感じていた。別に、自分より良く思われなくても良い。やっぱり多少は色眼鏡で見られてしまうのかしら、それだけは避けたい。たかしの御両親だもの、大丈夫、信じて良いはずだ。
組んだ腕からコートをとおして私の鼓動がたかしに伝わってしまうかと思うくらいだった。
「door、黙っているけど大丈夫?」
「ちょっと緊張してる」
「平気だってば、うちの親も結構さばけてるから」
「それなら良いんだけど…」
年越しは二人で過ごして元旦にたかしは実家に戻った。今日はほとんど私を迎えに来たようなものだ。最寄り駅まで迎えに来てくれれば良いと伝えたが、たかしはわざわざ部屋まで迎えに来てくれた。素直に喜ぶどころか逃げ出さないかと監視されているような居心地の悪さを感じていた。でも私一人だったらもしかしたら逃げ出していたかも知れない。

 住宅街の真ん中にたかしの家はあった。初めて見る。ここで彼は育ったのだ。私の知らないたかしがここに居たんだろう。この街で育ち、友だちと遊び、いくつか恋愛もしたのだろう。そう思うとその家になんだか親しみが湧く。これから会う御両親も私の知らないたかしを知っていて、私は彼等の知らないたかしを知っている。どんな御両親だろう。
「ちょっと、…たかし、深呼吸させて……大丈夫かなぁ」
「doorは細かいことを気にし過ぎなんだよ」
そう言いながらたかしは扉を開けた。
「ただいま~、連れてきたよ~」
廊下の向こうから御両親がいらして上がるように勧めてくれた。たかしは母似だったようだ。簡単に御挨拶をしてたかしの家に上がった。


2005-07-14
隘路 4
テーマ たかし 第2章

 居間に通されてきちんと御挨拶をしなおし、当たり障りの無い会話が始まる。表面上は和やかに、にこやかに進んで行った。たかしに何かを取らせにいった隙にすかさずお母さんから連絡先を聞かれた。私は素直に名刺を渡す。嫌な予感が心を掠めたけれどそれを押し殺してお父さんの冗談に口だけで笑ってみせた。2時間ほど和やかに過ごしてお暇させていただいた。たかしは私を送りに外に出て来た。駅までの道をゆっくりと歩く。
「どうだった?」
「どうって」
「うちの親」
「たかしの御両親だな~って」
「どういう意味よ」
「ん…素敵だって事」
「んだよっ」
 それからたかしは親についての解説を始めた。なんだかいつもより喋り過ぎるのは彼も何か不安を感じているのだろうか。それには触れずに素直に相づちを打つ。名刺を渡したことも黙っていた。雪が降り積もるように心の中の不安は次第に募っていく。年末に降った雪のなごりが道ばたにあり埃で黒くすすけていた。早く溶けてしまえば良いのに。

 翌日から次の日までたかしとずっと過ごした。たかしによると御両親は私に良い印象を持っているようだとの事で少しだけホッとした。日常のなんでも無いことが真珠のように貴重に思える。優しく、傷つかないように二人の時間を丁寧に過ごした。砂時計の砂が次第に落ちていくのを感じるように。これでお別れじゃないのに、そんなことは分かっているのになんだか貴重に思えるのだ。夕方実家から乗って来たバイクにたかしはまたがった。
「今週はちょっと無理だけど来週末にはこっちに来るから」
「うん、途中気を付けてね」
もっと言いたい言葉はいくら努力しても声にならなかった。
「泣くなよ」
たかしは革のごついグローブで私の頭を乱暴に撫でた。バイク姿は格好が良かったけれどそれをちゃんと見ることも口にすることも出来なかった。
「いってくる、じゃ」
バイクはスピードを上げてすぐに見えなくなってしまった。取り残された私は部屋に戻って泣いた。大きな声を上げて思いっきり泣いた。寂しかったらいつでも逢いにいける。少しだけ物理的に遠くなっただけ。いくら自分に言い聞かせてもやっぱり悲しかった。私の部屋に置いてあった荷物はそのままで、たかしだけがいない。実際には来ることが少なくなっただけなのに、どうしてこんなに悲しいのか自分でも理解できなかった。それでも毎日夜が来て朝が来た。仕事が立て込んでいたので気がまぎれて良かったかも知れない。
たかしからは毎日メールが来た。プロバイダとの契約が未だだったから私が書くメールの量に比べたらごく短いものだったけれど。
 ある日たかしのお母さんから電話があって私と会いたいとのことだった。心のどこかでこうなることは覚悟していた。新宿で待ち合わせることにした。



2005-07-15
隘路 5
テーマ たかし 第2章

 私は遅れるのが嫌だったので30分も前に約束のホテルのロビーに座っていた。持ってきた本を読もうとしたが内容はさっぱり頭に入らなくて、目だけが活字を追い頭の中では今日の話し合いのことを考えていた。
 多分別れて欲しいということなんだろう。電話をもらって中一日いろいろな可能性を考えたけれど、単なる茶飲み話でないことは確かだ。御両親はたかしがふつうのお嬢さんと幸せになってくれるものだと思っていただろうし、私が普通のお嬢さんではないのは確かだ。
 ふと宙を彷徨った目がたかしによく似た面影を捕らえた。ちらと時計を見ると約束の時間に15分も早い。早く来ておいて助かった。引きつっていようと、どう映ろうととにかく笑顔らしきものを浮かべて立ち上がり挨拶をした。


 ティールームでたかしの母親は戸惑いながら私と向かい合っていた。時には言葉につまりながら、思ったより私がちゃんとしていて安心したこと。分別があると思われること。距離が遠くなってどのような連絡をしているかなどを聞いてきた。直接別れろと言っているわけではなかった。認めないとも言わなかった。ただ少し戸惑っていると。私はそれは当然だと思うと言うほかない。たかしの母親も実の置きどころのない感じで、見ていて気の毒な様子だった。
 続いてこれからのことをどう考えているか聞かれる。たかしからもらった指輪を眺めながら少なくともあと半年ぐらいは少し物理的な距離を置いて考えたいと伝えた。そしてこれまでのこと、私自身たかしに幸せになって欲しかったから、ずっと自分は相応しくないと考えて苦しんできたことも伝えた。何もかもありのまま話すしかなかった。
たかしの母親は下を向いて聞きながらハンカチで目を拭っていた。それでも
「たかしは31になったとは言ってもまだ子供ですから、この機会にdoorさんもよく御考えになって」
と絞り出すように言った。それは言外にできれば別れてもらいたいと言っているように私には聞こえた。震えぎみの声がこんなことを言わなければならないことに苦痛を感じていることの表れだった。
「はい、でも…」
「私には何が彼にとって幸せなのか分からないんです」
自分の声があまりに細くて頼り無げに聞こえる。ほとんど泣き出しそうになりながら舌先を噛んで涙を堪えた。
「私は彼が幸せになってくれれば良いし、でもその彼に求められたら私は応えるしかないんです」
「そうね、ほんとにそうね、ごめんなさい。doorさんのお気持ちは良く分かりました。あの、失礼に聞こえた所があったらごめんなさいね。ただ、あの子の前でこんな話が出来なかったものだから」
私達は立場が違っても純粋にここに居ないたかしの幸せを願っていたと思う。私が彼をどのように愛しているか彼女も理解してくれたようだった。その意味で同じ気持ちを共有していると言う感覚があった。たかしの母親とこんなふうに心の交流ができるとは思ってもみなかった。
 別れたあと所用を済ませて部屋に戻ると、珍しく留守番電話のランプが点っていた。近ごろでは家に不在の時はすぐに携帯に電話が入るので珍しいなと思った。確認してみるとたかしの母親の声で今日の話し合いについて感謝の言葉が録音されていた。ずいぶん丁寧な方だと思いながら聞いていると最後に
「これから距離も離れることですし、どうぞ二人の人生を長い目で考えてみて下さい」
と締められていた。不思議と反感も反発も無かった。

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