子どもが人のものを持ち帰った。
それを咎めたとき、子どもはウソをついた。
すぐに叱らず、なぜそんなことをしたのかを考えた。
そして自分を責める思考が止まらなかった…。
本当に伝わっている?
もう同じことは繰り返さない?
どうしてこんなことをしてしまったの?
私の制限がきつすぎたの?
制限する代わりの遊びは不十分だったの?
そもそも両親の仲が悪いから心が歪んでしまったの?
私のせい?
私が円満家庭を築けなかったから?
いろんな気持ちが渦巻いて、笑顔はなくなり、子どもたちとも上の空でしか会話ができなくなってしまった。
子どもにも、「元気がないね」と言われ、「あんなことがあったからね…」 という会話もあった。
家庭のことを相談できる人はいたけど、今回のことはどうしても言いたくなくて私はホットラインに電話をした。
電話口に優しい声のおじさんが出てくれた。
ポツポツと一方的にあったことを話した。 そして最後に 「どうしたらいいかわからないんです」 と言った。
おじさんは、
『お母さんの取った行動は、それでいいんですよ』
と言ってくれた。
『子どもが人の物を取ってしまうことは、小学生になってもよくあること。 でもそれを延々と怒ったり、罰を与えても子どもはよくわからない。 大好きなお母さんが元気のない姿を見るのが、子どもにとっては一番辛いことだからきっと子どもには伝わったと思いますよ』 と。
本当のことはわからない。
でもその時の私にとって、 『それでいいですよ』 と肯定してもらえたことで、頭の中の雑念が洗い流された気がした。
夫が言った
「しょうがない、お前が悪い」
「あの子は元々おかしい」
「叩けばいい」
に囚われていたけど、 おじさんは 『叩いても伝わりません』 そう言ってくれた。
あの電話の向こうにいた優しい声のおじさん、
あの一言が私の心を救ってくれました。
「それでいいんですよ」
どうか、今同じように苦しんでいる誰かにも届きますように。
