ホールオペラ | コンサートホールのお話など

コンサートホールのお話など

レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

本当なら、この時期になったら、書きたい記事がありました。それは、サントリーホールで毎年行われてきた「ホールオペラ」という公演です。ところが、昨年の「コジ・ファン・トゥッテ」で一区切りとなってしまいました。1993年以来、ほぼ毎年開催されていました。


前々から、来年はなくなるかもといいう噂は耳にしていたのですが、大変残念です。内容が素晴らしいだけに、その質を保ち続けることは、一流の出演者やスタッフなどを長期に拘束しなければならず、莫大な費用もかかり、様々な観点から困難になったのではないでしょうか。


ホールオペラとは、特別にオペラの上演の施設はないコンサートホールで、かなり本格的なオペラをお楽しみいただけるように工夫を凝らした、新しい形態のオペラ公演で、毎年3月頃にサントリーホールで開催されてきました。


何故サントリーホールで、と書いたのかというと、ホールオペラはサントリー限定だったのです。行ったことのあるよ、という人もお気づきだったかどうか、チラシなどのホールオペラの文字には気をつけてよ~く見てみると、Ⓡという記号(=登録商標)がついているのです。


どこが独特かというと、オーケストラはピットがないので、なんと舞台上にコンパクトに乗っているのです。同じ舞台のその周辺で、衣装も振付も本格的なオペラをやります。オーケストラと歌手が一つの舞台上で一体となって、という今までになかった上演スタイルです。


舞台美術も毎年楽しみの一つでした。プロデュースも演奏も舞台装置もすべて、一流で、新しいスタイルで、いつまでも心に残る作品でした。いつか復活することを心から祈っています。


今、日本のあちらこちらで新しいオペラの動きが見られます。ホールオペラも、もしかしたら、よい刺激のひとつになったのかもしれません。また新しい風が吹いてたくさんの人がオペラのファンになるといいなと思います。