「では、まずジルバを踊ってみましょう!」

「じ、じるば?」

 

ジルバというのはいわゆるパーティーダンスと呼ばれるもので、正式な競技種目にはありませんが、比較的簡単なステップで楽しく踊れるダンスです。社交ダンスの中では珍しいアメリカ発祥の楽しいダンス。私の勝手なイメーですが、ちょっと古いアメリカ映画の中で、軍人さんがビール片手に踊っていたり、学生が卒業ダンスパーティー(いわゆるプロム)で踊っている様子が思い浮かびます。

 

男性は、「スロー、スロー、クイック、クイック」のカウントで3歩のステップを踏み、これが基本のステップとなるのですが、この3歩がくせもの。たかが3歩、されど3歩。この3歩から私の社交ダンス人生が始まりました。

 

いいですか、「スロー、スロー、クイック、クイック」、「スロー、スロー、クイック、クイック」、「スロー、スロー、クイック、クイック」...。「大丈夫ですか?」

 

「せ、先生、早すぎて足の動きが見えましぇん!」と正直に言えばいいものを、見栄なのか照れなのか小心者なのか、「はぁ、はいぃ...」とまたしても適当な返事をしたところで、「じゃぁ、やってみましょう!」って....やっぱりそう来ますよね。

 

この3歩との格闘は、体験レッスンの多くの時間を費やして長く続いたのでした...。

 

私は思わず、吟じて?いました。

 

「たはむれに ダンス始めてそのあまり 難(かた)きに泣きて 3歩あゆまず...」