「それなら、私になりますね!気を付けてお越しください!」

 

社交ダンス教室に電話してみると、感じのいい女性の先生が対応してくれました。個人レッスンは、先生によってレッスン料が違うらしいので、一番安い先生がいい旨を伝えたところ、たまたまその先生がそうだったらしいのです。声だけでは年齢はわかりませんが、20代くらいの方のように思いました。初回の「無料体験レッスン」を予約して電話を切りました。

 

ダンス教室に向かう道中でぼんやりと考えていました。「ずいぶん若くて感じのいい先生のように感じたけれど、本当にあの先生がレッスンしてくれるんだろうか?」

 

ダンス教室に到着してからも、さすがにすぐに入口のドアを開ける気にはならず、しばらくドアの前でためらっていました。さすがに今回は「ウサギの穴に落ちたアルマジロ」にはならないにしろ、前回のジャズダンス教室で金縛りにあったことがややトラウマになっていました。

 

「ドアを開けてみたら、そこにはヤサグレたチーママみたいなのが睨みをきかせていたりして?チーママに、電話で予約した先生とのレッスンをお願いすると、「なら、追加料金5万円即金で払いなっ」とか言われたりして?断って帰ろうとすると、ゴルゴ13みたいなコワモテの用心棒が出てきたりするのかな?なら、やっぱり俺は金縛りかぁ。。。」

 

くだらない昭和チックな妄想をしながらも、まさかそんなことはないよな~なんて自分で突っ込みを入れながら覚悟してドアを開けました。その瞬間、大音量の音楽とともに、抱き合った(ように当時は見えた)男女が、くるくると回転しながら、凄い勢いで目の前を通り過ぎて行きました。有閑マダム(のように当時は見えた)のスカートの裾がヒラ~、ヒラ~と舞い、その風が私の頬を撫でて通り過ぎて行きました。

 

私は、しばし、その場に固まっていました。