F先生のブログ

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keiさんと緩和医療の話
keiさんのブログ「Un año después」を読んでね!

 こんばんは、keiさん。

 今日は10年目の命日ですね。

 あっという間の10年だった気もするし、あの日が遠い昔のような気もします。

 今日はこの地は雪。少し吹雪き模様だけど、急に雪が積もる様子はあの日を思い出します。

 

 この10年は私にも色々ありました。

 職場が変わり、両親が相次いで入院し、結局亡くなり、妻が病気になり、コロナが流行し・・・。

 振り返ると、私にとっては結構辛い10年でした。

 今の勤務先は私立の病院なので60歳で定年退職。再雇用で今も働いていますが、契約は65歳まで。あと3年あまり。

 体力の衰えを感じる今日この頃で、いつまで働こうかと考えています。

 今年8月17日のブログでこれまでの自分の医師としての在り方について振り返っていると書きましたが、同時に自分のこれまでの人生全体についても考えています。

 そして、あと何年生きているのだろうか、残り時間をどう過ごしたら良いのだろうかと考えることが多くなっています。

 私は元々冬季うつ病の傾向があって、秋分の日を過ぎた当たりから考え方がネガティブになりがちです。今月は特に抑うつ的で気分は落ち込み気味でした。

 でも、2週間ほど前から、気分は落ち込み気味ながら、新しいことに挑戦しています。

 何を始めたのかは、ちょっと恥ずかしいので今は書きませんが、「60過ぎてからそれやるの?」と言うことに二つ挑戦しています。結果が出たらkeiさんにも報告します。

 なんでいい年して新しいことに挑戦し始めたのかというと、理由は色々あるのですが、そのうちの一つはkeiさんの影響だろうと思っています。

 

 keiさんは亡くなる数ヶ月前に気分が落ち込んで、少し投げやりになっている時期がありました。でも、ある時はっと気がついたそうです。「こんなの私らしくない!やっぱり私は攻めないと!」と。

 で、keiさんはスペイン語の勉強を再開したのでした。

 keiさんはラテンアメリカが好きで、スペイン語の勉強をずっとしていたことはkeiさんのブログを読んでもらえばわかると思います。しかし、自分の人生の残り時間があまりないことを意識するようになってから、一時スペイン語の勉強もやめていたそうです。それが、自分の人生の残り時間がいよいよなくなりそうな時期に、そしてスペイン語の勉強をしてもその成果を使う機会はもう来ないかもしれないのに、それでもスペイン語の勉強を再開したのでした。「まだ、スペイン語を使う機会があるかもしれないんだから」と言っていましたが、keiさんは将来のために勉強しているのではなく、スペイン語の勉強が好きだから、もしくはスペイン語が好きだから勉強しているように私には見えました。

 私が高校生の頃に「もし世界の終りが明日だとしても、私は今日林檎の種子をまくだろう」という言葉を聞いたことがありました。私はこの言葉の意味がずっとわかりませんでした。「明日世界が終わるのに、林檎が実るわけないんだから、種をまくことにどんな意味があるんだ」とずっと思っていたのです。

 しかし、緩和医療に携わった頃から、ようやくこの言葉の意味がわかるようになった気がしていました。

 でも、keiさんがスペイン語の勉強を再開する姿を見て、この言葉の意味が一層理解できたような気がしました。

 

 私もこの年になって、ちょっとした挑戦を始めて見ました。

 悪くない気分です。

 人生の残り時間を気にして焦ったり、守りに入るよりも「やっぱり私は攻めないと!」です。

 挑戦して、何か成果が出たらkeiさんに自慢して報告したいと思いますが、もし、成果が出なくても、挑戦すること自体に意味があると思っています。

 人生に充実感を与えるヒントをくれたことで、keiさんに感謝しています。

 

 つくづく思いますが、keiさんと過ごした時間は私にとって意味深いものでした。

 keiさんは私の中で今も生きているんだなぁ、と感じています。

 

 んじゃ、keiさん、またね。