大量の眠剤を口にして飲んでしまった母は、数十分後いつものように眠った。


ただ小学生の私は母が死んでしまうと思い怖かった。


祖父にすぐに電話をした。

祖父母は歩いて徒歩5分のところに住んでいたので、すぐにかけつけた。


『何錠飲んだんか?!』


祖父は私に怒鳴った。


『わからん。ただ沢山飲んだ』


私は泣きながら祖父にそう伝えた。


祖父は吐き出させようと試みたり、

『あい!起きろ!』と何度も頬を叩いたが起きなかった。


結局、母は昼過ぎまで眠りにつき、やっと目を覚ました。


目を覚ますと、何事もなかったかのように母の1日が始まる。


母はお酒を飲まなければ、あまり私に怒鳴ったりすることはなかった。


ただ家にいる時も、毎日お客さんと電話をしていた。

母に聞いて欲しい話も沢山あった。

母と一緒に過ごしたくて寂しい日だって数えきれないほどあった。


母も辛かったと思う。


母が私を妊娠している時、父には沢山借金があったそうだ。


それを返済する為、母には水商売しか選択肢がなかった。


父は郵便局に勤めて退職。

それからは母の実家の飲食店を手伝ったり、

色々な仕事を転々とした。


私が小学生になる頃には、自分で小さな建設業をやっていた。


父はギャンブルが大好きだった。

休みの度にパチンコへ足を運んだ。

ただ父は一人娘の私にいつも優しくしてくれた。


冬になると、『女の子が唇カサついてるのはみっともない!』と言って毎日毎日リップを買って持たせてくれた。


母は日曜日の朝、前日の仕事の疲れで死んだように眠っているので、良く父が動物園に連れて行ってくれた。

モスバーガーを2人で食べながら、良く私の好きな音楽を車の中で聴かせてくれた。


そんな中、母には彼氏がいた。

私の記憶に残っている1人目。

弁護士の男だった。

その男には幼い息子がいた。

その男の自宅に何度か遊びに着いて行ったことがあった。

まだ私は小学生低学年だったと思う。

いつものお客さんとしか思っていなかったが、大人になって、あの男は母の浮気相手だったと気付いた。


2人目は郵便局員の男。

母にゾッコンで、とにかく母に高い贈り物をした。

シャネル、ロレックス、母の欲しがるもの全てを買った。

その男には、私と歳の近い娘が2人いた。

近所に家を借り、母の仕事の送り迎えまでした。

私のことも可愛がった。

私と母をディズニーランドにも連れて行った。

その男とも母は体の関係があったと思う。

その男の家に遊びに行かされると、母の下着が干してあるのを多々目撃していた。


その時からだったと思う.....

母は仕事終わり、まっすぐ家に帰ってこなくなった。

私が朝目を覚ますと、母の姿がない日が続いた。

私は酔った母に夜中に怒鳴りつけられなくなる安心感よりも、寂しさが上回っていた。


朝、学校に行く時、もちろん朝食はない。

父も朝早くに家をでるので、父に合わせて急いで学校の準備をして一緒に自宅をでた。


母は『お店で酔い潰れて寝ていた』

そうやって毎日私達に嘘を言った。