2025年11月11日に開かれた衆議院予算委員会で、高市早苗(たかいち さなえ)首相と日本共産党の田村智子(たむら ともこ)委員長が、防衛費問題を巡って激しい論戦を繰り広げました。
質疑時間が終了してもヒートアップした議論は収まらず、最終的に予算委員会の枝野幸男(えだの ゆきお)委員長が「終了です!」と制止する事態にまで発展し、大きな注目を集めています。
特に焦点となったのが、防衛費の対GDP比「3.5%」という具体的な数字です。
なぜ高市首相はイラッとした様子を見せたのか、田村氏が追及した「3.5%」要求とは何だったのか、「否定しなかった」と受け止められた理由はなぜか、いったい何があったのか。
この記事では、2025年11月11日の予算委員会で起こったことの詳細を、時系列で分かりやすく解説し、ネット上の様々な反応についてもまとめていきます。
2025年11月11日、衆院予算委で高市首相と田村委員長のバトルが勃発!何があった?
今回の激しい論戦の舞台となったのは、2025年11月11日の衆議院予算委員会です。ここで、高市早苗首相と共産党の田村智子委員長が、防衛問題をテーマに真正面から衝突しました。
40分間の質疑全てを防衛問題に投入した田村智子氏
この日、質問に立った田村智子委員長は、持ち時間であった約40分の全てを「防衛関係」の質問に費やしました。
序盤から「存立危機事態」や「ミサイル配備」といった安全保障の核心に触れるテーマで高市首相を追及し、委員会室の空気は徐々に張り詰めていったとみられます。
そして、質疑の終盤、最大の論点となったのが「防衛費」の問題でした。
高市首相がイラッとした「3.5%」要求とは?やり取りを時系列で解説
田村委員長はまず、高市首相が打ち出している「防衛費をGDP比2%にする政府目標の2年前倒し」について触れ、「総理がどう言おうと客観的にアメリカの要求を受け入れたとなりますよ」と指摘しました。
さらに田村氏は、一部でささやかれているアメリカからの「防衛費GDP比3.5%」要求について、以下のように高市首相に迫りました。
- 田村氏:「アメリカの政治家の発言で、日本に(GDP比3.5%を)要求されているのは事実」
- 田村氏:「この場ではっきり、アメリカに言われる筋合いではないと表明していただきたい」
これに対し、高市首相は冷静に答弁を始めます。
- 高市首相:「私がまず、トランプ大統領から何の数字も規模感も伝えられていないのが事実です」
- 高市首相:「仮に(すでに)アメリカから3.5%の数字を伝えられていたら、(日本が打ち出した)2%では足りんだろうという反応になる(はず)。2%もアメリカに言われて前倒しするわけでない」
高市首相は、3.5%という具体的な数字はアメリカ側から一切伝えられておらず、2%への増額もあくまで日本の主体的な判断であると反論しました。
高市早苗首相は「3.5%」要求を否定しなかった?その理由とは
このやり取りは、田村委員長が「3.5%はあり得ない」という明確な表明を求めたのに対し、高市首相がそれに応じなかった、という構図になりました。これが後に「3.5%を否定しなかった」という騒動につながっていきます。
高市首相の答弁「アメリカから要求ない」
高市首相のロジックは、「そもそも要求が来ていないのだから、あり得るとも、あり得ないとも答えようがない」というものでした。
田村氏が「3.5%に増額となれば21兆円。あり得ない!あり得ないと表明していただきたい!」と何度も強く迫ると、高市首相も次第に口調を強めて反論します。
- 高市首相:「アメリカから何も私に要求がないのに、3.5%といきなり言われても、どうしようもありません!」
高市首相は、田村氏の質問を「仮定の話」であり、現実に要求がない以上、答弁のしようがない、というスタンスを崩しませんでした。
田村氏の批判「戦争準備が当たり前と聞こえる」
一方で、田村氏はなぜこれほど「3.5%」にこだわったのでしょうか。
それは、高市首相が防衛費増額の必要性を説く中で、「もう戦争準備が当たり前と聞こえますよ」と田村氏が批判した点に表れています。
田村氏は、「3.5%要求は周知の事実」と繰り返し、「拒否しなきゃいけない!」と主張しました。これは、もし3.5%という要求を(仮に水面下で)受けていた場合、それを明確に拒否しなければ、なし崩し的に軍拡が進んでしまうのではないか、という強い懸念があったためと推察されます。
なぜ高市首相は「あり得ない」と断言しなかったのか?推測される理由
高市首相が「あり得ない」と断言しなかった、あるいは「できなかった」理由については、いくつかの見方があります。
一つは、高市首相の答弁通り、「要求が本当にない」ため、存在しない要求に対して「あり得ない」と答えること自体がおかしい、という政治家としての答弁の正確性を期した可能性です。
もう一つは、外交上の観点です。たとえ現時点で要求がなくとも、将来的に同盟国であるアメリカから何らかの要求が増える可能性はゼロではありません。その際に「かつて国会であり得ないと答弁した」という事実が、将来の外交交渉で日本の足かせになることを避けたかった、という深謀遠慮があった可能性も考えられます。
いずれにせよ、高市首相は「3.5%」という数字そのものを否定するのではなく、「日本が主体的に防衛力を整備する」という一点を強調しました。
- 高市首相:「これは日本が主体的に必要な防衛力を整備して国民の皆様と国土を守るために、抑止力を持つ、これが全て」
なぜ炎上した?高市首相がヒートアップし「イラッ」とした理由
質疑応答が続く中、高市首相は明らかに「イラッ」とした様子を見せ、ヒートアップしていきます。その背景には、田村委員長の「外交努力」を重視する姿勢へのいら立ちがあったようです。
高市首相の主張「ドローン攻撃など戦い方が変わっている」
高市首相は、防衛費増額の必要性について、世界の安全保障環境が激変している現実を挙げて説明しました。
- 高市首相:「(世界の戦争状況は)明らかに戦い方が変わってる。ドローンですごい攻撃がなされている」
- 高市首相:「継戦能力を高めるため世界各国が動き出してる中で、ニーズがあるものにしっかり予算をつけていく。当たり前じゃないでしょうか」
ウクライナ情勢などに見られるように、ドローンやサイバー攻撃、宇宙領域といった新しい戦場に対応するためには、従来の防衛予算では足りず、増額は「当たり前」であると、その正当性を強く訴えました。
「外交努力だけでは戦争は防げない」現実論を強調
高市首相のヒートアップが最高潮に達したのは、田村氏の「外交努力」という言葉に対してでした。
- 高市首相:「あの、なんか、おっしゃってる事が外交努力、外交努力と。外交が大事なのは当たり前!外交力も必要、防衛力も必要ですよ」
ここで、規定時間を超過したため、枝野幸男委員長から「時間を過ぎておりますので、答弁を簡潔にお願いします」と制止が入ります。
しかし高市首相は、一旦怒りを飲み込むような仕草を見せた後、強い口調でこう続けます。
- 高市首相:「それ(外交努力だけ)だと世界のどこでも戦争は起こらないはずじゃないですか。現実に今、起こってるわけです!」
これは、理想論としての「外交努力」だけでは国民の命は守れず、「防衛力」という現実的な抑止力が必要不可欠である、という高市首相の強い信念が表れた発言でした。
枝野幸男委員長が「終了です!」と制止した背景は?
この白熱した議論は、予算委員会の委員長である枝野幸男氏の制止によって幕を下ろしました。
規定時間を超える白熱した議論
枝野委員長は、高市首相の最後の答弁(「現実に今、起こってるわけです!」)が終わったのを受け、田村氏の質問時間が終了したことを告げました。
高市首相がヒートアップした時点で、すでに持ち時間の40分は経過しており、枝野委員長の制止は議事進行上、当然の措置でした。
田村氏の最後の主張「3.5%を否定されなかった!重大だ」
しかし、質疑の終了を告げられても、田村委員長は納得がいかない様子で、最後に声を張り上げました。
- 田村氏:「どう聞いても3.5%を否定されなかった!重大だと思います!」
田村氏にとっては、高市首相が「3.5%はあり得ない」と明確に否定しなかったことこそが、この日最大の問題点でした。この発言に対し、枝野委員長が「田村さんの質疑は終了しました」と再度、今度は強く制止し、約40分にわたる女性党首間の激しいバトルは強制的に終了させられました。
防衛費GDP比3.5%は21兆円規模?国民生活への影響はどうなる?
今回、最大の焦点となった「GDP比3.5%」という数字。田村委員長はこれを「21兆円」と表現しましたが、これはどれほどの規模なのでしょうか。
GDP比2%(約11兆円)との比較
日本の2025年の名目GDPは、約600兆円強から630兆円程度で見込まれています。仮に600兆円として計算した場合、以下のようになります。
- GDP比 2%:約12兆円
- GDP比 3.5%:約21兆円
現在、政府目標となっている「2%(約12兆円)」ですら、従来の防衛費(約5~6兆円規模)から倍増する計算です。これに対し、もし「3.5%(約21兆円)」となれば、さらに9兆円もの上積みが求められることになります。
財源はどこから?増税の可能性
現在議論されている「2%」への増額ですら、その財源(数兆円規模)をどう確保するのか、大きな課題となっています。歳出改革や決算剰余金などでまかなうとされていますが、不足分については増税も視野に入れられており、国民の間でも賛否が分かれています。
もし、これが「3.5%(21兆円)」となれば、現状の「2%」の議論とは比べ物にならないほどの、大規模な財源確保策が必要となります。
これは、消費税のさらなる引き上げや、所得税、法人税の大幅増税など、国民生活に直接的な影響を与える議論に発展する可能性が極めて高いです。
田村委員長が「あり得ない!」と強く否定を求めた背景には、この深刻な国民負担への懸念があったと考えられます。
高市首相と田村委員長の予算委バトル、ネット上の反応やコメントまとめ
この予算委員会の様子はテレビやネットニュースで広く報じられ、2700件を超えるコメントが寄せられるなど、非常に大きな反響を呼んでいます。ネット上では、様々な意見が飛び交っています。
高市首相の態度への賛否両論
高市首相のヒートアップした態度や「イラッ」とした様子については、賛否両論が見られます。
<肯定的な意見>
- 「現実を直視した答弁でよかった。外交努力だけで国が守れるわけがない」
- 「田村氏の『仮定の話』に付き合わず、要求がないと突っぱねたのは正しい」
- 「ドローンの話など、現代戦のリアルを分かっている」
<否定的な意見>
- 「一国の首相として、イライラを露わにするのは品位に欠ける」
- 「『あり得ない』となぜ言えないのか。3.5%を考えていると勘ぐられても仕方ない」
- 「『当たり前』という言葉で、軍拡を正当化しようとしているように聞こえた」
田村委員長の追及への評価
同様に、田村委員長の追及姿勢についても、評価は二分されています。
<肯定的な意見>
- 「国民が一番懸念している『3.5%』『21兆円』の問題に切り込んだのは素晴らしい」
- 「高市首相が『否定しなかった』という事実を引き出したのは大きい」
- 「防衛費の財源や国民生活への影響を考えれば、当然の追及だ」
<否定的な意見>
- 「『要求がない』と言っているのに、しつこく『否定しろ』と迫るのはおかしい」
- 「『戦争準備』というレッテル貼りは、議論を深めない」
- 「40分も使って、結局『否定しなかった』という言葉尻を捉えただけだった」
防衛費増額と国民負担への懸念の声
最も多く見られたのは、今回の論争の核心である「防衛費増額」そのものと、それに伴う「国民負担」への懸念の声です。
- 「2%ですら財源がないのに、3.5%なんてどこにそんな金があるのか」
- 「防衛も大事だが、物価高で生活が苦しいのに、これ以上増税されたらたまらない」
- 「安全保障と国民生活のバランスをどう取るのか、具体的な説明が欲しい」
今回の論争は、日本の安全保障と、国民の生活負担という、国の根幹に関わる問題がぶつかり合ったものだったと言えそうです。
まとめ:高市首相と田村委員長の防衛費論争の今後はどうなる?
2025年11月11日の衆院予算委員会で見られた、高市早苗首相と共産党・田村智子委員長の激しい防衛費論争。
「3.5%要求」という具体的な数字を巡り、高市首相は「アメリカからの要求はない」と答弁し、田村氏は「明確に否定しなかった」と批判しました。
高市首相が「イラッ」とした背景には、外交努力だけでなく現実的な防衛力の必要性を訴えたいという強い思いがあったとみられます。
最終的に枝野幸男委員長によって「終了です」と制止されたものの、防衛費増額の是非、そして「3.5%(21兆円)」という数字の持つ重みは、今後も国会で、そして国民の間で大きな議論を呼び続けることになりそうです。