家族四人の新たな生活が始まった訳だが、いま振り返えってみると姉といっしょに暮らした印象が、あまり無いのである。高校卒業を待っていたかのように東京へ、仕事をしながら英語の学校に通う一人暮らしを始めたので、ここでいっしょに暮らしたのはそれほど長くない。

というか以前八人で暮らしていた頃の姉との二人の記憶も、もちろん使い走りをさせられたりあるにはあるが、思い出そうとしても次々にとは出てこない。

姉のことを考えるとなんと言っても、親父ととにかくいっしょにいるのが嫌でならなかったという事だ。顔を見るのも、口を利くのも、いっしょに食べるのも、何につけ気にくわなかったようだ。

どうしてだか自分でも解らなかったが、嫌で嫌で堪らなかった。とにかく家に居たくなかったし、実際居ないようにしてたと先日の電話でそう言ってた。当事姉のそんな心情が伝わったのか、私にも親父を毛嫌いした時期があったのを覚えている。

親しい友人たち(もちろん女性)の家によく泊まりに行っていたし、しょっちゅう教会へ行ってた。信仰目的ではなく神父さんの英語が目当てだった。

映画はよく観ていたがもちろん洋画ばかり、映画そのものを楽しむよりセリフのニュアンス、イントネーション、意味や会話を感じ取るためだった。家にあった雑誌「スクリーン」の男優さんの中で、姉が好きだったのはモーリス・ロネとクリント・イーストウッドだったかな。

音楽も洋楽ばかり、映画音楽集のレコードもあったが、特に覚えているのはウォーカー・ブラザースとアンディ・ウィリアムスだ。発音のはっきりわかるものが多かった。

そんな姉は、横須賀で知り合った米海軍のSさんと知り合い結婚二人の子どもを設け、今はアメリカ人となりテキサスに住んでいる。