曖昧な吹部の私 with遠藤さん

 

 

 

いしや〜き芋〜なんて気の抜けた声を発しながら停まっている車の横を2人で通り過ぎていた。

 

 

 

晴れた日の夕暮れとはいえ、もう十分寒い。

 

 

 

 

 

「ねえ」

 

 

「なあに」

 

 

 

 

私は高校に通い、人並みに勉強を頑張り、吹奏楽部でオーボエを吹く。

 

そして合奏中の私の視界にチラチラと映り込んでくるのはこの人。

 

目が合うたび、クスッと微笑んでくるクラリネット奏者に私は簡単に落ちてしまった。

 

いとも簡単に、落ちることは決まっていたのかのように。

 

 

 

 

「私ってどうなるんだろうな、って思ったの」

 

 

「遥香ちゃんがどうなるかってこと?」

 

 

「うん」

 

 

「当たり障りのないように話すと」

 

 

「うん?」

 

 

「幸せになると思う」

 

 

 

 

ニコニコしながら自慢げに話してくるその顔からは意図がわからない。

 

自分で言うのもなんだけど、私はもう既に、人並みではあるが幸せな人生を送っていると思う。

 

優しい友達がいて、こうして遠藤さんと帰り道の時間を共有して。

 

 

 

 

「当たり障りのあるように話すと?」

 

 

「うーん?えんどうさんのことが好きです、って言ってくれたら教えてあげよう」

 

 

 

 

そう私の友人は得意げにフフン、と鼻を鳴らす。

 

いつも余裕げで私は振り回されてばかりだった。

 

遠藤さんからの反応に一喜一憂してしまう高校生活。

 

少しだけ勇気を出してみよう、なんて思ってしまった。

 

 

 

 

「愛してます、じゃダメなの」

 

 

 

 

声を震わせずに言うことができただろうか。

 

 

 

 

「…言えないくせに」

 

 

 

 

吐く息だけでなく、ささやかな反撃も肌寒い冷気に吸い込まれてしまう。