はぁ…
「10回目。」
声の方を見るとテミンが呆れ顔をしていた。
「出社してまだ一時間も経ってないのに、すごいため息の数ですね。コーヒー淹れました。」
「ありがと。」
ずずーっと啜るように飲むと、テミンが目の前に立った。
「ユノヒョン、その癖直ってないんですね。悩みごとがあると思いきり音を立てて飲むの。」
「会社でヒョンはやめろって。」
テミンは幼馴染みだ。
いずれ自分の親の会社を継ぐことになるため、武者修行としてうちの会社に来ている。
「どうせこのままでも仕事にならないでしょうから、聞いてあげます。シムさんと何かあったんですか?」
「は?」
何で知ってんだ?
「何を驚いてるんです?今の副社長の悩み事なんて、シムさんのことくらいしかないでしょう?」
「う…」
「悔しがって唸っても解決しませんよ。」
俺は、チャンミンのマンションまで行ったこと、追い返されたことを話した。
テミンはフンフンと頷きながら聞き終えると、俺の顔を見た。
「最後にカトクの既読がついた日、何かありませんでした?」
はて?
「あの日は、ソンアに呼び出されてショッピングとか付き合わされて…そういえば、ブティックの前でチャンミンに会った!いきなり走って行っちゃったんだよなー」
「なるほど。話を繋げると、あと一歩のところで副社長自らぶち壊したようですね。」
「なんだよ、それ!」
「シムさんは、ソンアちゃんを副社長の彼女だと思ってる可能性大です。」
は?ソンアは妹だし!彼女なんて作る気もないし!って、あれ?
「なあ、テミン。もしかして、チャンミンは俺を…」
「そうなってきていたかも知れないですね。これはあくまで憶測ですけども。」
でも、そう考えるといろいろと辻褄が合う…
「テミン!」
「とりあえず、仕事してくださいね?」
「…はい。」
チャンミンと話をしなくちゃだ。