「正しく立って歩けたら、それで社交ダンスのかなりの部分は完成」とは言われますが、そうは言われても、「夏休みの宿題」はとりあえず放っておいてプールに行きたくなるのが元気な小学生の本音ではないでしょうか。

 

 敢えて楽しい夏休みのプール遊び(足型=組んで踊る)を我慢して、最初にどれくらい宿題(姿勢・ウォーク)をやるか、というところは永遠のテーマであり、先生やダンス教室の考え方が分かれるところです。

 

 考えてみたら、私は諸事情から最も高い「個人レッスン」を選んでしまったので、先生もきちんと基本重視のレッスンをするのは当然だったのですが、当時は知る由もなし。基本の大切さはダンスに限らずですが、その「基本練習の大切さを最も理解していない」のが、「基本練習が最も必要」な初心者ということは世の中の構図なわけでして。

 

 「この謎(?)のレッスンの先には楽しいレッスンが待っているに違いない!」と信じつつ、歩け~歩け~のレッスン。それにしても、先生がカウントを取る時に、何で「ワン」からではなく、「ツー」からなんだろうなーと、これまた社交ダンス(ラテン)特有のテーマを疑問に思いつつ…。

 

 ひたすらお尻フリフリして歩くことの意味、そしてツーから始まるカウントの意味等、当時は謎だらけのレッスンでしたが、そのうち、先生に手を取ってもらわなくても何とか一人で歩けるようになってきました。「これが本当の一人立ちってやつだ!」などと心の中で小ボケかましながらウォークの練習を重ねていき、なんとなく少しはサマになってきました。

 

 私の進歩をじーっとみていた先生がつぶやくように、「そろそろ、いいかな…」

 

 そう!その言葉を待っていたのです。私は心の中で叫びました。「さあ、先生!宿題を終えたからプールに飛び込みましょう!」と。

 

 先生は、満面の笑みで私にやさしく言葉をかけてくれました。

「よく頑張りました。最初から見たら、ルンバウォーク、かなり良くなりました。」

 

 そして、続いてご褒美の言葉が出たのでした。

 

 「では、次にチャチャウォークやりましょう。」