昨夜の「たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学」(テレビ朝日)は、ご覧になりましたでしょうか?
「緊急警告!ペットから感染する新型感染症を徹底検証スペシャル!」というテーマで放送され、その中に「カリスマドッグトレーナーに聞く!主従関係の作り方」というコーナーが、かなりの時間を割かれて紹介されていました。

しかし、いわゆる「リーダー論」「主従・上下関係に基づいたしつけ」というものは、近年では批判の対象となってきています。
その一方で、テレビのゴールデンタイムで堂々と取り上げられるほど、影響力を保持している考えでもあります。※1
そこで、ちょっと考えてみたことがあります。

「そもそも、何故リーダー論は生まれ、受け入れられてきたのか?」

あくまで僕が「こういうことなんじゃないかなー?」と、考えたというか、妄想しただけの話ですが、せっかくなので頑張って書いてみます。


さて、まずはいわゆる「リーダー論」「主従・上下関係にもとづいたしつけ」について、簡単に振り返りつつ、軽く「ここがおかしくないか?」という点を挙げておきます。

上記の番組に出演されていた藤井聡氏によると、以下の4つのポイントで、飼い主と犬との主従関係がわかるのだそうです。


【主従関係がわかる4つのポイント】

<1>散歩の仕方
あなたの犬は散歩の時、どんなふうに歩いていますか?
もし犬が前を歩き、ぐいぐいひっぱっているようなら要注意。完全に犬が上位の状態です。
主従関係が出来ている場合は、犬はあなたの横、もしくは後ろをついて歩きます。
方向を決めるリーダーは、あくまでも飼い主なのです。

<2>座る場所
あなたが寛いでいるとき、犬はどこにいますか?
もし、あなたと同じ椅子に座っていたら要注意!犬は目の位置で上下関係が出来るのです。
主従関係が出来ている場合は、犬の位置はあなたの足元。
あなたに完全に服従し、リーダーとして信頼している証拠。

<3>キス
あなたはカワイイからと、ついつい犬にキスをしていませんか?
実はこれが大きな問題。口をなめるのは、子供が親に餌をねだるなど、下位の者が上位の者に対して行う「媚び行動」の一つ。
主従関係が出来ている場合、犬の方からあなたの口をなめてきます。ただ、これを許していると常習化し、カプノサイトファーガなどの細菌がうつる危険性が高くなるので要注意。

<4>甘がみ
子犬の時などによく見られますが、これを許すことも主従関係が逆転する問題行動です。

この中で1つでも当てはまっていたら、主従関係が逆転している可能性があります。
皆さんは大丈夫ですか?

(朝日放送|たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学,http://asahi.co.jp/hospital/ ,2010年8月11日アクセス.)



また、この番組の公式サイトには、以下のような記述も見られます。


犬の習性を知り尽くした動物行動学の権威である林良博先生(東京農業大学)によると、カプノサイトファーガ感染症にならないための理想的なしつけのポイントとは、飼い主がリーダーとなり、犬がそれに従う「主従関係」。この関係がきちんと出来ていれば、リーダーである飼い主を犬が咬んだりひっかいたりすることは基本的にはありえないといいます。主従関係を築くことは、犬にとってもストレスの少ない、いい関係となるのです。

(朝日放送|たけしの健康エンターテインメント!みんなの家庭の医学,http://asahi.co.jp/hospital/ ,2010年8月11日アクセス.)



僕自身は、こういったいわゆる「リーダー論」「主従・上下関係に基づいたしつけ」というものについては、これまでにも何度か批判をしてきました。
よく「トレーナーが10人いれば、10通りの考え方がある」などと言われることもあります。
しかし、この「リーダー論」については根拠がなさすぎることと、矛盾が多すぎることから、「考え方は色々である」としてしまうことすら、無理がある、弊害も多いと感じています。
また、ここ数年、僕と同様に「リーダー論」「主従・上下関係に基づいたしつけ」は、おかしいのではないか?と主張するトレーナーさんや、学者さんも増えてきています

先に述べたように、そもそも「リーダー論」というものには、明確な根拠がありません
突っ込みどころはありすぎるほどあるので、すべてには突っ込みません。

いくつかあげるとすれば、「群れに属していないトレーナーの言うことを聞くのは何故か?」という疑問ですね。
リーダー論にとって「群れ」という概念は重要なものだと思うのですが、その「群れに属していないトレーナー」の言うことを聞く犬は、山ほどいます。
というか、それができなきゃトレーナーなんてできないと思いますが。
この大きな矛盾を、リーダー論はどう処理するのか。

あとは、よく言われる「支配性」の問題です。
これは、「支配的な行動を取る傾向がある個体がいる」という意味での、「支配性」であれば僕も納得できます。
しかし、それを「支配性という心的な何かを、実体としてあるかのように扱う」となると、かなり危うい。
何故なら、「心の中のこと」を、確認することはできません

しかし、このような指摘をすると「確認できないからといって、ないとは言い切れない」という反論が返ってきたりします。
それはまったくその通りです。
なので、早いとこ確認して欲しいと思っています

ところが、「そういったものが備わっていないという根拠を示せ」みたいなことを言われたりもします。
これは、いわゆる「悪魔の証明 」呼ばれるものです。
実は、「ないことを証明する」のはほぼ不可能に近いんですね。

たとえば、「世界のどこかに、真っ白なカラスがいる」という主張があったとします。
「いる」ということを証明するためには、その「真っ白なカラス」を一羽捕まえてくればその時点で証明終わりです。
実に簡単です。
ところが、「いない」ことを証明しようと思ったら、世界中のカラスを捕まえて、その中のどこにもいないことを証明しなくてはいけません。
しかし、「本当にこれで全部なの?」「ひょっとしたら、まだどこかに隠れてるかもしれないじゃん」と言われたら、証明できません。
つまり、現実的には不可能です。

よって、「ある・いる・存在する」と主張する側が、証明すべきということになります。

ところが、この「犬の支配性」とか「服従性」「権勢本能」といった問題や、「犬は本当にリーダーを求めるのか」などの疑問は、こうした「悪魔の証明問題」に引きずられることが多く、大体が水掛論になって話がまとまりません※2
だから、「早いとこ確認して欲しい」と思ってるわけです。
あるいは、「こういう明確な根拠があるぞ!」という方がいらっしゃったら、コメント欄で是非教えてください。
僕が無知すぎるのかもしれません。


さて、ここまでが前置きです(長くてすみません)。
これまでに書いてきたように、リーダー論は突っ込みどころが満載で、矛盾も多く、弊害も多く、根拠がないんですね。
しかし、多くのトレーナーさんや飼い主さんが、受け入れているようにも思えます。

次回から、「なんでーこんなーに、受け入れるのかーよぉー」ということを、妄想し…考えてみようと思います。※3




※1
「テレビで放送されている=正しい」とは言えませんので、注意が必要です。
しかし、テレビというメディアが持つ影響力は非常に強いので、これまた注意が必要です。


※2
過去に何度か議論をしたことがあるのですが、まったく議論になりませんでした。
最後には「科学でわからないことだってたくさんある。なんでも科学が正しいと思ったら大間違いだ」と言われる始末でした。
「科学が正しい」なんて言ってるんじゃないのにね。(´・ω・`)


※3
あくまで個人的な妄想でーす。
でも、結構いい線ついてんじゃないかな?って思っていますよ。(`・ω・´)



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