このバレリーナの稽古風景を描いたのは、写実画で魅了したドガです。稽古をつけているコーチが見られますが、一瞬の動きをとらえた写実画は写真なども利用して、実にリアルティーな絵を描いています。当時のバレリーナは言わば昔の日本の舞妓のようなものですね。

有名な『エトワール』というドガの絵ですね。パリのオルセー美術館にあり、僕も何十回と見ていてそのたびにすごい絵だと思います。バレーの動きの一瞬をとらえた名作です。これも写真を利用して動きを研究しています。ところで、左に隠れているようにいる黒いスーツの男性は分かりますか?当時のバレリーナは比較的貧しい出身の娘たちでした。良いパトロンを見つける必要もあったのです。この男性は魅力的なバレリーナを見つけてパトロンになり、愛人にすることもあったわけです。まさに昔の日本の舞妓と同じです。

このような魅力的な写実画を多く描いていたドガですが、目の病気があります。

若い時のドガの自画像です。彼は正確な写実をしますので、目の位置も実は正確なのです。僕のような眼科外科医はこの自画像を見て目の位置がずれているのがすぐわかります。右目の外斜視があるのです。ドガは恐ろしいほどの写実派だったのです。自画像でも目の位置を正確に描いています。実はこの当時でもドガの右の視力が悪かったのです。視力が悪い目はまっすぐに向けずに目が外を向きます。右目が外車氏である理由は右目がほぼ見えなくなっていたからです。ほとんどの絵を描くうえでの視力を左目に頼っていました。なぜか?実はドガは遺伝性の網膜疾患に掛かっていたのです。視野が狭く視力も落ちていったのです。(以下次号に)