顧客からの電話
居眠り運転の対向車にぶつけられたという事故連絡。
「おケガはないですか?」と私。
中央線を越えた車に気付き、とっさに左へ変えたので
正面衝突は避けられましたよ 「エラい!」
右前から運転席のドア付近を掠めたので
右足の打撲で済みましたとのことで安堵。
『検証はさっき終わったのですが、実は相手は警察官です
名刺をくれたので分ったんです。
もう定年も近いので穏便にしてくれないかと言われて悩んでます。
そうですかぁ、では
気持ちよく赦してあげてはいかがでしょうか。
お巡りさんを赦してあげるなんて
そうそう誰でもが体験できることではありませんよ。
相手を赦すというのは感謝もされるでしょうけど
一種の爽快感も味わえます。どうですか?
『うーん、どうしようかなあ』
まッ、一日か二日相手の出方を観れば宜しいではないですか。
待ってみましょうよ。
当社の保険請求用紙も明日伺った時にお届けします。
翌日の昼休み時、顧客の職場に伺う。
昨日は大変でしたね、ケガは特に心配ないですか?
『ああ、おかげさまで大したことはないです』
実は朝早く相手が訪ねてきたとのことです。
そうですか、何かありましたか
『はい、昨日と同じように何とか穏便に解決したいのでと懇願されました
見舞金として差し出された茶封筒を受け取りました。
中身は20万円入っていました。』
ああそうですか、
相手の人は、あなたのケガに気遣いを見せてくれたわけですね。
それで特にあなたの方には問題ないのでしょう?
『はい、修理とケガについて補償がされるなら他にはありません
と答えました。』
良かったではないですか、
じゃあ、ケガについては当方の保険からも支払いできますので
この書類に記入が要りますので後で書いておいて下さい。
ではお大事に、と退出しようとすると
『あのー、ちょっと待って下さい』
はい、ほかに何か・・・?
『えーっと、あのー・・・、私は20万ではなく50万で手を打ちたいのです
代理店さんは詳しいのでしょうから、あと30万出してくれるよう
交渉して貰えませんか』
おーっとっと、あなたそれはないんじゃないですか?
あなたは今、自分がどんな立場にいるかお分かりですか?
相手から見たら、今のあなたは神様にも思えるような有難い存在なのですよ、
その神様がもう一方の手を差し出してもっと出せ、という訳ですか
神様が地に落ちますよ、そんなことは考えない方がいいです。
もしも、ですよ。
相手からああそうですか、それならば人身扱いにしても結構ですよ。
その代りこちらとしては
30万の部分については恐喝ということで被害届を出しますから、と
切り返されたらあなたはどう対処できるでしょうか?
そういう場に代理店の立場が介在したということになれば同罪です
私はそういうことに連座させられるのはごめんですね。
考えてみて下さい、
あなたも公務員という立場、大事になってしまいますよ。
あなたの方も不都合なことになりませんか?
『やっぱ、ダメかあ』と頭をかく顧客。ちょっと軽率な35歳でした。
こういうことは相手が警察官であろうが無かろうが同じこと、
事故をネタにして、人の弱みに付け込むような行為は卑劣な犯罪です。
現職の刑事を恐喝しようなんて100年早いよ!…そう感じたお話です。
ちなみにちなみに、参考資料はこちら。
恐喝罪 刑法249条
1.他人を恐喝して財物を交付させた者は10年以下の懲役に処する(財物恐喝罪)
2.前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする
(利益恐喝罪、二項恐喝罪)。
