明日ハ晴レカナ、曇リカナ~誕生秘話 | コンサートホールのお話など

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レセプショニストとして働いているコンサートホールでのお話や、クラシック音楽やとりとめのないことなどを綴っています。

松浦健さんのピアノ伴奏でバリトンの大西孝徳さんが歌う曲に、敢えてシングルでCDを出して欲しい!と、ずっと思っている曲があります。前回のデュオリサイタルのアンコールで初めて聴くことができた曲、「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」です。お二人のひたすら春雨のようなやわらかで優しい音楽が重なり、得も言えぬ安堵感に満たされました。そういえばデュオリサイタルの毎回通しての冠は「やわらかな調べにのせて」でした。

この曲は、武満徹さんが作詞・作曲されたものです。一般的に混声合唱曲として演奏されているそうですが、松浦健・大西孝徳ご両人のデュオによる演奏は最高で、この曲をラストに聴いて帰途に着くみんなの幸せそうな雰囲気が大変印象に残りました。合唱団を4つも掛け持ちし、更に当時オペラ歌手にも師事していた知人も「早速楽譜を買いに行くわ!」と、喜んで帰りました。


かっちりとしたオペラ歌曲などの後に、ふわっとしたこの曲が来たのは、甘い余韻が残るよいプログラミングでした。過去に、曲名などは覚えていませんが、「アンパンマン」のやなせたかしさんの作詞による、これに似た雰囲気の曲もかなり印象に残っています。

ご紹介するのは、混声合唱のものですので、バリトン&ピアノとは印象も違うとは思いますが。試聴ということで、途中で切れていて残念ですが、美しいのでこれを載せます。ご容赦ください。下に別の合唱団で全部通しのを貼っておきます。



リサイタルのMCで知ったのですが(以下は記憶を辿ってですが)、この曲には、誕生秘話があるのです。

黒澤明監督の映画「乱」の撮影現場で誕生しました。何日も、納得のいかないお天気が続き、撮影がなかなか進まないという状況が続いていました。現場のスタッフが毎日のお天気を案じつつ、だんだんピリピリとした雰囲気になっていきました。音楽を担当し、現場に来ていた武満徹さんが、そんな状況を見兼ねて即興で作り上げ、現場の雰囲気を和やかにしたとされているのが、この曲だそうです。


「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」作詞・作曲 武満徹

昨日ノ悲シミ 今日ノ涙
明日ハ晴レカナ 曇リカナ

昨日ノ苦シミ 今日ノ悩ミ
明日ハ晴レカナ 曇リカナ





全部通して演奏されているもの。