「モチベーションを上げて」みたいなことは、結構色々なところで言われますよね。

犬がコマンドに従わないときも、「モチベーションが低いから従わないので、もっとモチベーションを上げましょう」みたいな。
会社なんかでも、「社員のモチベーションが下がっているから、色々とミスが出たりしている。もっとモチベーションを上げて、仕事に取り組ませないと」みたいな。

この「モチベーション」ってのは、なんなんだろうと思うわけですよ。
日本語でいえば「やる気」ってことになりますかね。
確かに、やる気がないと色々とめんどくさくなったりして、色々とやらなくなったりしますね。

でも、ここでちょっと考えてみるわけです。

「本当に、やる気がないから、やらないのか?」

僕ねー、これは逆だと思うんですねー。
「やる気がないから、やらない」んじゃなくて、「やらない人のことを、やる気がない人って表現してる」んだと。

つまりね、本人にどれだけやる気がなかったとしても、仮に仕事を毎日きちんとこなしていれば、周りは「あいつはやる気がない」とは言わないですよね。
でも、本人にはまったくやる気みたいなものはないわけですよ。
言われたことを、ただきちんとこなしてるだけです。

反対に、本人はものすごくやる気にあふれていても、何をすればいいのかわからず、ミスばかりを繰り返していると「やる気あんのかお前は」みたいに言われたりしますよね。
でも、本人はやる気で満ち満ちているわけですよ。
ただ、何をすればいいのかわかんないので、ミスばっかりするんですね。

つまり何が言いたいかっていうと。

「モチベーション」や「やる気」の「あり/なし」ってのも、結局は「行動の様子」で判断してるだけなんですよね。
「やる気バロメーター」みたいなのがみんなの頭の上にあって、「お、あいつのやる気は今100だ」とか、「あいつは今、やる気が20しかないなぁ」って見えるんなら別ですけど、そんなわけはないんですよね。

だから、「モチベーションを上げる」とか、「やる気を出させる」ってのは、とどのつまり「モチベーションが高いような行動をさせる」「やる気があるような行動をさせる」ってことになります。
「自主的、自発的に仕事に取り組む行動」ってのになるでしょうかね。
誰かに指示されなくても、自ら行動を起こすってことをしていると、「モチベーション高いなぁ」みたいに言われたりするんでしょう。

ただ、これひとつ気をつけないといけないことがあると思うんです。

↑にも書いたように、僕らは「行動の様子を見て、やる気やモチベーションのある/なし」を判断するわけですけど、それを「評価の基準」に置いてしまうのは、たぶんよくないと思うんですよね。
でないと、仕事はあまりできないのに、単に「笑顔で挨拶ができる」とか、「とにかく元気に動いてる」みたいな、「やる気があるな!がんばってるな!」って言われる行動だけが強化されちゃって…みたいな人が増えちゃうかもしれません。

あなたの職場にもいませんか?
「あいつは普段からがんばってる」みたいな評価を受けてる人。
そういう人は元気なことが多いですから、ムードメーカーとしては大事だと思うんですけど、でも組織全体が「ムードメーカーを評価する」ってなると、パフォーマンスは落ちちゃいますね。

でもって、反対にちょっと暗い感じの人は、仕事ができていたとしても、あまり評価されなかったりするんですよね。
「もうちょっとやる気出せよ」とか言われたりね。
そいでもってそういう人がミスをすると「ほら見ろ。お前は普段からやる気がないから、そんなミスをするんだよ」とか言われたりね。

あまりそういうことを言うと、よくないんですよね。
だんだんと行動の自発頻度は下がっていきますから。
つまり、「自分からやらなくなっていく」わけなんですよね。
もったいないですね。

てことは反対に「やってることを評価して強化する」ってことをやれば、自発頻度は上がるんですよ。
つまり、「どんどん自分からやるようになる」わけなんです。

犬のしつけでも同じです。
「やらないこと」「できないこと」を問題にして、やれ「モチベーションが低い」だの、「やる気がない」だの、「やろうという意識が低い」だの言うんじゃなくて、とりあえず「今、やってること、できること」を認めて、そこを評価して強化するんです。
したら、どんどん自発的に動くようになりますから、そのうち適切な反応、正しい反応がポンっと現れます※1
あとは、それをひたすら強化していきゃいいんです。

「やる気がない」だの「モチベーションが低い」だのは、そんなに問題じゃないんだなーってことですね。




※1
本当に現れます。
嘘だと思うなら、やってみてください。
全っ然変わりますよ。いやほんとに。