バベルの塔からこんにちは 

バベルの塔からこんにちは 

オンタリオ州でRMT(Registered Massage Therapist)となった駆け出しマッサージセラピストの日常を淡々と綴ります。



3月一杯まで毎週入っていたマイケルの予約は全て取り消され、私はストレスを感じることなく勤務を続けていました。ところが今週、何の前触れもなくマネジャーから以下のメールが来たのです。

 

「やあかりんこ、例の患者のことなんだけど、どうも君のことを相当気に入っているらしくて、君の施術が一番効果的だと訴えているんだよね。それで相談なんだけれど、彼のクレジットカード番号をこちらで保存させてもらうよう、彼に交渉するというのはどうかな?そうすれば、彼にももうちょっと予約時間にちゃんと来るように促せると思うんだけど、どうだろう。考えてみてくれないか」

…ちょっと何言ってるかわからないですね…

いや、もう、私への予約は受けないようにさせると言ったし、既にキャンセルされたわけですけど…。ていうか、キャンセルした時点でマイケルとクリニックとの間では、どういうコミュニケーションがなされていたのでしょう。私はその点を追求しなかったことを後悔しました。あまりに遅刻とノーショウが多いから、もうセラピストはあなたの施術を拒否している、と受付なりマネジャーなりから、ちゃんと伝えてなかったのか?いや、伝えた上でこの男は、粘ってきたということなのか?わからない。わからないけどただひとつ言えることは

知らんがな

 

ということに尽きます。頭蓋骨の中にメロンパンでも入ってるのか、あのマイケルという男は。そんなに私の施術が受けたいなら、なんでいつも時間通りに来ない上に、前回は連絡もなくノーショウだったのか。毎回毎回一切の誠意も見せずに、私の施術が効くから受け続けさせろだと?ふざけるのも大概にしろ。私は怒りに任せて

「嫌です。もうあの患者とは関わりたくありません」
と速攻で返信しそうになりましたが、いやいや待て待て…感情をむき出しにして返信するのは、大人としてダメだ。ここは、プロフェッショナルに行こうじゃないか、プロフェッショナルに…と、己に残った理性が羽交い絞めにしてそれを止めました。

 

しかし、どう言ったものか。そもそも、マネジャーのメールに対して、私は怒り以上に何か釈然としないものも感じましたが、それを言語化できていない自分がいました。こういう時は…そう、あの人に相談だ!私の無慈悲なビジネス顧問である、カナダ人の夫に!


これまでも顧客の扱いで困ったことがあると夫に相談してきましたが、彼はその度にズバッと無慈悲な正論を言って、私のヘタレな精神に喝を入れてきた実績があります。私は仕事中の夫に、簡単に経緯を説明するメールを送りました。すると彼は

「君がその患者を切りたいのは、彼の遅刻とノーショウだけが理由なのか?」
と尋ねてきました。私がそうだと答えると、夫は「わかった、帰ってから話をしよう」と言いました。以下、顧問の意見です。
 

「君が最も主張すべきことは、その患者が時間通りに現れるか否かに関わらず、君には予約された時間分の報酬を確実に受け取る権利があるということだろう。君は契約に従い、時間通りに現れ、施術ができるよう万端整えてそこにいるわけだな。にも拘わらず、その患者が現れず、支払いがなされなかったという理由で、君の報酬が失われることは理屈に合わない。

 

予約時間に来なかった患者に、キャンセル料を請求する役割を担うのはマネジメント側であって、それは君の仕事ではないな。患者が来ようと来るまいと、キャンセルの連絡が事前になかったのなら、君はその時間分の報酬をクリニックに請求していいんだ。だから返信にはこう書けばいい。『当該患者の来る来ないに関わらず、私が予約された時間分の報酬を得られるとクリニックが確約し、それを書面にするならば、施術を継続しても差し支えない』とね。だって、君がこの患者を切りたい理由は遅刻とノーショウ以外はないんだろ?なら問答無用で拒否ではなく、こういう交渉の余地がある。僕が最初に君に理由を聞いたのはそのためだ」

 

さすが顧問…。そう、私の意識はマイケルの全体的な不遜な態度に向きがちでしたが、問題の本質はそこではありませんでした。私が真に不当性を訴えるべき相手はマイケルではなく、私に正当な報酬を支払う努力を怠っているクリニックなのです。確かに、一切の誠意を見せないマイケルの態度は不愉快ですが、セクハラや暴力等の一発アウトの狼藉までには至っていません。

 

キャンセル料を請求するのはクリニックの役割、というところで私の違和感の正体がはっきりしました。マネジャーは、マイケルのクレジットカード情報云々という話をしてきましたが、それはクリニックが考えるべきことであって、私の知ったこっちゃないわけです。私は時間通りに仕事をして報酬が支払われればそれで良く、マイケルがきちんと来れるようにモチベーションを上げる義務もないし、そもそもそんな躾は彼が幼稚園に上がるまでに彼の親がやっておくべきことです。

 

夫がマイケルの態度云々や私の抱いた負の感情には一切言及しないで、この問題を論じたことには目から鱗が落ちた思いがしました。わかっていたことですけれども、確かに、人間性というものは、他人が短期間でどうこうできるものではないのです。マイケルは今後も時間通りに行動することもなければ、自分の行動によって他人がどういう感情を抱くかに思いを馳せることもなく、そういう感じの人生を送るでしょう。それは彼の問題であって、私の問題ではありません。私がすべきことは、

 

正当な権利の行使だ!!

 

と言うわけで、顧問のすすめに従い、私は以下のようにマネジャーに返信しました。


「メッセージありがとうございます。以下の条件なら、私は当該患者の治療を継続したいと思います。

1.当該患者がノーショウであった〇月〇日と〇月〇日の分の報酬を私が受け取ること
2.当該患者の来院の如何に関わらず、予約された時間分の報酬を私が受け取れるという証明をクリニックが書面にし、それを私が受け取ること


この条件でのみ、私は当該患者のケアを継続しましょう。もしこの条件に合意できないということであれば、私はRMTとしての権利を行使し、当該患者の治療は拒否させていただきます。」

 

この条件にマネジャーが合意しようとしまいと、どちらにしても私のメリットにつながります。合意されれば私は報酬を確実に受け取れるし、合意されなければ私はもうマイケルの顔を見なくて済むわけです。私の不利益は、不愉快な人間と一定期間関り続けるストレスか、失われた報酬分の経済的損失のどちらかに留まります。まあ、ぶっちゃけ払われなかった報酬は合意の如何に関わらず私が受け取るべきですが、今回は譲歩します。それよりも、私のこの硬質な態度によって、マネジャーが何か感じてくれることの方が重要です。

 

それにしても、夫はやはりカナダ人であり、北米の文化で育った人間なのだなと、その言葉の強さからしみじみと感じました。10年以上をカナダで過ごしてきていても、私の本質的な部分はいまだに日本人であり、己の立場を強く押し出すという行動に慣れていません。しかし、不当な扱いを受けて悶々としながら過ごしていても、己が行動しない限りは誰も助けてはくれないというのは、どこの国で生きていても同じことではあります。

 

マネジャーからの返事はまだ来ていません。

 

 



私は自分の四畳半のオフィスの主となってからは、問題のあるお客さんは、堪忍袋の緒がプチンといった時点でことごとく出禁にしてきました。私のオフィスにおいては私が法律。しかし、4年前からパートタイムで勤めている出稼ぎ先のクリニックでは、なかなかそういうわけにはいきません。

 

大概のことは我慢してきた私です。しかし、今回ばかりはクリニックのマネジャーに治療拒否を伝えるメールを出しました。ある20代後半の男性患者さんのことです。仮に名前をマイケルとしましょう。

 

彼の初回予約はノーショウでした。予約時間になっても現れないので受付が電話をかけたところ、

「あー今日だっけ?忘れてたわ。1時間で取ってたかな?え?30分だったかー、それならもう、行かないわ。今日はキャンセルして」
と言い放ったそうです。私のオフィスの客であれば、初回予約でノーショウは即出禁の重罪ですが、出稼ぎ先なので私は野犬に噛まれたと思って受け流すしかありませんでした。そしてマイケルがマッサージを受ける理由はMVA(交通事故)の後遺障害であり、保険会社からその代金は直接支払われることになっています。しかし、保険会社はノーショウの場合は支払いを行いません。道義的ににはマイケルが自費でキャンセル料を支払うべきところですが、一般にMVAの患者が自費でキャンセル料を支払ったためしはありません。私の取り分は当然、ゼロ。

マイケルは他のRMTからも施術を受けていましたので、もう私には予約が入らないことを願っていました。しかしノーショウの2か月後、私の予約表に再びマイケルの名が。30分の予約に13分遅れで現れたマイケルは、図体のでかい黒人のあんちゃんでした。遅刻してきた自覚はあるようですが、謝罪の言葉など一言もありません。むしろ

「あー、俺の後、誰か予約入ってる?」
と尋ねてきました。入っていませんでしたが、私は速攻で「ええ」と答えました。事実を言えば、マイケルは17分ではなく、30分丸々施術を受けられるものと期待するでしょう。お前の考えはお見通しだ。

17分の施術でしたが、むかつく相手でも仕事には手を抜かないというのが私のポリシーです(ただし愛想は悪い)。他のRMTから前情報を得ていた通り、施術中、イヤホンをつけたまま、何かヒップホップでも聴いているであろうマイケル。チベットスナギツネのような眼差しでそれを眺めつつも、私は短い時間で己のベストを尽くしました。そしてその結果…どうやらマイケルは私のマッサージをいたく気に入った様子で、その次からは私にだけ予約を入れてくるようになってしまいました。己の真面目さが恨めしい。

 

彼が予約を入れてくるのは、週1で朝イチの9時。しかし現れるのは毎回、10分から30分遅れ。毎回毎回、時間通りに現れない上に謝罪の一言もなく、施術中はヒップホップを聴いている相手のために、朝起きて支度して予約時間前に出勤する私。それがマイケルがマッサージ用の保険金を使い切るまで続きました。

 

ようやく最後の施術を終えたのが11月末。ああ、良かった、もうこれでこの遅刻魔と会うことはない…!と私は安堵し、12月末に日本に一時帰国。そして2月に仕事に復帰して受けたのは、マイケルから6週連続1時間、朝イチ9時の予約が入ったという通知。

 

なぜあの男が再び…と白目を剝くしかありませんでした。おそらく、再び保険金が下りたのでしょう。仕方なく1回目の予約の時間にスタンバイしておりましたところ、受付から

「マイケルが30分遅れるらしいわ。だから時間も30分に変更して欲しいそうよ」
という知らせ。あのな…

「…そう、でも料金は1時間分取るのよね?」
と低い声で内線電話ごしに問うと、受付はややバツの悪い感じの声で

「いいえ」
と言いました。お前な…仕事しろよ…と血が沸騰しそうになりましたが、MVAの会計上難しいこともあるのかも知れん…と思い直してマイケルの到着を待ちました。現れたマイケル。私が負のオーラを漂わせているのは何となく感じ取ってはいるようでしたが、ソーリーの一言もありません。

 

これほどまでに不愉快な思いをさせられて、一言ガツンと言ってやりたい気持ちはありました。しかし、私がそれをしなかったのは、リスク管理を優先したためです。残念ながら彼との圧倒的な体格差があること、そしてここまで非常識な行動を取り続ける人間が、感情を害された場合に密室でどのような行動に出るか、全く予期できないという事実が、私の言動を抑制させました。

「9時に来るつもりがないなら9時に予約を入れないでください!こちらの時間も尊重して…」

まで言った時点で顔面一発殴られたら、ちっこい私など吹っ飛びます。首を締められれば死にます。本当に、よく知らない他人の理性など信用できたものではありません。ましてやこんな社会常識に欠けた人間は。

 

これがあと5回も続くのか…と思いながら、私は翌週もまたきっちり9時前にスタンバイしました。マイケルを待ちます。10分、15分。受付が電話をかけました。留守電につながったそうです。30分経過。

 

マイケルは、現れませんでした。私は予約表に「ノーショウ」の表示が出たのを確認すると、マッサージ室に戻り、速攻でマネジャーに、今後のマイケルの治療を拒否する旨をメールで送りました。1週間後にマネジャーから、

「君の報告の通り、当該患者には遅刻とノーショウが頻繁に見られるようだね。今後、君への予約は受け付けないように受付担当に伝えるよ」

という返事。これにより、残り4回のマイケルの予約は全てキャンセルされ、私は晴れてこの理不尽な患者から解放されることに

 

…なったと信じていました。

(後編へ続く)
 



トロントの病院で子宮鏡下手術を受けた話を前回、前々回のブログで書きました。今回は、手術前、手術中、手術後の細かいことについて、経験するまでわからなくて不安に感じていたことが、実際どうだったのか書き記していこうと思います。今後、カナダ在住で同様の手術を受ける方が、私と同じように術前に不安に感じることがあれば、参考になれば幸いです。

不安1:手術の時間を確認する電話はすぐ繋がるのか?
これは地味に手術前一番心配したことですが、病院に限らずカナダのコールセンター関係というのは、とにかく繋がりにくいものです。私の手術は月曜日で、土日は担当部署は閉まるので金曜の12時半から4時半の間にかけろと指定されました。かけてもかけても一切つながらなかったらどうしよう…仕事もあるし…と思っていましたが、かけてみたら速攻で繋がりました。全くの杞憂でした。

不安2:朝早く行きすぎても大丈夫か?
病院玄関は24時間開いておりますし、朝5時過ぎに到着しても特に何も言われず、守衛さんにも止められず、普通に待合室まで行くことができました(セキュリティ的にいいのか?という気はしましたけども)。むしろ、早く行ったからこそ椅子に座って待つことができて良かったと思います。というのは、ブログでも書きましたが、大勢の付き添いを引き連れてやってくる患者さんが結構いるので、狭い待合いスペースはあっという間にぎゅうぎゅう詰めになるからです。前夜から飲まず食わずで立ちっぱなしはしんどいです。早めに行くのがいいでしょう。

不安3:英語でのコミュニケーションに問題はないか?
まあ、自分も医療従事者の端くれですので、この点に関してはそれほど心配していませんでした。しかし、移住して間もない、まだ英語に自信のない方は不安に思うかも知れません。カナダの看護師さん方は英語が流暢でない患者の扱いも慣れているでしょうし、それほど難しいことも問われませんから、ある程度日常会話ができればOKだと思います。それに、医療従事者も英語が母国語でない人々が大勢います。なお、全く英語が話せない人は、通訳を同行させて良いようです。手術前、カーテンを隔てて隣からは年配の中国人らしき女性と、その通訳の若い女性の声が聞こえていました。

不安4:剃毛しておいた方がいいのか?または、されるのか?
手術と言えば剃毛…というイメージがあったのですが、事前の問診時に陰部の剃毛に関して看護師から一切の言及はありませんでしたし、手術準備の説明書にも書いてありませんでした。他の手術ではどうなのかわかりませんが、子宮鏡手術に関しては剃毛の必要はなさそうです。むしろ、自分で処理したりすると切り傷を作ったりして、却って感染のリスクを上げることになるようなので、指示されない限り何もしない方がいいと思います。当日の朝にシャワーをしっかり浴びて清潔にしておけばOKです。なお私はワキだけはしっかり剃っておきました。何となく。

不安5:生理中でも手術は受けられるのか?
幸い、私は生理中に手術が重ならないタイミングで受けられたのですが、重なった時のために事前に確認したところ「生理中でも手術はできる」と伝えられました。特にピルなどで生理日をずらす措置を取らなくても良いようです。しかしこれは担当医の方針によるかも知れません。基本的には生理が終わってから排卵日までに手術を行うのが一般的なようです。

不安6:子宮頸管を広げる処置はされるのか?
以前に子宮細胞診を受けた時は、子宮頸管を柔らかくするmisoprostolという膣座薬を処方され、検査前夜に使用しました。しかし今回そういった薬の処方はありませんでした。インターネットで色々調べると、子宮鏡手術の前にはラミナリアという細い棒を子宮頸管に挿入して拡張する処置が取られることがあると知りましたが、私の手術前には一切そういう処置はありませんでした。これは何故なのか全くわからないのですが、その処置がなくても術後それほど苦痛を感じることはありませんでした。

不安7:所持品の管理はどんな感じか?

術前に貰った説明書に「病院内に患者のロッカーはないので、クレジットカードや貴重品は持ってこないように」と書いてありました。どういう管理をされるのか全くわからなかったので、とりあえず当日は、ヘルスカードと、運転免許証と、スマホと、少額の現金のみを持って行きました。実際は、最初に着替えたり点滴の針を入れられたりする場所で、大きなビニール袋に服や靴、所持品すべてをひとまとめにしました。それに患者名の書かれたシールが貼られ、術後に退院準備をする部屋へと運んでおいてくれました。大変システマティックです。

不安8:手術中はどんな姿にされるのか?
全裸の上に手術着(背中側で紐を縛る)を着ますが、その上から着る薄いガウンも貸してくれました。足は袋状のスリッパを履きます(非常に歩きにくい)。眼鏡は外すよう言われました。アクセサリー類、コンタクトレンズも、していれば全て外すことになるでしょう。手術室に行くまではガウンを羽織り、手術室の入り口付近でシャワーキャップみたいな帽子を被らせてもらいます。

手術台に上がる前に上のガウンを脱ぎ、手術着だけを着た状態で仰向けになります。やがて麻酔が効いてきて意識を失い、目覚めた時にはパンツを履かされているという状態です。内診台のように足を乗せる部分はなかったように記憶しているのですが、あのフラットな手術台がどう変化して砕石位という姿勢を取ることになるのか、すごく興味があるのに寝ていたせいで全くわからなかったのが地味に残念です。ただ、まだ意識がある時に担当医がベリベリと音を立てながら、ベルクロのついた黒いストラップで私の下腿を何かに固定しているのは見えました。

多分、意識を失った後に心電図モニター用の電極パッドを胸部に装着されたと思いますので、手術着は一回脱がされてマッパの状態になったと想像できるのですが、手術中もずっとマッパでいたということは多分ないんじゃないかと思います(体温下がってしまいますし)。まあ、女性だけの手術チームでしたし、私は基本的にそんなに医療者に体を見せることに強い抵抗はないので、手術中どんな姿にされていようと大して何も思いません。しかし、意識を失うまでの間は手術着を着せておいてくれたり、姿勢を変えないでいさせてくれた点には配慮を感じて有難かったです。なお、短時間の手術だったせいか、手術後は導尿カテーテルは留置されませんでした。

不安9:麻酔から覚めた後は具合が悪くなるのか?
全身麻酔後に頭痛や吐き気を催すケースが時々あると聞いていました。しかし私の場合は、担当医に名前を呼ばれて目が覚めた時、まるで昼寝から目覚めたような感覚しかなく、その後もただ眠気を感じるだけで、一切の不快感はありませんでした…これは、きっとあのベテランの風情のあった麻酔科の先生が、相当な手練れだったのかも知れん…と後で深く感謝しました。術後も、事前に飲んだ痛み止めの影響か、帰宅して夜中になるまでほぼ痛みは感じませんでした。

不安10:術後の回復には時間がかかるのか?
手術の翌日の夜から徐々に自己流でリハビリを開始しましたが、トレッドミルでかなりゆっくりのスピードで20分歩くだけがやっとでした。10段階で言えば2か3くらいの下腹部痛があり、またなんとも言えない違和感があって、背中を伸ばして歩くことが難しかったのを覚えています。担当医は1日休めば仕事に戻れると言いましたが、マッサージ師である自分の肉体的負担を考えると、やはり1週間の休みを取っておいて正解だと思いました。

 

その後も毎日歩くようにしたところ、月曜日に手術を受けて、金曜日には問題なく運動できる状態になりました。土曜日には出血もほぼ止まっています。私は元々体力がある方で、他に持病もないので、比較的スムーズに調子を戻すことができたと思います。オフィスワークの人なら、2日も休めば十分でしょうが、長時間の通勤で長いこと歩いたり、階段を上ったりするのはややしんどいかも知れません。

 

 

というわけで、私が手術前に感じていた多くの不安は、ほとんどが杞憂に終わりました。もちろんそれは、私に携わって下さった医療従事者の皆さんの尽力なしにはなかったことです。今、まだ不安が残るとすれば、除去後に病理検査に出されたポリープが良性であるかどうか、しばらくわからないという点です。年末に日本に帰国して、カナダに戻ってから結果を聞くことになっています。こればかりは、祈るしかありません。