卒論集のデータをやっと入稿しました![]()
担任の仕事がひとつずつ終わっていきます。喜びと寂しさの両面を感じながら。。
編集後記
「優しさを超える心」
15 回生担任 H.T
2007年の冬のさなか、本書は発行されました。これまでの2年間、“心は豊かに 腕は確かに”という校訓が示すように学業に励んで参りました。この1冊には、専門職としての「腕」を磨いてきた44名の介護への「心」が凝縮して集められています。介護福祉士に必要な「心」とは何か、それを「優しさ」という言葉で言い換えるにはあまりにも曖昧な意味になります。科学的に介護を学ぶ者にとっての「心」とは、社会への「問題意識」であると言えます。それは、声無きマイノリティに耳を傾けること、隠れた悪を見つけようと社会を注視すること、または生活の匂いに居心地の良さを感じること。そして、それら五感から得た想いを行動にあらわす勇気が、介護福祉士の「心」ではないでしょうか。本書に集められた論文は、ひとつとして同じもののない「心」から発した学究の成果であると言えます。お読みいただいた皆様は、きっと彼らの「心」の放熱を感じられたことでしょう。そんな学生の放った熱が、自信や希望となって皆様の心の中で再燃することを願ってやみません。
実習でご指導頂いた介護現場職員の皆様の本校学生に対するご指導には、深い感謝を申し上げます。4度にわたる実習のたびに、階段を昇るように成長していきました。そして、更なる高みへと自己を啓発しようと意欲を燃やすことができました。ご指導して頂いた皆様は、きっと、彼らの目指す高みとしての“憧れ”の存在であったにちがいありません。実習で皆様から教えて頂いた介護への熱い想いが、学生の問題意識に火をつけ、明日の介護を担う責任感を生じさせたのです。
この年2月、ディクシーチックスというカントリーソングを歌うアメリカのグループがグラミー賞を史上最多の5部門で受賞しました。9.11テロ間もない過去に、同郷のブッシュ大統領のイラク派兵を批判したことから、アメリカでは国民の反発が起こり、彼らの楽曲に対して不買運動や放送中止、さらには家族にも脅迫行為などが起こったそうです。しかし、周囲の冷ややかな態度にもめげずに、彼らが正しいと標榜した「反戦」という戦争を避ける追求は、後の現在において評価されるようになりました。これを教訓に、福祉に身を置く者は社会の正義の側に立てるように、自己の「問題意識」を常に高めていなければなりません。正しい判断の持ち主にならなければなりません。同時期に日本では、某情報番組の「納豆にダイエット効果がある」という捏造報道が社会問題として取り上げられ、日本のテレビ局のジャーナリズムの在り方が問われる口火となりました。また、科学界からはニセ科学の蔓延を危惧する警鐘もあります。そして、インターネット上では真偽不明の情報が洪水のように日々流れています。このような正しい情報が見えにくくなっている時代に、いかに情報の真偽を見極め、自らの学びに取り入れるかが難しくなっているといえます。近年では、介護において、“エビデンスベースド”が唱えられるようになり、特に介護福祉士には「優しさ」だけで介護するのではなく、確固たるエビデンスに基づいた行動が求められています。そうした社会的要請もあり、この介護研究集は、歴代の卒業生たちから続く、介護の科学的な実証の記録となっています。つまり、介護教育は実学であり、学びと実践は別ち難いものであるという証明を彼らは2年間をかけて行ったのです。彼らの孤独な学習を支えた学校の仲間に、どんなに救いを感じたことでしょうか。学生時代の思い出は、きっと甘い友情の記憶と、苦い勉強の記憶が交錯したものだったにちがいありません。しかし、勉強によって絆を強くする友情があり、友情によって励むことが出来た勉強があります。ソクラテスは、「産婆術(maieutike)」という言葉を使って、“自分だけが新たな考えを産むのではない。誰か他者の考えとの接触(対話とか)が新しい思想を産む手助けとなる。”というように説きました。また、「教育」を指す英語は、educationですが、その語源はeducere(エデュセイレ)という「導き出す」というラテン語だそうです。学生たちは、常に良質の知識に触れ、多くの人々との対話から、自分の介護観を導き出してきました。そして、これからも、彼らに良質の知識と心を熱くさせる出会いに恵まれるように祈っています。これまでの出会いに感謝しつつ。
平成19年2月