生まれ育った家から、いったい何を受け継いできたんだろう。そして我が子に何を受け継がせてしまったんだろう。

自分が育った機能不全な家庭環境を振り返り、家族一人一人を思い起こすことで、幼いながらも心に感じたもの、そして形作られた内面を辿れば、知らずに受け継いでしまったもの、見えにくく隠されたものが見えてくるかもしれない。


「おじいちゃんは毎日朝早くから起きて掃除をしたり仕事をしているのに、おばあちゃんはいつもまだ寝ている。8時ごろ起き出し火鉢の前に座ってタバコばかり吸っている。」

家業を祖父に任せきり、家事も一切母に押し付け、金を使うこと(はっきり言って散財です)しかしない独裁者的な祖母。

祖母に牛耳られたこの家の男どもの地位はいたって低く、その存在感たるや余りにも無さすぎである。君臨する祖母の前に男は隷属状態である。

祖母に物申す祖父の姿は見たことないし、これまた言われるがままの父に、後継者と目され甘やかされ放題の叔父は、お昼頃まで起きてこない。


「新しい服を買ってくれたり、旅行に連れて行ってくれるおばあちゃんが、いつもお母さんをいじめている。なんで?どっちも好きなのに。」

家業まで手伝えず家事しかできない母を、役立たずと罵り冷たい仕打ちをする鬼のような祖母。口答えせずじっと耐えるしかなかった母は神経をすり減らしていた。寂しかっただろう父がかばうなんてなかった。

いつも恐い顔をして冷たくものを言う。笑ったところを見た覚えがなく、いっしょにいても心から安らぐことはなかった。いつも祖母をはじめ家族の顔色ばかり伺っていた。

ひとつ屋根の下にいるというだけで実はみんなばらばら、互いを気遣ったり心を通わせる温かい家庭じゃなかった。姉は早く抜け出すことばかり考えていたし、私もそう思うようになっていった。

冷たい家だった。